さの・せいし 1957年生まれ。東京農業大短大農業科卒。湯川村総務課長、産業建設課長などを歴任。村議1期を経て、2023年10月の村長選で初当選。
――力を入れている「スマート農業」推進の進捗について伺います。
「村では稲作の効率化のため、水田の代掻きと直播(水田に直接種もみをまく)を同時に行う実証実験をしてきましたが、成功と言えるものでした。従来のやり方では、春先に苗をビニールハウスで育て、5月ごろに代掻きをして田植えをします。育苗作業は、種もみを育苗箱にまき、ビニールハウスで約30日間、毎日の水やりに加え、温度管理を行うなど手間も時間もかかり、とても大変です。そのため、担い手が減る中、最新機器やIT技術を利用して効率化するスマート農業が注目されてきています。
実証実験では、代掻きと直播を同時に行う機械を導入し、収穫量が従来の栽培方法と比較してどの程度差があるかを調べました。苗を箱で育てて田植えをする従来の方法の収穫量を9俵半とすると、直播する方法では8俵でした。収穫は1割強減っていますが、育苗と田植えの作業がなくなったことによるコスト減や省力化を考えれば、費用対効果は大きいです。しかも、これは実証実験を行った初年度の数値です。改善の余地はまだあるので、収穫量は限りなく従来の数量に近づけられると考えています。
県の農業普及所や農協の指導を受けながら土地にあったやり方をマニュアル化して共有していきたいです。他にも村では水位と水温を計測し、スマートフォンで家にいながら把握できる水位計を420台購入し、農家に貸し出しています。こうしたスマート農業による経営の見通しがたったことで、今年は大規模農家の方が本格的に取り組みます」
――選挙公約では学校給食費の無償化や小学校統合の検討の必要性を訴えました。
「給食費と保育料の無償化は予算化して実現できました。小学校統合については、小学校のあるべき姿検討委員会を設置してこれまで4回会議を開いてきました。小学校統合には、子どもたちの教育環境を第一に考え、最新の設備と十分な教員配置のもとで、子どもたちに学んでもらう狙いがあります」
――その他の重点事業について。
「移住・定住者が着実に増えています。今年度は、自宅を新築または空き家を改修して村外から移住した件数が9件、村民が自宅を新築して定住した件数が4件となります。会津若松市に隣接し地の利がいい本村は、教育環境を整えて子育て支援を手厚くすれば、移住者や定住者に選ばれる住みよい村になります。2025年度は母子保健と児童福祉の窓口を一元化したこども家庭センターを設置し、切れ目のない支援体制を整備します」