国見町百条委の注目は町職員の刑事告発の有無

国見町百条委の注目は町職員の刑事告発の有無

 国見町が救急車を研究開発し、リースする事業を中止した問題は、1月26日に議会が設置した調査特別委員会(百条委員会)で受託業者側の証人喚問が行われヤマ場を迎える(委員構成と設置議案の採決結果は別表)。一連の問題は河北新報を皮切りに全国紙、東洋経済オンラインまで報じるようになった。

百条委員会設置議案の採決結果

◎は委員長、〇は副委員長(敬称略)

佐藤多真恵1期反対
菊地 勝芳1期欠席
佐藤  孝◎2期賛成
蒲倉  孝2期賛成
八巻喜治郎2期賛成
宍戸 武志2期賛成
山崎 健吉2期賛成
小林 聖治〇2期賛成
渡辺 勝弘5期賛成
松浦 常雄5期賛成
佐藤 定男4期
佐藤定男氏は議長のため採決に加わらず

 全国メディアが注目するのは、河北新報や百条委員会委員長の佐藤孝議員が主張している、町がワンテーブル(宮城県多賀城市)に事業を発注した過程が官製談合防止法違反に当たるかどうかだ。だが、ネットを使って全国ニュースに思うようにアクセスできない高齢者は戸惑う。

 高齢のある男性町民は本誌が「忖度している」と苦言を呈し、次のように打ち明けた。

 「当初は救急車問題を全く扱わず役場関係者や河北新報を読んでいる知人からの口コミが頼りでした。なぜ報じないのか、地元メディアは町に忖度しているのではと思い、購読している福島民報に『報じる責任がある』と電話したことがあります。担当者は『何を報じるか報じないかはこちらの裁量だ』と答えました」

 本誌も含め地元紙が詳報しなかった(できなかった)のは、核心の情報を得られなかったからだ。仮に河北新報と同じ内部情報を入手し記事にしたとしても二番煎じになり、地元2紙はプライドが許さないだろう。

 大々的に報じるようになったのは、議会が百条委を設置し「公式見解」が書けるようになったから。

 設置に至る経緯は次の通り。直近の昨年5月の町議選(定数12)は無投票だった。9人が現職で、うち1人が9月に辞職した。改選前の議会は2022年の9月定例会で、救急車事業を盛り込んだ補正予算案を原案通り全会一致で可決している。改選後の議会では19年に議員に初当選後、辞職し、20年の町長選に臨んで落選していた佐藤孝氏が議員に無投票再選し、執行部を激しく糾弾。同調する議員らと百条委設置案を提出した。救急車事業案に賛成した議員たちも百条委設置に傾き、昨年10月の臨時会で賛成多数で可決した。

 これに先んじて、引地真町長は第三者委員会を議会の議決を受けて設置しており、弁護士ら3人に検証を委嘱。「二重検証状態」が続く。

 だが、町民にはメディアや議員の裏事情は関係ない。

 「私はネットに疎いし、もう1紙購読する金銭的な余裕はない。知人に河北新報の記事のコピーを回してもらい断片的に情報を得ています。同年代で集まって救急車問題について話しても、みんな得ている情報が違うので実のある話にならない」(前出の男性)

 町民の情報格差をよそに、1月26日には、百条委によるワンテーブル前社長や社員、子会社ベルリングなどキーパーソン3人の証人喚問が予定されている。

 百条委について地方自治法は、出頭・記録提出・証言の拒否や虚偽証言に対し「議会は(刑事)告発しなければならない」とする。河北新報と東洋経済オンラインの共同取材によると、町執行部と受託業者の説明には食い違いが生じている(12月6日配信記事)。

 原稿執筆は昨年12月21日現在で、22日に行われた町職員の証人喚問を傍聴できていないため、執行部と受託業者が一致した見解を証言するのか、あるいは異なる証言をするのかは分からない。言えるのは、受託業者への証人喚問では、執行部と受託業者が同じ「真実」を話す、あるいは一方が「虚偽」とされ、刑事告発を決定付けるということだ。

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