【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー(2024.12)

経歴

すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て2022年11月から現職。

 エネルギー・原材料や物流コストの高騰、人手不足、後継者問題など、近年、企業を取り巻く環境は厳しさを増している。一方で政府は「『103万円の壁』撤廃」や、「最低賃金1500円」などの政策を打ち出している。そうした課題や政府方針への対応などについて、二本松商工会議所の菅野京一会頭に話を聞いた。

観光事業をもっと盛り上げていきたい。

 ――人手不足や後継者問題が深刻化しています。

 「非常に大きな問題で、当会議所管内でもご多分に漏れず、人手不足、後継者問題は深刻です。業種によりますが、特に人手不足が深刻で、二本松市でも外国人労働者、外国人研修生が増えてきてはいるものの、例えば誘致企業でも、人材が確保できなければ、二本松工場を閉鎖してほかの工場に集約するかもしれないといった考え方を持っているところもあるようです。もともと少子化という問題があり、二本松工業高校と安達東高校が統合になるなど、高校生を含めた新規採用者が少ない状況です。対策としても、自助努力に頼る部分が大きいと言いますか、会議所としてこうすれば解決できるというものがなかなか見いだせないのが現実です。一方で、今回の総選挙後に話題になっている『103万円の壁』が取り除かれると、主婦の方とかが就労しやすい環境ができてくると思いますから、それが実現されれば状況は変わるかもしれません」

 ――政府は最低賃金1500円との方針を打ち出していますが、中小・零細企業は厳しいと思います。

 「これも同じで非常に大きな問題ですね。賃上げした分の価格転嫁ができるかというとなかなか難しいですし、特に商工会議所の会員企業は中小企業が圧倒的に多いですから。それなりの賃上げはありますが、政府では時給1500円ということを打ち出していますから、そこまでというのは中小企業にとっては非常に厳しい状況です」

 ――賃上げの問題とも関連すると思いますが、原材料費高騰などによってコスト増となっている中、なかなか製品価格に転嫁できないといった問題もあります。

 「価格転嫁の問題に関しては、ある程度の理解は出てきているとは聞いています。特に輸送代や電気代など、どうしても必要な間接経費が全体的に値上げされているので、そういったものに関する価格転嫁は、すべてとは言えないものの、『こういった時節だから仕方がない』という納品先の大手企業が増えているのは事実だと思います。国の方針としてそういった形になっていますし、国として下請けを保護するといいますか、無理を強いられないよう、結構厳しく見ていますからね。ただ、こちらが思っているような金額にまではなかなかなっていないという側面もあります」

Eコマース事業に注力

 ――商工会議所青年部主催で、7月に駅前盆踊りが開催されました。 「当商工会議所青年部が主催で、駅前を活性化させたいということで駅前盆踊りを開催しました。これまでは各商店街で夏祭りを行っており、過去には駅前で盆踊りが開催され、二本松市の風物詩になっていましたが、20年以上前に途絶えてしまいました。それを復活させたと言いますか、とはいえ、昔ながらの盆踊りというよりは現代風にアレンジした形で行い、青年部や女性会が屋台を出したりして非常に良かったと思います。今回は『第1回』と銘打っていますから、青年部では単発ではなく、第2回、第3回と続けていく意向です。

 駅前ということで、交通規制の問題とかがありますが、理解を得ることができ、市からも思った以上の協力を得られました。参加した方々にも楽しんでいただけたと思いますし、活性化のためのイベントとしても非常に良かったと思います」

 ――商工会議所ではEコマースの勉強会やマッチング事業などを実施しています。

 「参加者は、いままでと同じことをしていては活路が見いだせないという方が多いですね。『Eコマースを用いた取引をしませんか』といった提案はたくさんあるんでしょうが、会議所主催でその勉強会やマッチング事業を実施しているということで、安心感を持って参加してくれたという側面もあるようです。もちろん、若い方は独自でネット販売などをしていますが、やはり年配の方はネットを活用した売り込みなどをやりたいと思っても、なかなか自分ではできないのが現実です。ですから、ネット販売を含めて、懇切丁寧に説明すると言いますか、こういうやり方もありますよということをまずは知ってもらう。あとは希望者にマッチング事業に参加してもらうという形になります。

 先行きに不安があれば、子どもがいても後を継がないということになり、後継者問題に発展していくわけですが、ネット販売で新たな販路を拡大して、思ったよりいい売り上げになるということになれば、工夫次第でさらに拡大させることができます。そうなれば、息子さんが帰ってくるとか、そういうことも出てくるかもしれません。そういった形になっていけばいいですね」

 ――先ほど「103万円の壁」の話が出ましたが、今後、国に求めたい経済政策について。

 「1つは先ほども話した『103万円の壁』といいますか、控除対象を広げることで、主婦の方や学生さんがもっと働きやすい環境になると思いますから、労働力不足対策としてのそういった政策です。『時給1500円』については、中小・零細企業が多い会議所にとっては、いきなりはハードルが高いので、どういう段階を踏んでいくのか、中小・零細企業の現状を理解したうえで進めてほしいと思います」

 ――今後の抱負。

 「再来年に『二本松の菊人形』が70回を迎えます。民間と市の合同で委員会を立ち上げて70回に向かって盛り上げていき、記念事業を含めて、活性化させたいと思っています。また、会議所も共催していましたが、10月から11月にかけて大山忠作美術館で『大山忠作襖絵展』が開催され、非常に多くの方が訪れました。安達太良山の紅葉も素晴らしいものです。菊人形とこれらが上手く重なって、この秋は多くの方に二本松市に来ていただき、飲食店では行列ができるほどでした。特に安達太良山については、県所有のくろがね小屋がようやく予算が付き、建て替えが行われます。それと並行して登山道の整備も要望していますから、より多くの方に来てもらえるようになると思います。そのほか、毎年実施している『菓子博』や『酒まつり』、『家具まつり』は、二本松市の地場産業の大きな柱になっています。やはり、人が大勢訪れるということは、飲食店や土産物店など、多くに波及しますから、そういった観光事業をもっと盛り上げていきたいですね」

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