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木幡浩

  • 【福島市】木幡浩市長インタビュー【2024.3】

    【福島市】木幡浩市長インタビュー【2024.3】

     こはた・ひろし 1960年生まれ。東大経済学部卒。自治省(現総務省)に入省し岡山県副知事、消防大学校長、復興庁福島復興局長などを歴任。現在2期目。  ――福島駅東口再開発事業は着工と開業が1年程度延期されることが決まったあと、昨年12月定例会では規模の見直しを検討することが発表されました。  「再開発事業は計画もテナントもおおむねめどが立っていました。ところが着工までに全国的な資材費・人件費の高騰に見舞われました。市は再開発組合とともに資材の見直し、施設計画の調整、国の補助金の確保と工夫を重ねました。ただ、資材費高騰の影響を抑えるまでの効果は得られず、計画自体の見直しが必要になりました。  商業機能をどうするか検討する必要も出てきました。改めて福島商圏の需要を事業主体の再開発組合がマーケット調査をしたところ、コロナ禍を経て電子商取引(EC)は想定以上に伸張、実店舗の需要は急速に縮小していました。全体的な見直しが必要になり、コスト増による1年延期に加え、設計の見直しでさらに最低1年は遅れることになりました。  再開発事業は基本的に民間事業です。再開発組合はテナントが入る民間部分を、市は組合から買い取った公共部分を維持管理していきます。民間部分の主な収入は家賃ですが、テナント入居が見通せずランニングコストを賄いきれない状況になってしまうことが分かりました。  民間の維持管理部分を減らそうと、現計画では融合している公共部分と民間部分を別棟にする案を考えました。私は『街なかの賑わい創出のために公共部分だけでも先行して建てられないか』と提案し、その検討の中で分棟にすると民間部分の収支改善が図られ、事業継続にめどが付くことが確認されました。  公共部分については、建設費用を抑えるために規模を縮減し、その上で使い勝手の良い施設にしていこうと考えました。劇場ホールとコンベンション両方の機能を備えた建物は難しく、劇場ホール案とコンベンション案を市民に提示しました。あくまで議論のたたき台であり、それ以外の案も不可能ではないと思います。今後進むべき方向を、市民を交えた議論を踏まえ決めたいと思います」  ――ここに来て駅周辺の東西一体のまちづくりという考え方も浮上しています。背景と、今後どのように議論を進めていくのか伺います。  「イトーヨーカドー福島店の撤退で西口の状況が変化することが挙げられます。民間企業の所有地なので市は注視しつつ情報収集してきました。民間の会社が入る話もありますが正確なことはまだ分かりません。売却の可能性も想定し情報収集に努めています。当該地は駅西側の玄関口であり、今後のまちづくりの観点から市として積極的に関与します。仮に所有者が売る場合、市民が望まない形になってはいけない。市が使うことも想定しなければなりません。そうなった時、市が何の案も用意していないのは好ましくない。議会や市民の皆さんの意見を聞き、市としての意向を複数用意していきたいと考えています。  福島駅東口と西口は一体化してまちづくりに取り組まなければなりません。2018年に策定した『風格ある県都を目指すまちづくり構想』では東西を結ぶ駅改札外の自由通路の改善を中長期的課題に位置付けました。まずは中心地の活性化を優先すべきと考えたからです。市が管理する自由通路の改善は、福島駅舎とも関わっています。市は駅舎の建て替えをJRに要望してきました。仮に建て替える場合、自由通路との調和が必要で、JRは市のまちづくりビジョンを参考にするとしています。そのために自由通路を含めた東西一体のまちづくりの方向性を今示しておくことは重要なのです」  ――東口再開発地区にある既存建物の取り壊しが年度内で終了する予定ですが、結論を先延ばしにすれば東口はいつまで経っても「何もない状態」が続くことになります。一方、拙速に結論を出すわけにもいかず、木幡市長としては難しい判断を迫られるのではないかと思います。  「駅の東西両方の賑わいを創出していく必要がありますが、東口の方をより急がなくてはならないという認識です。再開発ビルは民間事業者が銀行から借り入れて建設しています。延期するほど金利負担が増えていき、事業成立が困難になる。もし破綻したら空いたままの土地が生まれます。だからと言って拙速にならないよう慎重に検討していきます」  ――中期財政収支見通しで市財政の厳しさが明らかになっています。そうした中で本庁舎西側で市民センター(仮称)の建設が始まり、今後多くの公共施設の建て替えが控えています。老朽化施設の建て替えは必要ですが、財政収支も考えないと将来世代に大きなツケを回すことになってしまいます。  「福島市はこれまで大型事業を先送りしていた傾向があり、今それらをやらなければならない状況になっています。有効な手が打てるうちに積極的に行うことが必要です。将来の人口減少を考えると、今手を打たないとますます窮地に陥ってしまう。福島市が魅力のないまちになるのをただ待つのは避けたい。将来の人口を維持するためにも今やるべき事業は進め、むしろ先進的で魅力を感じてもらえるように転換したいです」  ――人口減少、少子高齢化が急加速している中、子育て支援や移住促進に注目が集まります。人口減少、少子高齢化対策について地方自治体でできることが限られる中、国はこういう対策に取り組むべきだという考えがあればお聞かせください。  「中核市市長会会長として、子育て世帯の負担軽減など所得に絡んだ施策の充実を国に要望しています。移住を促進しようと自治体同士が負担軽減策で競争すると疲弊してしまいます。効果的な施策を国でしっかりやっていただいて、自治体が創意工夫ある施策を進めていくことが重要です。  人を呼び込むには産業がないと続きません。産業振興、企業誘致にとどまらず、地元産業の高度化が必須と考えます。時代の変化が非常に激しいですから、創業・起業にも力を入れる必要があります。人手不足対策についてはこれまで家庭に入っていた女性や障がい者、高齢者の皆さんにも働いていただけるよう、事業者と行政は環境を整えなければなりません。  外国人雇用も求められています。これからは外国出身者の活躍が地域の活力となります。市は昨年、多文化共生センターを開設しました。事業者をサポートし外国人を雇用することへの理解を促進しています。また、外国人が安心して暮らせる環境づくりを担うのが4月に開校する公立夜間中学です。他地域では夜間中学の生徒の7割は外国にルーツのある方で、日本語教育や居場所づくりの役目があります。以上のような取り組みで、さまざまな人を受け入れ誰もが活躍できる市を目指します」

  • 【福島市】木幡浩市長インタビュー

    【福島市】木幡浩市長インタビュー

     こはた・ひろし 1960年生まれ。東大経済学部卒。自治省(現総務省)に入省し岡山県副知事、消防大学校長、復興庁福島復興局長などを歴任。現在市長2期目。  ――2022年度の除雪関連の予算を過去最大の8303万円に拡大しました。1月の大寒波の影響をお聞きします。 「昨季の大雪では、除雪に対し市民の皆様から厳しいご意見をいただきましたが、今季は教訓を生かした対応ができたと思います。必要な予算の確保はもちろん、除雪を体系的に行うためのマニュアルを作りました。市民の皆様にもメールで降雪・凍結情報を即時に知らせています。 隅々まで除雪するには市民の皆様の協力が必要です。小型除雪機の貸し出しはこれまでも行っていましたが、今季は台数を増やし、周知を図りました。その結果、貸出実績は以前に比べるとかなり増えました。 岡部など東部地区の関係者とは、除雪アダプト制度という決めた範囲を責任を持って除雪する協定を締結しました。ありがたいことに丁寧な作業のおかげで生活道路の除雪体制は改善が図れたと思います」 ――政府は5月8日から新型コロナウイルス感染症の位置付けを5類に引き下げると発表しました。3月13日からはマスクの着用が緩和されます。「出口」が見えてきた中で市の経済や観光振興についての施策をお聞きします。 「『出口』に至るためには何よりも感染防止を徹底していくことが必須です。世代別で死者数が最も多い高齢者の感染は何としても防がなければなりません。高齢者と面会する場合のマスク着用などは、これまでと変わらず続けなくてはならないと考えています。 経済活性化に関して言えば、心強いのは『道の駅ふくしま』という地域活性化の核ができたことです。年間の目標来場者数は133万人でしたが、オープンから約9カ月で150万人に達し、売り上げも11億円を超えました。冬季の来場者が減る傾向にあるので、引き続きイベントやツアーなどを仕掛けていきますが、今春には『周遊スポット魅力アップ支援事業』を活用したスポットが続々オープンします。例えば、温泉旅館であれば魅力ある露天風呂を、観光農園であればインスタスポットを作り、点ではなく面で福島市を巡る楽しみを創出する仕組みを整え、それを物販にもつなげていきます。   福島市は新商品が生まれる傾向が弱い印象があるので、道の駅をベースに事業者同士の連携を深めて商品を作り出し、併せて発信もするというアンテナショップの役目をより強めていきます。  ふるさと納税の返礼品はその一環であり、私としては福島市のPRにとどまらず、マーケティングという地域経済活性化に即効性のあるものとして考えています」  ――福島駅東口で行われている市街地再開発事業について、当初計画より事業費や市が負担する補助金が増え、今後の精査によってはさらに増える可能性が指摘されています。 「資材が高騰しており、事業費増は避けられません。ただ精査をすることで、増えるだけではなく減らせる部分も見つかります。事業費圧縮に努めることを肝に銘じて精査を続けています。 国などからの補助金は通常であれば定率なので、資材が高騰しても増えるわけではありません。市としてはその状況を考慮し、さらに補助金を要請していきます。ただ国も、再開発事業が止まれば都市としての魅力が低下すると強く懸念しているので、負担軽減に向けた制度を作っている途中です。 また、完成後の運営を効率的に行うことも非常に大事です。今のうちから運営母体を決めて、その上で大規模・国際的な会議の誘致活動をしていきます。かかる経費はできるだけ収益で賄っていける基盤を作りたいと思っています」  ――市が昨年9月に発表した中期財政収支の見通しも非常に厳しい状況です。市債残高は膨らみ、2026年度には財政調整基金と減債基金の残高がなくなり、財源不足を埋められず必要な予算が立てられなくなると試算されています。 「財政は厳しいですが、やるべき事業はやっておかないと、後々の負担は逆に増えてしまうと考えます。いま手を打たなかったことで、都市の魅力が下がり、人口減少がますます進んでしまうことも危惧されます。そうなれば活力が失われ、街としてもっと苦しい状態に追い込まれてしまう。必要な事業を先送りすることなく実施していくことが大事だし、私はその精神でこれまでも取り組んできました。 人も富も集中する東京は民間が都市の魅力向上を果たしてくれる面が強い。しかし地方は、行政が主導的な役割を果たしていかないと都市としての存在感が低下していきます。私はそういう意識で、これからも市政運営に努めていきたいと思います。そのためにも行財政改革や事業の取捨選択、デジタル化などを進めていきます。 一方、『稼ぐ』という点では福島市が開発した全国的にも珍しい『議会答弁検討システム』を売り出していきます。本来は民間が稼げるようにするのが一番なのですが、行政自らが『稼ぐ』ことを意識し、財政の持続可能性を達成したいです」 ――老朽化する消防本部、市立図書館など、市内には建て替えが必要な公共施設が多数あります。どのように対応していきますか。 「すべての施設を建て替えるのは財政状況を考えると困難です。再編統合や規模縮小など多少痛みを伴うこともあるかもしれません。 とりわけ消防本部は災害対策の要ですから、耐震面に大きな問題がある状況は1日でも早く解消しなければなりません。 これから本庁舎西側で市民センターの建設が本格化します。同センターには市民会館や中央学習センターを再編統合した機能が備わります。一方、消防本部は市民会館の跡地に建設する計画です。市立図書館も老朽化が著しいですが、新たな建設場所などは決まっていません。財政状況にもよりますが、まずは消防本部の建て替えを優先し、その後、市立図書館の建設に着手できるよう検討を進めたいと思います」 ――念願だった古関裕而さんの野球殿堂入りが実現しました。 「祝賀ムードを維持しながら古関裕而記念館での発信に努めていきます。野球殿堂入りの証しとなるレリーフを展示し、多くの方に見に来てもらえるようにしたいと思います。 野球の試合を県営あづま球場で開き、古関さん作曲の歌で応援合戦をするのも一つのアイデアだと思います。今回の野球殿堂入りを機に、福島市を野球の聖地の一つにできないかと密かに考えています。 古関さんの曲は親しみがあって心地よい、古びないメロディーです。世代を超えて古関さんへの愛着を継承できる仕掛けを街なかに作っていきたいと思います」 福島市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】  

  • 【福島市】木幡浩市長インタビュー【2024.3】

     こはた・ひろし 1960年生まれ。東大経済学部卒。自治省(現総務省)に入省し岡山県副知事、消防大学校長、復興庁福島復興局長などを歴任。現在2期目。  ――福島駅東口再開発事業は着工と開業が1年程度延期されることが決まったあと、昨年12月定例会では規模の見直しを検討することが発表されました。  「再開発事業は計画もテナントもおおむねめどが立っていました。ところが着工までに全国的な資材費・人件費の高騰に見舞われました。市は再開発組合とともに資材の見直し、施設計画の調整、国の補助金の確保と工夫を重ねました。ただ、資材費高騰の影響を抑えるまでの効果は得られず、計画自体の見直しが必要になりました。  商業機能をどうするか検討する必要も出てきました。改めて福島商圏の需要を事業主体の再開発組合がマーケット調査をしたところ、コロナ禍を経て電子商取引(EC)は想定以上に伸張、実店舗の需要は急速に縮小していました。全体的な見直しが必要になり、コスト増による1年延期に加え、設計の見直しでさらに最低1年は遅れることになりました。  再開発事業は基本的に民間事業です。再開発組合はテナントが入る民間部分を、市は組合から買い取った公共部分を維持管理していきます。民間部分の主な収入は家賃ですが、テナント入居が見通せずランニングコストを賄いきれない状況になってしまうことが分かりました。  民間の維持管理部分を減らそうと、現計画では融合している公共部分と民間部分を別棟にする案を考えました。私は『街なかの賑わい創出のために公共部分だけでも先行して建てられないか』と提案し、その検討の中で分棟にすると民間部分の収支改善が図られ、事業継続にめどが付くことが確認されました。  公共部分については、建設費用を抑えるために規模を縮減し、その上で使い勝手の良い施設にしていこうと考えました。劇場ホールとコンベンション両方の機能を備えた建物は難しく、劇場ホール案とコンベンション案を市民に提示しました。あくまで議論のたたき台であり、それ以外の案も不可能ではないと思います。今後進むべき方向を、市民を交えた議論を踏まえ決めたいと思います」  ――ここに来て駅周辺の東西一体のまちづくりという考え方も浮上しています。背景と、今後どのように議論を進めていくのか伺います。  「イトーヨーカドー福島店の撤退で西口の状況が変化することが挙げられます。民間企業の所有地なので市は注視しつつ情報収集してきました。民間の会社が入る話もありますが正確なことはまだ分かりません。売却の可能性も想定し情報収集に努めています。当該地は駅西側の玄関口であり、今後のまちづくりの観点から市として積極的に関与します。仮に所有者が売る場合、市民が望まない形になってはいけない。市が使うことも想定しなければなりません。そうなった時、市が何の案も用意していないのは好ましくない。議会や市民の皆さんの意見を聞き、市としての意向を複数用意していきたいと考えています。  福島駅東口と西口は一体化してまちづくりに取り組まなければなりません。2018年に策定した『風格ある県都を目指すまちづくり構想』では東西を結ぶ駅改札外の自由通路の改善を中長期的課題に位置付けました。まずは中心地の活性化を優先すべきと考えたからです。市が管理する自由通路の改善は、福島駅舎とも関わっています。市は駅舎の建て替えをJRに要望してきました。仮に建て替える場合、自由通路との調和が必要で、JRは市のまちづくりビジョンを参考にするとしています。そのために自由通路を含めた東西一体のまちづくりの方向性を今示しておくことは重要なのです」  ――東口再開発地区にある既存建物の取り壊しが年度内で終了する予定ですが、結論を先延ばしにすれば東口はいつまで経っても「何もない状態」が続くことになります。一方、拙速に結論を出すわけにもいかず、木幡市長としては難しい判断を迫られるのではないかと思います。  「駅の東西両方の賑わいを創出していく必要がありますが、東口の方をより急がなくてはならないという認識です。再開発ビルは民間事業者が銀行から借り入れて建設しています。延期するほど金利負担が増えていき、事業成立が困難になる。もし破綻したら空いたままの土地が生まれます。だからと言って拙速にならないよう慎重に検討していきます」  ――中期財政収支見通しで市財政の厳しさが明らかになっています。そうした中で本庁舎西側で市民センター(仮称)の建設が始まり、今後多くの公共施設の建て替えが控えています。老朽化施設の建て替えは必要ですが、財政収支も考えないと将来世代に大きなツケを回すことになってしまいます。  「福島市はこれまで大型事業を先送りしていた傾向があり、今それらをやらなければならない状況になっています。有効な手が打てるうちに積極的に行うことが必要です。将来の人口減少を考えると、今手を打たないとますます窮地に陥ってしまう。福島市が魅力のないまちになるのをただ待つのは避けたい。将来の人口を維持するためにも今やるべき事業は進め、むしろ先進的で魅力を感じてもらえるように転換したいです」  ――人口減少、少子高齢化が急加速している中、子育て支援や移住促進に注目が集まります。人口減少、少子高齢化対策について地方自治体でできることが限られる中、国はこういう対策に取り組むべきだという考えがあればお聞かせください。  「中核市市長会会長として、子育て世帯の負担軽減など所得に絡んだ施策の充実を国に要望しています。移住を促進しようと自治体同士が負担軽減策で競争すると疲弊してしまいます。効果的な施策を国でしっかりやっていただいて、自治体が創意工夫ある施策を進めていくことが重要です。  人を呼び込むには産業がないと続きません。産業振興、企業誘致にとどまらず、地元産業の高度化が必須と考えます。時代の変化が非常に激しいですから、創業・起業にも力を入れる必要があります。人手不足対策についてはこれまで家庭に入っていた女性や障がい者、高齢者の皆さんにも働いていただけるよう、事業者と行政は環境を整えなければなりません。  外国人雇用も求められています。これからは外国出身者の活躍が地域の活力となります。市は昨年、多文化共生センターを開設しました。事業者をサポートし外国人を雇用することへの理解を促進しています。また、外国人が安心して暮らせる環境づくりを担うのが4月に開校する公立夜間中学です。他地域では夜間中学の生徒の7割は外国にルーツのある方で、日本語教育や居場所づくりの役目があります。以上のような取り組みで、さまざまな人を受け入れ誰もが活躍できる市を目指します」

  • 【福島市】木幡浩市長インタビュー

     こはた・ひろし 1960年生まれ。東大経済学部卒。自治省(現総務省)に入省し岡山県副知事、消防大学校長、復興庁福島復興局長などを歴任。現在市長2期目。  ――2022年度の除雪関連の予算を過去最大の8303万円に拡大しました。1月の大寒波の影響をお聞きします。 「昨季の大雪では、除雪に対し市民の皆様から厳しいご意見をいただきましたが、今季は教訓を生かした対応ができたと思います。必要な予算の確保はもちろん、除雪を体系的に行うためのマニュアルを作りました。市民の皆様にもメールで降雪・凍結情報を即時に知らせています。 隅々まで除雪するには市民の皆様の協力が必要です。小型除雪機の貸し出しはこれまでも行っていましたが、今季は台数を増やし、周知を図りました。その結果、貸出実績は以前に比べるとかなり増えました。 岡部など東部地区の関係者とは、除雪アダプト制度という決めた範囲を責任を持って除雪する協定を締結しました。ありがたいことに丁寧な作業のおかげで生活道路の除雪体制は改善が図れたと思います」 ――政府は5月8日から新型コロナウイルス感染症の位置付けを5類に引き下げると発表しました。3月13日からはマスクの着用が緩和されます。「出口」が見えてきた中で市の経済や観光振興についての施策をお聞きします。 「『出口』に至るためには何よりも感染防止を徹底していくことが必須です。世代別で死者数が最も多い高齢者の感染は何としても防がなければなりません。高齢者と面会する場合のマスク着用などは、これまでと変わらず続けなくてはならないと考えています。 経済活性化に関して言えば、心強いのは『道の駅ふくしま』という地域活性化の核ができたことです。年間の目標来場者数は133万人でしたが、オープンから約9カ月で150万人に達し、売り上げも11億円を超えました。冬季の来場者が減る傾向にあるので、引き続きイベントやツアーなどを仕掛けていきますが、今春には『周遊スポット魅力アップ支援事業』を活用したスポットが続々オープンします。例えば、温泉旅館であれば魅力ある露天風呂を、観光農園であればインスタスポットを作り、点ではなく面で福島市を巡る楽しみを創出する仕組みを整え、それを物販にもつなげていきます。   福島市は新商品が生まれる傾向が弱い印象があるので、道の駅をベースに事業者同士の連携を深めて商品を作り出し、併せて発信もするというアンテナショップの役目をより強めていきます。  ふるさと納税の返礼品はその一環であり、私としては福島市のPRにとどまらず、マーケティングという地域経済活性化に即効性のあるものとして考えています」  ――福島駅東口で行われている市街地再開発事業について、当初計画より事業費や市が負担する補助金が増え、今後の精査によってはさらに増える可能性が指摘されています。 「資材が高騰しており、事業費増は避けられません。ただ精査をすることで、増えるだけではなく減らせる部分も見つかります。事業費圧縮に努めることを肝に銘じて精査を続けています。 国などからの補助金は通常であれば定率なので、資材が高騰しても増えるわけではありません。市としてはその状況を考慮し、さらに補助金を要請していきます。ただ国も、再開発事業が止まれば都市としての魅力が低下すると強く懸念しているので、負担軽減に向けた制度を作っている途中です。 また、完成後の運営を効率的に行うことも非常に大事です。今のうちから運営母体を決めて、その上で大規模・国際的な会議の誘致活動をしていきます。かかる経費はできるだけ収益で賄っていける基盤を作りたいと思っています」  ――市が昨年9月に発表した中期財政収支の見通しも非常に厳しい状況です。市債残高は膨らみ、2026年度には財政調整基金と減債基金の残高がなくなり、財源不足を埋められず必要な予算が立てられなくなると試算されています。 「財政は厳しいですが、やるべき事業はやっておかないと、後々の負担は逆に増えてしまうと考えます。いま手を打たなかったことで、都市の魅力が下がり、人口減少がますます進んでしまうことも危惧されます。そうなれば活力が失われ、街としてもっと苦しい状態に追い込まれてしまう。必要な事業を先送りすることなく実施していくことが大事だし、私はその精神でこれまでも取り組んできました。 人も富も集中する東京は民間が都市の魅力向上を果たしてくれる面が強い。しかし地方は、行政が主導的な役割を果たしていかないと都市としての存在感が低下していきます。私はそういう意識で、これからも市政運営に努めていきたいと思います。そのためにも行財政改革や事業の取捨選択、デジタル化などを進めていきます。 一方、『稼ぐ』という点では福島市が開発した全国的にも珍しい『議会答弁検討システム』を売り出していきます。本来は民間が稼げるようにするのが一番なのですが、行政自らが『稼ぐ』ことを意識し、財政の持続可能性を達成したいです」 ――老朽化する消防本部、市立図書館など、市内には建て替えが必要な公共施設が多数あります。どのように対応していきますか。 「すべての施設を建て替えるのは財政状況を考えると困難です。再編統合や規模縮小など多少痛みを伴うこともあるかもしれません。 とりわけ消防本部は災害対策の要ですから、耐震面に大きな問題がある状況は1日でも早く解消しなければなりません。 これから本庁舎西側で市民センターの建設が本格化します。同センターには市民会館や中央学習センターを再編統合した機能が備わります。一方、消防本部は市民会館の跡地に建設する計画です。市立図書館も老朽化が著しいですが、新たな建設場所などは決まっていません。財政状況にもよりますが、まずは消防本部の建て替えを優先し、その後、市立図書館の建設に着手できるよう検討を進めたいと思います」 ――念願だった古関裕而さんの野球殿堂入りが実現しました。 「祝賀ムードを維持しながら古関裕而記念館での発信に努めていきます。野球殿堂入りの証しとなるレリーフを展示し、多くの方に見に来てもらえるようにしたいと思います。 野球の試合を県営あづま球場で開き、古関さん作曲の歌で応援合戦をするのも一つのアイデアだと思います。今回の野球殿堂入りを機に、福島市を野球の聖地の一つにできないかと密かに考えています。 古関さんの曲は親しみがあって心地よい、古びないメロディーです。世代を超えて古関さんへの愛着を継承できる仕掛けを街なかに作っていきたいと思います」 福島市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】