【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー

【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭

すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、昨年11月から現職。

 白河商工会議所は昨秋の役員改選で、新会頭に鈴木俊雄氏(アクティブワン代表取締役)を選任した。鈴木氏は改選前まで副会頭を務めており、昇格という格好になる。就任間もない鈴木会頭に、今後の抱負や新型コロナウイルス感染症の会員事業所への影響、そのほかの課題などについて話を聞いた。

 ――昨年11月に新会頭に就任しました。

 「副会頭を9年間務めましたが、会頭という立場は階段を数段駆け上がったような大きな重みを感じています。会頭に就任してから数カ月が経過しましたが、会頭は全ての場面で表に立つ立場ですから、あらためて責任を実感しています。一方で副会頭を長らく経験してきたこともあり、他会議所等の人脈や経験もありますので、それを生かしながら進めていきたいと思います」

 ――新型コロナの影響について。

 「国内で感染予防を徹底しても海外から多くの観光客が移動すれば防ぎようがありません。そういった意味で集団免疫が出来るまでは仕方ないと感じています。スペイン風邪など、いままでの感染症の歴史を見ると、終息までに3年程度を要しています。しかもスペイン風邪の流行時はワクチンがありませんでした。それにもかかわらず3年で終息しています。今回は、ワクチンを接種して感染のスピードを緩やかにしつつも、結果的に3年が経過しています。集団免疫が出来つつありますが、それが出来上がるまでは感染が広がるのはやむを得ないと思います。ワクチンを接種し、重症化リスクを下げていくことで、積極的に経済活動を再開させていくべきだと思います。

 そのためにも、まちなかの賑わいづくりに欠かせない事業所支援は必要です。会議所としても県や市に働きかけ様々な支援策を講じています。最近では、当会議所と大信・表郷・ひがし商工会が市の委託事業により『しらかわ生活応援クーポン』を配布しました。これは250円クーポンが12枚つづり(3000円分)になったもので、500円以上の買い物や飲食で使用でき、市民の皆さんにも好評を得ています。

 それでも県内は震災復興が8合目を迎えた矢先で、加えて一昨年、昨年と大きな地震が発生し、被害を受けた事業所も多いのが現状です。そのため、こういった支援策を講じても、コロナ禍で3年が経過したことで飲食店をはじめとする小規模・中小企業事業者の多くは、限界を迎えています。加えて、今後、コロナウイルス支援対策で受けた融資制度の返済が始まればさらに苦しい状況に立たされます。国では返済期間の延長を考えてくれていますが、もともとあった後継者問題や、ロシアのウクライナへの侵略戦争に伴う影響、急激な円安による諸物価の高騰といった問題も出てきています。

 会議所としては、先ほど話したクーポン事業等をはじめ、職員による補助金申請サポートといった支援策を講じているものの、会議所単独で行えることには限界がありますから、国や県にはさらなる支援策の拡充を望みたいと思います。

 そんな中、国では防衛費の増額による増税やプライマリーバランスを黒字化するといった報道が出ていますが、いまこそ経済支援に目を向けるべきだと思います」

市街地活性化に努める

 ――白河だるま市が今年は通常開催されるなど、コロナ対策によって中止していたイベント等も再開しつつあります。

 「だるま市は3年振りに開催されることになったほか、イベント等も再開され、今後の経済活動の活性化には期待したいと思います。一方で、伝統的な祭りなどはコロナ禍によって人材や資金不足に陥っています。今後はそういった祭りを観光資源として生かせないか、議論していきたいと思います」

 ――国道294号バイパスが間もなく全線開通を迎えます。利便性が向上する一方で、中心市街地への影響が懸念されます。

 「今回のバイパス開通は会議所としても何度となく要望してきたものです。東北自動車道白河スマートICから市内に入り、国道289号まで一直線で行けるため、慢性的だった交通渋滞の解消、商工業の物流面、観光面に与える影響は大きく、期待を寄せています。今後この道路をどう生かしていくべきか問われると思います。

 白河市や西白河・東白川地域等を加えた県南地域の人口は約13・5万人ですが、製造品出荷額等は約9380億円で県内ではいわき地域とほぼ一緒です。いわき市の人口は33万人以上と県内でも大きな都市ですが、その地域と製造品出荷額等が同じということはそれだけ白河地域にまだポテンシャルがある証拠だと思います。とはいえ、管内事業所は人材不足に苦しんでいます。そのためには他地域から人材を集める必要があり、寮などの整備議論も進んでいます。半面、若者がそういった企業に就職するため、地元の商店街や農家では後継者問題を抱えているのが現状です。そういったバランスを見ていかないとまちづくりはうまくいかないと思います。

 一方で、田町や横町などの商店街はバイパス開通によってすでに影響を受け、さらにストロー現象の影響も懸念されます。また、本町地域には銀行の白河支店がありますが、二年後には、店舗を閉めて郊外に新たな店舗を建設します。旧店舗の利活用を含めて中心市街地活性化を進めていきたいと思います。

 まちなかの事業者は高齢化が進んでいます。空き店舗になった建物は相続などが発生し所有権などの問題があるだけでなく、空き店舗とは言っても、併設する住宅部分には住民が住んでいるなど、空き店舗の有効活用は簡単ではありません。それでも、楽市白河が手掛けている賃貸マンション『レジデンス楽市』は好評で、現在は満室になっていることからも分かるように、街なかで暮らしたいと思う住民もいます。確かに白河駅まで徒歩3分で、買い物などにも不自由しません。医療体制も充実しており、運転免許返納後は街なかに住みたいと思う高齢者が増加するかもしれません。そういう意味では、いままでの考え方ではなく、環境を整えつつ歴史と文化の香りがする中心市街地に住んでみたいと思われる街にしていくべきだと思っています。市でも歴史的風致維持向上計画を立案し、古い歴史的建造物を保存し利活用していく考えです」

 ――今後の抱負。

 「白河市は県南地域の中核都市と言われますが、県内の7つの生活圏の一つとして、今後どのように成長していくかということを考えながら職務に当たっていきたいと思います。とはいえ、私一人で出来ることには限りがありますから、会議所役員の皆さんや職員と一緒になって取り組んでいきたいと思います」

白河商工会議所のホームページ

掲載号:政経東北【2023年2月号】

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