【本宮市】高松義行市長インタビュー【2024.3】

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【本宮市】高松義行市長インタビュー【2024.3】
経歴

 たかまつ・ぎぎょう 1954年生まれ。大正大仏教学部卒。1995年から旧本宮町議。2007年から本宮市議、2011年1月の市長選で初当選。現在4期目。

 ――昨年10月に「定額タクシー・まちタク」を本格運行し、乗合タクシーが「チョイソコもとみや」としてリニューアルしました。

 「デマンド型乗合タクシー、定額タクシー、コミュニティバス、路線バス、鉄道の五つを組み合わせることで、公共交通をより利用しやすくする狙いです。以前の公共交通システムと比べ、利用者が10%増えました。システム改修後に利用が増えているということは、全体として利便性が高まったと捉えます。専門家によると、公共交通システムを改修して2、3カ月間は変化に戸惑い一般的には利用率が下がるそうですが、本宮市の場合は前例を覆しています。

 ただ、一部地域では以前のデマンド型乗合タクシーと比べて使い勝手が異なり利便性が下がったとの声が出ました。誰もが納得できる形を目指して改善を重ねていきたいです。

 公共交通の在り方をご理解いただくために市の丁寧な説明が必要だと感じています。以前の公共交通システムの利用状況と、今回の利用状況を比べてどのような差が出たのか検証していかなければなりません。  公共交通の利用は、温室効果ガス排出を抑制する『ゼロカーボン』につながるので、多くの方に積極的に活用してほしいです」

 ――市では「ゼロカーボンシティ」の実現に向けた取り組みを行っています。5月には水素ステーションがオープン予定で、市でも水素自動車を導入予定です。

 「365日24時間営業の水素ステーションが日本で初めて稼働します。なぜ本宮市に設置されるのか。これはあくまでも推測ですが、内陸型の都市工業用物流都市でモデルに適している、さらにゼロカーボンに前向きな企業が多いからではないでしょうか。

 水素自動車(FCV)の普及率は電気自動車(EV)に及びません。本宮市では今後、ガソリン車とEV、FCVを組み合わせ、一番効率的なベストミックスを探りたいと思います。水素ステーション利用を普及させるために、まず市長車、副市長車、議長車をFCVにします。幸い、市内の企業が後に続き、数社がFCVを導入しています。

 FCVはゼロカーボンシティを目指す一つの手段です。市はこれまでにペーパーレス化に取り組んだり、書類を綴じるファイルを石油由来の物から紙製に変えたりしています。各家庭には太陽光や蓄電池の設置や生ゴミ処理機購入を補助しています。誰もが手軽に貢献できるのは、先ほど申し上げたように公共交通利用です。

 4月からはゼロカーボンの達成度を可視化しようと考えています。二酸化炭素排出をどれだけ抑えられたかを市が計測し公表します。市民と企業の方々と達成度を共有して次の目標を目指すということを繰り返していけば自ずと成果が出るのではないでしょうか。2050年までにゼロカーボンシティを目指す本市の目標が夢物語ではなく現実に近づいていると実感してほしいです」

 ――1月に能登半島地震が発生しました。震災や台風の被害を乗り越えてきた本宮市として、大地震をどのように受け止めましたか。またどのように対策をしていますか。

 「多くの方が亡くなり、今も厳しい避難生活を送っている被災者の方にお悔みとお見舞いを心から申し上げます。

 安全安心の確立があって初めて行政は自治体の発展や住民の幸せ実現を掲げられると改めて感じました。防災対策はまずは耐震化や堤防の補強などハード対策です。本市は東日本大震災、令和元年東日本台風で大きな被害を受けましたが県や国、周辺自治体の助力を得てハード面の復旧は進んでいます。

 ソフト面は人々の避難行動への働きかけです。本宮市は逃げ遅れゼロを目指し、個人に緊急時の対応をあらかじめ記したマイ避難カード作成を呼び掛けています。年に1度は地域や職場で避難訓練し、いざと言う時に対応できるようにしてほしいです。地震、水害、火山災害など災害の種類によって対応は違ってきます。全ての方が緊急時に命を守る行動がすぐ取れるように、行政は準備を進め、地域社会と連携して備えていきたいです」

 ――アサヒビール園福島本宮店は前事業者が撤退の意思を示しましたが郡山市の企業が事業を引き継ぎました。同施設に何を期待しますか。併せて、東北道本宮インターチェンジ周辺の開発の見通しを教えてください。

 「ビール園は存続して本当に良かった。本宮市のランドマークと言ってもよく、ビールを愛する人たちが集う交流の場です。市は水面下で存続へと働きかけをしていました。市民の思いを汲み取って引き継いでいただいた会社にはお礼を申し上げます。

 コロナ禍で縮小した外食需要が戻ってきており絶好の機会です。市も側面支援していきたいです。大人数が収容できるので、これまでは市役所の納涼会に使ったり、来賓が大勢いる時に利用していました。ビール園は工場が多く物流都市である本宮らしい場所でもあり、今後も賑わいの一角であってほしいです。

 本宮インター周辺の開発に関する費用を来年度予算案に組み込んでいます。周辺にはビジネスホテルが進出します。さらに大型のショッピングセンターを呼び込むのが目標です。JRの駅と本宮インターは本市の玄関口です。地権者の理解をいただきながら周辺の開発を進め、内陸型物流工業都市としてさらなる発展につなげます。本宮はかつては多くの人が行き交う宿場町でした。人が集う場所として、現代に新しい形で宿場の機能を復活させたいです。誘致については交渉事ですから、焦らず地に足を付けて臨みます」

 ――重点施策についてお聞かせください。

 「『人口の減らない市』を掲げています。日本全体で人口が減るという厳しい現実を直視し、右肩下がりを少しでも緩和するためにあらゆる努力をします。本市の人口動態は過去3年間は社会増ですが、自然減を合わせると全体では減っており楽観できません。自然減、すなわち生まれるお子さんが減っているのは日本全体を取り巻く問題であり、政府に方針を示していただいたうえで、自治体としてできることに尽力します。

 移住に対する補助金を手厚くすれば住んでくれるかと言うと、決め手にはつながらないのではないでしょうか。やればやるだけ自治体間の競争に陥る恐れがあります。本市はポテンシャルを生かし、バランスの取れた地域づくりに重きを置いていきます。公共交通の大幅な改良も少子高齢化対策の一つです。2024年度を一つの区切りとして、これまでの取り組みの結果を冷静に分析して次なるステップに進みたいです」

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