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若手新人議員

  • 元町長に大差をつけた渡部裕太氏【南会津町】【若手新人議員】

    元町長に大差をつけた渡部裕太氏【南会津町】【若手新人議員】

    元町長に大差をつけた渡部裕太氏 町の課題を語る渡部裕太氏  本誌2019年6月号に「南会津町議選 湯田芳博氏当選で嵐の予感」という記事を掲載した。  4年前の南会津町議選に、元町長の湯田芳博氏が立候補し、2位当選者の倍近い得票数(1466票)でぶっちぎりのトップ当選を果たしたことを報じたもの。  湯田氏は昨年4月の南会津町長選にも立候補したが、元副町長の渡部正義氏との対決に敗れ、4度連続の町長選落選となった。すると、今年4月の町議選に立候補した。  今回も圧倒的な票数でトップ当選するのかと思いきや、湯田氏と同じ田島地区の新人候補がその座を奪い取った(別掲参照)。 選挙結果(4月23日投開票、投票率77・74%)当1538渡部 裕太 (31)無新当836湯田 芳博 (72)無元当755渡部 訓正 (69)無現当626丸山 陽子 (68)公現当575古川  晃 (62)無新当543芳賀 正義 (75)無新当540山内  政 (70)無現当499楠  正次 (68)無現当449湯田  哲 (66)無現当446森  秀一 (72)無元当434川島  進 (68)無現当430室井 英雄 (66)無現当422酒井 幸司 (65)無新当392高野 精一 (73)無現当328星  和孝 (57)無新当297湯田 剛正 (62)無新275馬場  浩 (61)無現  「若い議員は少ないので、トップ当選を目指し、できる限り多くの方に得票してもらいたいと考えて全力で活動していました」  こう語るのは31歳で町議となった渡部裕太氏だ。今回の当選者では最年少となる。  会津高卒。「地域医療に携わりたい」と自治医大入学を目指し、予備校に通いながら浪人生活を続けている中で、2019年、父親の渡部英明氏が県議選に立候補することになり、手伝いのため同町にUターン。結局、父親は選挙戦で敗れたが、そのまま町内の企業に就職した。  こうした活動中に驚かされたのが、若い世代の選挙への関心のなさだ。  「民間企業だと退職するぐらいの年齢の人が議員を務めており、接点も親近感もない」という意見が聞かれた。それならば、若者が1人でも議員になることで、思いが伝えやすくなり、政治参加もするようになるのではないか――。  渡部氏は地元に戻って以来、地域のスポーツ活動、山岳救助消防団など、さまざまな活動に参加していた。多くの人の話を聞く機会がある自分が若い世代の受け皿になろうと考えた。その結果、多くの票を得て町議に当選したのだから、期待している人が多いということだろう。 会社員との兼務生活  経営者の理解を得て、地元の建材店に勤めながら、議員活動に取り組む。ちなみに地方自治法では町の事業を請け負う企業の役員が地方議員を兼ねることが禁じられているが、渡部氏は役員にはなっていない。議会の会期中は閉会後に会社に戻って仕事をこなす。「正直、当選後は休みがありません」と笑う。  公約には空き家の活用、体験型観光資源の創出、地域の魅力発掘などを掲げた。6月定例会では、早速空き家対策について執行部にただした。  「現場に行って話を聞いて初めて分かることも多い。例えば、移住者を増やすための施策が行われているが、『移住者のニーズとはかみ合っていない』という声が聞かれる。町への窓口、つなぎ役としての役割を果たしていきながら、公約実現を目指していきたい。特に空き家問題については、いま会社で不動産部門を担当しており、現場でその実態を知っているという強みがあるので、積極的に取り組んでいきたいですね」  11月に父親の渡部英明氏が県議選に再び立候補することについては「もし当選させてもらえば、相互に連携して県・町のパイプ役として機能できると思います」と語る。  地域を問わず入れてもらった多くの票は若き立候補者への期待の表れ。後は行動で示すだけだ。

  • 地域おこしで移住した長友海夢氏【猪苗代町】【若手新人議員】

    地域おこしで移住した長友海夢氏【猪苗代町】【若手新人議員】

    地域おこしで移住した長友海夢氏  猪苗代町は、6月に町長選が行われ、そこに佐瀬誠氏、佐藤悦男氏の2人が議員を辞職して立候補したほか、二瓶隆雄氏が在職中の2021年4月に亡くなったことで欠員3となっていた。  そのため、町長選と同時日程(6月13日告示、18日投開票)で議員補欠選挙が行われた。町議補選には、長友海夢氏(27)、山内浩二氏(68)、松江克氏(68)の3人が立候補し、無投票での当選が決まった。ちなみに、町長選は前述の佐瀬氏、佐藤氏のほか、二瓶盛一氏、高橋翔氏の新人4人が立候補し、二瓶氏が当選を果たした。  議員任期は来年2月までで、今年6月の町議補選で当選しても、任期は約8カ月しかない。そんな事情もあり、町内では「この時期の補選では、なかなか立候補しようという人が出てこない」と言われていた。  実は、4年前の町長選の際も、現職町議が町長選に立候補したことと、現職議員の死去によって欠員2が生じ、町議補選が行われた。ただ、事前の立候補予定者説明会では出席者がゼロで、告示日当日になっても、「立候補者が出てこず、欠員のままになるのではないか」と囁かれていたほど。最終的には急遽2人が立候補し、無投票で当選が決まったが、なり手不足を嘆く町民は少なくなかった。  今回の町議補選前も、「時期(残任期が短い)的なこともあり、なかなかなり手がいない」と言われていたが、選挙戦にはならなかったものの、欠員3を埋めることができた。  その中で注目されるのが長友氏だ。選挙時は27歳で、県内最年少議員になる。  長友氏はどんな人物なのか。町内複数人に聞いてみたが、「分からない」という人がほとんど。知っている人でも「地域おこし協力隊でこっちに来た人のようだね」という程度で、「それ以上のことは分からない」とのこと。 経歴と移住の経緯 ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供  長友氏に話を聞いた。  1995年8月生まれ。現在28歳(選挙時は27歳)。栃木県出身だが、アルペンスキーをやっており、猪苗代町を練習拠点にしていた。小学5、6年生のときは同町内の小学校に通っていた。  その後、中学校は地元栃木県の学校に通い、高校は日大山形高校、大学は日大体育学科でスキーを続けた。競技者としては大学までで一区切りとし、卒業後は通信系の会社に就職した。  そこで3年ほど働いたが、ひたすら自社の利益だけを求められる環境だったようで、「収入(高収入を得ること)よりも、人や地域の役に立つ仕事がしたい」と思うようになったという。  そんな折、猪苗代町で地域おこし協力隊員を募集していることを知り、「思い入れのある猪苗代町で、地域のために仕事がしたい」と応募、2020年4月から3年間の任期で地域おこし協力隊員(※総務省HPに掲載されている地域おこし協力隊の概要を別掲)になり、移住した。 地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です。  具体的な活動内容や条件、待遇等は各自治体により様々ですが、総務省では、地域おこし協力隊員の活動に要する経費に対して隊員1人あたり480万円を上限として財政措置を行っています。また、任期中は、サポートデスクやOB・OGネットワーク等による日々の相談、隊員向けの各種研修等様々なサポートを受けることができます。任期終了後の起業・事業継承に向けた支援もあります。  令和4年度で6447名の隊員が全国で活動していますが、地方への新たな人の流れを創出するため、総務省ではこの隊員数を令和8年度までに1万人とする目標を掲げており、目標の達成に向けて地域おこし協力隊の取り組みを更に推進することとしています。  長友氏は、その任期中の昨年7月に㈱いなびしを設立した。  「猪苗代湖の水質環境保全事業を行っているのですが、毎年、夏になると大量の『ひし』(水草)が発生します。それを放っておくと腐敗してヘドロになるなど、水質汚濁の原因となってしまいます。そのため、ひしの駆除を行うのですが、それを有効活用する目的で設立したのが『いなびし』です」(長友氏) ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供  社名は、地名(猪苗代)とひしから取ったもの。ひしは湖にとって厄介者で、行政が船を出すなどして駆除し、それを運搬・処分していた。当然そのための費用がかかる。長友氏(いなびし)は、その厄介者を資源にできないかと考え、「猪苗代湖産ひし茶」として商品化した。本誌記者も取材中にいただいたが、味はそば茶と似ている。 猪苗代湖産ひし茶=長友氏提供  「現在は、道の駅猪苗代で販売しているほか、町内のカフェや旅館、アクティビティー施設などで使ってもらっています。クセがなく飲みやすいので、食事、特に和食に合うと思います。商品の売り上げの一部は水質環境保全事業に寄付しています」(同)  今後は海外への販売も視野に入れている。ひしの実は、乾燥するとかなりの硬度になり、古くは忍者が敵の足元に撒き、動きを鈍らせるための道具「マキビシ」の元になっていたとも言われているという。ひしを撒くから「マキビシ」というわけ。  「どの国に、どんな形で売り出すかはまだこれからですが、海外で忍者人気は高いですから、マキビシエピソードと絡めて『ニンジャティー』といった形で売り出せば、海外の人にも興味を持ってもらえるのではないかと考えています」(同)  このほか、郡山市の猪苗代湖畔に畑を借り、ひしの実を肥料化する取り組みも進めている。また、町内新町の空き店舗を借りて事務所兼店舗にしており、ひし茶の製造のほか、教育旅行・ツアー等の体験コンテンツ提供、そば店、そば打ち体験、夏季の日曜日限定のかき氷販売などを行っている。  これら事業は、新しいビジネスへの挑戦や、地域課題の解決に取り組むビジネスプランを表彰する「ふくしまベンチャーアワード2022」で優秀賞に輝いた。 議員になったきっかけ ひしの実  こうした事業を営むかたわら、議員に立候補しようと思ったきっかけは何だったのか。  「会社勤めをしていた時に、取引先企業の担当者が政財界とつながりがあり、私もそうした場に行くことがありました。その時は、議員になろうとかではなく、それまで縁遠かった議員について認識することができました。その後、会社を辞めて、地域おこし協力隊に応募した際、役場の課長さんの面接があったのですが、その時に『ここで、地域のためになる仕事がしたい』、『いずれは起業したいし、議員として地域のために働きたいと考えている』ということを伝えました。今年3月に地域おこし協力隊の任期が終わり、この機会だと思って立候補しました」  長友氏によると、県内他地域では地域おこし協力隊で移住し、後に起業するという事例が、もっと活発に行われているところもあるという。そのため、「議員として、地域おこし協力隊のさらなる活性化に加えて、自分が空き店舗を借りて事務所兼店舗にした経験から、空き家・空き店舗の有効活用、移住促進、統廃合によって空いた学校の有効活用などに取り組みたい」と意気込む。  9月は議員になって初めての定例会が行われる。そこで、一般質問デビューを果たすべく、いま(本誌取材時の8月下旬)は、数ある課題の中から何を取り上げるか、限られた時間で効率よく質問するためにはどうするか等々を思案中という。

  • 断トツ得票を記録した深谷勝仁氏【須賀川市】【若手新人議員】

    断トツ得票を記録した深谷勝仁氏【須賀川市】【若手新人議員】

    新人でトップ当選を果たした深谷勝仁氏  本誌6月号に「須賀川市議選 異例の連続無投票が現実味」という記事を掲載した。任期満了に伴う須賀川市議選は、7月30日告示、8月6日投開票で行われたが、事前情報(6月号記事掲載時点)では、「無投票の可能性が高い」と言われていた。  前回(2019年8月)は、同市にとって、1954年の市制施行以来、初めての無投票で、市民からは「連続無投票は避けなければならない」、「無投票になった次は多くの候補者が出そうなものだが、そうならないのが問題だ」といった声が出ていた。  その後、7月3日に立候補予定者説明会が開かれ、それまで立候補の動きがなかった新人3陣営が出席。このうちの1人が正式に立候補表明したことから、定数24に25人(現職19人、新人6人)が立候補し、8年ぶりの選挙戦となった。  結果は別掲の通り。現職19人、新人5人の計24人が当選した。投票率は45・28%で、過去最低だった前々回の55・89%を10・61ポイント下回り、過去最低を更新した。 選挙結果(8月6日投開票、投票率45・28%)当 3141 深谷 勝仁 (39)無新当 1914 松川 勇治 (45)無新当 1640 鈴木 正勝 (70)公現当 1380 大河内和彦 (56)無現当 1334 深谷 政憲 (66)無現当 1278 大寺 正晃 (61)無現当 1206 溝井 光夫 (62)無現当 1203 佐藤 暸二 (67)無現当 1159 横田 洋子 (64)共現当 1078 鈴木 洋二 (64)無現当 1078 本田 勝善 (58)無現当 1072 浜尾 一美 (51)無現当 1067 五十嵐 伸 (60)無現当 1039 堂脇 明奈 (40)共現当 1016 大内 康司 (83)自現当  891 古川 達也 (50)無新当  881 市村 喜雄 (66)無現当  881 関根 篤志 (47)無新当  768 斉藤 秀幸 (47)無現当  767 石堂 正章 (65)無現当  722 柏村 修吾 (66)無新当  588 大柿 貞夫 (71)無現当  573 熊谷 勝幸 (52)無現当  516 小野 裕史 (54)無現 513 桜井  誠 (37)無新  この中で目に付くのが、新人でトップ当選を果たした深谷勝仁氏(39)。今回の当選者では最年少になる。  選挙戦となった直近3回の最多得票は2015年が2098票、2011年が2005票、2007年が2472票といずれも2000票から2500票の間。今回の深谷氏は3141票で、それらを大きく上回っている。今回2番目に得票が多かったのは新人の松川勇治氏(45)で1914票だから、2位に約1200票差を付けている。過去のトップ当選者との比較に加えて、今回の低投票率を考えると、深谷氏の得票がいかに多いかがうかがえよう。  深谷氏はどんな人物なのか。  本人のSNSなどに掲載されたプロフィールによると、1984年生まれ。須賀川高校(現・須賀川創英館)、東北文化学園大学医療福祉学部卒。2007年に市社会福祉協議会の職員となり、今年3月まで勤務した。  年度末に社協を辞め、4月以降は市議選の準備をしてきた格好だ。  過去に仕事上の付き合いがあったという市民はこう話す。  「深谷氏は、福祉を必要とする高齢者や障がい者、その家族などからの信頼が厚く、彼のことを悪く言う人は聞いたことがありませんね。そのくらい、誠実で人柄がいい。それに加えて『若さと実行力』というキャッチフレースが有権者に響いたのだと思います。社協職員の経験から、『社会的に弱い立場の人への支援』といったことも訴えており、それも共感を得たのでしょうね」  さらにある市民はこう語る。  「深谷氏の実家は、栄町にある『深谷石材店』で、そこは深谷氏の実兄が継いでおり、深谷氏自身もその近くに住んでいます。今回の選挙では、これまで栄町には議員がいなかったことから、『この地区から議員を出そう』と、町内会がかなり支援したようです(※編集部注・深谷氏の自宅は市内中山だが、栄町、中山などを含む複数大字の地区が新栄町町内会に該当する)。また、深谷氏は学生のころから熱心に野球に取り組んでおり、いまも『市町村対抗福島県軟式野球大会』に出場するなど、野球繋がりの支援も多かった。加えて、社協職員時代に、高齢者や障がい者、その家族などの評判も良かったから、そういった層も深谷氏に投票したと思われます。その結果、断トツの得票数になったものと思われます」  一方で、ある議員経験者は「ちょっと勝ち過ぎの感もある」と話す。  「表立っては言わなくても、深谷氏があれだけ票を取ったことで、自分の票が減ったとか、そういう思いを抱いている人もいると思う。もちろん、それはその人(票を減らした人)の問題なんですが、どうしても、こういう世界は、妬み嫉みがありますからね。まさか、議員活動を妨害されるようなことはないとは思いますが、ちょっとしたことで揚げ足を取られるようなこともあるかもしれない。深谷氏にはそういったことに気を付けつつ、萎縮することなく頑張ってほしいですね」 深谷氏に聞く  深谷氏に話を聞いた。なお、本誌が取材したのは8月22日で、議員任期がスタートする前だった。  ――議員を目指したきっかけは?  「社会福祉協議会に勤務していた時の最初のころは高齢者福祉、後半は障がい者福祉を担当していました。その中で、高齢者福祉、障がい者福祉ともに、まだまだ課題があると感じており、『福祉の充実』を図りたいというのが、議員を目指した一番の要因です」  ――3000票オーバーという得票についてはどう捉えているか。  「正直、驚いています。喜びと同時に責任を感じます」  ――本誌取材では、若い世代、高齢者・障がい者福祉を必要としている人、その家族などに支持が広がったと聞いている。  「確かに、新聞等では『若い世代の票が入った』と書かれていましたが、実際にどうだったかは分析が追いついていません。ただ、私自身、小学生の娘が2人いますから、子育て世代や、高齢者・障がい者福祉を必要としている人たちの思いは受け止められると思っていますし、(任期スタート後は)そのための活動をしていきたいと思っています」  ――もう1つは、町内会の支援が大きかったとも聞いた。  「新栄町町内会では、(議員が誕生するのは)40年ぶりくらいだそうです。この地区では、JR須賀川駅西口開発(※深谷氏の地元は須賀川駅西側に当たり、須賀川駅は西側から駅に出入りすることができないため、西側に出入り口と駅前広場をつくる計画が進められている)などの動きもありますから、そういった点からも、町内会の皆様に応援していただけたのだと思います。そのほか、同級生、先輩・後輩にも支えていただきました」  ――当然、議会の常任委員会は、福祉関係を所管する委員会に所属したい?  「その辺はどうなんでしょうか。市議会は会派制ですから、会派で誰がどの委員会になるかということだと思います」  ――就任後すぐに9月定例会(※通常は9月中に行われるが、選挙があった年は9月末から10月にかけて行われる)が開かれることになるが、早速、一般質問をするか。  「その辺も、会派の構成などが決まってからですかね」  議員の任期は9月4日からスタートする。「若さと実行力」を売りにする深谷氏の今後に注目したい。

  • 元町長に大差をつけた渡部裕太氏【南会津町】【若手新人議員】

    元町長に大差をつけた渡部裕太氏 町の課題を語る渡部裕太氏  本誌2019年6月号に「南会津町議選 湯田芳博氏当選で嵐の予感」という記事を掲載した。  4年前の南会津町議選に、元町長の湯田芳博氏が立候補し、2位当選者の倍近い得票数(1466票)でぶっちぎりのトップ当選を果たしたことを報じたもの。  湯田氏は昨年4月の南会津町長選にも立候補したが、元副町長の渡部正義氏との対決に敗れ、4度連続の町長選落選となった。すると、今年4月の町議選に立候補した。  今回も圧倒的な票数でトップ当選するのかと思いきや、湯田氏と同じ田島地区の新人候補がその座を奪い取った(別掲参照)。 選挙結果(4月23日投開票、投票率77・74%)当1538渡部 裕太 (31)無新当836湯田 芳博 (72)無元当755渡部 訓正 (69)無現当626丸山 陽子 (68)公現当575古川  晃 (62)無新当543芳賀 正義 (75)無新当540山内  政 (70)無現当499楠  正次 (68)無現当449湯田  哲 (66)無現当446森  秀一 (72)無元当434川島  進 (68)無現当430室井 英雄 (66)無現当422酒井 幸司 (65)無新当392高野 精一 (73)無現当328星  和孝 (57)無新当297湯田 剛正 (62)無新275馬場  浩 (61)無現  「若い議員は少ないので、トップ当選を目指し、できる限り多くの方に得票してもらいたいと考えて全力で活動していました」  こう語るのは31歳で町議となった渡部裕太氏だ。今回の当選者では最年少となる。  会津高卒。「地域医療に携わりたい」と自治医大入学を目指し、予備校に通いながら浪人生活を続けている中で、2019年、父親の渡部英明氏が県議選に立候補することになり、手伝いのため同町にUターン。結局、父親は選挙戦で敗れたが、そのまま町内の企業に就職した。  こうした活動中に驚かされたのが、若い世代の選挙への関心のなさだ。  「民間企業だと退職するぐらいの年齢の人が議員を務めており、接点も親近感もない」という意見が聞かれた。それならば、若者が1人でも議員になることで、思いが伝えやすくなり、政治参加もするようになるのではないか――。  渡部氏は地元に戻って以来、地域のスポーツ活動、山岳救助消防団など、さまざまな活動に参加していた。多くの人の話を聞く機会がある自分が若い世代の受け皿になろうと考えた。その結果、多くの票を得て町議に当選したのだから、期待している人が多いということだろう。 会社員との兼務生活  経営者の理解を得て、地元の建材店に勤めながら、議員活動に取り組む。ちなみに地方自治法では町の事業を請け負う企業の役員が地方議員を兼ねることが禁じられているが、渡部氏は役員にはなっていない。議会の会期中は閉会後に会社に戻って仕事をこなす。「正直、当選後は休みがありません」と笑う。  公約には空き家の活用、体験型観光資源の創出、地域の魅力発掘などを掲げた。6月定例会では、早速空き家対策について執行部にただした。  「現場に行って話を聞いて初めて分かることも多い。例えば、移住者を増やすための施策が行われているが、『移住者のニーズとはかみ合っていない』という声が聞かれる。町への窓口、つなぎ役としての役割を果たしていきながら、公約実現を目指していきたい。特に空き家問題については、いま会社で不動産部門を担当しており、現場でその実態を知っているという強みがあるので、積極的に取り組んでいきたいですね」  11月に父親の渡部英明氏が県議選に再び立候補することについては「もし当選させてもらえば、相互に連携して県・町のパイプ役として機能できると思います」と語る。  地域を問わず入れてもらった多くの票は若き立候補者への期待の表れ。後は行動で示すだけだ。

  • 地域おこしで移住した長友海夢氏【猪苗代町】【若手新人議員】

    地域おこしで移住した長友海夢氏  猪苗代町は、6月に町長選が行われ、そこに佐瀬誠氏、佐藤悦男氏の2人が議員を辞職して立候補したほか、二瓶隆雄氏が在職中の2021年4月に亡くなったことで欠員3となっていた。  そのため、町長選と同時日程(6月13日告示、18日投開票)で議員補欠選挙が行われた。町議補選には、長友海夢氏(27)、山内浩二氏(68)、松江克氏(68)の3人が立候補し、無投票での当選が決まった。ちなみに、町長選は前述の佐瀬氏、佐藤氏のほか、二瓶盛一氏、高橋翔氏の新人4人が立候補し、二瓶氏が当選を果たした。  議員任期は来年2月までで、今年6月の町議補選で当選しても、任期は約8カ月しかない。そんな事情もあり、町内では「この時期の補選では、なかなか立候補しようという人が出てこない」と言われていた。  実は、4年前の町長選の際も、現職町議が町長選に立候補したことと、現職議員の死去によって欠員2が生じ、町議補選が行われた。ただ、事前の立候補予定者説明会では出席者がゼロで、告示日当日になっても、「立候補者が出てこず、欠員のままになるのではないか」と囁かれていたほど。最終的には急遽2人が立候補し、無投票で当選が決まったが、なり手不足を嘆く町民は少なくなかった。  今回の町議補選前も、「時期(残任期が短い)的なこともあり、なかなかなり手がいない」と言われていたが、選挙戦にはならなかったものの、欠員3を埋めることができた。  その中で注目されるのが長友氏だ。選挙時は27歳で、県内最年少議員になる。  長友氏はどんな人物なのか。町内複数人に聞いてみたが、「分からない」という人がほとんど。知っている人でも「地域おこし協力隊でこっちに来た人のようだね」という程度で、「それ以上のことは分からない」とのこと。 経歴と移住の経緯 ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供  長友氏に話を聞いた。  1995年8月生まれ。現在28歳(選挙時は27歳)。栃木県出身だが、アルペンスキーをやっており、猪苗代町を練習拠点にしていた。小学5、6年生のときは同町内の小学校に通っていた。  その後、中学校は地元栃木県の学校に通い、高校は日大山形高校、大学は日大体育学科でスキーを続けた。競技者としては大学までで一区切りとし、卒業後は通信系の会社に就職した。  そこで3年ほど働いたが、ひたすら自社の利益だけを求められる環境だったようで、「収入(高収入を得ること)よりも、人や地域の役に立つ仕事がしたい」と思うようになったという。  そんな折、猪苗代町で地域おこし協力隊員を募集していることを知り、「思い入れのある猪苗代町で、地域のために仕事がしたい」と応募、2020年4月から3年間の任期で地域おこし協力隊員(※総務省HPに掲載されている地域おこし協力隊の概要を別掲)になり、移住した。 地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です。  具体的な活動内容や条件、待遇等は各自治体により様々ですが、総務省では、地域おこし協力隊員の活動に要する経費に対して隊員1人あたり480万円を上限として財政措置を行っています。また、任期中は、サポートデスクやOB・OGネットワーク等による日々の相談、隊員向けの各種研修等様々なサポートを受けることができます。任期終了後の起業・事業継承に向けた支援もあります。  令和4年度で6447名の隊員が全国で活動していますが、地方への新たな人の流れを創出するため、総務省ではこの隊員数を令和8年度までに1万人とする目標を掲げており、目標の達成に向けて地域おこし協力隊の取り組みを更に推進することとしています。  長友氏は、その任期中の昨年7月に㈱いなびしを設立した。  「猪苗代湖の水質環境保全事業を行っているのですが、毎年、夏になると大量の『ひし』(水草)が発生します。それを放っておくと腐敗してヘドロになるなど、水質汚濁の原因となってしまいます。そのため、ひしの駆除を行うのですが、それを有効活用する目的で設立したのが『いなびし』です」(長友氏) ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供  社名は、地名(猪苗代)とひしから取ったもの。ひしは湖にとって厄介者で、行政が船を出すなどして駆除し、それを運搬・処分していた。当然そのための費用がかかる。長友氏(いなびし)は、その厄介者を資源にできないかと考え、「猪苗代湖産ひし茶」として商品化した。本誌記者も取材中にいただいたが、味はそば茶と似ている。 猪苗代湖産ひし茶=長友氏提供  「現在は、道の駅猪苗代で販売しているほか、町内のカフェや旅館、アクティビティー施設などで使ってもらっています。クセがなく飲みやすいので、食事、特に和食に合うと思います。商品の売り上げの一部は水質環境保全事業に寄付しています」(同)  今後は海外への販売も視野に入れている。ひしの実は、乾燥するとかなりの硬度になり、古くは忍者が敵の足元に撒き、動きを鈍らせるための道具「マキビシ」の元になっていたとも言われているという。ひしを撒くから「マキビシ」というわけ。  「どの国に、どんな形で売り出すかはまだこれからですが、海外で忍者人気は高いですから、マキビシエピソードと絡めて『ニンジャティー』といった形で売り出せば、海外の人にも興味を持ってもらえるのではないかと考えています」(同)  このほか、郡山市の猪苗代湖畔に畑を借り、ひしの実を肥料化する取り組みも進めている。また、町内新町の空き店舗を借りて事務所兼店舗にしており、ひし茶の製造のほか、教育旅行・ツアー等の体験コンテンツ提供、そば店、そば打ち体験、夏季の日曜日限定のかき氷販売などを行っている。  これら事業は、新しいビジネスへの挑戦や、地域課題の解決に取り組むビジネスプランを表彰する「ふくしまベンチャーアワード2022」で優秀賞に輝いた。 議員になったきっかけ ひしの実  こうした事業を営むかたわら、議員に立候補しようと思ったきっかけは何だったのか。  「会社勤めをしていた時に、取引先企業の担当者が政財界とつながりがあり、私もそうした場に行くことがありました。その時は、議員になろうとかではなく、それまで縁遠かった議員について認識することができました。その後、会社を辞めて、地域おこし協力隊に応募した際、役場の課長さんの面接があったのですが、その時に『ここで、地域のためになる仕事がしたい』、『いずれは起業したいし、議員として地域のために働きたいと考えている』ということを伝えました。今年3月に地域おこし協力隊の任期が終わり、この機会だと思って立候補しました」  長友氏によると、県内他地域では地域おこし協力隊で移住し、後に起業するという事例が、もっと活発に行われているところもあるという。そのため、「議員として、地域おこし協力隊のさらなる活性化に加えて、自分が空き店舗を借りて事務所兼店舗にした経験から、空き家・空き店舗の有効活用、移住促進、統廃合によって空いた学校の有効活用などに取り組みたい」と意気込む。  9月は議員になって初めての定例会が行われる。そこで、一般質問デビューを果たすべく、いま(本誌取材時の8月下旬)は、数ある課題の中から何を取り上げるか、限られた時間で効率よく質問するためにはどうするか等々を思案中という。

  • 断トツ得票を記録した深谷勝仁氏【須賀川市】【若手新人議員】

    新人でトップ当選を果たした深谷勝仁氏  本誌6月号に「須賀川市議選 異例の連続無投票が現実味」という記事を掲載した。任期満了に伴う須賀川市議選は、7月30日告示、8月6日投開票で行われたが、事前情報(6月号記事掲載時点)では、「無投票の可能性が高い」と言われていた。  前回(2019年8月)は、同市にとって、1954年の市制施行以来、初めての無投票で、市民からは「連続無投票は避けなければならない」、「無投票になった次は多くの候補者が出そうなものだが、そうならないのが問題だ」といった声が出ていた。  その後、7月3日に立候補予定者説明会が開かれ、それまで立候補の動きがなかった新人3陣営が出席。このうちの1人が正式に立候補表明したことから、定数24に25人(現職19人、新人6人)が立候補し、8年ぶりの選挙戦となった。  結果は別掲の通り。現職19人、新人5人の計24人が当選した。投票率は45・28%で、過去最低だった前々回の55・89%を10・61ポイント下回り、過去最低を更新した。 選挙結果(8月6日投開票、投票率45・28%)当 3141 深谷 勝仁 (39)無新当 1914 松川 勇治 (45)無新当 1640 鈴木 正勝 (70)公現当 1380 大河内和彦 (56)無現当 1334 深谷 政憲 (66)無現当 1278 大寺 正晃 (61)無現当 1206 溝井 光夫 (62)無現当 1203 佐藤 暸二 (67)無現当 1159 横田 洋子 (64)共現当 1078 鈴木 洋二 (64)無現当 1078 本田 勝善 (58)無現当 1072 浜尾 一美 (51)無現当 1067 五十嵐 伸 (60)無現当 1039 堂脇 明奈 (40)共現当 1016 大内 康司 (83)自現当  891 古川 達也 (50)無新当  881 市村 喜雄 (66)無現当  881 関根 篤志 (47)無新当  768 斉藤 秀幸 (47)無現当  767 石堂 正章 (65)無現当  722 柏村 修吾 (66)無新当  588 大柿 貞夫 (71)無現当  573 熊谷 勝幸 (52)無現当  516 小野 裕史 (54)無現 513 桜井  誠 (37)無新  この中で目に付くのが、新人でトップ当選を果たした深谷勝仁氏(39)。今回の当選者では最年少になる。  選挙戦となった直近3回の最多得票は2015年が2098票、2011年が2005票、2007年が2472票といずれも2000票から2500票の間。今回の深谷氏は3141票で、それらを大きく上回っている。今回2番目に得票が多かったのは新人の松川勇治氏(45)で1914票だから、2位に約1200票差を付けている。過去のトップ当選者との比較に加えて、今回の低投票率を考えると、深谷氏の得票がいかに多いかがうかがえよう。  深谷氏はどんな人物なのか。  本人のSNSなどに掲載されたプロフィールによると、1984年生まれ。須賀川高校(現・須賀川創英館)、東北文化学園大学医療福祉学部卒。2007年に市社会福祉協議会の職員となり、今年3月まで勤務した。  年度末に社協を辞め、4月以降は市議選の準備をしてきた格好だ。  過去に仕事上の付き合いがあったという市民はこう話す。  「深谷氏は、福祉を必要とする高齢者や障がい者、その家族などからの信頼が厚く、彼のことを悪く言う人は聞いたことがありませんね。そのくらい、誠実で人柄がいい。それに加えて『若さと実行力』というキャッチフレースが有権者に響いたのだと思います。社協職員の経験から、『社会的に弱い立場の人への支援』といったことも訴えており、それも共感を得たのでしょうね」  さらにある市民はこう語る。  「深谷氏の実家は、栄町にある『深谷石材店』で、そこは深谷氏の実兄が継いでおり、深谷氏自身もその近くに住んでいます。今回の選挙では、これまで栄町には議員がいなかったことから、『この地区から議員を出そう』と、町内会がかなり支援したようです(※編集部注・深谷氏の自宅は市内中山だが、栄町、中山などを含む複数大字の地区が新栄町町内会に該当する)。また、深谷氏は学生のころから熱心に野球に取り組んでおり、いまも『市町村対抗福島県軟式野球大会』に出場するなど、野球繋がりの支援も多かった。加えて、社協職員時代に、高齢者や障がい者、その家族などの評判も良かったから、そういった層も深谷氏に投票したと思われます。その結果、断トツの得票数になったものと思われます」  一方で、ある議員経験者は「ちょっと勝ち過ぎの感もある」と話す。  「表立っては言わなくても、深谷氏があれだけ票を取ったことで、自分の票が減ったとか、そういう思いを抱いている人もいると思う。もちろん、それはその人(票を減らした人)の問題なんですが、どうしても、こういう世界は、妬み嫉みがありますからね。まさか、議員活動を妨害されるようなことはないとは思いますが、ちょっとしたことで揚げ足を取られるようなこともあるかもしれない。深谷氏にはそういったことに気を付けつつ、萎縮することなく頑張ってほしいですね」 深谷氏に聞く  深谷氏に話を聞いた。なお、本誌が取材したのは8月22日で、議員任期がスタートする前だった。  ――議員を目指したきっかけは?  「社会福祉協議会に勤務していた時の最初のころは高齢者福祉、後半は障がい者福祉を担当していました。その中で、高齢者福祉、障がい者福祉ともに、まだまだ課題があると感じており、『福祉の充実』を図りたいというのが、議員を目指した一番の要因です」  ――3000票オーバーという得票についてはどう捉えているか。  「正直、驚いています。喜びと同時に責任を感じます」  ――本誌取材では、若い世代、高齢者・障がい者福祉を必要としている人、その家族などに支持が広がったと聞いている。  「確かに、新聞等では『若い世代の票が入った』と書かれていましたが、実際にどうだったかは分析が追いついていません。ただ、私自身、小学生の娘が2人いますから、子育て世代や、高齢者・障がい者福祉を必要としている人たちの思いは受け止められると思っていますし、(任期スタート後は)そのための活動をしていきたいと思っています」  ――もう1つは、町内会の支援が大きかったとも聞いた。  「新栄町町内会では、(議員が誕生するのは)40年ぶりくらいだそうです。この地区では、JR須賀川駅西口開発(※深谷氏の地元は須賀川駅西側に当たり、須賀川駅は西側から駅に出入りすることができないため、西側に出入り口と駅前広場をつくる計画が進められている)などの動きもありますから、そういった点からも、町内会の皆様に応援していただけたのだと思います。そのほか、同級生、先輩・後輩にも支えていただきました」  ――当然、議会の常任委員会は、福祉関係を所管する委員会に所属したい?  「その辺はどうなんでしょうか。市議会は会派制ですから、会派で誰がどの委員会になるかということだと思います」  ――就任後すぐに9月定例会(※通常は9月中に行われるが、選挙があった年は9月末から10月にかけて行われる)が開かれることになるが、早速、一般質問をするか。  「その辺も、会派の構成などが決まってからですかね」  議員の任期は9月4日からスタートする。「若さと実行力」を売りにする深谷氏の今後に注目したい。