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福島県議選

  • 県議選「選挙漫遊」体験リポート

     〝選挙漫遊〟という言葉をご存知だろうか。本誌連載中の選挙ライター・畠山理仁さんが提唱する選挙ウオッチングのあり方で、各地の選挙戦の現場に足を運び、各陣営がどんな主張をするのか〝観戦〟するというものだ。11月に投開票が行われた県議選で、本誌も選挙漫遊にチャレンジしてみた。 4市39候補 直撃取材で見えたこと https://www.youtube.com/watch?v=H3LrOAB1K0E  11月18日、選挙漫遊スタイルの取材を続ける畠山さんを追ったドキュメンタリー映画「NO 選挙,NO LIFE」が公開された。本誌11月号では、映画公開記念として畠山さん、前田亜紀監督、大島新プロデューサーへのインタビューを行ったが、選挙取材にかける畠山さんの情熱に触れ、居ても立っても居られなくなった。  通常、本誌で選挙について取り上げる際は、各陣営の関係者や地元政治家、経済人に動向を聞き、候補者の人柄や選挙戦に至った背景、得票数の見通し、選挙後の見立てなどをリポートする。  それに対し、選挙漫遊はとにかく全候補者の演説会場に足を運び、演説に耳を傾ける。できるならば演説終了後に直接会って、手ごたえを聞いたり演説の感想を伝える。  候補者に先入観を持たずフラットに取材する機会があってもいいのではないか――。こう考えた本誌は、直近で予定されていた11月12日投開票の福島県議選で、選挙漫遊に挑戦してみることにした。  といっても、県内全選挙区・全候補者の陣営を回りきれるほどの人員的・時間的余裕はないので、福島市、郡山市、会津若松市、いわき市各選挙区の立候補者39人に対象を絞り、手分けして演説現場に足を運んだ。  本誌初の試みはどのような結果になったのか。各担当者のリポートを掲載する。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 【いわき市】選挙漫遊(県議選) 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 福島市選挙区(定数8―立候補者9)  福島市選挙区の結果  投票率39.41% 当14912半沢 雄助(37)立新当12007西山 尚利(58)自現当11597大場 秀樹(54)無現当10911宮本しづえ(71)共現当9909伊藤 達也(53)公現当8288佐藤 雅裕(57)自現当7949渡辺 哲也(47)自現当6901誉田 憲孝(48)自新6330高橋 秀樹(58)立現 高橋氏の落選 高橋秀樹氏  「決まった場所と時間の街頭演説をしない」と話していた高橋秀樹氏が落選した。「政策を訴えても誰も聞いていなければ届かないだろうな」と選挙漫遊をやっていて感じたので、落選の結果に納得感があった。一方で、西山尚利氏は立ち止まることすらせず、ただただ選挙カーを走らせるスタイルで2位当選となった。ここから導き出されるのは「どんな政策を訴えるか」は得票数に影響しない、という仮説だ。  多くの候補が、実現すべき政策として、物価高や人口減少の対策を挙げていたが、その2つの問題は県議レベルで解決できることなのか、疑問に思うところもあった。主張する政策は投票結果に関係ないのではないかという思いは強まった。 トップ当選は37歳の新人 半沢雄助氏の個人演説会の様子  もう一つ印象に残ったのは半沢雄助氏がトップ当選となったこと。いわき市選挙区の山口洋太氏も1位に1票差の2位当選となった。37歳という年齢が評価されたのか、現職への期待の薄さの表れか。  そもそも県議選レベルで、有権者は党派によって投票先を決めるのかどうかも疑問を持っている。市議選では友達や知り合いなどに投票するだろう。では、県議選では誰に投票しようと考えるのだろうか。できるだけ近い地域の人なのか、自分が支持する党派の人なのか。 分かれた取材対応  全陣営の選挙事務所に取材を申し込んだが、快く引き受けてもらったところとそうではないところに分かれた。こちらの都合でお願いしていることは重々承知しているが、「2、3分も時間が取れない」と話す様子には誠実さが感じられなかった。  選挙スタッフの質にも言及しておく。取材の可否もそうだが、街頭演説の場所も正確に伝えられない人がいた。ボランティアでやっているのかもしれないが、せめて〝伝書鳩〟くらいの役割は果たしてほしかった。 「5人に2人」の投票率  福島市選挙区の投票率は39・41%。投票に行ったのは5人に2人という計算だ。  YouTubeライブをするから「暇なら見て」と2つのグループラインに送った。1つは有権者である地元の小学校時代の友人のグループ。もう1つは大学時代の東京の友人のグループ。当然ながら親密度はそれぞれ違うが、前者は同じ場所に住んでいるのに全く反応がなかった。一方で、東京の友人は、面白がってユーチューブを「全部見た」と言ってくれた。  私自身への興味のなさか、政治に対する関心のなさかは分からない。政治に対する嫌悪感や感度のなさなのか。もしかしたら、特定の候補者への勧誘に思われた可能性もある。  いずれにせよ、今後も選挙漫遊を定期的に行い、観察していく必要がある。(佐藤大)  郡山市選挙区(定数10―立候補者12)  郡山市選挙区の結果  投票率32.37% 当11526椎根 健雄(46)無現当10671神山 悦子(68)共現当10422今井 久敏(70)公現当9557鈴木 優樹(39)自現当7866佐藤 憲保(69)自現当7012長尾トモ子(75)自現当6684佐久間俊男(68)無現当5665佐藤 徹哉(55)自現当5516山田平四郎(70)自現当4886山口 信雄(57)自現2776髙橋  翔(35)諸新1544二瓶 陽一(71)無新  11月3日夕方に全候補者(12人)の事務所に電話をかけ、「5、6日のいずれかで、街頭演説や個人集会などの予定があれば教えてほしい。その様子を取材させてもらったうえで、終了後に5分くらい、次の予定があるならもっと短くてもいいので、候補者への個別取材の時間を設けてほしい。両日に街頭演説や個人集会などの予定がなければ、事務所で取材させてほしい」と依頼した。  その時点で、街頭演説や個人集会などの予定が把握できた、あるいは事務所での取材のアポイントが取れたのが10人。計ったように5日と6日で半々(5人ずつ)に分散した。もっとも、時間が被っていた人もいたので、その場合は手分けして取材に当たった。  残りの2人は流動的だったが、どちらも「お昼(12時から13時)は一度事務所に戻ると思う」とのことだったので、「5日か6日のお昼を目安に事務所に行くか電話をする」旨を伝えた。  こうして取材をスタート。1人目からちょっとしたトラブルが発生した。街頭演説の場所の近くにクルマを停められるところがなく、少し離れたところにクルマを停めなければならなかった。約1㌔のダッシュを余儀なくされたが、何とか街頭演説の様子を動画・写真に収めることができた。  それ以外は、大きな問題もなく、2日間かけて、比較的スムーズに全候補者に会うことができた。  郡山市は定数10に12人が立候補した。現職10人、新人2人が争う構図だったが、有権者は「どうせ、現職が安泰なんでしょ」といった感じで、さほど関心が高まらなかった。投票率32・37%がそれを物語っている。トップ当選者でも、有権者全体で見たら4%ほどの支持しか得ていない。  ある候補者は「選挙戦を通して、自分に対してということではなく、政治というものに対して、有権者の目が厳しいと感じる。それだけ、政治(政治家)への信頼が薄いということで、それを是正しなければならない」と語っていた。これは政治家に問題があるのか、有権者の意識の問題なのか、それとも選挙のシステムに問題があるのか。おそらく、そのすべてだろう。(末永) 会津若松市選挙区(定数4―立候補者5) 会津若松市選挙区の結果  投票率40.74% 当12044水野さち子(61)無元当6851佐藤 義憲(48)自現当6689佐藤 郁雄(60)自現当6604宮下 雅志(68)立現6090渡部 優生(62)無現  会津若松市選挙区(定数4)に立候補したのは5人。結果を見ると、元職の水野さち子氏が1人だけ大きく得票し(1万2044票)、他の4候補は6000票台の団子レースとなった。水野氏は7月の会津若松市長選で落選したとはいえ1万3000票以上得票しており、他の4候補より顔と名前が浸透していたことが奏功したようだ。  筆者が見た街頭演説では国道49号の交差点で行われたこともあり足を止める市民は皆無だったが、車中から水野氏に手を振る人が結構いて、それに対し水野氏が「ありがとうございます!」と答えるシーンが何度もあった。別の交差点でもマイクを持ちながらドライバーに笑顔で手を振る水野氏の姿を見かけた。演説を直接聞いてもらうことはなくても、市民のリアクションの良さから「いける」という手ごたえを感じていたのではないか。  これとは対照的に自民党候補の佐藤義憲氏と佐藤郁雄氏は、減税政策や政務三役の相次ぐ不祥事で内閣支持率が低迷していることもあり、強い危機感を持って選挙戦に突入したはずだ。事実、街頭演説後に申し込んだ候補者へのインタビューでは、佐藤憲氏は2、3分答えてくれたものの、佐藤郁氏は「当落線上にいる厳しい選挙戦で、今は5分でも10分でも時間が惜しい」とたった数分の取材でさえ「申し訳ないがお断りしたい」(選挙スタッフ)と悲壮感を漂わせていた。結果は3位当選だったが、落選した渡部優生氏とわずか600票差を考えると、陣営の情勢分析は的確だったことになる。  その渡部氏と4位当選の宮下雅志氏は、いずれも立憲民主党の小熊慎司・馬場雄基両衆院議員が応援に駆け付けていたが、自民党に逆風が吹く中でも街頭演説や個人演説会では一定の熱量を感じるにとどまり、同党に取って代わるまでの勢いは見られなかった。立憲民主党への期待の薄さと「それだったら水野氏の方が期待できる」という市民が多かったことが結果からうかがえる。  総じて言えることは、地方の選挙では車を走らせながら候補者の名前を連呼するやり方が普通で、街頭演説に耳を傾ける有権者はほとんどいない。ただ候補者が話している内容は、なるほどと思わせるものも結構ある。「政治家はなっていない」と言うのは簡単だが、候補者を磨き上げるには、有権者自身が彼らの言動に注目し、実際の政治活動と齟齬があれば「言っていたこととやっていることが違う」と厳しく指摘する必要がある。その入口として、今までスルーしてきた候補者の街頭演説に注目してはどうだろうか。選挙漫遊を終えての感想である。(佐藤仁) いわき市選挙区(定数10―立候補者13) いわき市選挙区の結果  投票率39.54% 当10278矢吹 貢一(68)自現当10277山口 洋太(33)無新当8350安田 成一(55)無新当8130真山 祐一(42)公現当7960木村謙一郎(48)自新当7894鳥居 作弥(49)維元当7884鈴木  智(50)自現当7812安部 泰男(66)公現当7629古市 三久(75)立現当7484宮川絵美子(77)共現6533西丸 武進(79)無現6066青木  稔(77)自現5722吉田 英策(64)共現  地元の選挙通でも「誰が落ちるのか分からない」と語るほどの激戦区となったいわき市選挙区。  各候補の街頭演説はヨークベニマルやマルトといった市内各地の商業施設前で予定されていた。約1232平方㌔と広大な面積の選挙区ということもあり、手分けして市内を駆けずり回った。  アポなし直撃取材だったにもかかわらず、各候補は快く応じてくれた。唯一対応してもらえなかったのが矢吹貢一氏。街頭演説・個人演説会を行わず、選挙カーを走らせるスタイルで、トップ当選を果たした。当選確実なので、自身の選挙活動を控えめにして、他の自民党候補のサポートに回っていたのかもしれない。結果的に自民党は議席を1つ減らした。  演説で多かったテーマは水害対策と医師不足。各陣営を回り続けるうちに、いわき市の課題が自ずと見えてきた。これこそ選挙漫遊の魅力だ。  手応えを尋ねると、「激戦だが、有権者の盛り上がりは感じられない」と話す候補者がほとんどだった。実際、いわき市選挙区の投票率は39・54%。前回の県議選は令和元年東日本台風の影響で投票率が落ち込んだとされるが、そこからわずか0・41ポイントの増加に留まった。  街頭演説の聴衆も数人という陣営がほとんどだったが、公明党候補者の演説に関しては山口那津男代表が応援に駆けつけたこともあり、多くの支持者が集結していた。その結果、2議席を維持。固定票を持つ候補者(政党)の強さを実感した。  れいわ新選組推薦の無所属・山口洋太氏はトップの矢吹氏に1票差に迫る1万0277票を獲得。日本維新の会から立候補した元職・鳥居作弥氏は6位当選を果たし、同党は県議選で初の議席を確保するなど、既存政党以外の勢いが感じられた。山口氏の演説会場には平日にもかかわらず聴衆が集まっていたのが印象的。「医師不足解消のため、医師が自ら立ち上がった」というインパクトが強かったのだろう。  一方で、西丸武進氏、青木稔氏ら多選のベテラン議員は落選の憂き目を見た。両氏の個人演説会には応援弁士が駆けつけ、力強く支持を訴えていたが、危機感のあらわれだったのかもしれない。  畠山さんからは事前に「過重労働にお気を付けください」と言われていた。取材中、特に疲れは感じなかったが、全候補者を取材し終えると一気に体が重くなり、数日間ぐったりしていた。〝選挙ハイ〟になっていたのかもしれない。 (志賀)    ×  ×  ×  ×  最後に触れておかなければならないのは、県議の役割と選挙の意義だ。国と市町村の間に位置し、「中二階」とも例えられる県議。与野党相乗りの「オール福島」体制で当選を重ねる内堀雅雄知事のもと、県議会は実質的に執行部の追認機関となっており、存在感は希薄だ。報酬は年間数十日勤務で約1400万円。議会出席や視察・調査時に支給される旅費、政務活動費、県の持ち株の関係で関係会社の役員に就いた際の報酬など、〝余禄〟がとにかく多い。  その是非も含め問われる機会が県議選なのだが、関心は高まらず、それぞれがどのような主張をしている人なのか、把握もされていない。今回の県全体の投票率はわずか40・73%。約6割が有権者としての権利を行使していないと考えるとあまりにもったいない話だ。  ふらっと選挙の現場に足を運び、演説に耳を傾けるだけで、その選挙区や各候補者に対する〝解像度〟が高まる。そうすることで、選挙区の課題や対立構図なども自ずと見えてきて、より選挙や政治を楽しめるようになる。もし近くで選挙が行われるときは、選挙漫遊に挑戦してみてはいかがだろうか。

  • 【いわき市】選挙漫遊(県議選)

    【いわき市】選挙漫遊(県議選)

       「勝手に連動企画『政経東北』でも選挙漫遊をやってみた」。  11月2日告示、12日投開票の福島県議選。福島市、郡山市、いわき市、会津若松市各選挙区の立候補者39人を本誌スタッフ総出で取材し、選挙漫遊(街頭演説などに足を運んで選挙を積極的に楽しむ)を実践しようというもの。  11月5日(日)、6日(月)の2日間、街頭演説会場に足を運び、その様子を写真と動画で記録。併せてインタビュー取材も実施した。現職には「県政・県土の課題は?」、新人には「立候補した理由は?」などについて質問した。立候補者はどのような選挙活動を展開し、どんな事を話したのか。 担当:志賀 補佐:荻野 福島県議選【いわき市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=3730 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松いわき市の解説は1:02:10~ 定数10 立候補者13 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601557.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601653.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 安田成一 https://www.youtube.com/watch?v=47YD6DvqYVs  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「いわき市に関しては、水害被害が起きたことを考えると、防災対策、災害に強いまちづくりをしっかり進めることが最大の課題と考えています。令和元年東日本台風のときは市議だったが、河川改修を早く進めてもらいたいという要望を受けても、市としてなかなか対応できない面があった。その時のもどかしい思いから県議会への立候補を決意した。  3年経って二級河川の改修工事が進められたが、支流の方が進んでいない。先月には線状降水帯の影響による水害も発生した。いわき市とタッグを組んで予算をつけ、できる限り早く改修工事を進めることで安心して暮らせるまちづくりを実現したいと思っています。  エフレイとの連携も必要だと思っています。福島高専、東日本国際大学と人材育成の面で協定も結んでいるので、新産業をいわき市、福島県に根付かせて、そこで雇用創出につながれば人口減少の予測も変わってくるのではないかと考えています。優秀な人材がいわき市、福島県に留まってもらう取り組み、戻ってきてもらう取り組みを強力に進めて貰えればと考えています」 一言メモ  ロードバイクで駆け付けた支持者がちらほら(趣味仲間?)。演説に耳を傾けていたのは40~50代の子育て世代が中心で、女性もほかの陣営より見受けられた。今回回った中で一番支持者の幅が広いと感じた。新人候補だがもともといわき市議だったこともあって、知名度も高いのだろうか。(荻野) 鳥居作弥 https://www.youtube.com/watch?v=B4cQKb5wLJk  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「僕は今回の選挙では、単純に子育てと教育と福祉というところしか訴えていません。特に子育て支援と高齢者福祉は近いものだと考えていて、2つを組み合わせて対策を講じることが重要だと考えています。例えば特定の地域のみで働ける『地域限定保育士』という制度があるので、それを活用して、高齢者の皆さんが働けるようにしてもいい。その方法を考えるのは政治の役割です」  ――日本維新の会から県議選に立候補した理由について。  「分かりにくい政治にジレンマがあった。例えばALPS処理水についても、反対するのはいいが、その後どうするの?ってなってしまう。そういう意味で、日本維新の会が掲げる政策ははっきりしていて分かりやすい。ALPS処理水について、私は『全国各地で分担して捨てましょう。そうすれば早く放出できて、福島県への負担も最小限で抑えられる』と訴えています。人間関係で選挙をやるのではなく、分かりやすい政策を的確な言葉で伝えられるという点で日本維新の会はいい政党だと感じます」 一言メモ  演説会場のイオンモールいわき小名浜前は、目の前が「ツール・ド・いわき」ゴール地点になっており、イベントの音声がガンガン流れてくるトホホな環境。ただ、車や歩道橋から手を振る人もおり、着実に支持が広まっている様子も感じた。汚染水(ALPS処理水)放出について、「福島から30年以上も海洋放出したら負担が大きくなる。日本全国から放出したら数年で終わるはず」と主張。その是非はともかく、選挙という場で、独自性のある意見を主張していく姿勢は歓迎したい。(志賀) 吉田英策 https://www.youtube.com/watch?v=1scL7EG_A4k  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「福島県の財政力は全国3位だが、復興と称した大型開発や道路整備にばかりお金が使われていると感じています。県民の暮らしを応援するという視点から、教育や子育てなどに予算を割くべきです。特にいわきは医師数が少ないので医療機関の充実に充実させるべきだと思います」  ――今年2月の一般質問で会計年度任用職員の雇い止めについて質問していました。是正はされたでしょうか。  「1年契約ではあるもののボーナスを支給するということだったが、実際は労働時間が短縮されただけだったりして総額が増えているわけではない。一般の職員の待遇に改善することが必要だと思います」 一言メモ  共産党独自のしきたりなのか、本人到着までに支持者が歩道に横並びで〝戦争やめろ!〟などのコールを行っていた場面が印象的。支持者の方々と触れ合う写真を撮ろうとしたが、場所が郵便局の真向かいであまり長居できる場所ではなかったため、演説が終わると即時撤収。ある意味場馴れしているというか、統率が取れている感じを抱いた。(荻野) 真山祐一 https://www.youtube.com/watch?v=qVYED1Pb2Zc  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「課題はたくさんあります。中でも水害対策に関しては、流域治水をしっかり進めていくべきだと訴えています。『防災減災を社会の主流にしていくべきだ』というのは公明党がここ数年来主張していることです」  ――令和5年6月議会の一般質問では、「金属スクラップヤードでの事故を防ぐために許可制にして指導監視を強化しては」と指摘していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動いたでしょうか。  「『不適切な事例があれば県としての指導監視を図っていく』という答弁でしたが、具体的に条例ができたり、変化が起きているというところには至っていません。そういう意味ではまだこれからの課題だと思います」 一言メモ  JRいわき駅前で、山口那津男公明党代表が応援に来る街頭演説会を実施。駅前のペデストリアンデッキ、ラトブ前が多くの公明党支持者で埋めつくされ、お祭り・フェスのような熱気。市外からも応援に来ていた模様。山口代表が繰り返していた「ネットワーク」の強さをあらためて実感した次第。(志賀) 西丸武進 https://www.youtube.com/watch?v=_ssuXAFt_nI  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「1つは震災・原発事故からの復興です。復旧工事は行われていますが〝創生〟には至っていないので、そういう視点で復興を進めるべきです。2つはコロナ対応。まだ安心できない状況なので、いま受け皿対策や公衆衛生の管理の充実を徹底していく必要があります。3つは〝汚染水〟海洋投棄の問題です。投棄が完了するまで30年以上かかるとされることを踏まえ、県民の命を守るというスタンスで、問題が風化することない監視体制を構築する必要があります。環境、教育、福祉の充実・強化にもしっかり努めていきます」  ――昨年12月議会の代表質問で、JRの赤字路線への県の対応について質問していました。人口減少で鉄道維持が容易でなくなる中、県がどのように支援していくべきだと考えますか。  「県内の赤字路線では、まず地域住民の組織を作り、問題意識を共有化してから、行政が住民組織の提言を取りまとめ、財源の作り方を考えていく、という流れになっています。そういう意味では、まず地域ごと、駅ごとにまとまって組織を作っていけるかが重要になると思います。その道筋は行政側が責任を持って提供するべきです」 一言メモ  19時開始の個人演説会だけあって、力が入った長尺の演説。前段の後援会長のあいさつも力が入っていた。7期のベテラン議員だが、今回立候補した新人4人のうち2人は元いわき市議、ほか2人もそれぞれ維新公認、れいわ推薦を受けていることもあって、かなり警戒してる様子が見られた(荻野) 宮川絵美子 https://www.youtube.com/watch?v=467NOJKf-lw  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「県執行部には県民の生の声を聞いてほしい。給料はなかなか上がらないし、世論調査では教育費の負担を軽くしてほしいという声も多い。高校入学時のタブレット購入費を生徒が負担しているのは、東北では福島県だけです。高齢者の足の確保など高齢者支援も問題です。県議会ではその都度質問しています」  ――質問をすることで県執行部の対応は変わっていますか。  「問題提起をすると少し変わってくる。学校給食の無料化を訴えていたら、県内市町村が導入するようになった。子どもの医療費の無料化についても主張していたら、12年前の県議選の後に無料化が実現した。選挙は世論を喚起するチャンスであり、ずっと運動を続けてきたことに焦点が当たって、選挙の節目で変わっていくことも多いので、主張を続けることに意義があると考えています」 一言メモ  イオンモールいわき小名浜前の道路沿いで、施設に向かって演説する宮川候補。買い物客は足を止めることなく施設に入っていった。定数10に対し13人が立候補する激戦区だが、有権者の盛り上がりは今ひとつ……という状況を象徴する光景だった。(志賀) 矢吹貢一 動画撮れず。 取材に応じず。 一言メモ  事前に事務所に確認したところ、「事務所の方針で街角演説をする考えはありません。市内で一日選挙カーを走らせて、20時ごろ事務所に戻る予定です」とのこと。やむなく20時前に事務所に訪れ、スタッフとともに戻ってきた選挙カーを出迎えた。降りてきた矢吹候補に「政経東北です。ちょっとお話しお聞かせいただけないですか」と話しかけると、あからさまに苦笑いを浮かべ、無言で手を横に振りながら事務所内に入っていった。  しばらく外で待っていると、スタッフが出てきて「すみません、これから打ち合わせなので……。明日も街頭演説の予定はなく、戻ってきた後も時間が取れません。せっかく来ていただいたのにすみません」と謝られた。街頭演説もせずマスコミ取材にも応じないということは、自分の意見を広く知ってもらえる機会を放棄しているようなもの。矢吹陣営としては、新たな票の開拓は必要なく、既存の支持者を対象とした演説会で余裕で当選できるという判断なのだろう。  翌朝8時過ぎ、宿泊したいわき駅前のホテルで仕事をしていたら、矢吹候補の選挙カーの声が聞こえてきた。急いで窓から外を眺めたが見つけられず、そのまま声は小さくなっていった。(志賀) 安部泰男 https://www.youtube.com/watch?v=lhjMYDQJjt0  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「これまで信念として取り組んできたのは、住民が安全に暮らせる環境を作るということであり、防災・減災に対する思いは強いです」  ――9月議会の一般質問ではパートナーシップ・ファミリーシップ制度の導入について質問していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動きましたか。  「LGBT当事者の方から直接相談を受けて質問したものです。男女共同参画社会を築くために差別のない社会を築く、という県の方針を示したうえで、総括質疑では導入に向けてやっていくと答弁していました。県内市町村で導入の動きが加速しているのに県が何もやらないわけにはいかないと思います」 一言メモ  山口那津男公明党代表が応援に来ることもあって、エブリア北側駐車場の一角に公明党支持者100~200人が集結。SP・警察も多数。そのにぎわいに圧倒される。「いわき市に免許センターがないので、免許証がすぐにもらえない。県内で最も人口が多いのに。改善すべきだ」という主張はこの地域に住んでいなければ分からない視点で、ハッとさせられた。これこそ選挙漫遊の魅力。(志賀) 古市三久 https://www.youtube.com/watch?v=YV0IrOHy6O0  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「人口減少、少子高齢化で地域が衰退していることです。中山間地では草刈りをする人も減っており、自分で買い物に行くのも難しいという人が現実にいる。もし当選できたら総括質疑という形でなく、一般質問で問題提起したい」  ――ALPS処理水の海洋放出反対のスタンスを取っており、県議会でも陸上保管すべきと主張していたが、県は国の海洋放出方針に追随する形になりました。   「内堀雅雄知事が県民を代表して反対の声明を出すべきだったと考えています。これは新聞社などのアンケートにも書いている点です」 一言メモ  処理水海洋放出、原発事故収束作業に正面から疑問を呈するスタンス。海に面するいわき市選挙区でも意外とこういう演説は少ない。平日ということもあってか聴衆は2、3人だった。(志賀) 鈴木智 https://www.youtube.com/watch?v=CCwk0J33tMs  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「いわきにおいては水害対応だと考えています。自民党県連の動きと連動して、発災翌日から内堀雅雄知事に現地視察に入ってもらい、被害状況や地域の皆さんの声を聞いてもらいました」  ――令和5年9月議会の一般質問で、ドライバー不足が小名浜港の貨物に与える影響について質問していました。  「小名浜港に影響が出るのであれば質問しなければならないと考えた次第です。問題が可視化されるのに加え、県執行部も私も理解も深まるので、こうした質問をするのは意義があることだと考えています」 一言メモ  3連休最終日に予定されていた鹿島公民館での個人演説会。前回選挙では8位当選(定数10)だったこともあってか、応援弁士や陣営幹部からは気を引き締めるよう求める発言が続出。坂本竜太郎氏の県議選立候補見合わせで、逆に混乱している印象だった。(志賀) 青木稔 https://www.youtube.com/watch?v=Y0yiCo0MrsU  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「演説でも触れたが、やっぱり一番のポイントは人口減少。安心して働ける企業を誘致できるかが重要になると思う。そういう意味で注目しているのが福島イノベーション・コースト構想であり、エフレイ(福島国際研究教育機構)です。実現すれば必ず有力企業が来るので、いかにいわきの方につなげられるかが重要になります。そのために私も自民党県連としての立場でできる限りのことに取り組む考えです」  ――現在9期目で、演説では当初立候補を見合わせる方針だったという話もありました。  「年齢も年齢なので家族と相談して立候補を見合わせる決意をして、周囲にも伝えていましたが、さまざまな方から要請を受け、再び立候補することを決意しました」 一言メモ  地元・中央台の公民館で個人演説会を開催。参加者は約30人でほとんどが年配の方々。自民党県連いわき支部の重鎮ということもあって、森雅子参院議員のほか、今後の動向が注目される坂本竜太郎県議、市議らが応援演説に駆けつけた。1945(昭和20)年生まれで、いわき市議時代を含め議員生活は40年以上に上る。最後は10選に向けてガンバロー三唱。パワフルさでは誰にも負けていない。(志賀) 木村謙一郎 https://www.youtube.com/watch?v=ZVBagsrdRFQ    ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「河川整備を進めて水害の減災・防災に努めるのも必要だし、一次産業の後継者不足も深刻です。一番大きいのは人口減少ですね。都市部、山間部、それぞれ事情が異なるので、しっかり議論して解決していかなければならないと思います」  ――立候補を決意した理由は。  「11年にわたり市議会議員として活動してきましたが、市議会議員では解決できない問題にたびたび直面してきました。たとえば医療問題などは県にイニシアチブを発揮してもらわなければ改善は難しい。加えて現役世代として声を聞いてほしいという思いや、いわき市の中心部から外れた久之浜地域を代表する立場から県議会で意見を述べていきたいと思いがあり、立候補を決意しました」 一言メモ  昼前の時間帯にしては人の集まりがまばらだった。支持者は子育て世代と高齢者の人が中心の印象。演説でも触れていたように「久之浜地区から県議を!」という気概が非常に強く、地元での遊説の様子も気になるところ。(荻野) 山口洋太 https://www.youtube.com/watch?v=fX1X0UkWfaM  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「演説でお話しした通り、現役医師としていわき市で働くようになって医療体制に課題を感じ、そこを改善すべきだと考えたので立候補を決意しました」  ――れいわ新選組の推薦を受けていますが、無所属で立候補した理由は。 「基本的には特定の政党に属さず、市民から聞いた話を基に政策を打ち出していきたいと考えています。これまで1万8000軒を超えるお宅にお邪魔して話を聞いてきました」 一言メモ  演説予定場所の商業施設前に、ピンク色の選挙カーがさっそうと登場。聴衆は支持者と思われる高齢者が数人。車内から手を振るドライバーも。「この間1万8000軒以上を訪問した」という言葉は伊達じゃないということか。33歳という若さ、現役医師が医師不足解消を訴える点も支持拡大につながっている様子。(志賀)

  • 県議選「選挙漫遊」体験リポート

     〝選挙漫遊〟という言葉をご存知だろうか。本誌連載中の選挙ライター・畠山理仁さんが提唱する選挙ウオッチングのあり方で、各地の選挙戦の現場に足を運び、各陣営がどんな主張をするのか〝観戦〟するというものだ。11月に投開票が行われた県議選で、本誌も選挙漫遊にチャレンジしてみた。 4市39候補 直撃取材で見えたこと https://www.youtube.com/watch?v=H3LrOAB1K0E  11月18日、選挙漫遊スタイルの取材を続ける畠山さんを追ったドキュメンタリー映画「NO 選挙,NO LIFE」が公開された。本誌11月号では、映画公開記念として畠山さん、前田亜紀監督、大島新プロデューサーへのインタビューを行ったが、選挙取材にかける畠山さんの情熱に触れ、居ても立っても居られなくなった。  通常、本誌で選挙について取り上げる際は、各陣営の関係者や地元政治家、経済人に動向を聞き、候補者の人柄や選挙戦に至った背景、得票数の見通し、選挙後の見立てなどをリポートする。  それに対し、選挙漫遊はとにかく全候補者の演説会場に足を運び、演説に耳を傾ける。できるならば演説終了後に直接会って、手ごたえを聞いたり演説の感想を伝える。  候補者に先入観を持たずフラットに取材する機会があってもいいのではないか――。こう考えた本誌は、直近で予定されていた11月12日投開票の福島県議選で、選挙漫遊に挑戦してみることにした。  といっても、県内全選挙区・全候補者の陣営を回りきれるほどの人員的・時間的余裕はないので、福島市、郡山市、会津若松市、いわき市各選挙区の立候補者39人に対象を絞り、手分けして演説現場に足を運んだ。  本誌初の試みはどのような結果になったのか。各担当者のリポートを掲載する。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 【いわき市】選挙漫遊(県議選) 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 福島市選挙区(定数8―立候補者9)  福島市選挙区の結果  投票率39.41% 当14912半沢 雄助(37)立新当12007西山 尚利(58)自現当11597大場 秀樹(54)無現当10911宮本しづえ(71)共現当9909伊藤 達也(53)公現当8288佐藤 雅裕(57)自現当7949渡辺 哲也(47)自現当6901誉田 憲孝(48)自新6330高橋 秀樹(58)立現 高橋氏の落選 高橋秀樹氏  「決まった場所と時間の街頭演説をしない」と話していた高橋秀樹氏が落選した。「政策を訴えても誰も聞いていなければ届かないだろうな」と選挙漫遊をやっていて感じたので、落選の結果に納得感があった。一方で、西山尚利氏は立ち止まることすらせず、ただただ選挙カーを走らせるスタイルで2位当選となった。ここから導き出されるのは「どんな政策を訴えるか」は得票数に影響しない、という仮説だ。  多くの候補が、実現すべき政策として、物価高や人口減少の対策を挙げていたが、その2つの問題は県議レベルで解決できることなのか、疑問に思うところもあった。主張する政策は投票結果に関係ないのではないかという思いは強まった。 トップ当選は37歳の新人 半沢雄助氏の個人演説会の様子  もう一つ印象に残ったのは半沢雄助氏がトップ当選となったこと。いわき市選挙区の山口洋太氏も1位に1票差の2位当選となった。37歳という年齢が評価されたのか、現職への期待の薄さの表れか。  そもそも県議選レベルで、有権者は党派によって投票先を決めるのかどうかも疑問を持っている。市議選では友達や知り合いなどに投票するだろう。では、県議選では誰に投票しようと考えるのだろうか。できるだけ近い地域の人なのか、自分が支持する党派の人なのか。 分かれた取材対応  全陣営の選挙事務所に取材を申し込んだが、快く引き受けてもらったところとそうではないところに分かれた。こちらの都合でお願いしていることは重々承知しているが、「2、3分も時間が取れない」と話す様子には誠実さが感じられなかった。  選挙スタッフの質にも言及しておく。取材の可否もそうだが、街頭演説の場所も正確に伝えられない人がいた。ボランティアでやっているのかもしれないが、せめて〝伝書鳩〟くらいの役割は果たしてほしかった。 「5人に2人」の投票率  福島市選挙区の投票率は39・41%。投票に行ったのは5人に2人という計算だ。  YouTubeライブをするから「暇なら見て」と2つのグループラインに送った。1つは有権者である地元の小学校時代の友人のグループ。もう1つは大学時代の東京の友人のグループ。当然ながら親密度はそれぞれ違うが、前者は同じ場所に住んでいるのに全く反応がなかった。一方で、東京の友人は、面白がってユーチューブを「全部見た」と言ってくれた。  私自身への興味のなさか、政治に対する関心のなさかは分からない。政治に対する嫌悪感や感度のなさなのか。もしかしたら、特定の候補者への勧誘に思われた可能性もある。  いずれにせよ、今後も選挙漫遊を定期的に行い、観察していく必要がある。(佐藤大)  郡山市選挙区(定数10―立候補者12)  郡山市選挙区の結果  投票率32.37% 当11526椎根 健雄(46)無現当10671神山 悦子(68)共現当10422今井 久敏(70)公現当9557鈴木 優樹(39)自現当7866佐藤 憲保(69)自現当7012長尾トモ子(75)自現当6684佐久間俊男(68)無現当5665佐藤 徹哉(55)自現当5516山田平四郎(70)自現当4886山口 信雄(57)自現2776髙橋  翔(35)諸新1544二瓶 陽一(71)無新  11月3日夕方に全候補者(12人)の事務所に電話をかけ、「5、6日のいずれかで、街頭演説や個人集会などの予定があれば教えてほしい。その様子を取材させてもらったうえで、終了後に5分くらい、次の予定があるならもっと短くてもいいので、候補者への個別取材の時間を設けてほしい。両日に街頭演説や個人集会などの予定がなければ、事務所で取材させてほしい」と依頼した。  その時点で、街頭演説や個人集会などの予定が把握できた、あるいは事務所での取材のアポイントが取れたのが10人。計ったように5日と6日で半々(5人ずつ)に分散した。もっとも、時間が被っていた人もいたので、その場合は手分けして取材に当たった。  残りの2人は流動的だったが、どちらも「お昼(12時から13時)は一度事務所に戻ると思う」とのことだったので、「5日か6日のお昼を目安に事務所に行くか電話をする」旨を伝えた。  こうして取材をスタート。1人目からちょっとしたトラブルが発生した。街頭演説の場所の近くにクルマを停められるところがなく、少し離れたところにクルマを停めなければならなかった。約1㌔のダッシュを余儀なくされたが、何とか街頭演説の様子を動画・写真に収めることができた。  それ以外は、大きな問題もなく、2日間かけて、比較的スムーズに全候補者に会うことができた。  郡山市は定数10に12人が立候補した。現職10人、新人2人が争う構図だったが、有権者は「どうせ、現職が安泰なんでしょ」といった感じで、さほど関心が高まらなかった。投票率32・37%がそれを物語っている。トップ当選者でも、有権者全体で見たら4%ほどの支持しか得ていない。  ある候補者は「選挙戦を通して、自分に対してということではなく、政治というものに対して、有権者の目が厳しいと感じる。それだけ、政治(政治家)への信頼が薄いということで、それを是正しなければならない」と語っていた。これは政治家に問題があるのか、有権者の意識の問題なのか、それとも選挙のシステムに問題があるのか。おそらく、そのすべてだろう。(末永) 会津若松市選挙区(定数4―立候補者5) 会津若松市選挙区の結果  投票率40.74% 当12044水野さち子(61)無元当6851佐藤 義憲(48)自現当6689佐藤 郁雄(60)自現当6604宮下 雅志(68)立現6090渡部 優生(62)無現  会津若松市選挙区(定数4)に立候補したのは5人。結果を見ると、元職の水野さち子氏が1人だけ大きく得票し(1万2044票)、他の4候補は6000票台の団子レースとなった。水野氏は7月の会津若松市長選で落選したとはいえ1万3000票以上得票しており、他の4候補より顔と名前が浸透していたことが奏功したようだ。  筆者が見た街頭演説では国道49号の交差点で行われたこともあり足を止める市民は皆無だったが、車中から水野氏に手を振る人が結構いて、それに対し水野氏が「ありがとうございます!」と答えるシーンが何度もあった。別の交差点でもマイクを持ちながらドライバーに笑顔で手を振る水野氏の姿を見かけた。演説を直接聞いてもらうことはなくても、市民のリアクションの良さから「いける」という手ごたえを感じていたのではないか。  これとは対照的に自民党候補の佐藤義憲氏と佐藤郁雄氏は、減税政策や政務三役の相次ぐ不祥事で内閣支持率が低迷していることもあり、強い危機感を持って選挙戦に突入したはずだ。事実、街頭演説後に申し込んだ候補者へのインタビューでは、佐藤憲氏は2、3分答えてくれたものの、佐藤郁氏は「当落線上にいる厳しい選挙戦で、今は5分でも10分でも時間が惜しい」とたった数分の取材でさえ「申し訳ないがお断りしたい」(選挙スタッフ)と悲壮感を漂わせていた。結果は3位当選だったが、落選した渡部優生氏とわずか600票差を考えると、陣営の情勢分析は的確だったことになる。  その渡部氏と4位当選の宮下雅志氏は、いずれも立憲民主党の小熊慎司・馬場雄基両衆院議員が応援に駆け付けていたが、自民党に逆風が吹く中でも街頭演説や個人演説会では一定の熱量を感じるにとどまり、同党に取って代わるまでの勢いは見られなかった。立憲民主党への期待の薄さと「それだったら水野氏の方が期待できる」という市民が多かったことが結果からうかがえる。  総じて言えることは、地方の選挙では車を走らせながら候補者の名前を連呼するやり方が普通で、街頭演説に耳を傾ける有権者はほとんどいない。ただ候補者が話している内容は、なるほどと思わせるものも結構ある。「政治家はなっていない」と言うのは簡単だが、候補者を磨き上げるには、有権者自身が彼らの言動に注目し、実際の政治活動と齟齬があれば「言っていたこととやっていることが違う」と厳しく指摘する必要がある。その入口として、今までスルーしてきた候補者の街頭演説に注目してはどうだろうか。選挙漫遊を終えての感想である。(佐藤仁) いわき市選挙区(定数10―立候補者13) いわき市選挙区の結果  投票率39.54% 当10278矢吹 貢一(68)自現当10277山口 洋太(33)無新当8350安田 成一(55)無新当8130真山 祐一(42)公現当7960木村謙一郎(48)自新当7894鳥居 作弥(49)維元当7884鈴木  智(50)自現当7812安部 泰男(66)公現当7629古市 三久(75)立現当7484宮川絵美子(77)共現6533西丸 武進(79)無現6066青木  稔(77)自現5722吉田 英策(64)共現  地元の選挙通でも「誰が落ちるのか分からない」と語るほどの激戦区となったいわき市選挙区。  各候補の街頭演説はヨークベニマルやマルトといった市内各地の商業施設前で予定されていた。約1232平方㌔と広大な面積の選挙区ということもあり、手分けして市内を駆けずり回った。  アポなし直撃取材だったにもかかわらず、各候補は快く応じてくれた。唯一対応してもらえなかったのが矢吹貢一氏。街頭演説・個人演説会を行わず、選挙カーを走らせるスタイルで、トップ当選を果たした。当選確実なので、自身の選挙活動を控えめにして、他の自民党候補のサポートに回っていたのかもしれない。結果的に自民党は議席を1つ減らした。  演説で多かったテーマは水害対策と医師不足。各陣営を回り続けるうちに、いわき市の課題が自ずと見えてきた。これこそ選挙漫遊の魅力だ。  手応えを尋ねると、「激戦だが、有権者の盛り上がりは感じられない」と話す候補者がほとんどだった。実際、いわき市選挙区の投票率は39・54%。前回の県議選は令和元年東日本台風の影響で投票率が落ち込んだとされるが、そこからわずか0・41ポイントの増加に留まった。  街頭演説の聴衆も数人という陣営がほとんどだったが、公明党候補者の演説に関しては山口那津男代表が応援に駆けつけたこともあり、多くの支持者が集結していた。その結果、2議席を維持。固定票を持つ候補者(政党)の強さを実感した。  れいわ新選組推薦の無所属・山口洋太氏はトップの矢吹氏に1票差に迫る1万0277票を獲得。日本維新の会から立候補した元職・鳥居作弥氏は6位当選を果たし、同党は県議選で初の議席を確保するなど、既存政党以外の勢いが感じられた。山口氏の演説会場には平日にもかかわらず聴衆が集まっていたのが印象的。「医師不足解消のため、医師が自ら立ち上がった」というインパクトが強かったのだろう。  一方で、西丸武進氏、青木稔氏ら多選のベテラン議員は落選の憂き目を見た。両氏の個人演説会には応援弁士が駆けつけ、力強く支持を訴えていたが、危機感のあらわれだったのかもしれない。  畠山さんからは事前に「過重労働にお気を付けください」と言われていた。取材中、特に疲れは感じなかったが、全候補者を取材し終えると一気に体が重くなり、数日間ぐったりしていた。〝選挙ハイ〟になっていたのかもしれない。 (志賀)    ×  ×  ×  ×  最後に触れておかなければならないのは、県議の役割と選挙の意義だ。国と市町村の間に位置し、「中二階」とも例えられる県議。与野党相乗りの「オール福島」体制で当選を重ねる内堀雅雄知事のもと、県議会は実質的に執行部の追認機関となっており、存在感は希薄だ。報酬は年間数十日勤務で約1400万円。議会出席や視察・調査時に支給される旅費、政務活動費、県の持ち株の関係で関係会社の役員に就いた際の報酬など、〝余禄〟がとにかく多い。  その是非も含め問われる機会が県議選なのだが、関心は高まらず、それぞれがどのような主張をしている人なのか、把握もされていない。今回の県全体の投票率はわずか40・73%。約6割が有権者としての権利を行使していないと考えるとあまりにもったいない話だ。  ふらっと選挙の現場に足を運び、演説に耳を傾けるだけで、その選挙区や各候補者に対する〝解像度〟が高まる。そうすることで、選挙区の課題や対立構図なども自ずと見えてきて、より選挙や政治を楽しめるようになる。もし近くで選挙が行われるときは、選挙漫遊に挑戦してみてはいかがだろうか。

  • 【いわき市】選挙漫遊(県議選)

       「勝手に連動企画『政経東北』でも選挙漫遊をやってみた」。  11月2日告示、12日投開票の福島県議選。福島市、郡山市、いわき市、会津若松市各選挙区の立候補者39人を本誌スタッフ総出で取材し、選挙漫遊(街頭演説などに足を運んで選挙を積極的に楽しむ)を実践しようというもの。  11月5日(日)、6日(月)の2日間、街頭演説会場に足を運び、その様子を写真と動画で記録。併せてインタビュー取材も実施した。現職には「県政・県土の課題は?」、新人には「立候補した理由は?」などについて質問した。立候補者はどのような選挙活動を展開し、どんな事を話したのか。 担当:志賀 補佐:荻野 福島県議選【いわき市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=3730 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松いわき市の解説は1:02:10~ 定数10 立候補者13 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601557.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601653.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 安田成一 https://www.youtube.com/watch?v=47YD6DvqYVs  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「いわき市に関しては、水害被害が起きたことを考えると、防災対策、災害に強いまちづくりをしっかり進めることが最大の課題と考えています。令和元年東日本台風のときは市議だったが、河川改修を早く進めてもらいたいという要望を受けても、市としてなかなか対応できない面があった。その時のもどかしい思いから県議会への立候補を決意した。  3年経って二級河川の改修工事が進められたが、支流の方が進んでいない。先月には線状降水帯の影響による水害も発生した。いわき市とタッグを組んで予算をつけ、できる限り早く改修工事を進めることで安心して暮らせるまちづくりを実現したいと思っています。  エフレイとの連携も必要だと思っています。福島高専、東日本国際大学と人材育成の面で協定も結んでいるので、新産業をいわき市、福島県に根付かせて、そこで雇用創出につながれば人口減少の予測も変わってくるのではないかと考えています。優秀な人材がいわき市、福島県に留まってもらう取り組み、戻ってきてもらう取り組みを強力に進めて貰えればと考えています」 一言メモ  ロードバイクで駆け付けた支持者がちらほら(趣味仲間?)。演説に耳を傾けていたのは40~50代の子育て世代が中心で、女性もほかの陣営より見受けられた。今回回った中で一番支持者の幅が広いと感じた。新人候補だがもともといわき市議だったこともあって、知名度も高いのだろうか。(荻野) 鳥居作弥 https://www.youtube.com/watch?v=B4cQKb5wLJk  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「僕は今回の選挙では、単純に子育てと教育と福祉というところしか訴えていません。特に子育て支援と高齢者福祉は近いものだと考えていて、2つを組み合わせて対策を講じることが重要だと考えています。例えば特定の地域のみで働ける『地域限定保育士』という制度があるので、それを活用して、高齢者の皆さんが働けるようにしてもいい。その方法を考えるのは政治の役割です」  ――日本維新の会から県議選に立候補した理由について。  「分かりにくい政治にジレンマがあった。例えばALPS処理水についても、反対するのはいいが、その後どうするの?ってなってしまう。そういう意味で、日本維新の会が掲げる政策ははっきりしていて分かりやすい。ALPS処理水について、私は『全国各地で分担して捨てましょう。そうすれば早く放出できて、福島県への負担も最小限で抑えられる』と訴えています。人間関係で選挙をやるのではなく、分かりやすい政策を的確な言葉で伝えられるという点で日本維新の会はいい政党だと感じます」 一言メモ  演説会場のイオンモールいわき小名浜前は、目の前が「ツール・ド・いわき」ゴール地点になっており、イベントの音声がガンガン流れてくるトホホな環境。ただ、車や歩道橋から手を振る人もおり、着実に支持が広まっている様子も感じた。汚染水(ALPS処理水)放出について、「福島から30年以上も海洋放出したら負担が大きくなる。日本全国から放出したら数年で終わるはず」と主張。その是非はともかく、選挙という場で、独自性のある意見を主張していく姿勢は歓迎したい。(志賀) 吉田英策 https://www.youtube.com/watch?v=1scL7EG_A4k  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「福島県の財政力は全国3位だが、復興と称した大型開発や道路整備にばかりお金が使われていると感じています。県民の暮らしを応援するという視点から、教育や子育てなどに予算を割くべきです。特にいわきは医師数が少ないので医療機関の充実に充実させるべきだと思います」  ――今年2月の一般質問で会計年度任用職員の雇い止めについて質問していました。是正はされたでしょうか。  「1年契約ではあるもののボーナスを支給するということだったが、実際は労働時間が短縮されただけだったりして総額が増えているわけではない。一般の職員の待遇に改善することが必要だと思います」 一言メモ  共産党独自のしきたりなのか、本人到着までに支持者が歩道に横並びで〝戦争やめろ!〟などのコールを行っていた場面が印象的。支持者の方々と触れ合う写真を撮ろうとしたが、場所が郵便局の真向かいであまり長居できる場所ではなかったため、演説が終わると即時撤収。ある意味場馴れしているというか、統率が取れている感じを抱いた。(荻野) 真山祐一 https://www.youtube.com/watch?v=qVYED1Pb2Zc  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「課題はたくさんあります。中でも水害対策に関しては、流域治水をしっかり進めていくべきだと訴えています。『防災減災を社会の主流にしていくべきだ』というのは公明党がここ数年来主張していることです」  ――令和5年6月議会の一般質問では、「金属スクラップヤードでの事故を防ぐために許可制にして指導監視を強化しては」と指摘していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動いたでしょうか。  「『不適切な事例があれば県としての指導監視を図っていく』という答弁でしたが、具体的に条例ができたり、変化が起きているというところには至っていません。そういう意味ではまだこれからの課題だと思います」 一言メモ  JRいわき駅前で、山口那津男公明党代表が応援に来る街頭演説会を実施。駅前のペデストリアンデッキ、ラトブ前が多くの公明党支持者で埋めつくされ、お祭り・フェスのような熱気。市外からも応援に来ていた模様。山口代表が繰り返していた「ネットワーク」の強さをあらためて実感した次第。(志賀) 西丸武進 https://www.youtube.com/watch?v=_ssuXAFt_nI  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「1つは震災・原発事故からの復興です。復旧工事は行われていますが〝創生〟には至っていないので、そういう視点で復興を進めるべきです。2つはコロナ対応。まだ安心できない状況なので、いま受け皿対策や公衆衛生の管理の充実を徹底していく必要があります。3つは〝汚染水〟海洋投棄の問題です。投棄が完了するまで30年以上かかるとされることを踏まえ、県民の命を守るというスタンスで、問題が風化することない監視体制を構築する必要があります。環境、教育、福祉の充実・強化にもしっかり努めていきます」  ――昨年12月議会の代表質問で、JRの赤字路線への県の対応について質問していました。人口減少で鉄道維持が容易でなくなる中、県がどのように支援していくべきだと考えますか。  「県内の赤字路線では、まず地域住民の組織を作り、問題意識を共有化してから、行政が住民組織の提言を取りまとめ、財源の作り方を考えていく、という流れになっています。そういう意味では、まず地域ごと、駅ごとにまとまって組織を作っていけるかが重要になると思います。その道筋は行政側が責任を持って提供するべきです」 一言メモ  19時開始の個人演説会だけあって、力が入った長尺の演説。前段の後援会長のあいさつも力が入っていた。7期のベテラン議員だが、今回立候補した新人4人のうち2人は元いわき市議、ほか2人もそれぞれ維新公認、れいわ推薦を受けていることもあって、かなり警戒してる様子が見られた(荻野) 宮川絵美子 https://www.youtube.com/watch?v=467NOJKf-lw  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「県執行部には県民の生の声を聞いてほしい。給料はなかなか上がらないし、世論調査では教育費の負担を軽くしてほしいという声も多い。高校入学時のタブレット購入費を生徒が負担しているのは、東北では福島県だけです。高齢者の足の確保など高齢者支援も問題です。県議会ではその都度質問しています」  ――質問をすることで県執行部の対応は変わっていますか。  「問題提起をすると少し変わってくる。学校給食の無料化を訴えていたら、県内市町村が導入するようになった。子どもの医療費の無料化についても主張していたら、12年前の県議選の後に無料化が実現した。選挙は世論を喚起するチャンスであり、ずっと運動を続けてきたことに焦点が当たって、選挙の節目で変わっていくことも多いので、主張を続けることに意義があると考えています」 一言メモ  イオンモールいわき小名浜前の道路沿いで、施設に向かって演説する宮川候補。買い物客は足を止めることなく施設に入っていった。定数10に対し13人が立候補する激戦区だが、有権者の盛り上がりは今ひとつ……という状況を象徴する光景だった。(志賀) 矢吹貢一 動画撮れず。 取材に応じず。 一言メモ  事前に事務所に確認したところ、「事務所の方針で街角演説をする考えはありません。市内で一日選挙カーを走らせて、20時ごろ事務所に戻る予定です」とのこと。やむなく20時前に事務所に訪れ、スタッフとともに戻ってきた選挙カーを出迎えた。降りてきた矢吹候補に「政経東北です。ちょっとお話しお聞かせいただけないですか」と話しかけると、あからさまに苦笑いを浮かべ、無言で手を横に振りながら事務所内に入っていった。  しばらく外で待っていると、スタッフが出てきて「すみません、これから打ち合わせなので……。明日も街頭演説の予定はなく、戻ってきた後も時間が取れません。せっかく来ていただいたのにすみません」と謝られた。街頭演説もせずマスコミ取材にも応じないということは、自分の意見を広く知ってもらえる機会を放棄しているようなもの。矢吹陣営としては、新たな票の開拓は必要なく、既存の支持者を対象とした演説会で余裕で当選できるという判断なのだろう。  翌朝8時過ぎ、宿泊したいわき駅前のホテルで仕事をしていたら、矢吹候補の選挙カーの声が聞こえてきた。急いで窓から外を眺めたが見つけられず、そのまま声は小さくなっていった。(志賀) 安部泰男 https://www.youtube.com/watch?v=lhjMYDQJjt0  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「これまで信念として取り組んできたのは、住民が安全に暮らせる環境を作るということであり、防災・減災に対する思いは強いです」  ――9月議会の一般質問ではパートナーシップ・ファミリーシップ制度の導入について質問していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動きましたか。  「LGBT当事者の方から直接相談を受けて質問したものです。男女共同参画社会を築くために差別のない社会を築く、という県の方針を示したうえで、総括質疑では導入に向けてやっていくと答弁していました。県内市町村で導入の動きが加速しているのに県が何もやらないわけにはいかないと思います」 一言メモ  山口那津男公明党代表が応援に来ることもあって、エブリア北側駐車場の一角に公明党支持者100~200人が集結。SP・警察も多数。そのにぎわいに圧倒される。「いわき市に免許センターがないので、免許証がすぐにもらえない。県内で最も人口が多いのに。改善すべきだ」という主張はこの地域に住んでいなければ分からない視点で、ハッとさせられた。これこそ選挙漫遊の魅力。(志賀) 古市三久 https://www.youtube.com/watch?v=YV0IrOHy6O0  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「人口減少、少子高齢化で地域が衰退していることです。中山間地では草刈りをする人も減っており、自分で買い物に行くのも難しいという人が現実にいる。もし当選できたら総括質疑という形でなく、一般質問で問題提起したい」  ――ALPS処理水の海洋放出反対のスタンスを取っており、県議会でも陸上保管すべきと主張していたが、県は国の海洋放出方針に追随する形になりました。   「内堀雅雄知事が県民を代表して反対の声明を出すべきだったと考えています。これは新聞社などのアンケートにも書いている点です」 一言メモ  処理水海洋放出、原発事故収束作業に正面から疑問を呈するスタンス。海に面するいわき市選挙区でも意外とこういう演説は少ない。平日ということもあってか聴衆は2、3人だった。(志賀) 鈴木智 https://www.youtube.com/watch?v=CCwk0J33tMs  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「いわきにおいては水害対応だと考えています。自民党県連の動きと連動して、発災翌日から内堀雅雄知事に現地視察に入ってもらい、被害状況や地域の皆さんの声を聞いてもらいました」  ――令和5年9月議会の一般質問で、ドライバー不足が小名浜港の貨物に与える影響について質問していました。  「小名浜港に影響が出るのであれば質問しなければならないと考えた次第です。問題が可視化されるのに加え、県執行部も私も理解も深まるので、こうした質問をするのは意義があることだと考えています」 一言メモ  3連休最終日に予定されていた鹿島公民館での個人演説会。前回選挙では8位当選(定数10)だったこともあってか、応援弁士や陣営幹部からは気を引き締めるよう求める発言が続出。坂本竜太郎氏の県議選立候補見合わせで、逆に混乱している印象だった。(志賀) 青木稔 https://www.youtube.com/watch?v=Y0yiCo0MrsU  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「演説でも触れたが、やっぱり一番のポイントは人口減少。安心して働ける企業を誘致できるかが重要になると思う。そういう意味で注目しているのが福島イノベーション・コースト構想であり、エフレイ(福島国際研究教育機構)です。実現すれば必ず有力企業が来るので、いかにいわきの方につなげられるかが重要になります。そのために私も自民党県連としての立場でできる限りのことに取り組む考えです」  ――現在9期目で、演説では当初立候補を見合わせる方針だったという話もありました。  「年齢も年齢なので家族と相談して立候補を見合わせる決意をして、周囲にも伝えていましたが、さまざまな方から要請を受け、再び立候補することを決意しました」 一言メモ  地元・中央台の公民館で個人演説会を開催。参加者は約30人でほとんどが年配の方々。自民党県連いわき支部の重鎮ということもあって、森雅子参院議員のほか、今後の動向が注目される坂本竜太郎県議、市議らが応援演説に駆けつけた。1945(昭和20)年生まれで、いわき市議時代を含め議員生活は40年以上に上る。最後は10選に向けてガンバロー三唱。パワフルさでは誰にも負けていない。(志賀) 木村謙一郎 https://www.youtube.com/watch?v=ZVBagsrdRFQ    ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「河川整備を進めて水害の減災・防災に努めるのも必要だし、一次産業の後継者不足も深刻です。一番大きいのは人口減少ですね。都市部、山間部、それぞれ事情が異なるので、しっかり議論して解決していかなければならないと思います」  ――立候補を決意した理由は。  「11年にわたり市議会議員として活動してきましたが、市議会議員では解決できない問題にたびたび直面してきました。たとえば医療問題などは県にイニシアチブを発揮してもらわなければ改善は難しい。加えて現役世代として声を聞いてほしいという思いや、いわき市の中心部から外れた久之浜地域を代表する立場から県議会で意見を述べていきたいと思いがあり、立候補を決意しました」 一言メモ  昼前の時間帯にしては人の集まりがまばらだった。支持者は子育て世代と高齢者の人が中心の印象。演説でも触れていたように「久之浜地区から県議を!」という気概が非常に強く、地元での遊説の様子も気になるところ。(荻野) 山口洋太 https://www.youtube.com/watch?v=fX1X0UkWfaM  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「演説でお話しした通り、現役医師としていわき市で働くようになって医療体制に課題を感じ、そこを改善すべきだと考えたので立候補を決意しました」  ――れいわ新選組の推薦を受けていますが、無所属で立候補した理由は。 「基本的には特定の政党に属さず、市民から聞いた話を基に政策を打ち出していきたいと考えています。これまで1万8000軒を超えるお宅にお邪魔して話を聞いてきました」 一言メモ  演説予定場所の商業施設前に、ピンク色の選挙カーがさっそうと登場。聴衆は支持者と思われる高齢者が数人。車内から手を振るドライバーも。「この間1万8000軒以上を訪問した」という言葉は伊達じゃないということか。33歳という若さ、現役医師が医師不足解消を訴える点も支持拡大につながっている様子。(志賀)