たきた・やすお 1944年生まれ。郡山市出身。安積高、学習院大法学部卒。東北アルフレッサ㈱最高顧問。郡山青年会議所理事長、郡山商工会議所青年部会長などを歴任。現在、会頭3期目。
新型コロナは収束していないが、経済活動はコロナ禍前の動きに戻りつつある。一方、円安や物価高の影響は深刻で、人手不足や後継者問題も解消に向かう気配は見えない。こうした中、商都・郡山の経済は今どういう状況にあるのか。郡山商工会議所の滝田康雄会頭に、管内情勢や会員事業所の様子、将来ビジョンなどを聞いた。
――新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行され、管内でも7月にビール祭、8月にはうねめまつりが通常開催されるなどコロナ禍前の活気が戻りつつあると感じますが、滝田会頭は現状をどのように捉えていますか。
「『サマーフェスタ IN KORIYAMA・ビール祭』は7月下旬に3日間開催し、約5万9000人の人出がありました。ようやくイベントを楽しめるという雰囲気が会場にいた皆さんから感じ取ることができたと思います。出店者の方々は、地元の食材を扱う市内の飲食店でしたので、地域経済の活性化と地産地消につながりました。
また、今年のビール祭が成功した背景は、昨年に引き続いて街なかで開催したことにあると思います。昨年、コロナ拡大のリスクを理由に開催に否定的な意見もありましたが、私は感染対策をすれば問題ないと判断し、開催に踏み切りました。今思い返せば、停滞していた経済に大きな刺激になったのではないでしょうか。また、他の地域でも『郡山がやるならウチもやろう』というきっかけになったと聞いており、そういう意味でも、大きな意義があったと考えています。
翌週の8月上旬には、3日間にわたって『郡山うねめまつり』を開催し、約11万5000人の人出がありました。多くの参加団体も、それぞれが盛り上げようと意欲的に取り組んでくれました。市民の方々から、そして地域事業所などからは『開催してもらって大変良かった』と多くの声をいただき、コロナ禍前の日常を皆さんが求めているということを実感しました。
最後に、付言させていただきますが、忘れてならないのは実行委員会をはじめとする関係者の方々の頑張りです。開催準備はもちろん交通整理など、猛暑の中、それぞれの役割を果たしてくれたことが成功の一因であると言えます」
――円安と物価高が深刻な問題となっています。人手不足や後継者問題も深刻です。事業者からはどんな声が聞かれていますか。
「円安基調が続く中、資材・エネルギー価格の高騰など構造的な物価高は多くの中小企業に悪影響を及ぼしています。
人手不足については、特に建設業や製造業及びホテル、祭事といったサービス業で、コロナの影響による労働者の転職が起こりましたが、これら業種の需要が回復しても人手が戻らず困惑しているようです。他業種においても、求人に応募がほとんどないようです。一方で従業員については、賃上げでつなぎ止めている状況もあると聞いています。
また、後継者問題では、経営者の多くが高齢になる中、苦しい経営環境に置かれている中小企業では、廃業や清算を余儀なくされるケースも増えています。
これらを解決するためには、原材料の値上げや人件費の増加分を事業者間の取引等において適切に価格転嫁することが重要でありますが、交渉すること自体が難しいという事業者の声も聞かれます」
――国や県にはどのような対策を望みますか。
「円安や物価高は構造的な問題であり、多くの事業者が苦労しています。国や県には、人材不足の解消と生産性の向上、さらに適正な価格転嫁が図れるよう、現状をしっかりと検証して政策の展開を図ってほしいと思います。
特にDX化については、具体的にどこに課題があるか、といったことまで踏み込んで対応することが大切で、しっかりと事業者の意見を聞いて、IT人材の活用施策や助成金の拡充など支援体制に繋げてほしいと思います。
そして、中小企業の稼ぐ力が強化されることを望みたいです。事業者が生産性向上や価格転嫁による適正な利益が得られれば、賃上げや雇用の確保につながり、ひいては経済の好循環につながりますので」
――ゼビオが宇都宮市への本社移転を発表したり、うすいから高級ブランドが撤退したり、日和田ショッピングモールが改装による長期休業に入ったり、来年5月にはイトーヨーカドー郡山店の閉店が発表されるなど、管内は目まぐるしい情勢にあります。それら企業で働く従業員はもちろん、消費者も一定の影響を受ける状況にありますが、会議所ではどのような対応をしていきたいと考えていますか。
「近年の消費動向を見ると、Eコマース(電子商取引)などの進展により、従来の商取引の形態が大きく様変わりしています。
今回、転出した個々の企業が生き残りをかけて新しい取り組みを選択されたと思いますので、その経営判断は尊重せざるを得ませんが、地元の発展にご尽力いただいた企業が郡山を離れることは、まちづくりにおいても地域経済においても大きな痛手です。行政には新たな発展の機会となる計画づくりを進めてほしいと思います。
また、撤退や建て替えまでの期間については地元雇用が失われないよう、各社とも改善策をしっかり講じてほしいと思います。会議所としては、できる限りの協力をしていきたいと考えています」
――滝田会頭が就任以来掲げている、郡山の未来像を考える取り組み「グランドデザインプロジェクト」について、その進捗と手ごたえをお聞かせください。
「平成30年11月に開かれた常議員会で承認されたグランドデザインプロジェクト構想は、コロナ禍の影響もありましたが、令和3年には路線バス(福島交通)のバスロケーションシステムが導入され、また安積高校の併設型公立中高一貫校については、要望した後に検討する旨のお答えをいただき、令和7年開校が示されるなど、徐々に形になりつつあります。
その一助になったのは、地元で暮らす若者たちの斬新な発想にあると思っています。20年後、30年後の郡山を支えるのは今を生きる若者です。彼らが郡山の将来を考えなければ、住みよいまちは実現しません。若者が考えや意見を出し合い、私たちベテランはそれをサポートする。そういう姿が未来の郡山を形づくっていくのだと思います。
グランドデザインプロジェクトを通じて、提案だけにとどまるのではなく、一つでも具現化していくことを目指していきたいです」