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二本松市岩代メガソーラー計画

  • 【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声(2021年3月号)

    【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声

    (2021年3月号)  本誌2018年2月号に「二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上」という記事を掲載した。二本松市岩代地区で民間事業者によるメガソーラー計画が浮上しており、その詳細をリポートしたもの。その後、同事業ではすでに工事が始まっているが、かなりの大規模開発になるため、地元住民からは「大雨が降ったら大丈夫か」と心配する声が出ている。 令和元年東日本台風を経て地元民感情に変化  2018年当時、地元住民に話を聞いたところ、「この一帯でメガソーラーをやりたいということで、事業者がこの辺りの地権者を回っている」とのことだった。 さらにある地権者によると、計画地は二本松市岩代地区の上長折字加藤木地内の山林・農地で、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。用地交渉に来ているのは栃木県の会社で、同社から「買収を想定しているのは約150㌶」「送電鉄塔が近くにあるため、メガソーラー用地として適しており、ぜひここでやりたいから協力(用地売却)してほしい」と説明・協力要請されたのだという。 この地権者は当時の本誌取材に次のように述べていた。 「計画地の大部分は山林や農地で、私の所有地は農地ですが、いまは耕作していません。その近隣も遊休農地が少なくないため、売ってもいいという人は多いのではないかと思います。おおよそですが、地権者は20〜30人くらいになると思われ、そのうちの何人かに聞いてみたのですが、多くは売ってもいいと考えているほか、すでに土地を売った人もいます。ただ、最初に事業者が私のところに来たのは、確かいま(記事掲載時の2018年)から2年ほど前だったと思いますが、その後も近隣の地権者を回っている様子はうかがえるものの、進展が見られません」 そこで、事業者に電話で問い合わせたところ、次のように明かした。 「当社は企画を担当しており、現在は地元地権者に協力を求めている状況ですが、実際の発電事業者は別な会社になるため、そちらにも相談してみないとお答えできないこともあります」 ただ、少なくとも「計画自体が進行中なのは間違いありません」とのことだった。 そのほか、同社への取材で、その時点で用地の約8割がまとまっていること、地権者との交渉と並行して周辺の測量などを進めていること、環境影響評価などの開発行為に関する手続きの準備・協議を管轄行政と進めていること――等々が明らかになった。 なお、同社は「近く、発電事業者との打ち合わせがあるので、取材の問い合わせがあったことは伝えておきます。そのうえで、あらためてお伝えできることがあればお伝えします」とも述べていたが、その後、同社から前述したこと以外の説明はなかった。 それから3年ほどが経った2021年1月、当時本誌にコメントしていた地権者から、こんな情報が寄せられた。 「同計画では、すでに工事が始まっていますが、予定地の山林が丸裸にされており、大雨が降ったら大丈夫なのかと不安になってきました。最初は、私も(同計画に対して)『どうせ、使っていない(耕作していない)土地だし、まあいいだろう』と思って、用地買収に応じましたが、それはあの災害の前でしたし、実際に山林が剥かれた現場を見ると、やっぱり大丈夫なのかなとの思いは拭えません」 コロナで説明の場もナシ まだ手付かずの事業用地もあり、開発面積はかなりの規模になる。  この地権者が言う「あの災害」とは、令和元年東日本台風を指している。この災害で同市では2人の死者が出たほか、住宅、農地、道路など、さまざまな部分で大きな被害を受けた。とりわけ、同市東和地区、岩代地区での被害が大きかったという。 そうした大きな災害があった後だけに、当初こそメガソーラー計画に賛意を示したものの、「これだけの大規模開発が行われ、山林が丸裸になった現場を見ると、大丈夫なのかとの思いを抱かずにはいられない」というのだ。加えて、同地区では、令和元年東日本台風の数年前にも大きな水害に見舞われたことがあり、「何年かに一度はそういったことがあり、特に近年は自然災害が増えているから余計に不安になります」(前出の地権者)という。 開発対象の森林面積は全体で約38㌶に上り、そのうち実際に開発が行われるのは約18㌶というから、かなりの大規模開発であることがうかがえる。 「当然、事業者もその辺(水害対策)は考えているだろうと思いますし、環境影響評価や開発許可などの手続きも踏んでいます。何らかの違反・違法行為をしているわけではありませんから、表立って『抗議』や『非難』をできる状況ではないと思いますが、やっぱり心配です」(同) この地権者に、そういった不安を抱かせた背景には、「新型コロナウイルスの影響」も関係している。 その理由はこうだ。 「以前は何か動きがあると、事業者から詳細説明がありました。ただ、新型コロナウイルスの問題が浮上してからは、そういうことがなくなりました。一応、経過説明などの文書が回ってくることはありますが、それだけではよく分からないこともありますし、疑問に思ったことがあっても、なかなか質問しにくい状況になっています。だから、余計に心配なのです」(同) 以前は、関係者を集めて説明する、あるいは地権者・近隣住民宅を訪問して説明する、といったことがあったようだが、コロナ禍でそうしたことが省略されているというのだ。一応、事業者から経過説明などの文書が届くことはあるようだが、それだけではよく分からないこともあるほか、疑問に思ったことを質問することもできない、と。 その結果、これだけの大規模開発を行い、山を丸裸にして治水対策などは本当に大丈夫なのか、といった不安を募らせることになったわけ。 用地買収に当たった事業者と、実際の発電事業者が別なこともあり、事業者の正確な動きはつかめていないが、いずれにしても、地元住民の不安が解消されるような対策・説明が求められる。 あわせて読みたい 二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上

  • 二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上(2018年2月号)

    二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上

    (2018年2月号)  二本松市岩代地区で、民間事業者による大規模太陽光発電(メガソーラー)計画が浮上している。ある地元地権者によると、「事業者から最初に用地交渉の話があったのは2年ほど前」とのことだが、その後、計画は進展している様子が見受けられないという。 進展の遅さにヤキモキする地権者  本誌2017年12月号に「増え続ける『太陽光発電』の倒産 それでも絶えない設置計画」という記事を掲載した。原発事故以降、再生可能エネルギーの必要性が叫ばれ、その中心的な存在となっていた太陽光発電だが、東京商工リサーチのリポートによると、近年は太陽光発電関連事業者の倒産が相次いでいるのだという。そこで、あらためて同事業の状況を見た中で、同事業は成長産業と見込まれていたが、新規参入が相次いだこともあり、倒産事例も増えていることなどをリポートしたもの。 ただ、そんな中でも、本誌には県内での太陽光発電の計画話がいくつか伝わっており、同記事では二本松市岩代地区の住民のこんな声を紹介した。 「この地域(二本松市岩代地区)で太陽光発電事業をやりたいということで、少し前から事業者が山(山林)や農地を持っている地権者のところを回っているようです。それも、その範囲はかなりの広範にわたっており、もし本当にできるとしたら、相当な規模の太陽光発電所になると思われます」 この時点ではそれ以上の詳しいことは分かっていなかったが、その後の取材で、少しずつ詳細が明らかになってきた。 ある地権者は次のように話す。 「ここで太陽光発電事業をやりたいということで、この辺(の山林や農地)の地権者を回っているのは、栃木県の『博栄商事』という会社です。その後、同社と一緒に『オーシャンズジャパン』という会社の名刺を持った人もあいさつに来ました。事業者の説明によると、『買収を想定しているのは150㌶ほど。送電鉄塔が近くにあるため、太陽光発電の用地として適しており、ぜひここでやりたいから、協力(土地売却)してもらえないか』とのことでした。ただ、事業者が最初に私のところに来たのは、確か2年ほど前だったと思いますが、その後も近隣の地権者を回っている様子はうかがえるものの、全くと言っていいほど進展している様子が見受けられません。私自身は協力してもいいと思っているのですが……」 計画地は、二本松市岩代地区の上長折字加藤木地内の山林・農地で、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。この地権者によると、事業者が用地として想定している面積は約150㌶とのことだから、かなりの規模であることがうかがえる。 「計画地の大部分は山林や農地です。私の所有地は農地だが、いまは耕作していません。その近隣も、遊休農地が少なくない。ですから、売ってもいいという人は多いと思います。実際、すでに土地を売った人もいるようです」(前出の地権者) なお、この地権者の話に出てきた博栄商事は、栃木県茂木町に本社を置く株式会社。1972(昭和47)年設立。資本金2000万円。同社のHPや商業登記簿謄本を見ると、不動産業が主業のようで、太陽光発電関連の事業実績は見当たらない。役員は代表取締役・細野正博、取締役・能代英樹の2氏。 もう一方のオーシャンズジャパンは、本社が東京都新宿区の合同会社。2015(平成27)年設立。資本金1万円。事業目的は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、太陽熱等の再生可能エネルギーによる発電事業及びその管理・運営・電気の供給・販売等に関する業務、発電設備の設置、保守管理業務など。役員は業務執行社員・坂尾純一氏。 こうして両社のHPや商業登記簿謄本などを見る限り、博栄商事は用地交渉役(仲介役)で、実際の発電事業者はオーシャンズジャパンと見るのが自然か。 前出の地権者によると、「すでに土地を売った人もいるようだ」とのことだから、すでに投資が発生している以上、事業者が〝本気〟なのは間違いなさそう。ただ、この地権者の話では、最初に相談があったのは2年ほど前で、以降も事業者が地権者宅を回っている様子はうかがえるものの、計画が進捗している様子は見えないというのだ。 「おおよそですが、地権者は20〜30人くらいになると思います。知り合いの地権者にも聞いてみたところ、多くの人が協力してもいいと考えているようで、すでに土地を売った人もいるようですが、逆にまだ全然そんな話(用地交渉)がないという人もいます。ただ、少なくとも、私は最初に相談があってから2年近くが経っています。それなのに話が進展しないので、一体どうなっているんだろう、と」(前出の地権者) 事業者が目星を付けたところは、多くが山林や遊休農地のため、地権者からしたら「買ってくれるならありがたい」ということなのだろうが、その後、話が進展している様子が見えないため、「本当にできるのか」といった思いを抱いていることがうかがえる。 「計画は進行中」と事業者  そこで、計画の進捗状況や事業概要などを聞くため、博栄商事に問い合わせてみたところ、同社担当者は「当社は企画を担当しており、実際の発電事業者は別な会社になるため、発電事業者に確認してみないことにはお答えできないこともあります」とのことだったが、「計画自体が進行中なのは間違いありません」と明かした。 そこで、本誌記者は「地元住民からは、『オーシャンズジャパン』という会社の名刺を持った人もあいさつに来ていたとの話も聞かれたが、いまの説明に出てきた『発電事業者』はオーシャンズジャパンのことか」と尋ねてみた。 すると、博栄商事の担当者は「当初はその予定で、もともとは同社から依頼があり、当社が企画を担当することになりました。ただその後、事情があって発電事業者は変わりました。新しい事業者は横浜市の会社で、二本松市に現地法人を立ち上げ、そこが太陽光発電所を運営することになります」と語った。 このほか、博栄商事の担当者への取材で明らかになったのは、①用地は8割ほどまとまっていること、②現在、境界周辺の測量を実施しているほか、環境影響評価などの開発行為に関する手続きの準備・協議を進めていること――等々。 そのうえで、同社担当者は「近く発電事業者と打ち合わせがあるので、問い合わせがあったことは伝えます。そこで発電事業者と相談のうえ、あらためてお伝えできることはお伝えします」と話した。 発電規模や発電開始時期の目標などは明らかにされなかったが、いずれにしても、計画が進行中なのは間違いないようだ。 ただ、前述したように、用地の大部分は山林・農地のため、開発の必要があり、そのためには各種手続きが必要になるから、近隣住民の目に見える形(工事など)で動きがあるまでにはもう少し時間がかかりそうな状況だ。おそらく、開発に当たっての環境影響評価方法書の縦覧などまで計画が進展しなければ、具体的なものは見えてこないのではないかと思われる。 近隣にも太陽光発電所が 二本松太陽光発電所(旧ゴルフ場)  ところで、一連の取材で同計画地周辺を歩いてみたところ、同所のほかにも太陽光発電所、あるいはそのための造成工事中のところがあることが目に付いた。 1つは、以前、本誌でも取り上げたサンフィールド二本松ゴルフ倶楽部岩代コース跡地。同ゴルフ場については、過去の本誌記事で次のようなことを伝えた。 ①同ゴルフ場は、東日本大震災を受け、クラブハウスやコースが被害を受けたほか、原発事故によりコース上で高い放射線量が計測されたため、一時閉鎖して施設修繕や除染を行ったうえで、営業再開を目指していた。 ②それと平行して、同ゴルフ場を運営するサンフィールドは、東京電力を相手取り放射性物質の除去などを求め、東京地裁に仮処分申し立てを行った。しかし、同申し立てが却下されたため、同社は2011年7月上旬ごろまでにホームページ上で「当面の休業」を発表した。なお、同仮処分申請の中で、東電が「原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。したがって東電には除染責任がない」との主張を展開し、県内外で大きな注目を集めた。 ③そんな中、同ゴルフ場では、「ゴルフ場をやめて大規模太陽光発電施設にするらしい」といったウワサが浮上した。ある関係者によると「大手ゼネコンが主体となり、京セラのシステムを使うそうだ」といったかなり具体的な話も出ていたが、「正式に打診があったわけではないらしく、結局、その話は立ち消えになった」(同)とのことだった。 ④その後、2012年秋ごろまでに、同ゴルフ場の駐車場に仮設住宅のような長屋風の建物がつくられ、除染作業員などの仮設宿舎になった。同ゴルフ場には立派なホテルも併設されているが、そこも作業員宿舎(食堂?)になった。ある地権者によると、「サンフィールドは『ビジネス上の付き合いから、除染事業者である大成建設に無償貸与している』と説明していた」とのことだった。そのため、少なくとも、この時点では、ゴルフ場再開の可能性は事実上なくなり、用地がどうなるのかが注目されていた。 ⑤2014年春になると、先のウワサとは別に、大規模太陽光発電施設にする目的で、ゴルフ場用地を買いたいという会社が現れた。その会社は、東京都港区に本社を置く日本再生可能エネルギーで、ある地権者は「同社の要請(土地売却)に応じた。私の知る限り、ほとんどが同様の意向だと思う」と話した。 過去の本誌記事でリポートしたのはここまでだが、その後も、この地権者(元地権者)からは「日本再生可能エネルギーで太陽光発電所に必要なだけの用地をまとめ、本格的に動き出した」といった話は聞かされていた。もっとも、この地権者(元地権者)自身が「土地を売ったことで、直接的には関係なくなったから、詳しいことは分からないけど……」とのことで、具体的な事業の進捗状況などは分かっていなかった。 今回、あらためて同所を訪ねてみると、「二本松太陽光発電所」という看板が立てられ、外から様子をうかがった限りでは、太陽光発電所として稼働しているように見受けられた。同所を取得した日本再生可能エネルギーのHPを見てみると、国内他所の太陽光発電所に関するリリースは出ているものの、二本松太陽光発電所についてのリリースは見当たらなかった。 そこで、同社に問い合わせてみたところ、①同発電所は2017年8月から稼働していること、②発電規模は29・5㍋㍗であること――が明らかになった。つまり、すでに発電・売電を行っている、と。 なお、同社は太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーを利用した発電・売電事業を手掛ける株式会社で、2013年5月10日設立。代表はアダム・バリーン氏。HPに掲載されたリリースを見る限り、国内各地で太陽光発電所を運営しており、県内では二本松市のほかに、国見町でも2016年2月から太陽光発電所を稼働している。 工事中の計画  一方、その近くでは別の太陽光発電所の工事が行われていた。工事案内板を見ると、場所は「初森字天狗塚69―1 外3筆」、目的は「太陽光発電所建設用地の造成」、林地開発について「許可を受けた者」は札幌市の「エム・エス・ケイ」と書かれていた。 同社について調べてみると、札幌市で「ホテル翔SAPPORO」を経営しており、ホテル経営が主業のようだ。ただ、同社の商業登記簿謄本を確認すると、事業目的は、以前は①ホテル及び旅館の運営管理、②不動産の売買及び賃貸、③古物商の経営などだったが、2016年8月に変更され、再生可能エネルギーによる発電事業及び発電設備の販売、施工工事請負が追加された。最近になり、同事業に参入したことがうかがえる。 同社に二本松市で太陽光発電事業をやることになった経緯などについて問い合わせたところ、一度、連絡はあったものの、質問に対する回答は本号締め切りには間に合わなかった。そのため、事業規模などは現時点では明らかになっていない。 ちなみに、冒頭紹介した計画は、前述した通り、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。そこから直線距離で1㌔ほど南にいったところに二本松太陽光発電所(ゴルフ場跡地)があり、さらに直線距離で南に1㌔ほどの辺りに現在工事中のエム・エス・ケイの事業地がある。 こうして見ると、同地区周辺は民間の、それも県外事業者による太陽光発電施設、あるいはその計画が多いことが分かる。 ある地元住民は「震災・原発事故を経て、結果的にそうなりましたね。課題はソーラー発電システムの耐用年数を超えた時にどうなるのかということでしょうけど、そこさえしっかりしてもらえれば、地域としてこういうものを推奨していくのもいいのではないか」と語った。 あわせて読みたい 【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声

  • 【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声

    (2021年3月号)  本誌2018年2月号に「二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上」という記事を掲載した。二本松市岩代地区で民間事業者によるメガソーラー計画が浮上しており、その詳細をリポートしたもの。その後、同事業ではすでに工事が始まっているが、かなりの大規模開発になるため、地元住民からは「大雨が降ったら大丈夫か」と心配する声が出ている。 令和元年東日本台風を経て地元民感情に変化  2018年当時、地元住民に話を聞いたところ、「この一帯でメガソーラーをやりたいということで、事業者がこの辺りの地権者を回っている」とのことだった。 さらにある地権者によると、計画地は二本松市岩代地区の上長折字加藤木地内の山林・農地で、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。用地交渉に来ているのは栃木県の会社で、同社から「買収を想定しているのは約150㌶」「送電鉄塔が近くにあるため、メガソーラー用地として適しており、ぜひここでやりたいから協力(用地売却)してほしい」と説明・協力要請されたのだという。 この地権者は当時の本誌取材に次のように述べていた。 「計画地の大部分は山林や農地で、私の所有地は農地ですが、いまは耕作していません。その近隣も遊休農地が少なくないため、売ってもいいという人は多いのではないかと思います。おおよそですが、地権者は20〜30人くらいになると思われ、そのうちの何人かに聞いてみたのですが、多くは売ってもいいと考えているほか、すでに土地を売った人もいます。ただ、最初に事業者が私のところに来たのは、確かいま(記事掲載時の2018年)から2年ほど前だったと思いますが、その後も近隣の地権者を回っている様子はうかがえるものの、進展が見られません」 そこで、事業者に電話で問い合わせたところ、次のように明かした。 「当社は企画を担当しており、現在は地元地権者に協力を求めている状況ですが、実際の発電事業者は別な会社になるため、そちらにも相談してみないとお答えできないこともあります」 ただ、少なくとも「計画自体が進行中なのは間違いありません」とのことだった。 そのほか、同社への取材で、その時点で用地の約8割がまとまっていること、地権者との交渉と並行して周辺の測量などを進めていること、環境影響評価などの開発行為に関する手続きの準備・協議を管轄行政と進めていること――等々が明らかになった。 なお、同社は「近く、発電事業者との打ち合わせがあるので、取材の問い合わせがあったことは伝えておきます。そのうえで、あらためてお伝えできることがあればお伝えします」とも述べていたが、その後、同社から前述したこと以外の説明はなかった。 それから3年ほどが経った2021年1月、当時本誌にコメントしていた地権者から、こんな情報が寄せられた。 「同計画では、すでに工事が始まっていますが、予定地の山林が丸裸にされており、大雨が降ったら大丈夫なのかと不安になってきました。最初は、私も(同計画に対して)『どうせ、使っていない(耕作していない)土地だし、まあいいだろう』と思って、用地買収に応じましたが、それはあの災害の前でしたし、実際に山林が剥かれた現場を見ると、やっぱり大丈夫なのかなとの思いは拭えません」 コロナで説明の場もナシ まだ手付かずの事業用地もあり、開発面積はかなりの規模になる。  この地権者が言う「あの災害」とは、令和元年東日本台風を指している。この災害で同市では2人の死者が出たほか、住宅、農地、道路など、さまざまな部分で大きな被害を受けた。とりわけ、同市東和地区、岩代地区での被害が大きかったという。 そうした大きな災害があった後だけに、当初こそメガソーラー計画に賛意を示したものの、「これだけの大規模開発が行われ、山林が丸裸になった現場を見ると、大丈夫なのかとの思いを抱かずにはいられない」というのだ。加えて、同地区では、令和元年東日本台風の数年前にも大きな水害に見舞われたことがあり、「何年かに一度はそういったことがあり、特に近年は自然災害が増えているから余計に不安になります」(前出の地権者)という。 開発対象の森林面積は全体で約38㌶に上り、そのうち実際に開発が行われるのは約18㌶というから、かなりの大規模開発であることがうかがえる。 「当然、事業者もその辺(水害対策)は考えているだろうと思いますし、環境影響評価や開発許可などの手続きも踏んでいます。何らかの違反・違法行為をしているわけではありませんから、表立って『抗議』や『非難』をできる状況ではないと思いますが、やっぱり心配です」(同) この地権者に、そういった不安を抱かせた背景には、「新型コロナウイルスの影響」も関係している。 その理由はこうだ。 「以前は何か動きがあると、事業者から詳細説明がありました。ただ、新型コロナウイルスの問題が浮上してからは、そういうことがなくなりました。一応、経過説明などの文書が回ってくることはありますが、それだけではよく分からないこともありますし、疑問に思ったことがあっても、なかなか質問しにくい状況になっています。だから、余計に心配なのです」(同) 以前は、関係者を集めて説明する、あるいは地権者・近隣住民宅を訪問して説明する、といったことがあったようだが、コロナ禍でそうしたことが省略されているというのだ。一応、事業者から経過説明などの文書が届くことはあるようだが、それだけではよく分からないこともあるほか、疑問に思ったことを質問することもできない、と。 その結果、これだけの大規模開発を行い、山を丸裸にして治水対策などは本当に大丈夫なのか、といった不安を募らせることになったわけ。 用地買収に当たった事業者と、実際の発電事業者が別なこともあり、事業者の正確な動きはつかめていないが、いずれにしても、地元住民の不安が解消されるような対策・説明が求められる。 あわせて読みたい 二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上

  • 二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上

    (2018年2月号)  二本松市岩代地区で、民間事業者による大規模太陽光発電(メガソーラー)計画が浮上している。ある地元地権者によると、「事業者から最初に用地交渉の話があったのは2年ほど前」とのことだが、その後、計画は進展している様子が見受けられないという。 進展の遅さにヤキモキする地権者  本誌2017年12月号に「増え続ける『太陽光発電』の倒産 それでも絶えない設置計画」という記事を掲載した。原発事故以降、再生可能エネルギーの必要性が叫ばれ、その中心的な存在となっていた太陽光発電だが、東京商工リサーチのリポートによると、近年は太陽光発電関連事業者の倒産が相次いでいるのだという。そこで、あらためて同事業の状況を見た中で、同事業は成長産業と見込まれていたが、新規参入が相次いだこともあり、倒産事例も増えていることなどをリポートしたもの。 ただ、そんな中でも、本誌には県内での太陽光発電の計画話がいくつか伝わっており、同記事では二本松市岩代地区の住民のこんな声を紹介した。 「この地域(二本松市岩代地区)で太陽光発電事業をやりたいということで、少し前から事業者が山(山林)や農地を持っている地権者のところを回っているようです。それも、その範囲はかなりの広範にわたっており、もし本当にできるとしたら、相当な規模の太陽光発電所になると思われます」 この時点ではそれ以上の詳しいことは分かっていなかったが、その後の取材で、少しずつ詳細が明らかになってきた。 ある地権者は次のように話す。 「ここで太陽光発電事業をやりたいということで、この辺(の山林や農地)の地権者を回っているのは、栃木県の『博栄商事』という会社です。その後、同社と一緒に『オーシャンズジャパン』という会社の名刺を持った人もあいさつに来ました。事業者の説明によると、『買収を想定しているのは150㌶ほど。送電鉄塔が近くにあるため、太陽光発電の用地として適しており、ぜひここでやりたいから、協力(土地売却)してもらえないか』とのことでした。ただ、事業者が最初に私のところに来たのは、確か2年ほど前だったと思いますが、その後も近隣の地権者を回っている様子はうかがえるものの、全くと言っていいほど進展している様子が見受けられません。私自身は協力してもいいと思っているのですが……」 計画地は、二本松市岩代地区の上長折字加藤木地内の山林・農地で、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。この地権者によると、事業者が用地として想定している面積は約150㌶とのことだから、かなりの規模であることがうかがえる。 「計画地の大部分は山林や農地です。私の所有地は農地だが、いまは耕作していません。その近隣も、遊休農地が少なくない。ですから、売ってもいいという人は多いと思います。実際、すでに土地を売った人もいるようです」(前出の地権者) なお、この地権者の話に出てきた博栄商事は、栃木県茂木町に本社を置く株式会社。1972(昭和47)年設立。資本金2000万円。同社のHPや商業登記簿謄本を見ると、不動産業が主業のようで、太陽光発電関連の事業実績は見当たらない。役員は代表取締役・細野正博、取締役・能代英樹の2氏。 もう一方のオーシャンズジャパンは、本社が東京都新宿区の合同会社。2015(平成27)年設立。資本金1万円。事業目的は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、太陽熱等の再生可能エネルギーによる発電事業及びその管理・運営・電気の供給・販売等に関する業務、発電設備の設置、保守管理業務など。役員は業務執行社員・坂尾純一氏。 こうして両社のHPや商業登記簿謄本などを見る限り、博栄商事は用地交渉役(仲介役)で、実際の発電事業者はオーシャンズジャパンと見るのが自然か。 前出の地権者によると、「すでに土地を売った人もいるようだ」とのことだから、すでに投資が発生している以上、事業者が〝本気〟なのは間違いなさそう。ただ、この地権者の話では、最初に相談があったのは2年ほど前で、以降も事業者が地権者宅を回っている様子はうかがえるものの、計画が進捗している様子は見えないというのだ。 「おおよそですが、地権者は20〜30人くらいになると思います。知り合いの地権者にも聞いてみたところ、多くの人が協力してもいいと考えているようで、すでに土地を売った人もいるようですが、逆にまだ全然そんな話(用地交渉)がないという人もいます。ただ、少なくとも、私は最初に相談があってから2年近くが経っています。それなのに話が進展しないので、一体どうなっているんだろう、と」(前出の地権者) 事業者が目星を付けたところは、多くが山林や遊休農地のため、地権者からしたら「買ってくれるならありがたい」ということなのだろうが、その後、話が進展している様子が見えないため、「本当にできるのか」といった思いを抱いていることがうかがえる。 「計画は進行中」と事業者  そこで、計画の進捗状況や事業概要などを聞くため、博栄商事に問い合わせてみたところ、同社担当者は「当社は企画を担当しており、実際の発電事業者は別な会社になるため、発電事業者に確認してみないことにはお答えできないこともあります」とのことだったが、「計画自体が進行中なのは間違いありません」と明かした。 そこで、本誌記者は「地元住民からは、『オーシャンズジャパン』という会社の名刺を持った人もあいさつに来ていたとの話も聞かれたが、いまの説明に出てきた『発電事業者』はオーシャンズジャパンのことか」と尋ねてみた。 すると、博栄商事の担当者は「当初はその予定で、もともとは同社から依頼があり、当社が企画を担当することになりました。ただその後、事情があって発電事業者は変わりました。新しい事業者は横浜市の会社で、二本松市に現地法人を立ち上げ、そこが太陽光発電所を運営することになります」と語った。 このほか、博栄商事の担当者への取材で明らかになったのは、①用地は8割ほどまとまっていること、②現在、境界周辺の測量を実施しているほか、環境影響評価などの開発行為に関する手続きの準備・協議を進めていること――等々。 そのうえで、同社担当者は「近く発電事業者と打ち合わせがあるので、問い合わせがあったことは伝えます。そこで発電事業者と相談のうえ、あらためてお伝えできることはお伝えします」と話した。 発電規模や発電開始時期の目標などは明らかにされなかったが、いずれにしても、計画が進行中なのは間違いないようだ。 ただ、前述したように、用地の大部分は山林・農地のため、開発の必要があり、そのためには各種手続きが必要になるから、近隣住民の目に見える形(工事など)で動きがあるまでにはもう少し時間がかかりそうな状況だ。おそらく、開発に当たっての環境影響評価方法書の縦覧などまで計画が進展しなければ、具体的なものは見えてこないのではないかと思われる。 近隣にも太陽光発電所が 二本松太陽光発電所(旧ゴルフ場)  ところで、一連の取材で同計画地周辺を歩いてみたところ、同所のほかにも太陽光発電所、あるいはそのための造成工事中のところがあることが目に付いた。 1つは、以前、本誌でも取り上げたサンフィールド二本松ゴルフ倶楽部岩代コース跡地。同ゴルフ場については、過去の本誌記事で次のようなことを伝えた。 ①同ゴルフ場は、東日本大震災を受け、クラブハウスやコースが被害を受けたほか、原発事故によりコース上で高い放射線量が計測されたため、一時閉鎖して施設修繕や除染を行ったうえで、営業再開を目指していた。 ②それと平行して、同ゴルフ場を運営するサンフィールドは、東京電力を相手取り放射性物質の除去などを求め、東京地裁に仮処分申し立てを行った。しかし、同申し立てが却下されたため、同社は2011年7月上旬ごろまでにホームページ上で「当面の休業」を発表した。なお、同仮処分申請の中で、東電が「原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。したがって東電には除染責任がない」との主張を展開し、県内外で大きな注目を集めた。 ③そんな中、同ゴルフ場では、「ゴルフ場をやめて大規模太陽光発電施設にするらしい」といったウワサが浮上した。ある関係者によると「大手ゼネコンが主体となり、京セラのシステムを使うそうだ」といったかなり具体的な話も出ていたが、「正式に打診があったわけではないらしく、結局、その話は立ち消えになった」(同)とのことだった。 ④その後、2012年秋ごろまでに、同ゴルフ場の駐車場に仮設住宅のような長屋風の建物がつくられ、除染作業員などの仮設宿舎になった。同ゴルフ場には立派なホテルも併設されているが、そこも作業員宿舎(食堂?)になった。ある地権者によると、「サンフィールドは『ビジネス上の付き合いから、除染事業者である大成建設に無償貸与している』と説明していた」とのことだった。そのため、少なくとも、この時点では、ゴルフ場再開の可能性は事実上なくなり、用地がどうなるのかが注目されていた。 ⑤2014年春になると、先のウワサとは別に、大規模太陽光発電施設にする目的で、ゴルフ場用地を買いたいという会社が現れた。その会社は、東京都港区に本社を置く日本再生可能エネルギーで、ある地権者は「同社の要請(土地売却)に応じた。私の知る限り、ほとんどが同様の意向だと思う」と話した。 過去の本誌記事でリポートしたのはここまでだが、その後も、この地権者(元地権者)からは「日本再生可能エネルギーで太陽光発電所に必要なだけの用地をまとめ、本格的に動き出した」といった話は聞かされていた。もっとも、この地権者(元地権者)自身が「土地を売ったことで、直接的には関係なくなったから、詳しいことは分からないけど……」とのことで、具体的な事業の進捗状況などは分かっていなかった。 今回、あらためて同所を訪ねてみると、「二本松太陽光発電所」という看板が立てられ、外から様子をうかがった限りでは、太陽光発電所として稼働しているように見受けられた。同所を取得した日本再生可能エネルギーのHPを見てみると、国内他所の太陽光発電所に関するリリースは出ているものの、二本松太陽光発電所についてのリリースは見当たらなかった。 そこで、同社に問い合わせてみたところ、①同発電所は2017年8月から稼働していること、②発電規模は29・5㍋㍗であること――が明らかになった。つまり、すでに発電・売電を行っている、と。 なお、同社は太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーを利用した発電・売電事業を手掛ける株式会社で、2013年5月10日設立。代表はアダム・バリーン氏。HPに掲載されたリリースを見る限り、国内各地で太陽光発電所を運営しており、県内では二本松市のほかに、国見町でも2016年2月から太陽光発電所を稼働している。 工事中の計画  一方、その近くでは別の太陽光発電所の工事が行われていた。工事案内板を見ると、場所は「初森字天狗塚69―1 外3筆」、目的は「太陽光発電所建設用地の造成」、林地開発について「許可を受けた者」は札幌市の「エム・エス・ケイ」と書かれていた。 同社について調べてみると、札幌市で「ホテル翔SAPPORO」を経営しており、ホテル経営が主業のようだ。ただ、同社の商業登記簿謄本を確認すると、事業目的は、以前は①ホテル及び旅館の運営管理、②不動産の売買及び賃貸、③古物商の経営などだったが、2016年8月に変更され、再生可能エネルギーによる発電事業及び発電設備の販売、施工工事請負が追加された。最近になり、同事業に参入したことがうかがえる。 同社に二本松市で太陽光発電事業をやることになった経緯などについて問い合わせたところ、一度、連絡はあったものの、質問に対する回答は本号締め切りには間に合わなかった。そのため、事業規模などは現時点では明らかになっていない。 ちなみに、冒頭紹介した計画は、前述した通り、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。そこから直線距離で1㌔ほど南にいったところに二本松太陽光発電所(ゴルフ場跡地)があり、さらに直線距離で南に1㌔ほどの辺りに現在工事中のエム・エス・ケイの事業地がある。 こうして見ると、同地区周辺は民間の、それも県外事業者による太陽光発電施設、あるいはその計画が多いことが分かる。 ある地元住民は「震災・原発事故を経て、結果的にそうなりましたね。課題はソーラー発電システムの耐用年数を超えた時にどうなるのかということでしょうけど、そこさえしっかりしてもらえれば、地域としてこういうものを推奨していくのもいいのではないか」と語った。 あわせて読みたい 【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声