【矢吹町】蛭田泰昭町長インタビュー

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【矢吹町】蛭田泰昭町長インタビュー
経歴

ひるた・やすあき 1958年生まれ。早稲田大政経学部卒。農林中央金庫本店審査部主任考査役(部長)、高松支店長(四国地区総括)、全国酪農業協同組合連合会常務理事、共栄火災海上保険常勤監査役などを歴任。昨年12月の町長選で再選を果たす。

 ――昨年12月の町長選で再選を果たしました。

 「前回の選挙戦の際には『現場主義』を基本に、町民の皆さんの日々の中に足を運んで、声をきちんと聞いていくことを訴えました。車座になっていろいろと話をしたことが非常に良かったのですが、2020年1月に初登庁したあと、4月に矢吹町で初めて新型コロナの感染者が出まして、そこから本当に新型コロナとの戦いが始まりました。毎日のように防災無線で注意点を呼び掛けることをはじめ、対策に取り組む中で、皆さんと車座になって話を聞くこともできませんでした。私にとってそれは残念であり、ストレスでもありました。

 新型コロナや二度の福島県沖地震、台風19号など対応に追われた1期4年でしたが、今回、あらためて、町内を回って、夕暮れ時の明かりのついた家の前から手を振ってくれる町民の姿を見て、胸が熱くなりました。住宅団地の前を通りました時には、わざわざ降りてきていただいて『町長さん、よくやってくれたね。また頑張ってください』と言っていただきました。こんなに嬉しいことはないですね。選挙戦を通して、一定の信任を得ることができましたことと、新型コロナでなかなか接触できなかった方々と様々な接点を持つことができて、私としてはやはり『これがエネルギーになるな』と。いい経験ができたと思います」

 ――デジタル技術を活用したまちづくりを進めています。

 「以前から国の『デジタル田園都市国家構想』に基づき、『デジタル田園タウン』の推進を図ってきました。東京都狛江市や三菱商事、成城大学などと連携し、データ連携と蓄積、サービスの共有を図ることで導入・運営コストの削減とパフォーマンスの大幅アップを目指しています。

 また、町では子どもたちの運動能力向上や高齢者の健康づくりを目的として国の『デジタル田園都市国家構想交付金』の採択を受け、スポーツを軸にした地域課題の解決に向けた『スポーツ×デジタル振興プロジェクト』に取り組んでいます。新型コロナの影響もあり、町民の全世代で、スポーツや健康づくりへの参加機会を増やしていくことが重要です。そのため、2026年度の本格始動を目指し、町民がそれぞれの形でスポーツや運動を楽しめる町になるよう、体の組成や体力測定・健康診断などの数値を分かりやすく示し、全町民を対象にスポーツ科学に基づく健康長寿と体力・運動能力向上に役立つプログラムを提供していきます。同時に、ジュニアアスリート支援活動を行い、将来のアスリート発掘にもつなげていきたいと思っています。 まずは自身の健康状態や体組成を把握します。測定データは、今後開設予定の住民向けサイトなどから確認できるようにします。個々の課題に応じて、トップアスリートを指導するトレーナーが考案した運動メニューが提供される仕組みにします。

 一方で、子どもたちだけでなく、健康長寿・予防医療・生活習慣病予防などに向けたヘルスケアも行っていきたいと思っています。今後はジム機能を備えたクラブハウスや町民が気軽に運動できる『マルチフィールド』を新設したいと思っています。

 このプロジェクトはスポーツ庁の『スポーツ・健康まちづくり優良自治体表彰2023』にも福島県で初めて選ばれました。町民ばかりではなく、周辺地域との関係人口や交流・流入人口が増えるよう取り組んでいきたいと思っています。

 また、公共交通にもデジタル技術を活用していきたいと考えています。以前から高齢者福祉向上のために、70歳以上の町民を対象にした『行き活きタクシー』というタクシー事業を改善を重ねながら行ってきました。ただ、2024年問題などタクシー運転手不足が叫ばれる中で、希望する方に『いつでも、どこでも』というサービス提供が難しくなってきました。そこで、代替策としてコミュニティーバスの実証実験を行っており、今後はオンデマンドバス、自動運転バスに移行したいと思っています。今後はAIを活用して、町民ニーズに合わせた運行内容の見直しなど、中心市街地における新たな運行システムの構築を図っていきたいと考えています。地域公共交通の充実は高齢者だけでなく、子どもたちの安全な登下校や部活動での移動手段の確保などへの発展性も見据えていきたいと思います。

 よく『誰1人取り残さない』社会を目指すと言われます。特に高齢化の一人暮らしが増える中にあって『誰1人取り残さない』ためにデジタルの力を借りることは新しい社会を目指す上で大変重要です。福島県沖地震が発生した際、民生委員や行政区長など地域を見守っていただいている方には、地震発生直後の深夜から訪問活動を行っていただき、非常にありがたかった半面、そういった方々に過重な負担を欠けてはいけないと思いました。スマホやタブレットを各住宅に配布するなど、デジタルの力を道具として、民生委員などの負担を大幅に軽減できるのではと考えています。当然、個別ケースで従来の対面は重要ですが。特に5G時代になった今は、より鮮明な画像で確認できます。プライバシーの問題もありますが、平時はスイッチオフ、緊急時に使用する等、解消策は用意できると思います。

 学校教育にもデジタル化は重要です。町内の進出企業に、小学校4校・中学校1校の全クラスに電子黒板を寄付していただきました。最大限活用し、今後は先生方の負担軽減や新たな教育に大いに活用していきたいと思います」

 ――いい部屋ネットの自治体ランキングで、県内1位になりました。

 「私は1期目、雑誌等インタビューで『矢吹町を魅力ある町にして選んでいただけるようにしたいと思います。そのためには、就業できる企業や農業法人等が必要ですし、生活に必要な物が豊かに手に入る環境整備も求められます。加えて福祉関係が充実して暮らし易い環境を順次整備していけば、交通の要衝であり、自然環境でも恵まれている矢吹町を選択してもらえると思います』と話しました。そんな中、『いい部屋ネットランキング』の『住み心地ランキング2023年(福島県版)』では、県内59市町村中第1位にランクされています。これまでの取り組みが少しでも功を奏して、矢吹町の評価アップに貢献できたのではと感慨深いものがあり、移住を希望される方にとっても参考にしていただけるものと思っています。また、矢吹町の子どもたちに、誇りと自信、郷土愛をもたらしてくれるものだと期待しながら、矢吹中学校等で矢吹町についてお話を続けています」

 ――今後の抱負。

 「長きにわたったコロナ禍は生活様式の見直しばかりではなく、働き方の変化をもたらしました。自宅や移住先におけるテレワークが多くの企業で行われることで、経費が安い土地へのオフィス移転なども行われています。今だからこそ、地方が本当に輝き、存在感を発揮できる条件が揃い始めたと私は思います。

 矢吹町の交通面では、高速道路、新幹線、空港へのアクセスを考えれば素晴らしい立地条件であると言えます。都市部に負けない利便性と情報、仕事等を自然豊かな地方に住みながら、デジタルを大いに生かすことができます。2期目の抱負として、デジタル技術を活用したまちづくりを目指していきたいと思っています。現在は、町民の活動を記録し、住民サービスに生かす『ライフログモデル』の実用化に取り組んでいます。『誰1人取り残さない』町づくりにはツールとしてのデジタル活用が必要です。肝心なところは人間対人間のフェースtoフェースが大切ですが。町スポーツ×デジタル振興プロジェクトも推進し、活性化に努めていきます。

 今年は、遊水地整備事業、国道4号の4車線化など矢吹町の将来の姿に大きな影響を与える事業が本格的に動き出します。2期目においても粉骨砕身、矢吹町を前に進めるために一層の努力を続けてまいります。町民の皆様のご理解、ご協力よろしくお願い申し上げます」

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