派閥の政治資金パーティーの売上金の政治資金収支報告書への未記載問題を巡り、自民党が揺れている。多くの派閥が解消し、再出発を図る。県南を地盤とする上杉謙太郎衆院議員(49)は自身の心構えと党の慣習を猛省し、「政治家が生まれ変わらなければならない」と宣言。有権者、そして地元の支援者への思いを語った。
――自民党派閥の政治資金パーティー問題が世間を賑わせました。上杉衆院議員も2020、22年の政治資金収支報告書に未記載となっていた286万円について訂正しました。問題について、総括をお願いします。
「自民党や派閥で長年続いてきたいわば慣習のようなものをある意味そういうものなのかと当たり前に思っていましたが、これは世間の感覚、常識とかけ離れたものです。政治資金パーティーをはじめとした政治資金関係だけでなく、政治活動、選挙活動も含めて、いわば政治家、政治に関わる者が今まで常識のように思っていたものを総点検し、変えるべきものを変えていかなければならないと思います」
――自民党は国民の信頼回復に努める必要に迫られています。党は何をすべきとお考えですか。また、政治資金収支報告書に未記載額があった経緯についても説明をお願いします。
「国民に謝罪し納得のいく説明はもちろんのこと、制度改正と同時に政治家、政治に関わる者が意識改革、心変わりをしていかなければなりません。また、自民党所属や支持をいただいている首長、県議、市町村議をはじめとした地元の政治家の皆さん、そして各市町村の党支部、支援者の方々に対して、党本部として何かしらの対応をすべきと考えています。
こういった地元の皆さんは、今回一連の不祥事によって、党や私含めて国会議員に対して不信や怒り、落胆を覚え、しかしそれにも関わらず、自民党員だから、自民党支持者だからと地元で矢面に立って批判を浴びることとなり、周囲の方々のご批判を受け入れてこられました。そういった地元の皆さんの状況を考えると大変心苦しく申し訳なく思います。そういった地元の方々のために、もう一度自民党に誇りを持っていただけるように、再びご支援いただけるように自民党を変えていかなければならないと考えています
たくさん議論が進んでいますが、党本部は特に我々若手の意見を取り入れていただきたいと思っています。長年続いてきたやり方をがらっと変えていかなければなりません。例えば我々は東日本大震災という危機をきっかけに県内、東北は大きく変わり、新たな考えのもとで復興を進めてきました。コロナも然りです。この政治の問題を自民党、政界の最大の危機と捉え、新しい形に変革する契機にしなければなりません。
そして、パーティー券の売上のいわゆる『キックバック』ですが、パーティー券の販売枚数についてノルマが決められていました。ノルマに到達しないと、自分の持ち出しで買い取らねばなりませんでした。ですので、何枚売れるか分からないので、ノルマ分以上のパーティー券を用意し協力の依頼をします。結果、ノルマを超えた分は還付を受け、ノルマに満たない分は自腹をきるという形でした。
『裏金』と言われていますが、使い道についても、そもそも事務所の台所事情はいつも厳しいため、事務所の政治活動に使っていました。全てご説明できる使途です。議員はノルマを満たし派閥内での実績を上げるために売り、議員ごとその額に大小があったというのが実態です。ただ、その資金を収支報告書に記載しなかったわけであるので、たとえ派閥の指示だったとしても、政治家としてその運用を反省し、有権者に明確に説明できるよう、法改正、党規約をはじめ、仕組みを変えなければならないと思っています」
――政治資金パーティー問題を受け、清和政策研究会(安倍派)をはじめいくつかの派閥は解散しました。一方、存続を決めた派閥からは退会する議員も増えています。自民党議員の今後の政治活動はどうなっていくと考えますか。
「どのようになっていくかはまだ議員皆手探りの状態です。しかし、かつてのしがらみはなくなっています。学校で例えると、入学式直後のように全員がニュートラルな状況です。私は派閥は必要だと思いますが、1つ派閥を解消したメリットを挙げるとすれば、勉強会をはじめとして派閥の垣根を越えて自由に活動できるようになったことです。取り組みたい政策課題や同じような問題意識を持つ議員同士が集まり協力していく流れが増えてきました」
――衆院小選挙区の区割り改定で福島県の選挙区は5から4に減り、上杉衆院議員は次期衆院選で比例東北に回ります。地盤としていた3区が新2区と新3区に分断され、支持者との距離感も微妙に変わっていると思いますが、現在どのような活動をしているのでしょうか。
「小選挙区の支部長だった時は、選挙活動も地域の要望を聞くことも、有権者に会いに行くことも、当然ですが堂々とできました。今は小選挙区支部長ではないため、同じようにはできません。正直なところ心苦しいです。しかし、支部長になった新3区の菅家一郎衆院議員、新2区の根本匠衆院議員のお二人が来たるべき衆院選で当選できるよう、お二人の意向も尊重しながら、私は一歩下がって控えつつも引き回しや後援会の結成など、少し積極的な支援活動をしていこうと思っています」
――5月26日に憲法改正と日本の領土について考える「自民党本部&領土・主権展示会見学ツアー」が開催され、上杉衆院議員も遊説局長代理として参加します。どのような成果を期待しますか(インタビューは5月13日に行った)。
「全国から10~30代の若手を中心に約30人が参加します。一番若い方は高校生と聞きました。私は講師の選定をはじめ会全体の段取りと当日は全体の進行責任者を務めます。党本部講演ののち、霞が関にある『領土・主権展示館』を案内します。北方領土、尖閣諸島、竹島をはじめ日本の領土・主権について、歴史と現在の状況を正しく理解してもらうことを目的としています」
――有権者に向けてメッセージを。
「区割り変更に伴い、皆さまにご心配をおかけして参りましたが、昨年末より今度は派閥、党の政治資金問題が重なり、さらにご心配、ご苦労をおかけし、大変心苦しく思っております。そういった中だからこそ今後は、地元においては、政治家として初心にかえり、比例転出といえども昔と同様の形で地元のみなさまのもとに顔を出し、自分の選挙ではなく根本先生、菅家先生の支持をお願いする活動に専念していきたいと考えております。
また永田町においては、地元のみなさまの要望を叶える政策活動を変わらず続けることに加え、自民党が生まれ変わるべく若手の同志と共に改革に貢献して参りますので、今後とも厳しくご指導いただき、できれば温かいご支援を賜われたらありがたく存じます」