【白河市】鈴木和夫市長インタビュー(2024年)

【白河市】鈴木和夫市長インタビュー(2024年)

経歴

すずき・かずお 1949年生まれ。早稲田大法学部卒。県相双地方振興局長、県企業局長などを経て、2007年の白河市長選で初当選。昨年7月に5選を果たす。

 ――人口減少が進んでいます。

 「人口減少は、経済規模の縮小、労働力や地域の担い手の不足、さらには、社会保障制度の給付と負担の不均衡など、多方面に大きな影響を及ぼすことから、国の総力を挙げて取り組むべき課題です。最大の要因は『少子化』で、その大きな問題が未婚です。人の価値観は多様化しており、結婚を選択しないという意思は尊重されなければいけません。しかし、結婚を希望していてもできない場合は、積極的に支援しなければならないと考えています。

 市では、結婚を希望する人に『縁談』のお世話をするような雰囲気を社会全体で醸成していく必要があるとの考えから、サポーターが出会いから結婚までを伴走型でサポートする『顔の見える結婚支援』に昨年度から取り組んでいます。現在男女合わせて約50名の方に登録していただき、交際に発展するカップルが誕生するなど、手ごたえを感じているところです。引き続き、実態に即したより効果的な支援策を検討し実施していく考えです」

 ――子育て支援についてはいかがですか。

 「市ではこれまで、民間事業者による認定こども園建設や保育士確保、公立保育園の増改築などの待機児童対策をはじめ、延長保育の実施、更には病気回復期にある子どもを預かる病児保育施設の運営や放課後児童クラブの質の向上などに取り組んできました。また、高校生までの医療費の無償化、おむつの購入などに使える『白河っ子すくすく応援クーポン』の交付、義務教育を受けている第3子以降に対する給食費の全額助成、さらには就学援助の拡充など、子育て世帯の経済的負担の軽減にも努めてきました。

 加えて、この4月から、『こども家庭センター』を設置し、相談支援体制を強化するとともに、7月からは、親の就労状況などにかかわらず、1歳から3歳未満の子どもが、希望すれば月に一定時間通園できる『こども誰でも通園制度』をいち早く導入するなど、子育て環境の更なる充実に取り組んでいるところです」
原点は「人づくり」

 ――地域の将来を担う「人づくり」について。

 「戦後最も厳しいと言われる時代だからこそ、将来を担う人をつくる教育の充実がこれまで以上に求められています。本市では『未来を切り拓く人間力』の育成を教育大綱の目標に掲げ、『知力』、『体力』に加え、総合的な『人間力』を備えた『人づくり』に一貫して取り組んでいます。

 そのためには、学力向上はもとりより、子どもたちの豊かな情操や創造力の涵養が重要であるとの考えから、コミネスでの一流の文化芸術の鑑賞、郷土の歴史や文化について学びを深める授業、市長と中学生が白河の課題についてフラットな立場で議論する『しらかわ未来フォーラム』など、通常の学校活動では得ることのできない機会を積極的に提供しています。さらには、読書を教育の重要施策に位置づけ、市内の全小中学校に学校司書を配置するとともに蔵書数を拡充するなど、子ども達がより身近に本に親しむことができる環境を整えており、学校図書館の貸し出し冊数は伸び続けています。

 『人づくり』こそが、まちづくりの原点であり、市では、引き続き、子どもたちが安心して学び、健やかに成長できるよう、充実した教育環境の整備に努めていく考えです」

 ――小峰城跡「清水門」の復元を進めています。

 「小峰城では、その歴史的価値を更に高めるため、史跡整備に取り組んできました。現在、本丸と二の丸を結ぶ重要な門で、小峰城で最大規模の櫓門である清水門の復元を進めており、近い将来、三重櫓や前御門と合わせ、往時の威容を体感できるものと期待しているところです。

 また、今年、史跡名勝の指定から100年を迎える南湖公園は、歴史的風致維持向上地区計画を導入して以降、カフェや和菓子店がオープンするなど、従来の店舗群に新たな魅力が加わり、幅広い年齢の方々が訪れています。市では、市民とともに南湖を守り、魅力を創出しながら次世代へ継承していくため、保全及び活用に関する基本理念を定めた『南湖条例』を制定するとともに、都市計画課内に『南湖係』を新設しました。この条例に基づき、景勝地としての価値を保全するとともに、多くの人が憩い楽しむ場として、長期的視点でその魅力を高める方策を講じていく考えです。今年度は、南湖基本構想の策定に着手したほか、歩行者の安全性を高めるため、公園内の市道を一方通行化する社会実験に取り組んでいます。

 城下町エリアに関しては、町屋・古民家などの歴史的資源を分散型ホテルなどとして再生しながらまち全体の活性化を図る『NIPPONIA事業』を全国で展開する株式会社NOTEと連携協定を締結しました。同社の豊富な知見を活かし、城下町の趣を大切にしながら歴史的建造物を再生し、小峰城や旧脇本陣柳家旅館蔵座敷などとも連携を図り、面的に回遊性を高めることで賑わいを創出していきます」

 ――市民の新たな交流拠点として複合施設の整備を進めています。

 「市役所に隣接する市民会館跡地は、『りぶらん』や『コミネス』等と連携しやすく、景観の良い小峰通りに面するなど、大変恵まれた環境にあります。この場所を新たな交流拠点とすべく、これまで市民の皆様と丁寧な議論を積み重ねながら検討を進めてきた結果、『生きがいづくり』、『子育て支援』、『健康増進』の3つの機能を柱とした多機能型の複合施設を整備することとし、昨年3月に、複合施設の配置や平面計画など建物の概略を示す『基本設計』を策定いたしました。現在、令和9年4月の開館を目指し、建設工事を行うための詳細な設計図となる『実施設計』と、施設の管理運営に関する基本的な方針を示す『管理運営計画』の策定を進めております。現在整備を進めている複合施設は、これからのまちづくりの核となるものであり、施設の整備コンセプトでもある『みんなの笑顔がつながる ほっとスペース』を実現できる魅力的な環境を創っていくことは、白河の明るい未来を切り拓く大きな原動力になるものと確信しております」

 ――最後に市民にメッセージを。

 「少子高齢化・人口減少社会を迎える中、これから5~6年が白河の未来にとって大切な時期になると考えております。本市は首都圏からの近接性や交通の利便性が高く、豊かな歴史や文化、自然環境に恵まれ、バランスのとれた地域です。こうした足元にある資源をさらに磨き活かしながら、地域振興の要となる産業振興をはじめ、教育・子育て・医療の充実や文化芸術・スポーツ振興などに、より一層力を入れ、『真の豊かさ』を実感できるまちづくりを着実に進めていく考えです。一人ひとりが生き生きとし、誇りと愛着が感じられる『住みよいまち』、そして『小さくてもキラリと光るまち』の実現に向け、強い覚悟と高い意欲を持ち、ともに白河の明るい未来を切り拓いていきましょう」

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