【喜多方市】遠藤忠一市長インタビュー(2024年)

【喜多方市】遠藤忠一市長インタビュー(2024年)

えんどう・ちゅういち 1948年1月生まれ。喜多方高校卒、日本酪農講習所終了。喜多方市議、県議を経て、2018年の喜多方市長選で初当選。現在2期目。

 ――観光交流課内に「喜多方ラーメン課」と「そば課」を新設しました。狙いと展望を教えてください。

 「地域の特性を生かして観光の魅力を高めるため、文化庁の100年フードに共に登録された喜多方ラーメンと山都そばを観光誘客に活用します。喜多方の食文化を支えてきたラーメン店やそば店は新型コロナ禍や店主の高齢化で担い手が減少しています。ブランド力の低下が懸念される中、今まで以上に価値を高めようと取り組みが始まりました。

 ブランド力向上は会津喜多方商工会議所などの商工関係者らと協力し、官民一体で展開しています。特に喜多方ラーメンは観光庁の補助を受け、『極上の喜多方ラーメン』の開発にこぎつけました。そばについては、『山都三大そばまつり』や、市内各地区で開かれる従来のそばまつりに加え、『山都そば&観光物産まつり』を開催し、さらなる誘客に努めています」

 ――昨年10月に電機メーカーのセイコーエプソンと包括連携協定を締結しました。どのような取り組みを進めますか。

 「市民サービスの向上と地域社会の活性化を同社と協力しながら目指します。文化芸術、教育、観光に関する分野が連携対象です。

 特に文化芸術分野は、本市ならではの連携ができました。喜多方で染物に長年使われてきた伝統的な染型紙『会津型』の普及拡大を支援していただきました。会津型を基にストラップを作ったり、展覧会やワークショップを盛り込んだイベント『きたかた会津型ウィーク』の企画運営をサポートしてくださいました。今年度は、セイコーエプソン社の社員食堂で地元食材を使ったメニューを提供したり、喜多方ラーメンなどの名物を販売する喜多方マルシェを開催しようと計画しています」

 ――市長2期目の任期は折り返し点に達しました。選挙公約の達成はいかがですか。

 「2022年1月の市長選挙では、少子高齢化による人口減少対策、充実した福祉と教育環境、災害への備え、再生可能エネルギー先駆けの地を目指す、活力のある市役所と女性の積極登用など全部で11の公約を掲げました。この間、新型コロナ拡大による人々の生活スタイルの変化、急速なデジタル化、円安を背景とした原油・物価高などで社会は目まぐるしく変わり、少子高齢社会に直面した日本の問題はより深刻になっています。

 本市では子育て世帯の経済的負担軽減や生活を支援するネットワークの構築を図ってきました。公共交通の維持のためにAIを活用したオンデマンド交通の導入など多くの分野で着実に課題解決に励んでおり、手応えを感じています。引き続き、本市が目指す『力強い産業 人が輝く 活力満ちる安心・快適なまち』の実現に向けて、公約の実行と市政運営に努めていきます」

 ――今年度は第2期喜多方市総合戦略の最終年度です。今までの取り組みを振り返ってください。

 「若い世代が働く場所を確保したり、結婚、出産、子育ての希望を実現することで、人口減少問題の克服を目指して、雇用、生活や教育への支援、まちの活性化を念頭に六つの基本目標を掲げました。①安定した雇用の創出、②新しいひと・資金の流れをつくる、③若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる、④安心なくらしを守るとともに、周辺地域や民間との連携を図る、⑤将来を担う多様な人材を育成・確保する、⑥将来を見据えた魅力的なまちをつくるです。

 2022年に61の指標に照らして具体的施策を検証した結果、『順調に推移』(進捗率60%以上)は約28%、『努力が必要』(同60%未満)は約59%でした。

 移住・定住に関するKPI(重要業績評価指標)に大きな進歩が見られているので、このまま着実に続けていくべきと捉えています。ただし、転入者と転出者を見ると、大きく転出超過となりました。市内の観光客入込数など観光分野の指標は増加傾向ですが、農業や商業、保健分野を評価する指標は横ばいで一層注力していく必要があると感じています。

 昨年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが引き下げられて1年が経ち、人の行き来が盛んになってきました。社会情勢を把握しながら、市の事業をより活発に進めていきます」

 ――その他の重点事業について。

 「子育て支援の分野では、小学校入学時に祝い金の支給や、小中学校では給食費を補助し、保護者の経済的負担を軽減しています。新たに新婚者を経済的に助ける『結婚新生活支援事業』を始めました。今年度は、老朽化が進む小中学校の校舎を長寿命化する事業、学校プールを共同利用する試行事業を始めます。喜多方市学校給食基本方針に基づき、地産地消と無添加にこだわった給食の全市展開を図るため、『からだが喜ぶ健康給食推進事業』を進めます。

 医療体制の充実については、医師不足を解消し、地域医療体制の維持を図るため、『常勤医師応援事業補助金』を創設し、オンラインでの診療を支援していきます。新型コロナウイルスワクチン接種については、今年4月から接種を希望する高齢者の経済的負担を軽減する事業を始めました。

 他に国登録有形文化財の旧甲斐家倉住宅整備事業、豊川・慶徳線道路整備事業、JR塩川駅周辺地区の都市再生整備計画事業、高郷総合支所庁舎改修事業があります。文化財やインフラの整備を通して、地域住民の利便性向上やコミュニティー活性化に寄与していきます」

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