げんば・こういちろう 1964年生まれ。安積高校、上智大学法学部卒。民主党政権時に外務大臣、国家戦略担当大臣、内閣府特命担当大臣、同党政策調査会長などを歴任。現在、立憲民主党東日本大震災復興対策本部長。10期目。
衆議院小選挙区の区割り変更に伴い、立憲民主党の玄葉光一郎衆院議員(59)は、地盤としてきた改定前の福島3区が分割されることになった。党内での候補者調整の経緯と新たな選挙区となる新福島2区での意気込みを、衆院解散の緊迫感が増す6月中旬に聞いた。支持率が低迷する同党の野党第一党としての責任についても尋ねてみた。
――衆院小選挙区定数「10増10減」に伴い、定数1減の本県では区割りが変更となる中、立憲民主党は次の衆院選で新しい福島2区(郡山市、田村市、須賀川市、田村郡、岩瀬郡、石川郡)に玄葉代議士の擁立を決定しました。経緯と今後の選挙戦略についてうかがいます。
「中選挙区時代も含めると10期もお世話になってきた選挙区が二つに分割されるということで、体が引き裂かれる思いです。新2区、新3区のどちらを選んでも現職が既にいる状況が生まれてしまいました。
自分はどちらに重点を置いて活動すべきかということで、後援会の皆さんと丁寧に議論を重ねました。私が生まれ育ったのは田村で、主な地盤にしてきたのは田村、須賀川、岩瀬、石川地方です。一方、郡山も地元と言っていい。安積高校に通いましたし、郡山の経済圏で生活してきました。妻も郡山出身で縁が深い。最終的に新2区を活動の基盤にすると決めて、その上で馬場雄基代議士との競合をどうするかということになりました。
県連は当初からコスタリカ方式を進める方針でしたが、立憲民主党では比例枠がそもそも限られています。今後2回にわたり福島県で比例枠を一つずつ確保するのはかなり困難と予想されていました。
私自身、小選挙区で出る選択と比例で立候補し名簿順位で優遇を受ける選択の両方がありましたが、馬場代議士からは『まずは先輩が小選挙区で出てほしい』という話がありました。考え抜いた結果、私が小選挙区で当落のリスクを負うのが適切なのではないかと腹を据えました。ただし、そのためには馬場代議士が比例東北ブロック名簿で1位の優遇を受けることが前提になります。党本部に働きかけて、最終決定しました。
過去の選挙を振り返ると、当選を4回果たすまでは揺るがない支持をいただくために無我夢中でした。新しい区割りでの選挙は、若手時代と同様のチャレンジ精神が必要だと考えています。試練ではありますが、変化を新しいエネルギーに変えようと、原点に立ち返り精力的に選挙区内を回っています。新たな出会いの中に政治家の使命と喜びを日々見つけています」
――日本維新の会が選挙の度に勢いを増していますが、野党第一党の座にある立憲民主党の現状をどのように捉えていますか。
「私は選挙に関しては、所属する党を前面に出して戦ったことはこれまで一度たりともありません。玄葉光一郎という政治家個人の力を訴えてきた姿勢は今後も変わりません。それで有権者を引き付けられなかったら、政治家としての魅力不足だと捉えています。
党の現状については、私は代表ではないので、責任を持って言える立場にありません。ただ個人的には、立憲民主、維新、国民民主による3派連合が望ましいと思っています。3派連合ができたら、いくつかの共通の公約を掲げ、選挙区調整をして、さらには共通の総理候補を立てて政権を狙う。もっとも、現状はそれができる段階ではありませんが。
維新や国民民主と現政権に代わる共通の総理候補を立てるまでの信頼関係を築けなかったことは、野党第一党の責任と捉えています。ただ、やはり政治に緊張感をもたらすために、野党は可能な限り協力すべきです」
――5月8日から新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが2類相当から5類に引き下げられました。今後求められる対策についてうかがいます。
「現政権に足りないのは、アフターコロナについて、地方に活力を与える分散型国土を目指し、人口減少抑止につなげようとする視点です。コロナ禍で一時、東京は転出超過になりました。私はコロナ禍を機に分散型国土を実現するため、思い切った手を打ってはどうかと予算委員会で岸田文雄総理に提案しました。例えば、私立大学の一学部でもいいので、地方に移してもらう。そのために協力してくれる私学には助成金を大幅に優遇する。また5G、6Gなどの次世代通信システムを東京から整備するのではなく、地方から整備するといった政策です。
しかし、コロナ禍が収束に向かうと、再び地方から都市への転入超過に戻ってしまいました。第二次安倍政権以降、東京一極集中はますます進んでいるように思います。自公政権は分散型国土を本気でつくる気がない。
少子化対策は、手当と同時に分散型国土の整備を進めなければ効果が得られません。
賃金が正規雇用よりも低い非正規雇用の割合が増え、結婚・出産に踏み切れない要因になっています。地方と都市の格差が広がり、若年層の所得が伸びていない点を直視しないと、少子化問題は克服できないと考えています」
――東京電力福島第一原発でトリチウムを含んだ処理水の海洋放出が始まろうとしていますが、依然として安全性や風評被害を懸念する声が後を絶ちません。本県選出代議士として海洋放出の是非ならびに風評被害問題をどう解決すべきと考えますか。
「技術的には大丈夫なのだろうと信じたい。ただ『燃料デブリに触れた水』を海に流すのは歴史上初めてのことです。100%安心ではないという方の気持ちは分かります。
この間、私は二つのことを求めてきました。一つは、トリチウムの分離技術を最大限追求すること。もう一つは、海洋放出を福島県だけに押し付けるのではなく、県外でもタンク1杯分でいいから引き受けてもらってはどうか、と。残念ながら、それらに対する努力の形跡は全く見られていません。
科学的に大丈夫と示せても、残念ながら、近隣の韓国、中国だけではなくアメリカも含めた7割以上の人が『処理水が海に流れたら福島の農産品は買わない』というアンケート結果があります。他国から視察に来てもらい、丁寧に説明する必要があります。海外で安心して県産農産品を買ってもらうには、並大抵の努力では足りないと思います」
――最後に、有権者にメッセージをお願いします。
「区割りの変化を新しいエネルギーに変えていきます。これまでお世話になった選挙区が引き裂かれてしまったことは大きな試練ですが、いまはチャレンジの機会と捉え直しています。有権者の皆さん、特に郡山の皆さんとは新たな出会いを通じ、しっかりとした絆を築けるようにしていきたい。お世話になった方々への恩を忘れず、多くの皆さんのためにしっかり汗をかき、必ず期待に応えていきたいと思っています」