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富岡町

  • 【富岡町】山本育男町長インタビュー(2023.12)

    【富岡町】山本育男町長インタビュー(2023.12)

    やまもと・いくお 1958年8月生まれ。原町高、東京農業大卒。町議を連続5期務め、副議長などを歴任。2021年7月の富岡町長選で初当選を果たした。 帰還と移住促進や賑わいづくりに取り組んでいく  ――今年4月に「特定復興再生拠点区域」が避難指示解除となりました。  「11月現在で64世帯94人の方が居住しています。震災以前の夜の森地区は多くの方が住んでいた地域でした。同地区の生活環境を充実させ、にぎわいを取り戻すことが、町内の均衡ある発展、ひいては本町の真の復興につながるものと考えているので、買い物環境を備えた住民の憩いと交流の場となる温浴施設の整備を現在検討しています」  ――昨年「共生型サポートセンター」を開設しましたが、現在の状況は。  「特別養護老人ホーム『桜の園』には10月末現在、33人が入所しています。最大48人入所可能なので、運営スタッフを確保しながら、地域福祉の拠点として運営体制強化を図ってまいります。併設しているトータルサポートセンターとみおかは、高齢者等の支援に限らず、カフェやフィットネスジム、ワークショップルームなどがあり、交流の場として多くの方にご利用いただいています」  ――その他取り組んでいる重点事業は。  「1つ目は『農業と商工業の育成』です。現在、玉ネギの集出荷施設を建設中で、年度内に完了する予定です。令和2年4月に供用開始した富岡産業団地は進出企業がほぼ決定し、現在第2産業団地建設に向けて調査中です。  2つ目は『帰還と移住の促進』です。お試し住宅を利用した短期間の町内滞在や、帰還・移住関連補助金の問い合わせに丁寧に対応し、移住定住増加に繋げていきます。首都圏の親子を対象としたツアーを実施し、大変好評をいただきました。本町を訪れる人を一人でも増やすため、町の特性を生かした魅力的なイベントを積極的に企画してまいります。  3つ目は『子どもたちの環境作り』です。来年3月には放課後児童クラブが完成します。子育て世代が安心して働ける環境づくりを進め、子どもたちを大事にする町として充実を図っていきます。また、本町には現在小・中学生が71人いますが、中学校卒業後は町外の高校に進学することになります。その子どもたちが、本町に戻ってきたくなるような教育や施策を進めます」  ――今後の抱負を。  「町内には未だ避難指示が解除されていない地域があります。今後、必要となる環境整備を着実に進め、一刻も早く、1㍉でも広く避難指示の解除を実現させ、町が真に目指すところである町内全域の避難指示解除に向けて邁進していきます。また、にぎわいづくりにも力を入れ、人が人を呼び込む交流人口の拡大にも全力で取り組んでまいります」 富岡町ホームページ

  • 【写真】復興拠点避難解除の光と影【浪江町・富岡町】

    【写真】復興拠点避難解除の光と影【浪江町・富岡町】

     浪江町と富岡町の帰還困難区域内に設定された「特定復興再生拠点区域」の避難指示が解除された。これまでに葛尾村、双葉町、大熊町で復興拠点の避難指示が解除されており、今回は4、5例目となる。(写真左下の数字は地上1㍍で測定した空間線量。単位はマイクロシーベルト毎時)  浪江町は3月31日に解除され、午前10時に町の防災無線で解除を伝える放送があった。その後、室原地区の防災拠点(整備中)敷地内で記念式典を行い、吉田栄光町長、政府原子力災害現地対策本部の師田晃彦副本部長があいさつした。同町は総面積約224平方㌔のうち、約180平方㌔(約80%)が帰還困難区域に指定されている。このうち、今回解除されたのは室原、末森、津島、大堀の4地区の復興拠点で、計約6・61平方㌔(約4%)にとどまる。 浪江町 津島地区に整備された福島再生賃貸住宅(0.56μSv/h) 室原地区の防災拠点(0.11μSv/h) 大堀地区の「陶芸の杜おおぼり」(1.78μSv/h) 津島地区の福島再生賃貸住宅の住民に群がる報道陣 (0.46μSv/h) 記念式典であいさつする吉田栄光浪江町長  一方、富岡町は4月1日に解除された。同日は避難指示解除記念セレモニーが行われ、山本育男町長があいさつした後、岸田文雄首相らが祝辞を述べた。同町の総面積68平方㌔のうち、帰還困難区域は約8平方㌔(約12%)。このうち、復興拠点に指定されたのは桜並木で有名な夜の森地区など約3・9平方㌔(約49%)となっている。 富岡町 にぎわう夜の森公園の隣接地には除染などで解体された住宅の跡が残る (0.32μSv/h) 多くの花見客でにぎわう夜の森の桜並木 (0.42μSv/h) 除染された夜の森公園で遊ぶ家族連れ (0.20μSv/h) 閉店した状態のままになっているコンビニエンスストア (0.44μSv/h) 避難指示解除記念セレモニーに参加した岸田文雄首相(中央)と、山本育男富岡町長(左)、内堀雅雄知事  復興拠点の避難指示解除は、これまでに葛尾村、双葉町、大熊町で実施され、浪江町と富岡町は4、5例目になる。住民が戻って生活することが難しいとされてきた帰還困難区域だが、こうして復興への第一歩を踏み出した。その歓迎ムードの一方で、放射線量の問題やどれだけ住民が戻るかといった課題があり、復興への道のりは簡単ではない。 あわせて読みたい 【原発事故から12年】旧避難区域のいま【2023年】写真 福島第一原発のいま【2023年】【写真】

  • 【福島県】相次ぐ公務員の性犯罪(男性に性交強いた富岡町男性職員)

    【福島県】相次ぐ公務員の性犯罪

     公務員の性犯罪が県内で相次いでいる。町職員、中学教師、警察官、自衛官と職種は多様。教師と警官に至っては立場を利用した犯行だ。「お堅い公務員だから間違ったことはしない」という性善説は捨て、住民が監視を続ける必要がある。 男性に性交強いた富岡町男性職員【町の性的少数者支援策にも影響か】  1月24日、準強制性交などに問われている元富岡町職員北原玄季被告(22)=いわき市・本籍大熊町=の初公判が地裁郡山支部で開かれた。郡山市や相双地区で、睡眠作用がある薬を知人男性にだまして飲ませ、性交に及んだとして、同日時点で二つの事件で罪に問われている。被害者は薬の作用で記憶を失っていた。北原被告は他にも同様の事件を起こしており、追起訴される予定。次回は2月20日午後2時半から。 北原被告は高校卒業後の2019年4月に入庁。税務課課税係を経て、退職時は総務課財政係の主事を務めていた。20年ごろから不眠症治療薬を処方され、一連の犯行に使用した。 昨年5月には、市販ドリンクに睡眠薬を混ぜた物を相双地区の路上で知人男性に勧め犯行に及んだ。同9月の郡山市の犯行では、「酔い止め」と称し、酒と一緒に別の知人男性に飲ませていた。 懸念されるのは、富岡町が県内で初めて導入しようとしている、性的少数者のカップルの関係を公的に証明する「パートナーシップ制度」への影響だ。多様性を認める社会に合致し、移住にもつながる可能性のある取り組みだが、いかんせんタイミングが悪かった。町も影響がないことを祈っている様子。 優先すべきは厳罰を求めている被害者の感情だ。薬を盛られ、知らない間に性暴力を受けるのは恐怖でしかない。罪が確定してからになるだろうが、山本育男町長は「性別に関係なく性暴力は許さない」というメッセージを出す必要がある。 男子の下半身触った石川中男性講師【保護者が恐れる動画拡散の可能性】  石川中学校の音楽講師・西舘成矩被告(40)は、男子生徒42人の下半身を触ったとして昨年11月に懲戒免職。その後、他の罪も判明し、強制わいせつや児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)で逮捕・起訴された。 県教委の聞き取りに「女子に対してやってはいけないという認識はあったが、男子にはなかった」と話していたという(昨年11月26日付福島民友)。 事情通が内幕を語る。 「あいつは地元の寺の息子だよ。生徒には人気があったらしいな。被害に遭った子どもが友達に『触られた』と話したらしい。そしたらその友達がたまげちゃって、別の先生に話して公になった」 当人たちは「おふざけ」の延長と捉えていたとのこと。ただ、10代前半の男子は、性に興味津々でも正しい知識は十分身に着いていないだろう。監督すべき教師としてあるまじき行為だ。 西舘被告は一部行為の動画撮影に及んでいた。それらはネットを介し世界中で売買されている可能性もある。子どもの将来と保護者の不安を考えれば「トンデモ教師が起こしたワイセツ事件」と矮小化するのは早計だ。注目度の高い初公判は2月14日午後1時半から地裁郡山支部で開かれる予定。 うやむやにされる「警察官の犯罪」【巡査部長が原発被災地で下着物色】  浜通りの被災地をパトロールする部署の男性巡査部長(38)が、大熊町、富岡町の空き家に侵入し女性用の下着を盗んでいた。配属後間もない昨年4月下旬から犯行を50~60回繰り返し、自宅からはスカートやワンピースなど約1000点が見つかった(昨年12月8日付福島民友)。1人の巡回が多く、行動を不審に思った同僚が上司に報告し、発覚したという。県警は逮捕せず、書類のみ地検に送った。巡査部長は懲戒免職になっている。  県警は犯人の実名を公表していないが、《児嶋洋平本部長は、「任意捜査の内容はこれまでも(実名は)言ってきていない」などと説明した》(同12月21日付朝日新聞)。身内に甘い。  通常は押収物を武道場に並べるセレモニーがあるが、今回はないようだ。昨年6月に郡山市の会社員の男が下着泥棒で逮捕された時は、1000点以上の押収物を陳列した。容疑は同じだが、立場を利用した犯行という点でより悪質なのに、対応に一貫性がない。  初犯であり、社会的制裁を受けているとして不起訴処分(起訴猶予)になる可能性が高いが、物色された被災者の怒りは収まらないだろう。 判然としない強制わいせつ自衛官【裁判に揺れる福島・郡山両駐屯地】 五ノ井さんに集団で強制わいせつした男性自衛官たちが勤務していた陸自郡山駐屯地  昨年12月5日、陸上自衛隊福島駐屯地の吾妻修平・3等陸曹(27)=福島市=が強制わいせつ容疑で逮捕された(同6日付福島民報)。5月25日夜、市内の屋外駐車場で面識のない20代女性の体を触るなどわいせつな行為をしたという。事件の日、吾妻3等陸曹は午後から非番だった。2月7日午前11時から福島地裁で初公判が予定されている。 県内の陸自駐屯地をめぐっては、郡山駐屯地で男性自衛官たちからわいせつな行為を受けた元自衛官五ノ井里奈さん(23)=宮城県出身=が国と加害者を相手取り民事訴訟を起こす準備を進めている。刑事では強制わいせつ事件として、検察が再捜査しているが、嫌疑不十分で不起訴になる可能性もある。五ノ井さんは最悪の事態を考え提訴を検討したということだろう。 加害者が県内出身者かどうかが駐屯地を受け入れている郡山市民の関心事だが、明らかになる日は近い。 あわせて読みたい セクハラの舞台となった陸上自衛隊郡山駐屯地【五ノ井里奈さん】 【開店前の飲食店に並ぶ福島市職員】本誌取材で分かったサボりの実態 会津若松市職員「公金詐取事件」を追う

  • 【富岡町】山本育男町長インタビュー

    【富岡町】山本育男町長インタビュー

     1958年8月生まれ。原町高、東京農業大卒。町議を連続5期務め、副議長などを歴任。2021年7月の富岡町長選で初当選を果たした。  ――夜の森・大菅地区の特定復興再生拠点区域で、来春の避難指示解除に向けた準備が進められています。  「避難指示解除が現実的なものとなるまで長い年月を要しましたが、再び生活できる地域として生まれ変わろうとしているのは大変喜ばしいことです。本町では、故郷での生活を希望する方々が心地よく暮らしていける環境を整え、いつでも『おかえりなさい』と言える状況を築き上げていきます」  ――2021年、拠点区域外の地域に関しても「除染して希望するすべての住民が帰還できるよう2020年代をかけて避難指示の解除を進める」という政府方針が示されました。政府に求めることは。  「帰還困難区域を有する自治体の『再生を決してあきらめない』という気持ちと、団結した姿勢により実現した政府方針だと考えています。ただ、我々が求めているのはあくまで〝早期〟の帰還であり、町の全域除染です。現在の方針では帰還を望む人の家だけ除染されることになりますが、隣家の空間線量が高ければ意味がない。政府には住民の意向に沿った方針を示してほしいと思います」  ――「復興まちづくり」の見通しについて。  「将来を切り開くための基礎はできつつありますが、医療、福祉、教育、産業、絆の維持、住宅、移住促進など、取り組まなければならないことは多いです。希望と笑顔あふれるまちにするため、町民一人ひとりの声を丁寧に聞いて、着実に取り組んでいきます。今後はソフト事業に注力していく考えです。具体的には、元々住んでいた住民と、移住してきた方々をつなぐイベントを積極的に開き、交流を促していきます」  ――そのほか取り組んでいる重点事業は。  「短期的には、帰還者の多くが高齢者であることから、2022年開設した『共生型サポートセンター』を円滑に運営し、福祉の充実を図っていきます。一方で、子どもたちの健全育成を目的に造られた『富岡わんぱくパーク』を生かし、子どもの体力向上や運動不足の解消及び子育て世代の交流を促進していきます  中長期的には、人材育成・確保が重要になると考えているので、教育費用の無償化、移住者への住宅支援などに努めていきます」  ――今後の抱負。  「本町は全町避難した自治体なので、これから復興・再生していくにはかなりの労力・時間を要するものと考えています。それでも、将来を見据えた町政運営を進めていくのが我々の使命です。全国に避難している町民が少しでも早く故郷で生活したいと思える環境を整備していきます」 富岡町ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【富岡町】山本育男町長インタビュー(2023.12)

    やまもと・いくお 1958年8月生まれ。原町高、東京農業大卒。町議を連続5期務め、副議長などを歴任。2021年7月の富岡町長選で初当選を果たした。 帰還と移住促進や賑わいづくりに取り組んでいく  ――今年4月に「特定復興再生拠点区域」が避難指示解除となりました。  「11月現在で64世帯94人の方が居住しています。震災以前の夜の森地区は多くの方が住んでいた地域でした。同地区の生活環境を充実させ、にぎわいを取り戻すことが、町内の均衡ある発展、ひいては本町の真の復興につながるものと考えているので、買い物環境を備えた住民の憩いと交流の場となる温浴施設の整備を現在検討しています」  ――昨年「共生型サポートセンター」を開設しましたが、現在の状況は。  「特別養護老人ホーム『桜の園』には10月末現在、33人が入所しています。最大48人入所可能なので、運営スタッフを確保しながら、地域福祉の拠点として運営体制強化を図ってまいります。併設しているトータルサポートセンターとみおかは、高齢者等の支援に限らず、カフェやフィットネスジム、ワークショップルームなどがあり、交流の場として多くの方にご利用いただいています」  ――その他取り組んでいる重点事業は。  「1つ目は『農業と商工業の育成』です。現在、玉ネギの集出荷施設を建設中で、年度内に完了する予定です。令和2年4月に供用開始した富岡産業団地は進出企業がほぼ決定し、現在第2産業団地建設に向けて調査中です。  2つ目は『帰還と移住の促進』です。お試し住宅を利用した短期間の町内滞在や、帰還・移住関連補助金の問い合わせに丁寧に対応し、移住定住増加に繋げていきます。首都圏の親子を対象としたツアーを実施し、大変好評をいただきました。本町を訪れる人を一人でも増やすため、町の特性を生かした魅力的なイベントを積極的に企画してまいります。  3つ目は『子どもたちの環境作り』です。来年3月には放課後児童クラブが完成します。子育て世代が安心して働ける環境づくりを進め、子どもたちを大事にする町として充実を図っていきます。また、本町には現在小・中学生が71人いますが、中学校卒業後は町外の高校に進学することになります。その子どもたちが、本町に戻ってきたくなるような教育や施策を進めます」  ――今後の抱負を。  「町内には未だ避難指示が解除されていない地域があります。今後、必要となる環境整備を着実に進め、一刻も早く、1㍉でも広く避難指示の解除を実現させ、町が真に目指すところである町内全域の避難指示解除に向けて邁進していきます。また、にぎわいづくりにも力を入れ、人が人を呼び込む交流人口の拡大にも全力で取り組んでまいります」 富岡町ホームページ

  • 【写真】復興拠点避難解除の光と影【浪江町・富岡町】

     浪江町と富岡町の帰還困難区域内に設定された「特定復興再生拠点区域」の避難指示が解除された。これまでに葛尾村、双葉町、大熊町で復興拠点の避難指示が解除されており、今回は4、5例目となる。(写真左下の数字は地上1㍍で測定した空間線量。単位はマイクロシーベルト毎時)  浪江町は3月31日に解除され、午前10時に町の防災無線で解除を伝える放送があった。その後、室原地区の防災拠点(整備中)敷地内で記念式典を行い、吉田栄光町長、政府原子力災害現地対策本部の師田晃彦副本部長があいさつした。同町は総面積約224平方㌔のうち、約180平方㌔(約80%)が帰還困難区域に指定されている。このうち、今回解除されたのは室原、末森、津島、大堀の4地区の復興拠点で、計約6・61平方㌔(約4%)にとどまる。 浪江町 津島地区に整備された福島再生賃貸住宅(0.56μSv/h) 室原地区の防災拠点(0.11μSv/h) 大堀地区の「陶芸の杜おおぼり」(1.78μSv/h) 津島地区の福島再生賃貸住宅の住民に群がる報道陣 (0.46μSv/h) 記念式典であいさつする吉田栄光浪江町長  一方、富岡町は4月1日に解除された。同日は避難指示解除記念セレモニーが行われ、山本育男町長があいさつした後、岸田文雄首相らが祝辞を述べた。同町の総面積68平方㌔のうち、帰還困難区域は約8平方㌔(約12%)。このうち、復興拠点に指定されたのは桜並木で有名な夜の森地区など約3・9平方㌔(約49%)となっている。 富岡町 にぎわう夜の森公園の隣接地には除染などで解体された住宅の跡が残る (0.32μSv/h) 多くの花見客でにぎわう夜の森の桜並木 (0.42μSv/h) 除染された夜の森公園で遊ぶ家族連れ (0.20μSv/h) 閉店した状態のままになっているコンビニエンスストア (0.44μSv/h) 避難指示解除記念セレモニーに参加した岸田文雄首相(中央)と、山本育男富岡町長(左)、内堀雅雄知事  復興拠点の避難指示解除は、これまでに葛尾村、双葉町、大熊町で実施され、浪江町と富岡町は4、5例目になる。住民が戻って生活することが難しいとされてきた帰還困難区域だが、こうして復興への第一歩を踏み出した。その歓迎ムードの一方で、放射線量の問題やどれだけ住民が戻るかといった課題があり、復興への道のりは簡単ではない。 あわせて読みたい 【原発事故から12年】旧避難区域のいま【2023年】写真 福島第一原発のいま【2023年】【写真】

  • 【福島県】相次ぐ公務員の性犯罪

     公務員の性犯罪が県内で相次いでいる。町職員、中学教師、警察官、自衛官と職種は多様。教師と警官に至っては立場を利用した犯行だ。「お堅い公務員だから間違ったことはしない」という性善説は捨て、住民が監視を続ける必要がある。 男性に性交強いた富岡町男性職員【町の性的少数者支援策にも影響か】  1月24日、準強制性交などに問われている元富岡町職員北原玄季被告(22)=いわき市・本籍大熊町=の初公判が地裁郡山支部で開かれた。郡山市や相双地区で、睡眠作用がある薬を知人男性にだまして飲ませ、性交に及んだとして、同日時点で二つの事件で罪に問われている。被害者は薬の作用で記憶を失っていた。北原被告は他にも同様の事件を起こしており、追起訴される予定。次回は2月20日午後2時半から。 北原被告は高校卒業後の2019年4月に入庁。税務課課税係を経て、退職時は総務課財政係の主事を務めていた。20年ごろから不眠症治療薬を処方され、一連の犯行に使用した。 昨年5月には、市販ドリンクに睡眠薬を混ぜた物を相双地区の路上で知人男性に勧め犯行に及んだ。同9月の郡山市の犯行では、「酔い止め」と称し、酒と一緒に別の知人男性に飲ませていた。 懸念されるのは、富岡町が県内で初めて導入しようとしている、性的少数者のカップルの関係を公的に証明する「パートナーシップ制度」への影響だ。多様性を認める社会に合致し、移住にもつながる可能性のある取り組みだが、いかんせんタイミングが悪かった。町も影響がないことを祈っている様子。 優先すべきは厳罰を求めている被害者の感情だ。薬を盛られ、知らない間に性暴力を受けるのは恐怖でしかない。罪が確定してからになるだろうが、山本育男町長は「性別に関係なく性暴力は許さない」というメッセージを出す必要がある。 男子の下半身触った石川中男性講師【保護者が恐れる動画拡散の可能性】  石川中学校の音楽講師・西舘成矩被告(40)は、男子生徒42人の下半身を触ったとして昨年11月に懲戒免職。その後、他の罪も判明し、強制わいせつや児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)で逮捕・起訴された。 県教委の聞き取りに「女子に対してやってはいけないという認識はあったが、男子にはなかった」と話していたという(昨年11月26日付福島民友)。 事情通が内幕を語る。 「あいつは地元の寺の息子だよ。生徒には人気があったらしいな。被害に遭った子どもが友達に『触られた』と話したらしい。そしたらその友達がたまげちゃって、別の先生に話して公になった」 当人たちは「おふざけ」の延長と捉えていたとのこと。ただ、10代前半の男子は、性に興味津々でも正しい知識は十分身に着いていないだろう。監督すべき教師としてあるまじき行為だ。 西舘被告は一部行為の動画撮影に及んでいた。それらはネットを介し世界中で売買されている可能性もある。子どもの将来と保護者の不安を考えれば「トンデモ教師が起こしたワイセツ事件」と矮小化するのは早計だ。注目度の高い初公判は2月14日午後1時半から地裁郡山支部で開かれる予定。 うやむやにされる「警察官の犯罪」【巡査部長が原発被災地で下着物色】  浜通りの被災地をパトロールする部署の男性巡査部長(38)が、大熊町、富岡町の空き家に侵入し女性用の下着を盗んでいた。配属後間もない昨年4月下旬から犯行を50~60回繰り返し、自宅からはスカートやワンピースなど約1000点が見つかった(昨年12月8日付福島民友)。1人の巡回が多く、行動を不審に思った同僚が上司に報告し、発覚したという。県警は逮捕せず、書類のみ地検に送った。巡査部長は懲戒免職になっている。  県警は犯人の実名を公表していないが、《児嶋洋平本部長は、「任意捜査の内容はこれまでも(実名は)言ってきていない」などと説明した》(同12月21日付朝日新聞)。身内に甘い。  通常は押収物を武道場に並べるセレモニーがあるが、今回はないようだ。昨年6月に郡山市の会社員の男が下着泥棒で逮捕された時は、1000点以上の押収物を陳列した。容疑は同じだが、立場を利用した犯行という点でより悪質なのに、対応に一貫性がない。  初犯であり、社会的制裁を受けているとして不起訴処分(起訴猶予)になる可能性が高いが、物色された被災者の怒りは収まらないだろう。 判然としない強制わいせつ自衛官【裁判に揺れる福島・郡山両駐屯地】 五ノ井さんに集団で強制わいせつした男性自衛官たちが勤務していた陸自郡山駐屯地  昨年12月5日、陸上自衛隊福島駐屯地の吾妻修平・3等陸曹(27)=福島市=が強制わいせつ容疑で逮捕された(同6日付福島民報)。5月25日夜、市内の屋外駐車場で面識のない20代女性の体を触るなどわいせつな行為をしたという。事件の日、吾妻3等陸曹は午後から非番だった。2月7日午前11時から福島地裁で初公判が予定されている。 県内の陸自駐屯地をめぐっては、郡山駐屯地で男性自衛官たちからわいせつな行為を受けた元自衛官五ノ井里奈さん(23)=宮城県出身=が国と加害者を相手取り民事訴訟を起こす準備を進めている。刑事では強制わいせつ事件として、検察が再捜査しているが、嫌疑不十分で不起訴になる可能性もある。五ノ井さんは最悪の事態を考え提訴を検討したということだろう。 加害者が県内出身者かどうかが駐屯地を受け入れている郡山市民の関心事だが、明らかになる日は近い。 あわせて読みたい セクハラの舞台となった陸上自衛隊郡山駐屯地【五ノ井里奈さん】 【開店前の飲食店に並ぶ福島市職員】本誌取材で分かったサボりの実態 会津若松市職員「公金詐取事件」を追う

  • 【富岡町】山本育男町長インタビュー

     1958年8月生まれ。原町高、東京農業大卒。町議を連続5期務め、副議長などを歴任。2021年7月の富岡町長選で初当選を果たした。  ――夜の森・大菅地区の特定復興再生拠点区域で、来春の避難指示解除に向けた準備が進められています。  「避難指示解除が現実的なものとなるまで長い年月を要しましたが、再び生活できる地域として生まれ変わろうとしているのは大変喜ばしいことです。本町では、故郷での生活を希望する方々が心地よく暮らしていける環境を整え、いつでも『おかえりなさい』と言える状況を築き上げていきます」  ――2021年、拠点区域外の地域に関しても「除染して希望するすべての住民が帰還できるよう2020年代をかけて避難指示の解除を進める」という政府方針が示されました。政府に求めることは。  「帰還困難区域を有する自治体の『再生を決してあきらめない』という気持ちと、団結した姿勢により実現した政府方針だと考えています。ただ、我々が求めているのはあくまで〝早期〟の帰還であり、町の全域除染です。現在の方針では帰還を望む人の家だけ除染されることになりますが、隣家の空間線量が高ければ意味がない。政府には住民の意向に沿った方針を示してほしいと思います」  ――「復興まちづくり」の見通しについて。  「将来を切り開くための基礎はできつつありますが、医療、福祉、教育、産業、絆の維持、住宅、移住促進など、取り組まなければならないことは多いです。希望と笑顔あふれるまちにするため、町民一人ひとりの声を丁寧に聞いて、着実に取り組んでいきます。今後はソフト事業に注力していく考えです。具体的には、元々住んでいた住民と、移住してきた方々をつなぐイベントを積極的に開き、交流を促していきます」  ――そのほか取り組んでいる重点事業は。  「短期的には、帰還者の多くが高齢者であることから、2022年開設した『共生型サポートセンター』を円滑に運営し、福祉の充実を図っていきます。一方で、子どもたちの健全育成を目的に造られた『富岡わんぱくパーク』を生かし、子どもの体力向上や運動不足の解消及び子育て世代の交流を促進していきます  中長期的には、人材育成・確保が重要になると考えているので、教育費用の無償化、移住者への住宅支援などに努めていきます」  ――今後の抱負。  「本町は全町避難した自治体なので、これから復興・再生していくにはかなりの労力・時間を要するものと考えています。それでも、将来を見据えた町政運営を進めていくのが我々の使命です。全国に避難している町民が少しでも早く故郷で生活したいと思える環境を整備していきます」 富岡町ホームページ 政経東北【2022年12月号】