【磐梯町】佐藤淳一町長インタビュー(2024.7月)

【磐梯町】佐藤淳一町長インタビュー(2024.7月)

経歴

さとう・じゅんいち 1961年磐梯町生まれ。日大工学部卒。磐梯リゾート開発取締役総支配人を経て、2015年の磐梯町議選で初当選。19年6月磐梯町長選に立候補し、無投票初当選。23年6月の同町長選で再選。

 ――公約の柱である行政改革の進捗状況についてうかがいます。

 「本町の行財政運営においては、ミッションとビジョンを大きな柱に位置付けています。ミッションについては『町民全員の幸せ』に向けた取り組み、ビジョンについては『自分たちの子や孫たちが暮らし続けたい魅力あるまち』を目指しています。

 これらの理念を盛り込むべく、町長に就任した2018年に従来の総合計画を見直し本町の実情を反映させた内容に改め、翌年の3月議会において、全会一致で賛成をいただきました。この間、DX(デジタル変革)の積極的な推進をはじめ、議会改革を含む行政改革、ミッションの実現に向けたさまざまな行政サービスを提供できたと考えています。

 また、町民サービスを円滑に提供できる行政組織へ改革する必要性から、本町にある25の行政区を通した町民へのヒアリングをはじめ、高校生以上全員を対象としたアンケートを実施し、多くの自由闊達なご意見を賜りました。これに基づき2022年には1年前倒しする形で後期基本計画の見直しを図り、昨年3月議会で承認をいただきました。

 一方、庁内の組織機構改革にも着手しました。〝攻守兼備〟による柔軟な行政運営を展開するため『攻めの副町長』と『守りの副町長』による副町長2人制を昨年12月議会で承認をいただき4月1日付でスタートしています。今般、『旅する』副町長として新たに任命した菅原直敏氏には町の魅力向上や活性化、総合計画の進捗の発信等の〝攻めの行政〟で大いに手腕を発揮していただくことを期待しています。同日からは組織改革に伴い、これまでの総務課財政管財係、政策課、DX室を統合し行政経営課に、商工観光課と農林課を統合して産業振興課にするなど、3つの課を整理・統合することで行政のスリム化に努めました。これにより横断的・俯瞰的な対応が実現でき、業務の質の向上が図られると考えています。

 今後は、人口を増加させることはかなり難しいです。まずはいかに減少を食い止め維持・発展させるかが重要と認識しているので、引き続き将来を見据えた行政改革に注力する考えです」

 ――1月15日に埼玉県横瀬町、島根県・隠岐の島の海士町との「三町未来共創協定」が締結されました。主な狙いについて。

 「まず横瀬町との『広域・共創ネットワーク構築に関する協定』締結が端緒となります。同町は地元企業と連携した官民連携プラットホーム『よこらぼ』を実施しながら、民間の発想を活用した新しいプロジェクトをテスト展開・実装する取り組みが注目を集めていました。富田能成・横瀬町長との交流を重ね、2022年4月には横瀬町を視察しました。そのうえで本町がこれまでDX推進で成果を上げている点を踏まえ、お互いの得意分野を共有することで行政サービス向上や課題解決に生かすべきとの考えが一致し、協定締結に至りました。この間、両町合同で地域おこし協力隊採用イベント、官民共創イベント、『旅する公務員』による職員交流事業を展開しています。

 海士町とのつながりは昨年のゴールデンウイークに富田町長から視察のお誘いを受けたのがきっかけです。海士町の大江和彦町長は『ないものはない』をキャッチコピーに、行政改革、産業振興、観光、教育、関係人口等の分野に果敢に挑戦してきました。教育魅力化プロジェクトや島まるごとブランド化構想などの数々の施策が全国自治体の参考事例となっていることは周知の通りです。

 視察の中で大江町長、富田町長、私で会談する機会があり、価値の創造や人材の獲得・育成、自治体を超えた取り組みの重要性、将来像など多くの部分で共感しました。連携強化を一層図るための協定締結に向けての意思が一致し、調整期間を経て1月15日、『三町未来共創協定』締結の運びとなりました。

 同協定により、本町の自治体DX施策、横瀬町の官民連携の枠組み、海士町の先進的な関係人口政策といった各自治体の強みを共有・活用しながら事業の広域展開や、人材交流を進め、一つの自治体だけではできなかった新たな行政運営にチャレンジしていく考えです」

インバウンド需要に期待

 ――昨年12月22日に磐梯町、北塩原村両町村にまたがるスキー場「星野リゾート・ネコママウンテン」の南エリア(旧アルツ磐梯)と北エリア(旧猫魔スキー場)を結ぶ連結リフトの運行が開始、国内最大級のスキー場として話題になりました。

 「今後、スキー場の生き残り策を考えれば日本人客の減少は避けられず、いわゆるインバウンド客の増加に向け舵を切る必要があります。インバウンド客はスキー場の魅力として規模や施設の充実を重視する傾向が強く、今回、北塩原村側も含めた『エリア化』によるスケールメリットは大きなポイントです。

 もう一つの魅力は会津若松市の存在です。宿泊施設、飲食施設、歴史・文化史跡が多くベースタウンとしてのポテンシャルは申し分ありません。この間、観光庁の『国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業』に、本町、会津若松市、北塩原村を支援対象地域とする計画が採択されるなど、国内最大級のスキー場であるネコママウンテンを核にしたインバウンド客における受け入れ体制の環境整備に大きな弾みと考えます。

 3町村の連携強化をより一層展開しながら『会津エリア』としてブランド力を高め、ニセコ、白馬に次ぐ国際競争力のある一大スノーリゾートを目指していきたいと思います。

 5月にはオーストラリアにおいて『スキーエクスポ』が開催され、『アイヅ・スキー・ジャパン』のブランドで宣伝活動をする機会がありましたが、同ブースにはたくさんの人で賑わうなど、認知度が相当高まっていると実感しています。PRに合わせ宿泊商品の販売も行われましたが、5000泊分が売れたそうですので、将来的なインバウンド誘客の手応えを感じています」

 ――今年度の重点事業について。

 「人口減少を克服するため、『磐梯町4000人計画』の策定に取り組んでいます。現在の人口は約3200人ですが、現状維持を目標にすると既存の政策の延長線でしかありません。具体的に4000人への増加を掲げることで、各課において実現可能性を模索しながら新しい発想に基づいた政策の立案に知恵を絞ると考えます。本町の維持・発展に向け人口増加を足掛かりに政策の進化が必要だと痛感しています。そのほか、教育の魅力化を実現すべく『教育再デザインセンター』を新設し、専門家を採用して教育の仕組みを再構築する考えです。幼稚園と保育園を統合した認定こども園の開設についても検討を重ねていきます」

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