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白河商工会議所

  • 【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー(2024.2)

    【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー(2024.2)

    すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、22年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大はひと段落したものの、円安や原油価格・物価高騰、人手不足により、中小・小規模事業所は厳しい状況に置かれている。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応にも追われている。白河商工会議所の鈴木俊雄会頭(アクティブワン代表取締役)に管内の現状と今後の展望について語ってもらった。 課題に直面する会員事業所の自己変革・生産性向上を支援。  ――新型コロナウイルスが5類に移行しましたが、管内の現状は。  「特に影響が大きかったのは飲食業ですが、コロナ前の水準に戻りつつあります。イベントに関しては、昨年から白河だるま市が通常開催となりましたが、大勢の人出でにぎわい、今年は昨年を上回る見込みです。  一方で、各事業所が営業時間やスタッフ配置を見直して生き残りを図っていたところに急激に客足が戻ってきたので、飲食店は人手不足となり、大人数での宴会を断っている店もあります。運転手不足で帰りのタクシーや代行業者を探すのも一苦労の状況で、飲酒運転増加につながることが懸念されています」  ――円安や燃料高・物価高も企業経営に大きな影響を与えています。  「ロシアのウクライナ侵攻など外的要因もあるので、ある程度やむを得ない面があります。政府では原油・物価高騰に対応した補助金を設けたほか、取引先との取引適正化を図る『パートナーシップ構築宣言』を推進しています。会員事業所の中にも大手企業とのパートナーシップ宣言に着手したところがありますが、経費増分をすべて吸収する取引金額に設定するのはなかなか難しいと思います。  1月1日からは電子帳簿保存法の猶予期間が終了し、電子データは保存要件に従った形で保存することが求められるようになりました。インボイス制度すら対応できていない会員事業所も多い中、本業以外に対応しなければならないことがありすぎて付いていくのは容易でありません。当会議所としても会員事業所に寄り添いながらサポートしています」  ――中小・小規模事業所にとっては人手不足も大きな課題です。  「当会議所の管内には大手企業の工場が多く進出していますが、それらの企業は政府が掲げる賃上げ政策、働き方改革を忠実に実行しており、人手不足の中でもそれなりに従業員を確保しているように見えます。  問題は、経営的にそうした対策を講じる余裕がなく、大手企業に求職者を取られてしまう中小・小規模事業所です。当会議所で会員事業所にアンケート調査を行ったところ、新入社員の定着率は5年間で53%でした。新入社員の半分が、より良い条件を求めて、5年以内に離職していることになります。  政府は『成長と分配の好循環』を掲げ、賃上げ政策や働き方改革を進めていますが、賃上げは売り上げが上がり、利益が確保されて初めて実行できるもの。政府が掲げている方針は順序が逆なのです。無理やり賃上げすることでデフレから脱却できる可能性は生まれるかもしれませんが〝痛み〟は伴うでしょう。  加えてコロナ禍前後で経済構造が大きく変わってしまい、ビジネス形態や社会環境も様変わりしました。だからこそ中小・小規模事業所は現状維持でなく、生産性向上や自己変革を必須の課題として取り組んでいく必要があります」 人手不足解消に注力  ――会員事業所の人手不足を解消するための施策は。  「人手不足対策に関しては、就職を希望する高校生を対象とした就職説明会を続けています。また、進学で市外に出て行った学生が就職活動する際、無料通信アプリ『LINE』を使って地元企業の就職情報、地元情報にアクセスできる仕組みを作りました。『LINE』アカウントに登録した人には地元産の生活用品を贈呈しています。最近は学生の家族が登録するケースも増えています。  管内には製造業が多いですが、市では今後、研究開発拠点の誘致を目指しています。当会議所としてもそうした拠点が増えていき、多様な人材が集まることを期待しています」  ――今後の重点事業について。  「本年4月1日から『中心市街地活性化基本計画』が第4期目に入ります。中心市街地には白河市立図書館や白河文化交流館コミネス、マンションなどが建設され、他自治体からの視察者も多いです。  一方で中心市街地の課題となっているのは駐車場不足です。車社会の地方において駐車場が整備されていなければ、顧客が足を運ぶことはありません。商店街に並ぶ空き家・空き店舗を駐車場にする方法も考えられますが、そうなると今度は駐車場しかないまちになってしまいます。  中心市街地はただ人が住める場所というだけではなく、歴史・伝統・文化が息づく環境での生活を通して、文化的な価値を共有できることが重要だと考えます。そのためにはただ活性化させるだけでなく、中心市街地が持つべき機能を一から考える必要があります。  観光拠点としては、今年から小峰城の清水門を復元するプロジェクトが本格的にスタートします。その一方で、市は南湖公園の活性化を進めており、昨今は宮城・仙台育英が夏の甲子園で優勝したのをきっかけに白河の関跡も脚光を浴びています。これら観光資源を生かして地域経済活性化につなげていきたいですね。  昨年、当会議所内に『道の駅検討特別委員会』を立ち上げました。詳細な整備計画などは決まっていませんが、実現するとなれば主力商品となる地場産品や地元農産物が必要になります。整備が決まってから準備し始めたのでは遅いので、6次化商品の開発などをこれから検討していきたいと考えています。  このほか、地域内のIT企業やシステムエンジニアとの連携を図る組織作りの準備を進め、会員事業所のデジタル化を応援する取り組みも併せて進めていきます」  ――今後の抱負。  「コロナ禍がひと段落し、経済は間違いなく好転していますが、先ほどもお話しした通り、中小・小規模事業所はさまざまな課題に直面しています。当会議所でも新しい制度への対応に追われていますが、それでも『できることは何でもやろう』という合言葉を掲げ、役職員一丸となってさまざまな事業に取り組んでいきたいと思います。  日経平均株価が33年ぶりに3万6000円台の高値となりましたが、かつての好景気とは異なり、中小・小規模事業所の厳しい経営環境は変わりません。しかしながら、愚痴ばかり言っていても始まりません。与えられた環境の中でも生き残りをかけて自己変革を果たし、生産性向上を目指し、従業員の働きがいや生きがいなどを大切にする企業へと変貌していかなければなりません。当会議所としてはそのために必要な支援を全力で進めていきます」

  • 【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭

    【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー

    すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、昨年11月から現職。  白河商工会議所は昨秋の役員改選で、新会頭に鈴木俊雄氏(アクティブワン代表取締役)を選任した。鈴木氏は改選前まで副会頭を務めており、昇格という格好になる。就任間もない鈴木会頭に、今後の抱負や新型コロナウイルス感染症の会員事業所への影響、そのほかの課題などについて話を聞いた。  ――昨年11月に新会頭に就任しました。 「副会頭を9年間務めましたが、会頭という立場は階段を数段駆け上がったような大きな重みを感じています。会頭に就任してから数カ月が経過しましたが、会頭は全ての場面で表に立つ立場ですから、あらためて責任を実感しています。一方で副会頭を長らく経験してきたこともあり、他会議所等の人脈や経験もありますので、それを生かしながら進めていきたいと思います」 ――新型コロナの影響について。 「国内で感染予防を徹底しても海外から多くの観光客が移動すれば防ぎようがありません。そういった意味で集団免疫が出来るまでは仕方ないと感じています。スペイン風邪など、いままでの感染症の歴史を見ると、終息までに3年程度を要しています。しかもスペイン風邪の流行時はワクチンがありませんでした。それにもかかわらず3年で終息しています。今回は、ワクチンを接種して感染のスピードを緩やかにしつつも、結果的に3年が経過しています。集団免疫が出来つつありますが、それが出来上がるまでは感染が広がるのはやむを得ないと思います。ワクチンを接種し、重症化リスクを下げていくことで、積極的に経済活動を再開させていくべきだと思います。 そのためにも、まちなかの賑わいづくりに欠かせない事業所支援は必要です。会議所としても県や市に働きかけ様々な支援策を講じています。最近では、当会議所と大信・表郷・ひがし商工会が市の委託事業により『しらかわ生活応援クーポン』を配布しました。これは250円クーポンが12枚つづり(3000円分)になったもので、500円以上の買い物や飲食で使用でき、市民の皆さんにも好評を得ています。 それでも県内は震災復興が8合目を迎えた矢先で、加えて一昨年、昨年と大きな地震が発生し、被害を受けた事業所も多いのが現状です。そのため、こういった支援策を講じても、コロナ禍で3年が経過したことで飲食店をはじめとする小規模・中小企業事業者の多くは、限界を迎えています。加えて、今後、コロナウイルス支援対策で受けた融資制度の返済が始まればさらに苦しい状況に立たされます。国では返済期間の延長を考えてくれていますが、もともとあった後継者問題や、ロシアのウクライナへの侵略戦争に伴う影響、急激な円安による諸物価の高騰といった問題も出てきています。 会議所としては、先ほど話したクーポン事業等をはじめ、職員による補助金申請サポートといった支援策を講じているものの、会議所単独で行えることには限界がありますから、国や県にはさらなる支援策の拡充を望みたいと思います。 そんな中、国では防衛費の増額による増税やプライマリーバランスを黒字化するといった報道が出ていますが、いまこそ経済支援に目を向けるべきだと思います」 市街地活性化に努める  ――白河だるま市が今年は通常開催されるなど、コロナ対策によって中止していたイベント等も再開しつつあります。 「だるま市は3年振りに開催されることになったほか、イベント等も再開され、今後の経済活動の活性化には期待したいと思います。一方で、伝統的な祭りなどはコロナ禍によって人材や資金不足に陥っています。今後はそういった祭りを観光資源として生かせないか、議論していきたいと思います」 ――国道294号バイパスが間もなく全線開通を迎えます。利便性が向上する一方で、中心市街地への影響が懸念されます。 「今回のバイパス開通は会議所としても何度となく要望してきたものです。東北自動車道白河スマートICから市内に入り、国道289号まで一直線で行けるため、慢性的だった交通渋滞の解消、商工業の物流面、観光面に与える影響は大きく、期待を寄せています。今後この道路をどう生かしていくべきか問われると思います。 白河市や西白河・東白川地域等を加えた県南地域の人口は約13・5万人ですが、製造品出荷額等は約9380億円で県内ではいわき地域とほぼ一緒です。いわき市の人口は33万人以上と県内でも大きな都市ですが、その地域と製造品出荷額等が同じということはそれだけ白河地域にまだポテンシャルがある証拠だと思います。とはいえ、管内事業所は人材不足に苦しんでいます。そのためには他地域から人材を集める必要があり、寮などの整備議論も進んでいます。半面、若者がそういった企業に就職するため、地元の商店街や農家では後継者問題を抱えているのが現状です。そういったバランスを見ていかないとまちづくりはうまくいかないと思います。 一方で、田町や横町などの商店街はバイパス開通によってすでに影響を受け、さらにストロー現象の影響も懸念されます。また、本町地域には銀行の白河支店がありますが、二年後には、店舗を閉めて郊外に新たな店舗を建設します。旧店舗の利活用を含めて中心市街地活性化を進めていきたいと思います。 まちなかの事業者は高齢化が進んでいます。空き店舗になった建物は相続などが発生し所有権などの問題があるだけでなく、空き店舗とは言っても、併設する住宅部分には住民が住んでいるなど、空き店舗の有効活用は簡単ではありません。それでも、楽市白河が手掛けている賃貸マンション『レジデンス楽市』は好評で、現在は満室になっていることからも分かるように、街なかで暮らしたいと思う住民もいます。確かに白河駅まで徒歩3分で、買い物などにも不自由しません。医療体制も充実しており、運転免許返納後は街なかに住みたいと思う高齢者が増加するかもしれません。そういう意味では、いままでの考え方ではなく、環境を整えつつ歴史と文化の香りがする中心市街地に住んでみたいと思われる街にしていくべきだと思っています。市でも歴史的風致維持向上計画を立案し、古い歴史的建造物を保存し利活用していく考えです」 ――今後の抱負。 「白河市は県南地域の中核都市と言われますが、県内の7つの生活圏の一つとして、今後どのように成長していくかということを考えながら職務に当たっていきたいと思います。とはいえ、私一人で出来ることには限りがありますから、会議所役員の皆さんや職員と一緒になって取り組んでいきたいと思います」 白河商工会議所のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー(2024.2)

    すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、22年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大はひと段落したものの、円安や原油価格・物価高騰、人手不足により、中小・小規模事業所は厳しい状況に置かれている。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応にも追われている。白河商工会議所の鈴木俊雄会頭(アクティブワン代表取締役)に管内の現状と今後の展望について語ってもらった。 課題に直面する会員事業所の自己変革・生産性向上を支援。  ――新型コロナウイルスが5類に移行しましたが、管内の現状は。  「特に影響が大きかったのは飲食業ですが、コロナ前の水準に戻りつつあります。イベントに関しては、昨年から白河だるま市が通常開催となりましたが、大勢の人出でにぎわい、今年は昨年を上回る見込みです。  一方で、各事業所が営業時間やスタッフ配置を見直して生き残りを図っていたところに急激に客足が戻ってきたので、飲食店は人手不足となり、大人数での宴会を断っている店もあります。運転手不足で帰りのタクシーや代行業者を探すのも一苦労の状況で、飲酒運転増加につながることが懸念されています」  ――円安や燃料高・物価高も企業経営に大きな影響を与えています。  「ロシアのウクライナ侵攻など外的要因もあるので、ある程度やむを得ない面があります。政府では原油・物価高騰に対応した補助金を設けたほか、取引先との取引適正化を図る『パートナーシップ構築宣言』を推進しています。会員事業所の中にも大手企業とのパートナーシップ宣言に着手したところがありますが、経費増分をすべて吸収する取引金額に設定するのはなかなか難しいと思います。  1月1日からは電子帳簿保存法の猶予期間が終了し、電子データは保存要件に従った形で保存することが求められるようになりました。インボイス制度すら対応できていない会員事業所も多い中、本業以外に対応しなければならないことがありすぎて付いていくのは容易でありません。当会議所としても会員事業所に寄り添いながらサポートしています」  ――中小・小規模事業所にとっては人手不足も大きな課題です。  「当会議所の管内には大手企業の工場が多く進出していますが、それらの企業は政府が掲げる賃上げ政策、働き方改革を忠実に実行しており、人手不足の中でもそれなりに従業員を確保しているように見えます。  問題は、経営的にそうした対策を講じる余裕がなく、大手企業に求職者を取られてしまう中小・小規模事業所です。当会議所で会員事業所にアンケート調査を行ったところ、新入社員の定着率は5年間で53%でした。新入社員の半分が、より良い条件を求めて、5年以内に離職していることになります。  政府は『成長と分配の好循環』を掲げ、賃上げ政策や働き方改革を進めていますが、賃上げは売り上げが上がり、利益が確保されて初めて実行できるもの。政府が掲げている方針は順序が逆なのです。無理やり賃上げすることでデフレから脱却できる可能性は生まれるかもしれませんが〝痛み〟は伴うでしょう。  加えてコロナ禍前後で経済構造が大きく変わってしまい、ビジネス形態や社会環境も様変わりしました。だからこそ中小・小規模事業所は現状維持でなく、生産性向上や自己変革を必須の課題として取り組んでいく必要があります」 人手不足解消に注力  ――会員事業所の人手不足を解消するための施策は。  「人手不足対策に関しては、就職を希望する高校生を対象とした就職説明会を続けています。また、進学で市外に出て行った学生が就職活動する際、無料通信アプリ『LINE』を使って地元企業の就職情報、地元情報にアクセスできる仕組みを作りました。『LINE』アカウントに登録した人には地元産の生活用品を贈呈しています。最近は学生の家族が登録するケースも増えています。  管内には製造業が多いですが、市では今後、研究開発拠点の誘致を目指しています。当会議所としてもそうした拠点が増えていき、多様な人材が集まることを期待しています」  ――今後の重点事業について。  「本年4月1日から『中心市街地活性化基本計画』が第4期目に入ります。中心市街地には白河市立図書館や白河文化交流館コミネス、マンションなどが建設され、他自治体からの視察者も多いです。  一方で中心市街地の課題となっているのは駐車場不足です。車社会の地方において駐車場が整備されていなければ、顧客が足を運ぶことはありません。商店街に並ぶ空き家・空き店舗を駐車場にする方法も考えられますが、そうなると今度は駐車場しかないまちになってしまいます。  中心市街地はただ人が住める場所というだけではなく、歴史・伝統・文化が息づく環境での生活を通して、文化的な価値を共有できることが重要だと考えます。そのためにはただ活性化させるだけでなく、中心市街地が持つべき機能を一から考える必要があります。  観光拠点としては、今年から小峰城の清水門を復元するプロジェクトが本格的にスタートします。その一方で、市は南湖公園の活性化を進めており、昨今は宮城・仙台育英が夏の甲子園で優勝したのをきっかけに白河の関跡も脚光を浴びています。これら観光資源を生かして地域経済活性化につなげていきたいですね。  昨年、当会議所内に『道の駅検討特別委員会』を立ち上げました。詳細な整備計画などは決まっていませんが、実現するとなれば主力商品となる地場産品や地元農産物が必要になります。整備が決まってから準備し始めたのでは遅いので、6次化商品の開発などをこれから検討していきたいと考えています。  このほか、地域内のIT企業やシステムエンジニアとの連携を図る組織作りの準備を進め、会員事業所のデジタル化を応援する取り組みも併せて進めていきます」  ――今後の抱負。  「コロナ禍がひと段落し、経済は間違いなく好転していますが、先ほどもお話しした通り、中小・小規模事業所はさまざまな課題に直面しています。当会議所でも新しい制度への対応に追われていますが、それでも『できることは何でもやろう』という合言葉を掲げ、役職員一丸となってさまざまな事業に取り組んでいきたいと思います。  日経平均株価が33年ぶりに3万6000円台の高値となりましたが、かつての好景気とは異なり、中小・小規模事業所の厳しい経営環境は変わりません。しかしながら、愚痴ばかり言っていても始まりません。与えられた環境の中でも生き残りをかけて自己変革を果たし、生産性向上を目指し、従業員の働きがいや生きがいなどを大切にする企業へと変貌していかなければなりません。当会議所としてはそのために必要な支援を全力で進めていきます」

  • 【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー

    すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、昨年11月から現職。  白河商工会議所は昨秋の役員改選で、新会頭に鈴木俊雄氏(アクティブワン代表取締役)を選任した。鈴木氏は改選前まで副会頭を務めており、昇格という格好になる。就任間もない鈴木会頭に、今後の抱負や新型コロナウイルス感染症の会員事業所への影響、そのほかの課題などについて話を聞いた。  ――昨年11月に新会頭に就任しました。 「副会頭を9年間務めましたが、会頭という立場は階段を数段駆け上がったような大きな重みを感じています。会頭に就任してから数カ月が経過しましたが、会頭は全ての場面で表に立つ立場ですから、あらためて責任を実感しています。一方で副会頭を長らく経験してきたこともあり、他会議所等の人脈や経験もありますので、それを生かしながら進めていきたいと思います」 ――新型コロナの影響について。 「国内で感染予防を徹底しても海外から多くの観光客が移動すれば防ぎようがありません。そういった意味で集団免疫が出来るまでは仕方ないと感じています。スペイン風邪など、いままでの感染症の歴史を見ると、終息までに3年程度を要しています。しかもスペイン風邪の流行時はワクチンがありませんでした。それにもかかわらず3年で終息しています。今回は、ワクチンを接種して感染のスピードを緩やかにしつつも、結果的に3年が経過しています。集団免疫が出来つつありますが、それが出来上がるまでは感染が広がるのはやむを得ないと思います。ワクチンを接種し、重症化リスクを下げていくことで、積極的に経済活動を再開させていくべきだと思います。 そのためにも、まちなかの賑わいづくりに欠かせない事業所支援は必要です。会議所としても県や市に働きかけ様々な支援策を講じています。最近では、当会議所と大信・表郷・ひがし商工会が市の委託事業により『しらかわ生活応援クーポン』を配布しました。これは250円クーポンが12枚つづり(3000円分)になったもので、500円以上の買い物や飲食で使用でき、市民の皆さんにも好評を得ています。 それでも県内は震災復興が8合目を迎えた矢先で、加えて一昨年、昨年と大きな地震が発生し、被害を受けた事業所も多いのが現状です。そのため、こういった支援策を講じても、コロナ禍で3年が経過したことで飲食店をはじめとする小規模・中小企業事業者の多くは、限界を迎えています。加えて、今後、コロナウイルス支援対策で受けた融資制度の返済が始まればさらに苦しい状況に立たされます。国では返済期間の延長を考えてくれていますが、もともとあった後継者問題や、ロシアのウクライナへの侵略戦争に伴う影響、急激な円安による諸物価の高騰といった問題も出てきています。 会議所としては、先ほど話したクーポン事業等をはじめ、職員による補助金申請サポートといった支援策を講じているものの、会議所単独で行えることには限界がありますから、国や県にはさらなる支援策の拡充を望みたいと思います。 そんな中、国では防衛費の増額による増税やプライマリーバランスを黒字化するといった報道が出ていますが、いまこそ経済支援に目を向けるべきだと思います」 市街地活性化に努める  ――白河だるま市が今年は通常開催されるなど、コロナ対策によって中止していたイベント等も再開しつつあります。 「だるま市は3年振りに開催されることになったほか、イベント等も再開され、今後の経済活動の活性化には期待したいと思います。一方で、伝統的な祭りなどはコロナ禍によって人材や資金不足に陥っています。今後はそういった祭りを観光資源として生かせないか、議論していきたいと思います」 ――国道294号バイパスが間もなく全線開通を迎えます。利便性が向上する一方で、中心市街地への影響が懸念されます。 「今回のバイパス開通は会議所としても何度となく要望してきたものです。東北自動車道白河スマートICから市内に入り、国道289号まで一直線で行けるため、慢性的だった交通渋滞の解消、商工業の物流面、観光面に与える影響は大きく、期待を寄せています。今後この道路をどう生かしていくべきか問われると思います。 白河市や西白河・東白川地域等を加えた県南地域の人口は約13・5万人ですが、製造品出荷額等は約9380億円で県内ではいわき地域とほぼ一緒です。いわき市の人口は33万人以上と県内でも大きな都市ですが、その地域と製造品出荷額等が同じということはそれだけ白河地域にまだポテンシャルがある証拠だと思います。とはいえ、管内事業所は人材不足に苦しんでいます。そのためには他地域から人材を集める必要があり、寮などの整備議論も進んでいます。半面、若者がそういった企業に就職するため、地元の商店街や農家では後継者問題を抱えているのが現状です。そういったバランスを見ていかないとまちづくりはうまくいかないと思います。 一方で、田町や横町などの商店街はバイパス開通によってすでに影響を受け、さらにストロー現象の影響も懸念されます。また、本町地域には銀行の白河支店がありますが、二年後には、店舗を閉めて郊外に新たな店舗を建設します。旧店舗の利活用を含めて中心市街地活性化を進めていきたいと思います。 まちなかの事業者は高齢化が進んでいます。空き店舗になった建物は相続などが発生し所有権などの問題があるだけでなく、空き店舗とは言っても、併設する住宅部分には住民が住んでいるなど、空き店舗の有効活用は簡単ではありません。それでも、楽市白河が手掛けている賃貸マンション『レジデンス楽市』は好評で、現在は満室になっていることからも分かるように、街なかで暮らしたいと思う住民もいます。確かに白河駅まで徒歩3分で、買い物などにも不自由しません。医療体制も充実しており、運転免許返納後は街なかに住みたいと思う高齢者が増加するかもしれません。そういう意味では、いままでの考え方ではなく、環境を整えつつ歴史と文化の香りがする中心市街地に住んでみたいと思われる街にしていくべきだと思っています。市でも歴史的風致維持向上計画を立案し、古い歴史的建造物を保存し利活用していく考えです」 ――今後の抱負。 「白河市は県南地域の中核都市と言われますが、県内の7つの生活圏の一つとして、今後どのように成長していくかということを考えながら職務に当たっていきたいと思います。とはいえ、私一人で出来ることには限りがありますから、会議所役員の皆さんや職員と一緒になって取り組んでいきたいと思います」 白河商工会議所のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】