【いわき市】選挙漫遊(県議選)

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【いわき市】選挙漫遊(県議選)

 

 「勝手に連動企画『政経東北』でも選挙漫遊をやってみた」。

 11月2日告示、12日投開票の福島県議選。福島市、郡山市、いわき市、会津若松市各選挙区の立候補者39人を本誌スタッフ総出で取材し、選挙漫遊(街頭演説などに足を運んで選挙を積極的に楽しむ)を実践しようというもの。

 11月5日(日)、6日(月)の2日間、街頭演説会場に足を運び、その様子を写真と動画で記録。併せてインタビュー取材も実施した。現職には「県政・県土の課題は?」、新人には「立候補した理由は?」などについて質問した。立候補者はどのような選挙活動を展開し、どんな事を話したのか。

担当:志賀 補佐:荻野

福島県議選【いわき市】編

【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松
いわき市の解説は1:02:10~

定数10 立候補者13

告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日

立候補届出状況↓

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601557.pdf

選挙公報↓

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601653.pdf

届け出順、敬称略。

安田成一

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

 「いわき市に関しては、水害被害が起きたことを考えると、防災対策、災害に強いまちづくりをしっかり進めることが最大の課題と考えています。令和元年東日本台風のときは市議だったが、河川改修を早く進めてもらいたいという要望を受けても、市としてなかなか対応できない面があった。その時のもどかしい思いから県議会への立候補を決意した。

 3年経って二級河川の改修工事が進められたが、支流の方が進んでいない。先月には線状降水帯の影響による水害も発生した。いわき市とタッグを組んで予算をつけ、できる限り早く改修工事を進めることで安心して暮らせるまちづくりを実現したいと思っています。

 エフレイとの連携も必要だと思っています。福島高専、東日本国際大学と人材育成の面で協定も結んでいるので、新産業をいわき市、福島県に根付かせて、そこで雇用創出につながれば人口減少の予測も変わってくるのではないかと考えています。優秀な人材がいわき市、福島県に留まってもらう取り組み、戻ってきてもらう取り組みを強力に進めて貰えればと考えています」

一言メモ

 ロードバイクで駆け付けた支持者がちらほら(趣味仲間?)。演説に耳を傾けていたのは40~50代の子育て世代が中心で、女性もほかの陣営より見受けられた。今回回った中で一番支持者の幅が広いと感じた。新人候補だがもともといわき市議だったこともあって、知名度も高いのだろうか。(荻野)

鳥居作弥

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

 「僕は今回の選挙では、単純に子育てと教育と福祉というところしか訴えていません。特に子育て支援と高齢者福祉は近いものだと考えていて、2つを組み合わせて対策を講じることが重要だと考えています。例えば特定の地域のみで働ける『地域限定保育士』という制度があるので、それを活用して、高齢者の皆さんが働けるようにしてもいい。その方法を考えるのは政治の役割です」

 ――日本維新の会から県議選に立候補した理由について。

 「分かりにくい政治にジレンマがあった。例えばALPS処理水についても、反対するのはいいが、その後どうするの?ってなってしまう。そういう意味で、日本維新の会が掲げる政策ははっきりしていて分かりやすい。ALPS処理水について、私は『全国各地で分担して捨てましょう。そうすれば早く放出できて、福島県への負担も最小限で抑えられる』と訴えています。人間関係で選挙をやるのではなく、分かりやすい政策を的確な言葉で伝えられるという点で日本維新の会はいい政党だと感じます」

一言メモ

 演説会場のイオンモールいわき小名浜前は、目の前が「ツール・ド・いわき」ゴール地点になっており、イベントの音声がガンガン流れてくるトホホな環境。ただ、車や歩道橋から手を振る人もおり、着実に支持が広まっている様子も感じた。汚染水(ALPS処理水)放出について、「福島から30年以上も海洋放出したら負担が大きくなる。日本全国から放出したら数年で終わるはず」と主張。その是非はともかく、選挙という場で、独自性のある意見を主張していく姿勢は歓迎したい。(志賀)

吉田英策

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

 「福島県の財政力は全国3位だが、復興と称した大型開発や道路整備にばかりお金が使われていると感じています。県民の暮らしを応援するという視点から、教育や子育てなどに予算を割くべきです。特にいわきは医師数が少ないので医療機関の充実に充実させるべきだと思います」

 ――今年2月の一般質問で会計年度任用職員の雇い止めについて質問していました。是正はされたでしょうか。

 「1年契約ではあるもののボーナスを支給するということだったが、実際は労働時間が短縮されただけだったりして総額が増えているわけではない。一般の職員の待遇に改善することが必要だと思います」

一言メモ

 共産党独自のしきたりなのか、本人到着までに支持者が歩道に横並びで〝戦争やめろ!〟などのコールを行っていた場面が印象的。支持者の方々と触れ合う写真を撮ろうとしたが、場所が郵便局の真向かいであまり長居できる場所ではなかったため、演説が終わると即時撤収。ある意味場馴れしているというか、統率が取れている感じを抱いた。(荻野)

真山祐一

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

 「課題はたくさんあります。中でも水害対策に関しては、流域治水をしっかり進めていくべきだと訴えています。『防災減災を社会の主流にしていくべきだ』というのは公明党がここ数年来主張していることです」

 ――令和5年6月議会の一般質問では、「金属スクラップヤードでの事故を防ぐために許可制にして指導監視を強化しては」と指摘していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動いたでしょうか。

 「『不適切な事例があれば県としての指導監視を図っていく』という答弁でしたが、具体的に条例ができたり、変化が起きているというところには至っていません。そういう意味ではまだこれからの課題だと思います」

一言メモ

 JRいわき駅前で、山口那津男公明党代表が応援に来る街頭演説会を実施。駅前のペデストリアンデッキ、ラトブ前が多くの公明党支持者で埋めつくされ、お祭り・フェスのような熱気。市外からも応援に来ていた模様。山口代表が繰り返していた「ネットワーク」の強さをあらためて実感した次第。(志賀)

西丸武進

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

「1つは震災・原発事故からの復興です。復旧工事は行われていますが〝創生〟には至っていないので、そういう視点で復興を進めるべきです。2つはコロナ対応。まだ安心できない状況なので、いま受け皿対策や公衆衛生の管理の充実を徹底していく必要があります。3つは〝汚染水〟海洋投棄の問題です。投棄が完了するまで30年以上かかるとされることを踏まえ、県民の命を守るというスタンスで、問題が風化することない監視体制を構築する必要があります。環境、教育、福祉の充実・強化にもしっかり努めていきます」


 ――昨年12月議会の代表質問で、JRの赤字路線への県の対応について質問していました。人口減少で鉄道維持が容易でなくなる中、県がどのように支援していくべきだと考えますか。


 「県内の赤字路線では、まず地域住民の組織を作り、問題意識を共有化してから、行政が住民組織の提言を取りまとめ、財源の作り方を考えていく、という流れになっています。そういう意味では、まず地域ごと、駅ごとにまとまって組織を作っていけるかが重要になると思います。その道筋は行政側が責任を持って提供するべきです」

一言メモ

 19時開始の個人演説会だけあって、力が入った長尺の演説。前段の後援会長のあいさつも力が入っていた。7期のベテラン議員だが、今回立候補した新人4人のうち2人は元いわき市議、ほか2人もそれぞれ維新公認、れいわ推薦を受けていることもあって、かなり警戒してる様子が見られた(荻野)

宮川絵美子

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

 「県執行部には県民の生の声を聞いてほしい。給料はなかなか上がらないし、世論調査では教育費の負担を軽くしてほしいという声も多い。高校入学時のタブレット購入費を生徒が負担しているのは、東北では福島県だけです。高齢者の足の確保など高齢者支援も問題です。県議会ではその都度質問しています」

 ――質問をすることで県執行部の対応は変わっていますか。

 「問題提起をすると少し変わってくる。学校給食の無料化を訴えていたら、県内市町村が導入するようになった。子どもの医療費の無料化についても主張していたら、12年前の県議選の後に無料化が実現した。選挙は世論を喚起するチャンスであり、ずっと運動を続けてきたことに焦点が当たって、選挙の節目で変わっていくことも多いので、主張を続けることに意義があると考えています」

一言メモ

 イオンモールいわき小名浜前の道路沿いで、施設に向かって演説する宮川候補。買い物客は足を止めることなく施設に入っていった。定数10に対し13人が立候補する激戦区だが、有権者の盛り上がりは今ひとつ……という状況を象徴する光景だった。(志賀)

矢吹貢一

動画撮れず。

取材に応じず。

一言メモ

 事前に事務所に確認したところ、「事務所の方針で街角演説をする考えはありません。市内で一日選挙カーを走らせて、20時ごろ事務所に戻る予定です」とのこと。やむなく20時前に事務所に訪れ、スタッフとともに戻ってきた選挙カーを出迎えた。降りてきた矢吹候補に「政経東北です。ちょっとお話しお聞かせいただけないですか」と話しかけると、あからさまに苦笑いを浮かべ、無言で手を横に振りながら事務所内に入っていった。

 しばらく外で待っていると、スタッフが出てきて「すみません、これから打ち合わせなので……。明日も街頭演説の予定はなく、戻ってきた後も時間が取れません。せっかく来ていただいたのにすみません」と謝られた。街頭演説もせずマスコミ取材にも応じないということは、自分の意見を広く知ってもらえる機会を放棄しているようなもの。矢吹陣営としては、新たな票の開拓は必要なく、既存の支持者を対象とした演説会で余裕で当選できるという判断なのだろう。

 翌朝8時過ぎ、宿泊したいわき駅前のホテルで仕事をしていたら、矢吹候補の選挙カーの声が聞こえてきた。急いで窓から外を眺めたが見つけられず、そのまま声は小さくなっていった。(志賀)

安部泰男

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

 「これまで信念として取り組んできたのは、住民が安全に暮らせる環境を作るということであり、防災・減災に対する思いは強いです」

 ――9月議会の一般質問ではパートナーシップ・ファミリーシップ制度の導入について質問していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動きましたか。

 「LGBT当事者の方から直接相談を受けて質問したものです。男女共同参画社会を築くために差別のない社会を築く、という県の方針を示したうえで、総括質疑では導入に向けてやっていくと答弁していました。県内市町村で導入の動きが加速しているのに県が何もやらないわけにはいかないと思います」

一言メモ

 山口那津男公明党代表が応援に来ることもあって、エブリア北側駐車場の一角に公明党支持者100~200人が集結。SP・警察も多数。そのにぎわいに圧倒される。「いわき市に免許センターがないので、免許証がすぐにもらえない。県内で最も人口が多いのに。改善すべきだ」という主張はこの地域に住んでいなければ分からない視点で、ハッとさせられた。これこそ選挙漫遊の魅力。(志賀)

古市三久

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

「人口減少、少子高齢化で地域が衰退していることです。中山間地では草刈りをする人も減っており、自分で買い物に行くのも難しいという人が現実にいる。もし当選できたら総括質疑という形でなく、一般質問で問題提起したい」

 ――ALPS処理水の海洋放出反対のスタンスを取っており、県議会でも陸上保管すべきと主張していたが、県は国の海洋放出方針に追随する形になりました。
 

 「内堀雅雄知事が県民を代表して反対の声明を出すべきだったと考えています。これは新聞社などのアンケートにも書いている点です」

一言メモ

 処理水海洋放出、原発事故収束作業に正面から疑問を呈するスタンス。海に面するいわき市選挙区でも意外とこういう演説は少ない。平日ということもあってか聴衆は2、3人だった。(志賀)

鈴木智

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

 「いわきにおいては水害対応だと考えています。自民党県連の動きと連動して、発災翌日から内堀雅雄知事に現地視察に入ってもらい、被害状況や地域の皆さんの声を聞いてもらいました」

 ――令和5年9月議会の一般質問で、ドライバー不足が小名浜港の貨物に与える影響について質問していました。

 「小名浜港に影響が出るのであれば質問しなければならないと考えた次第です。問題が可視化されるのに加え、県執行部も私も理解も深まるので、こうした質問をするのは意義があることだと考えています」

一言メモ

 3連休最終日に予定されていた鹿島公民館での個人演説会。前回選挙では8位当選(定数10)だったこともあってか、応援弁士や陣営幹部からは気を引き締めるよう求める発言が続出。坂本竜太郎氏の県議選立候補見合わせで、逆に混乱している印象だった。(志賀)

青木稔

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

 「演説でも触れたが、やっぱり一番のポイントは人口減少。安心して働ける企業を誘致できるかが重要になると思う。そういう意味で注目しているのが福島イノベーション・コースト構想であり、エフレイ(福島国際研究教育機構)です。実現すれば必ず有力企業が来るので、いかにいわきの方につなげられるかが重要になります。そのために私も自民党県連としての立場でできる限りのことに取り組む考えです」

 ――現在9期目で、演説では当初立候補を見合わせる方針だったという話もありました。

 「年齢も年齢なので家族と相談して立候補を見合わせる決意をして、周囲にも伝えていましたが、さまざまな方から要請を受け、再び立候補することを決意しました」

一言メモ

 地元・中央台の公民館で個人演説会を開催。参加者は約30人でほとんどが年配の方々。自民党県連いわき支部の重鎮ということもあって、森雅子参院議員のほか、今後の動向が注目される坂本竜太郎県議、市議らが応援演説に駆けつけた。1945(昭和20)年生まれで、いわき市議時代を含め議員生活は40年以上に上る。最後は10選に向けてガンバロー三唱。パワフルさでは誰にも負けていない。(志賀)

木村謙一郎

 

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

 「河川整備を進めて水害の減災・防災に努めるのも必要だし、一次産業の後継者不足も深刻です。一番大きいのは人口減少ですね。都市部、山間部、それぞれ事情が異なるので、しっかり議論して解決していかなければならないと思います」

 ――立候補を決意した理由は。

 「11年にわたり市議会議員として活動してきましたが、市議会議員では解決できない問題にたびたび直面してきました。たとえば医療問題などは県にイニシアチブを発揮してもらわなければ改善は難しい。加えて現役世代として声を聞いてほしいという思いや、いわき市の中心部から外れた久之浜地域を代表する立場から県議会で意見を述べていきたいと思いがあり、立候補を決意しました」

一言メモ

 昼前の時間帯にしては人の集まりがまばらだった。支持者は子育て世代と高齢者の人が中心の印象。演説でも触れていたように「久之浜地区から県議を!」という気概が非常に強く、地元での遊説の様子も気になるところ。(荻野)

山口洋太

 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。

 「演説でお話しした通り、現役医師としていわき市で働くようになって医療体制に課題を感じ、そこを改善すべきだと考えたので立候補を決意しました」

 ――れいわ新選組の推薦を受けていますが、無所属で立候補した理由は。

「基本的には特定の政党に属さず、市民から聞いた話を基に政策を打ち出していきたいと考えています。これまで1万8000軒を超えるお宅にお邪魔して話を聞いてきました」

一言メモ

 演説予定場所の商業施設前に、ピンク色の選挙カーがさっそうと登場。聴衆は支持者と思われる高齢者が数人。車内から手を振るドライバーも。「この間1万8000軒以上を訪問した」という言葉は伊達じゃないということか。33歳という若さ、現役医師が医師不足解消を訴える点も支持拡大につながっている様子。(志賀)

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