郡山市が逢瀬ワイナリーの引き継ぎを決断!?

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郡山市が逢瀬ワイナリーの引き継ぎを決断!?

 本誌昨年10月号で郡山市の「ふくしま逢瀬ワイナリー」が閉鎖の危機に立たされていることを報じた。

 逢瀬ワイナリーは震災からの復興を目的として、市が所有する逢瀬地区の土地に公益財団法人三菱商事復興支援財団(以下、三菱復興財団と略)が2015年10月に建設。同ワイナリーを拠点に、地元農家(現在13軒)にワイン用ブドウを栽培してもらい、地元産ワインをつくって農業、観光、物産などの地域産業を活性化させる果樹農業6次産業化プロジェクトを市と同財団が共同で進めてきた。実際の酒の製造と販売は同財団が設立した一般社団法人ふくしま逢瀬ワイナリーが手掛けている。

 ただ三菱復興財団では当初から、同プロジェクトがスタートしてから10年後、すなわち2024年度末で撤退し、施設と事業を地元に移管する方針を示していた。同財団は「地元」がどこを指すのかは明言していないが、本命が郡山市であることは明白だった。

 事実、三菱復興財団はこの間、市に施設と事業を移管したいと再三申し入れている。ところが、市農林部は頑なに拒否。その理由を本誌10月号は次のように書いている。

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 「郡山産ワインは市場でようやく評価されるようになったが、これまで支出が上回ってきたこともあり施設はずっと赤字だった。今は三菱復興財団が面倒を見てくれているからいいが、市が施設を引き受ければそのあとは赤字も負担しなければならないため、品川萬里市長が難色を示しているのです」(事情通)

 上がノーと言えば、下は従うほかない――というわけで、市農林部は三菱復興財団の移管要請を拒み続けている、と。

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 移管先が決まらなければ、施設は取り壊され、事業を終える可能性もある。この時の本誌取材に、市園芸畜産振興課の植木一雄課長は「逢瀬ワイナリーについては関係者において現在検討中です」と文書で回答するのみ。9月定例会でも関連質問があったが、市は「検討中」と繰り返すばかりだった。

 「政経東北の記事が出たあと、市から今後のブドウ栽培に関する聞き取り調査があった。逢瀬ワイナリーがこれからどうなるといった話は出なかった」(ある生産農家)

 このように、移管に消極的な姿勢を見せていた市だったが、先月開かれた12月定例会は少し様子が違っていた。箭内好彦議員(3期)が「第一の移管先に挙がっている市の考えを聞きたい」と質問すると、和泉伸雄農林部長はこう答弁したのだ。

 「三菱復興財団からは市や生産農家に配慮したご提案をいただいている。市としては同財団が築いたワイナリー事業が2025年度以降も円滑に継続されるよう、生産農家の経営方針を尊重しながら同財団と協議していきたい」

 前述の「検討中」と比べると、明らかに前向きな姿勢に変わっているのが分かる。

 ワイナリー事業に精通する事情通はこのように話す。

 「市の方針は決まっていないが、品川市長の姿勢が変わったことは間違いない。三菱復興財団とは受け入れに関する条件面を協議している模様で、同財団担当者も市のスタンスの変化に手ごたえを感じているようだ。担当者はそれまで市を説得しようと頻繁に来庁していたが、11月以降は来庁の頻度も減っている」

 三菱復興財団が撤退する2024年度末まで1年3カ月を切る中、移管に向けた協議が順調に進むのか、市の対応が注目される。

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