【下郷町】星學町長インタビュー【2024.3】

【下郷町】星學町長インタビュー【2024.3】
経歴

 ほし・まなぶ 1947年生まれ。日本大学東北工業高卒。下郷町建設課長、助役、副町長などを経て、2013年9月の町長選で初当選。2017年、2021年の町長選で再選を果たし、現在3期目。

 ――昨年5月から新型コロナウイルスの感染法上の位置付けが「5類」になりました。

 「町民の生活面については、新型コロナウイルスの感染拡大により、冠婚葬祭の規模縮小や近所間での往来を遠慮するなど、日常生活の変化がうかがえました。昨年5月から5類へ移行したことで、この間、変化した地域生活も回復してきたと感じています。感染症対策も緩和される中、これまで中止となっていた町内の各種行事や会議、県や国への要望活動など4年ぶりに再開されるものが多くあり、少しずつ以前の生活が戻ってきた感覚です。一方で、イベント等が開催される中でも、以前より規模を縮小しての開催だったり、久しぶりの開催により勝手が分からなくなるなど、従来通りにはいかない部分も少なからずあります。

 観光面では、観光客の入り込みはほぼコロナ前に戻りつつあり、活気が戻っているのを実感しています。急激な観光客回復に合わせて、外国人観光客の増加も顕著で、昨年はピーク時の約1・5倍に当たるおよそ9万人の外国人が来訪され、過去最高の数字を記録しました。こうした現状もあって、インバウンド対策の重要性を痛感しているところです。

 2024年度の事業については、これまで国の臨時交付金を活用していたものが、新年度以降は不透明であるため、観光振興策をはじめ多くの事業において勝負の一年になると考えています。

 また、この4年間は商工業の後押しに注力してきましたし、物価高騰策による町民への支援やプレミアム商品券の発行などによって消費拡大に努めてきたので、今年も様々な取り組みを通して地域活性化につなげていきたいと考えています」

会津縦貫南道路に期待

 ――第6次下郷町総合計画は4年が経過しました。

 「今年は第6次総合計画の最終年度ですが、『豊かな心を育む』、『にぎわいと産業の創出』、『健やかな暮らし』、『住みよいまち』、『まちづくり人づくり』の基本目標を掲げ、多角的な事業を展開してきました。なかでも、『住みよいまち』の実現に向けた取り組みとして会津縦貫南道路の小沼崎バイパスの開通があり、事業の詳細は後述しますが、これにより交流人口の増加が期待でき、まちづくりの面でも大きく寄与するものと考えています。今後、会津縦貫南道路をはじめとした道路交通網が整備される中、町民の多様化するニーズに応えるべく、第6次総合計画の検証をしながら、第7次総合計画に盛り込んでいく考えです。また、町営住宅の改築事業も進めており、新規移住者の受け皿の確保に努めています。

 『豊かな心を育む』取り組みとしては、子どもへの教育に注力しており、町の将来を担う人材の育成という意味でも大きな意義があります。教育の充実によって子育て世代の移住・定住を促進し、少子化対策の方策にもなると考えています。具体的には国の制度に上乗せした保育所の一部無償化や学校給食の無料化を実施しており、今後もより良い教育環境の整備に向けて取り組んでいきます。

 『にぎわいと産業の創出』では、商工業の活性化や観光交流事業の推進という形で交流人口の拡大を目指しており、先述した小沼崎バイパスの開通というハード面だけでなく、ソフト面も併せることで相乗効果を狙っていく考えです」

 ――先ほどお話のあった会津縦貫南道路の国道118号線小沼崎バイパスが3月3日に開通となります。

 「主な効果としては、小沼崎バイパスを利用して鳳坂トンネルを通過することで、須賀川方面へ抜ける時間が以前より短縮できます。冬期間や大雨による通行止め等の心配もないので、通年で安心・安全に走行できる利点もありますし、医療機関への安全な搬送ルートの確保という点でも大きな効果が見込まれます。会津縦貫南道路では最初に開通する区間だけあって注目度も高く、地域住民の皆さまにとっても喜ばしいニュースではないかと見ています。利便性が向上することで観光誘客につながり、交流人口の増加はもちろん、雇用が生まれ、定住人口増加に結び付く可能性もあるので、私個人としても開通は非常に喜ばしい限りです。

 会津縦貫南道路は、同じ地域高規格道路の会津縦貫北道路とともに、栃木西部・会津路を結ぶ交通の要です。この会津縦貫道路を縦軸とし、新潟県からいわき市へ延びる国道289号、また、先に開通した鳳坂トンネルを含む国道118号の整備が進めば、この2つの道路が横軸となり、本町は縦軸と横軸が交わる交通の要となり得るので、今後の本町にとって大きな可能性をもたらすという点でも、これを意識した施策が必要になると考えています。

 現在は5工区となる下郷田島バイパスの整備に向けて準備しており、田島から栃木西部につながる道路として何らかの方向性を定めてほしいと県に要望しています。将来的に本町を含めた南会津管内に交流人口の増加や、救急医療体制においても大きな効果をもたらすと考えられるので、一日も早い開通を目指して取り組んでいきます」

 ――今後の重点事業について。

 「まずは第7次総合計画に向けて、第6次総合計画を具現化して進めることが何より重要であると考えています。先ほども述べた会津縦貫南道路が全線開通すると町内に3つのICが設置され、それに伴って観光地に入る道路、主に国道289号や町道・県道の整備も併せて実施する必要があり、バイパス整備だけでなく周辺道路を含めた道路網の整備は今後も注力していく考えです。

 ほかにも、町営住宅の改修事業や教育振興など、町民の住みよさという点において様々な課題があるほか、本町の特色である観光業においても、観光資源の磨き上げが重要な課題であると考えています。それぞれが相互に作用し得るので、住環境整備と教育振興、観光振興を3つの柱に据えて取り組んでいく考えです。

 また、町内男女ともに未婚の方の割合が増えており、婚活事業への取り組みが求められています。町内の人口減少にも大きく関わる問題であり対策は必須です。とはいえ、ただ婚活イベント等を実施するのではなく、まずは世話焼き人の方を通して町内の成婚率を上げていきたいと考えています。

 今年3月で震災から丸13年を迎えますが、海外から見れば未だ福島県に対して原発事故のイメージが残っている一方で、風化してしまっている部分もあります。本町としてもインバウンド対策が必須になってきた中、あらためて風評被害払拭に向けた取り組みを推し進め、さらなるインバウンドの獲得につなげていきたいと考えています」 
 

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