【不祥事連続】楢葉町で行われていた「職員カンパ」

〝不祥事連続〟楢葉町で行われていた「職員カンパ」

 楢葉町議会3月定例会の一般質問で、同町職員の不祥事が相次いでいる件についての質問が行われた。

 2021年9月には、産業振興課職員が、会計業務を担当していた楢葉町土地改良区と楢葉町多面的機能広域活動保全会の通帳から、約3800万円を横領していたことが発覚した()。

 昨年2月には、建設課職員が複数の指名競争入札で指名業者名や設計価格を漏洩したとして、公契約関係競売入札妨害及び官製談合防止法違反の容疑で逮捕、起訴された。

 昨年4月には、政策企画課職員が退庁後、道路交通法違反(無免許運転)で現行犯逮捕された。

 町では昨年9月、再発防止に向けた「職員・組織改善計画」を策定した。だが、同12月には、建設課職員が災害公営住宅の家賃管理システムを不正操作し、自分宅の家賃納付約127万円を免れていたことが発覚。もはや手の打ちようがない状況となっている。

 3月定例会で注目されたのは、再発防止策と併せて、町議やマスコミに送付された「通報書」の真偽だった。前述・家賃管理システム不正操作について、「町が令和3年から隠蔽している」とする匿名の通報書が出回っていた(本誌2月号参照)。そのため、松本明平町議(1期)、結城政重町議(8期)が「通報書の内容は事実なのか」と追及した。

 町執行部は「町役場には届いていないが、町議から見せてもらい中身は確認した。家賃管理システム不正操作に関しては、昨年12月に初めて分かったもので隠蔽していた事実はない。監査でも分からなかった」と答弁し、通報書の内容をあらためて否定した。そのうえで、「チェック体制を含め、不祥事が起きにくい仕組み作りを進めていく」と述べた。

 差出人はあえて事実でない内容を記したのか、それとも町の方が事実を伏せているのか。いずれにしても、これだけ職員不祥事が連続し、こうした通報書が出されるのは異常だ。そのことを重く受け止め、職員の意識改革など具体的な対策を打ち出し、講じていく必要があろう。

 気になるのは、同町役場の〝体質〟だ。町総務課への取材や町議会での過去のやり取りによると、2021年9月の公金横領の後には、町職員がカンパを集めていたという。

 土地改良区などが元職員への訴訟を提起することになったのに加え、各種支払いもあったため、資金不足に陥った。そうした中、係長レベルの職員が中心となって、「会計業務を引き継いだのは同じ町職員。助け合おう」と呼びかけ、土地改良区などへのカンパを募った。1人約1万円を支払い、総額100万円になったようだ。

 町総務課の担当者は「横領した元職員を支援する狙いは一切ない。横領された金額の穴埋めではなく、あくまで助け合い」と強調したが、職員不祥事の〝後始末〟を同僚の負担で行うのは疑問が残る。

 町内の事情通はこう指摘する。

 「不祥事の責任を取るべきは、町長であり、土地改良区理事長でもある松本幸英氏のはず。〝善意のカンパ〟で対応すれば責任の所在があいまいになるので、役場が止めるべきだったと思います。昨年12月の家賃管理システム不正操作については、町長は減給対象にすらなっていない。こうした責任をとらない体質が、役場内に〝ぬるま湯〟の空気を生み出しているのではないか」

 本誌2月号記事では、神戸国際大学経済学部教授の中村智彦氏が「倫理教育を徹底し、不正行為に手を染めれば、その後の人生がどうなるのか、はっきり示すことが職員不祥事の再発防止において重要」と話していた。松本町長は職員不祥事の連鎖を断ち切ることができるのか、今後の対応が注目される。

※元職員はその後、町と土地改良区から民事・刑事で訴えられ、土地改良区に4157万4684円(遅延損害金含む)、町に30万1309円の支払いを命じる判決が下された。ただ、未だに支払いは行われておらず、町は弁護士と対応を協議している。

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