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  • 「議員定数議論」で対応分かれた古殿町・玉川村・平田村

    「議員定数議論」で対応分かれた古殿町・玉川村・平田村

     古殿町、玉川村、平田村の石川郡3町村は3月に同時日程で議員選挙が行われる。それに先立ち、それぞれの町村議会で、昨年から議員定数のあり方を議論してきたが、結果は三者三様のものだった。(末永) 重要なのは住民にとって有益な存在かどうか 3町村の基礎データ面 積人 口議員定数古殿町163・29平方㌔4655人10玉川村46・47平方㌔6191人12平田村93・42平方㌔5413人12※人口は古殿町が昨年12月31日、玉川村が今年1月1日、平田村が昨年12月1日時点  任期満了に伴う古殿町議選、玉川村議選、平田村議選が3月19日告示、24日投開票の日程で行われる。それを前に、各議会では昨年から議員定数をどうするかを検討してきた。結果から言うと、古殿町は2減(12人→10人)、玉川村は現状維持(12人)、平田村はひとまず現状維持(12人)として改選後の議会で再度議論する――という三者三様のものだった。同じ石川郡ということもあり、関係者はそれぞれの議会の動きに注目していたようだ。関係者だけでなく、住民から「向こう(近隣町村)はこうだったが、ウチは……」といった話を聞く機会もあった。 古殿町議会 古殿町役場  古殿町議会は、昨年10月から12月まで、全員協議会で5回にわたり議論を重ねてきた。同町議会は2012年までは定数が14だったが、同年3月の改選時に12に減らした。それから12年が経ち、あらためて議員定数のあり方を議論したのである。  根底にあるのは、2012年に定数削減したころから、人口が約1500人減少していること。もう1つは、町民から「人口が減少しているのだから、それに倣って、議員定数も減らすべき」といった声が出ていたこと。  なお、3町村の基礎データを別表にまとめたが、古殿町は行政区分こそ「町」だが、玉川村、平田村より人口が少ない。反して、面積はだいぶ広く「町内全域に目を向ける」という点では、3町村の中では最も大変な地域と言える。  そうした中で議論を重ね、昨年12月議会で、議員発議で定数削減案(条例改正案)が出され、採決の結果、賛成7、反対4の賛成多数で可決された。反対意見としては、町民の声が届きにくくなること、若い人や女性などが議員になるハードルが高くなること、議論が十分でないこと――等々が挙げられた。議案審議(討論)の中でも、そうした意見が出たが、結果は前述の通り。  ある関係者は「反対する人もいましたが、人口減少、時代の流れなどからしても、(2減は)妥当だったのではないか」と話した。  一方、選挙に向けた動きについては、「削減によって枠が2つ減るわけだから、常に上位当選している人以外は、いろいろと気にしているようだ。ただ、いま(本誌取材時の1月中旬時点)は、それぞれが様子見という段階で、現職の誰が引退して、新人のこんな動きがある、といった具体的なことは見えてこない」(前出の関係者)という。 玉川村議会 玉川村役場  玉川村議会は、昨年10月から11月にかけて、議員定数に関する住民アンケートを実施した。対象は全1799世帯、回答数は1029件(回収率57・2%)だった。  もっとも多かった回答は現在の定数12から2減の「10人」で402(39・1%)。以下、現状維持の「12人」が382(37・1%)、「8人以下」が156(15・2%)と続く。この3つで全体の90%超を占める。2減の「10人」と、現状維持の「12人」が拮抗しているが、「8人以下」を含めた「削減」という点で見るならば、半数を超えている。  少数意見としては、「18人」が22、「16人」と「14人」がそれぞれ1あり、増員を求める回答もあった。逆に「0人」、「1人」、「2人」という回答がそれぞれ1ずつあった。  ちなみに、議会は「最低人数は何人」といった規定はないが、「議長を置いたうえで議論できる」ことが条件になる。つまり、議長1人と、議長を除いて議論するために最低2人が必要だから、議員の最小人数は3人という解釈になり、それ未満はあり得ない。一方、地方自治法(94条、95条)では、議会を置かず、それに代わって選挙権を有する住民による総会(町村総会)を設けることができる、と規定されている。60年以上前はその事例があったが、近年はない。 賛成、反対意見の中身  話を戻して、玉川村議会はアンケート結果を踏まえ、全員協議会で検討した。そのうえで、昨年12月議会で議員発議によって、議員定数を10にする条例改正案が提出された。採決の結果、賛成5、反対6の賛成少数で否決された。  以下、その際に行われた討論の概要を紹介する。  賛成討論  小林徳清議員▽少子高齢、人口減少にあえぐ市町村情勢は、議員定数削減の方向となっている。アンケートの結果からも民意は削減を求めており、現状維持は村民の理解が得られないばかりか、アンケートの意味をなさない民意無視となり、議会・議員に対して不信感を招き、保身と批判を受けることになる。議員として、多くの民意を反映させる職務と責務から、アンケートに基づく定数2削減に大いに賛成。  塩澤重男議員▽今回のアンケートでは様々な意見があった。その中でも、削減が過半数の58%を占めている。人口減少が加速する中、議員定数も減らすべきであり、村民の意見を真摯に受け止め、定数削減に賛成する。  大和田宏議員▽アンケート結果で、当然、少数派意見も尊重しなければならないが、やはり多数派意見に重点を置かなければならないので賛同する。削減した場合はメリット・デメリットが出るが、デメリットは今後協議しながらカバーしていけばいいと思う。それぞれの議員がすぐに活動できる環境を進めていき、デメリットを克服しながら十分対応できると考えるので賛成。  石井清勝議員▽近隣の市町村では10人で運営しているところも多くある。人口だけでなく、予算も考慮しながら、住民の代表として、村をいかに良くしていくか、活性化していくかを考えていく必要がある。議員自ら身を削ってやっていかないと村も活性化しないと思うので賛成する。  反対討論  佐久間安裕議員▽議員定数見直しに反対するものではなく、今回は十分に議論する時間がない中での削減のため反対する。アンケート結果でも50代以下は現状維持が多く、「現状維持」と「10人」も僅差だった。そういった若い世代の意見を切り捨ててもいいのか疑問を感じる。議会基本条例策定とともに議会改革を進め、内容を公開していくことが求められる中で、いまだ議論の準備段階であり、様々な観点から十分な議論を尽くしていくべき。アンケート結果の民意だから即削減すべきではなく、今回は拙速であるので反対する。  飯島三郎議員▽病人が多数出たりして欠席が多くなってしまうと議会が成り立たなくなる恐れがあるとの思いで、現状維持の判断をした。今回新たな特別委員会が設置され、業務が多くなり、議員1人当たりの業務負担が増加している中で、これ以上人数が少なくなると村内の隅々まで行き届かなくなり、本来の活動ができなくなることは間違いないので、削減に反対する。  三瓶力議員▽今回のアンケートをすべて確認し、皆様の思いや考えをいろいろな方面から検討した。アンケート結果を見ると、現状維持の12人の意見が多かったのは、20代から50代だった。回答数では60代以上からの回答が多く、偏っているのではと感じる。20代から50代の貴重な意見を尊重すべきであり反対する。 深刻ななり手不足  こうした意見があった中、前述したように、議員定数削減案は反対多数で否決された。  賛成した議員は「村民からは、だったらなぜアンケートを実施したのかと言われた」と、早速、批判があったことを明かした。  「住民の意見」がハッキリ出ている中で、「現状維持」の判断をしたのだから、そうした批判が出るのは当然か。  今回取材した近隣町村の関係者からも、「玉川村は住民アンケートまでやって、住民の多数派意見を洗い出したのに、『現状維持』にして批判は出ていないのか? 他村のことながら気になってしまう」との声が聞かれた。  改選後の議会は、そうした批判とも向き合っていかなければならないことを覚えておいた方がいい。  選挙に向けた情勢としては、4人の現職議員が引退する見込みという。昨年4月の村長選に議員を辞して立候補した須藤安昭氏、林芳子氏の2人が議員復帰を目指す可能性はありそうだが、現状はほかに立候補の可能性がありそうな人の動きは見えてこないようだ。  ある議員は、地元行政区で「自分は今期で引退して、誰かにバトンタッチしたい」旨を伝えたところ、自薦他薦ともに後継者になり得る人が出てこなかったという。かといって、「この地区から議員がいなくなるのは困る」との意見もあったことから、やむなく「自分がもう1期やるしかない」という結論に至った事例もあると聞く。それだけ、なり手がいないということだ。  そのため、村内では「『現状維持』にしておきながら、定数割れが起きるのではないか」と懸念する声もあり、もしそうなったら、より批判が大きくなるだろう。  定数割れにならないまでも、「タダでなれるなら」と、何の考え・信条もなく、立候補する人が出てくる可能性もあり、「そうなったら、議会の質の低下を招くのではないか」と憂える住民は少なくない。 平田村議会 平田村役場  平田村議会は、昨年9月に3回の全員協議会を開き、議員定数について検討した。  その中で出された意見は、「人口が減少していることや、住民の声などを踏まえると、削減すべき」というものと、「削減ありきではなく、総合的に考えるべき」というもの。そのほか、「20年以上の議員は引退して後継者に託すべき」、「若い人が立候補できるような条件整備が必要」、「仮に議員を2人削減しても、費用面での効果は予算総額の0・17%に過ぎない」といった意見もあった。当初は、条件付きでの「削減派」が8人、「現状維持派」が4人だったという。  その後、検討が進められる中で、定数を削減した場合、現状維持とした場合のメリット・デメリットが挙げられた。  削減のメリット▽経費削減、意見の集約が早い、議員のレベルアップにつながる、住民からの意見を反映した議員活動がしやすくなる、議員と村民の距離が縮まり議員活動がしやすい。  削減のデメリット▽議員のなり手を狭める、意見が偏る傾向がある、多くの意見が上がらない、委員会が少人数になる、住民の意見が反映されにくくなる、少数意見になり村民のニーズから遠くなる、執行者への監視が不十分になる、多様な意見や考えが反映されず結果十分な議論ができずに決定されてしまう、行政と住民の橋渡しが薄れる、現職議員が有利で若年層・女性の進出が困難になる。  現状維持のメリット▽村民の意見が届きやすい、議員のなり手の門扉を開く、委員会の構成人数が良い、多数精鋭を目指し広く村民の声を反映できる、多数の意見を集約できる、多様性が維持される、新たな立候補者が出やすくなる。  現状維持のデメリット▽議員の資質低下、意見の集約に時間がかかる。賛否拮抗で結論持ち越し  こうして、意見が出されていくうちに、「削減派」と「現状維持派」が拮抗していき、最終的には6対6になった。そのため、「今回は現状維持とし、これらの問題に対しては、住民からの意見等も聞きながら、次期議員で引き続き協議を進めるべきである」との結論に至った。  つまりは、結論を改選後の議会に持ち越したのである。  同村が古殿町、玉川村と少し違うのは、早い段階で新人2人が立候補の動きを見せているのだという。現職は引退する意向の人はおらず、ほかに元職1人が立候補するのではないかと言われている。現状、現職12人、元職1人、新人2人で、選挙戦になるのが濃厚だ。「それだけ、なり手がいるのはいいことだ」と見る向きもあれば、「現職議員は、厳しい選挙戦が予想されるから、減らしたくなかったのだろう」といった批判もあるようだ。  以上、古殿町、玉川村、平田村の議員選挙に向けた定数削減議論について見てきたが、3町村で完全に対応が分かれた格好。同じ石川郡で、同時日程で選挙が行われるだけに、当該町村の住民・関係者などからは「ウチはこうだったけど、向こうはどういう流れであの結論に至ったのか気になる」と、それぞれが気にしている様子。そんな中で、何が正解かと言ったら、「住民にとって有益な議会・議員であるかどうか」しかない。住民にとって有益な存在であれば、「定数を削減すべき」といった意見は出てこないだろうから。削減したところも、現状維持としたところも、一番に意識すべきはそこだ。

  • 廃校施設をどう使うか【平田村編】

    廃校施設をどう使うか【平田村編】

     文部科学省の「廃校施設等活用状況実態調査」によると、2002年度から2020年度までに、県内では267の小・中学校、高校(いずれも公立に限る)が廃校になったという。少子化による児童・生徒数の減少に伴う学校の統廃合はやむを得ない流れだが、使われなくなった校舎の利活用が問題になっている。 永田小を役場庁舎に改築、2つの中学校跡は未使用 平田村役場  文部科学省の「廃校施設等活用状況実態調査」は3年に1回のスパンで実施され、直近では2021年5月1日時点での調査が行われた(結果の公表は2022年3月30日)。それによると、2002年から2020年までに全国で発生した廃校数は8580校(公立の小・中学校、高校、特別支援学校など)。このうち、建物(校舎)が現存するのが7398件で、すでに別の用途などで活用されているのは5481件(約74%、現存するものに対する割合)。  主な用途は、学校関係、社会体育施設、社会教育・文化施設、福祉・医療施設、企業等の施設、創業支援施設、庁舎等、体験交流施設、備蓄倉庫、住宅など。  用途が決まっていない施設の要因としては、「建物が老朽化している」が46・2%で最も多く、「地域からの要望がない」が41・6%、「立地条件が悪い」が18・7%、「財源が確保できない」が14・6%と続く(※複数回答のため、合計が100%を超える)。  なお、国では別表に示した補助メニューを設けている。文部科学省では「〜未来につなごう〜 『みんなの廃校』プロジェクト」として、活用用途を募集している全国の廃校施設情報を集約・発信する取り組みや、イベントの開催、廃校活用事例の紹介などを通じて、廃校施設の活用を推進している。その中で、省庁をまたいで、活用可能な補助メニューを紹介している。 空き校舎の活用に当たり利用可能な補助制度 対象となる施設所管省庁地域スポーツ施設スポーツ庁埋蔵文化財の公開及び整理・収蔵等を行うための設備整備事業文化庁児童福祉施設等(保育所を除く)こども家庭庁保育所等こども家庭庁小規模保育事業所等こども家庭庁放課後児童クラブこども家庭庁障害者施設等厚生労働省私立認定こども園文部科学省、こども家庭庁地域間交流・地域振興を図るための生産加工施設、農林漁業等体験施設、地域芸能・文化体験施設等(過疎市町村等が実施する過疎地域の廃校舎の遊休施設を改修する費用が対象)総務省農業者等を含む地域住民の就業の場の確保、農山漁村における所得の向上や雇用の増大に結びつける取り組みに必要な施設農林水産省交流施設等の公共施設林野庁立地適正化計画に位置付けられた誘導施設(医療施設、社会福祉施設、教育文化施設、子育て支援施設)等国土交通省まちづくりに必要な地域交流センターや観光交流センター等の施設国土交通省空家等対策計画に定められた地区において、居住環境の整備改善に必要となる宿泊施設、交流施設、体験学習施設、創作活動施設、文化施設等国土交通省「地方版創生総合戦略」に位置付けられ、地域再生法に基づく地域再生計画に認定された地方公共団体の自主的・主体的で、先導的な取り組み内閣府  福島県内では、2002年から2020年までに小学校211校、中学校44校、高校12校の計267校が廃校となった。この数字は北海道(858校)、東京都(322校)、岩手県(311校)、熊本県(304校)、新潟県(290校)、広島県(280校)、青森県(271校)に次いで8番目に多い。  廃校施設の利活用状況について、都道府県別の詳細は示されていない。なお、次回調査は2024年度に実施される予定で、今年度はその谷間になる。 アンケート調査を実施  本誌は10月上旬、県内市町村に対して、当該市町村立の小・中学校の空き校舎の有無と数、すでに再利用がなされている校舎の事例、再利用計画が進行中の事例、計画が策定され、これから改修などに入る事例の有無などについて、アンケート調査を行った。  「空き校舎がある」、「再利用の実例がある」と回答があった中から、今号以降、何回かに分けて、具体的な事例や課題などについて取り上げていきたい。  1回目となる今回は平田村。  同村は、県内で初めて空き校舎を役場庁舎にした。永田小学校が2013年3月に蓬田小学校と統合して閉校となり、空き校舎となった。一方で、役場庁舎は1960年に建てられたもので老朽化していたほか、東日本大震災で外壁に亀裂が入るなどの被害が出ていた。そのため、旧永田小校舎を改修して役場庁舎とし、2015年9月に開庁(移転)した。校庭だったところは、舗装され駐車場になっている。体育館は、館内にもう1つ「箱」が作られたような格好になっており、会議室として使われている。場所は、旧役場から直線距離で北東に600㍍ほどのところにある。 体育館を高所から。館内にもう1つ「箱」が設置され、会議室になっている。  財源は庁舎建設基金と一般財源でまかない、総事業費は約4億2000万円。  別表は、県内で同時期に建設された役場庁舎との比較をまとめたもの。ほかの3町と比べると、延べ床面積が半分ほどのため、純粋な比較は難しいが、少なくとも新築するより安上がりになったのは間違いない。  本誌は常々、立派な役場庁舎ができたところで、住民の日々の生活が豊かになるわけではないから、役場建設に多額の事業費を投じるのは適切ではないと指摘してきた。もちろん、災害時などに役場そのものが大きな被害を受け、災害対策に支障が出るようなことは避けなければならないが、そういった問題がなければ必要最低限でいい。少なくとも立派な庁舎は必要ない。役場に金をかけるくらいなら、何か別の地域振興策に使うべきだ。その点では、新築した他自治体と比べて、安上がりで済ませたのは評価されていい。  肝心の使い勝手だが、ある村民は「最初は、『学校』という感じで違和感がありましたが、慣れてみればこんなものかな、と思います」と話した。ある職員も「もう慣れたんで」と同様の感想を語った。  本誌も少し見て回ったが、「もともと学校だった」という潜在意識があるためか、多少の違和感はあったものの、少なくとも「不便」には感じなかった。音楽室や調理実習室などの特別教室は、うまく活用すれば職員の福利厚生などに使えそうだが、調理実習室は執務室になり、音楽室は議場になっているという。その辺はもう少し工夫があっても面白かったか。 議場  一方で、役場を小学校跡地に移転したとなると、今度は逆に、旧役場跡地の利活用の問題が出てくる。旧役場は解体され、跡地は幼保連携型認定こども園「村立ひらたこども園」として整備された。同園は2020年に開園した。 役場跡地はこども園に その他の空き校舎 蓬田中跡 小平中跡  役場庁舎の開庁時、澤村和明村長は「閉校した校舎の利活用のモデルケースになる」とあいさつしていたが、村内にはほかにも空き校舎がある。永田小学校と同時に閉校となった西山小学校については、今年7月の村長選で、澤村村長が5選を果たした際、「入浴施設として活用することを考えている」と明かしていた。  このほか、2016年に蓬田、小平両中学校が統合され、ひらた清風中学校が開校した。これに伴い、両中学校が空き校舎になっている。この2つに関しては、いまのところ何の案も出ていないという。  「建物は残っていますが、耐震の問題もありますし、一番は配管が使える状態なのか、ということもあります。やはり、使われていないと、そこ(配管)の劣化が出てきますからね」(村企画商工課)  校舎の利活用はなされていないが、グラウンドや体育館はスポーツ少年団などで活用しているという。付属施設が使われているだけに、校舎だけを別の用途に、というのは余計に難しいのかもしれない。  旧小平中学校の近隣住民はこう話す。  「当然、住民としては学校に対して思い入れがあります。この村は1955年に、いわゆる『昭和の大合併』で、小平村と蓬田村が合併して誕生しました。そうした中、片方の地区だけに投資をするのは憚られるといった空気があります。そうなると、小平中、蓬田中のどちらも、住民が納得するような形で、あまり時間を置かずに進めなければならない。そういった難しさもあると思います。仲間内で話している分には、『村はどう考えているんだ』という話になりますが、小さな村ですからなかなか面と向かって村(村長)に意見しにくい、という側面もあります。潤沢にお金が使えるということであれば話は別ですが、そういうわけにもいきませんから、学校の跡地利用は簡単ではないでしょうね」  一方で、別の住民はこう話した。  「学校がなくなる(統合される)ということは、地域から人がいなくなっているということです。この地域(小平地区)でも、高齢者の夫婦だけの世帯、あるいは1人暮らしが増えています。その人たちが亡くなったら、その家には誰も住まなくなります。中学校だけでなく、駐在所もなくなりましたし、郵便局やJAも業務範囲を縮小しています。小平小学校も、60年くらい前、われわれのころは全校生徒が約800人いましたが、われわれの子どもが通っていた30年くらい前は約300人、いまは約100人ですから、いずれは統合という話になっていくでしょう。そういう状況ですから、空き校舎を使って何か地域振興策を、とは思いますが、現実的には相当難しいと思います」 住民の思い入れが強い 平田村と同時期に役場庁舎を建設した町村の構造・事業費など 町村名竣工年構 造延べ床面積事業費平田村2015年鉄筋コンクリート2階建て2055平方㍍約4・2億円国見町2015年鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造地上3階、地下1階4833平方㍍約17億円川俣町2016年プレキャスト・プレストレストコンクリート造 地上3階建4324平方㍍約27億円南会津町2017年鉄骨造、地上4階、地下1階建て4763平方㍍約26億円  人が少なくなったから閉校になった→今後人口減少がさらに加速すると思われる→そういった地域にどんな投資をすればいいか、というのは確かに難しい問題だ。地方における最大の課題と言っていいだろう。  前述したように、さまざまな補助メニューは用意されているが、なかなか「コレ」といったものがないのが現状だ。  加えて、学校に対する地域住民の思い入れは強い。いまの少子化、児童・生徒数の減少に伴う学校の統廃合はやむを得ない流れだが、かつて自分たちが通った学校がどうなるかは、住民の関心が高い。  前段で文部科学省の調査結果を紹介したが、用途が決まっていない施設の要因として、「地域からの要望がない」が41・6%を占めていた。行政は「学校は地域住民の思い入れが強いから、住民がどうしたいかを大切にしたい」といった姿勢であることがうかがえる。裏を返すと、下手な案を提示しようものなら、住民の猛反発を受けかねない。一方、住民側は「そもそも、住民レベルではどんな可能性があるのかが分からない。だから、まずは行政が案を示してくれないことには、良いも悪いも判断しようがない」といった思いを抱いているように感じる。こうしたことも、利活用が進まない要因だろう。  最後に。今回の本誌のアンケートでは、市町村立の小・中学校の空き校舎の有無、利活用状況を聞いたものだが、同村には県立(県管理)の小野高校平田校があった。同校は2019年に閉校となった。  県教委によると、現在進めている県立高校改革では、廃校舎については、まず当該市町村に跡地利用を考えているか等の意見を聞き、市町村で利活用策がある場合は無償譲渡するという。市町村で利活用策を考えていない場合は、県のルールに基づき財産処分することになる。  小野高校平田校は事情が違い、同校がある土地は、もともと村の所有地で、現在解体工事を行っており、完了後に村に返却するという。つまり、村ではその土地をどうするかということも今後の課題になる。

  • 【平田村】澤村和明村長インタビュー

    【平田村】澤村和明村長インタビュー

     1947年生まれ。小野高校、立正大経済学部卒。96年から平田村議3期。2007年7月、平田村長選で初当選。23年7月の村長選で5選を果たした。  ――7月の村長選で5度目の当選を果たしました。率直な感想を。  「相手候補は、政策論争ではなく『5期は長すぎる』という主張を柱としてきました。それに対し、私は4期16年間の実績についてどのように評価していただいたか、住民の皆さんの声に耳を傾け、今後4年間、どのような取り組みをしていきたいか、自分の考えを訴えました。今回の結果は『16年間の経験を、これからの対応に生かすことが大切だ』と受け取っていただいたのだと捉えています。村議12人中8人から支援をいただき、今後の事業進捗にも心強さを感じています」  ――公約に掲げた「高齢者がいきいきと暮らせる地域社会の実現」と「観光・交流事業の更なる強化」について。  「高齢化というと、少子化と並べられ『高齢者が増えることは問題』のように受け取られがちですが、大切なのは高齢者が『元気で毎日過ごせる』ことだと思います。そのために必要なことは、適切な運動や音楽などの趣味を楽しみ、健康でいることです。4月にオープンした複合施設『ハレスコ』では、まさに健康づくりのメニューを取りそろえており、趣味活動ができるスペースもあります。今後はもっと大勢の皆さんに参加していただけるように支援していきます。高齢者からの長年の要望だった入浴施設については、コロナ禍などで延びておりましたが、ようやく来年度に設計予算を組めるところまで目途が立ちました。若者も利用できるようサウナも併設したいと考えています。  観光については、ジュピアランドにイベント利用の促進のため、『野外ステージ』を設けます。また、あじさい園側に『天の川プロジェクト』として、2㌶規模のあじさいエリアづくりをスタートします。展望デッキや遊歩道の設置も検討しています」  ――その他、今年度の重点事業は。  「造成中のパークゴルフ場について、今夏の猛暑で芝生の生育に遅れが出ていましたが、手入れをし直し、秋には仮オープンにこぎつけたいと考えています」  ――5期目は集大成となるのでしょうか。今後の抱負を。  「集大成というと仕上げや終わりをイメージしますが、村長や役場の仕事は将来のために種をまく事業や取り組みが多く、終わりはありません。時限立法である『過疎指定』の恩恵をチャンスと捉え、積極的に『元気で長生きし、人生を楽しめる笑顔あふれる村づくり』に取り組みます。日進月歩のこの社会で『今やらなくてはいけないことをしっかり全力で尽くすだけ』と考えています」

  • 「議員定数議論」で対応分かれた古殿町・玉川村・平田村

     古殿町、玉川村、平田村の石川郡3町村は3月に同時日程で議員選挙が行われる。それに先立ち、それぞれの町村議会で、昨年から議員定数のあり方を議論してきたが、結果は三者三様のものだった。(末永) 重要なのは住民にとって有益な存在かどうか 3町村の基礎データ面 積人 口議員定数古殿町163・29平方㌔4655人10玉川村46・47平方㌔6191人12平田村93・42平方㌔5413人12※人口は古殿町が昨年12月31日、玉川村が今年1月1日、平田村が昨年12月1日時点  任期満了に伴う古殿町議選、玉川村議選、平田村議選が3月19日告示、24日投開票の日程で行われる。それを前に、各議会では昨年から議員定数をどうするかを検討してきた。結果から言うと、古殿町は2減(12人→10人)、玉川村は現状維持(12人)、平田村はひとまず現状維持(12人)として改選後の議会で再度議論する――という三者三様のものだった。同じ石川郡ということもあり、関係者はそれぞれの議会の動きに注目していたようだ。関係者だけでなく、住民から「向こう(近隣町村)はこうだったが、ウチは……」といった話を聞く機会もあった。 古殿町議会 古殿町役場  古殿町議会は、昨年10月から12月まで、全員協議会で5回にわたり議論を重ねてきた。同町議会は2012年までは定数が14だったが、同年3月の改選時に12に減らした。それから12年が経ち、あらためて議員定数のあり方を議論したのである。  根底にあるのは、2012年に定数削減したころから、人口が約1500人減少していること。もう1つは、町民から「人口が減少しているのだから、それに倣って、議員定数も減らすべき」といった声が出ていたこと。  なお、3町村の基礎データを別表にまとめたが、古殿町は行政区分こそ「町」だが、玉川村、平田村より人口が少ない。反して、面積はだいぶ広く「町内全域に目を向ける」という点では、3町村の中では最も大変な地域と言える。  そうした中で議論を重ね、昨年12月議会で、議員発議で定数削減案(条例改正案)が出され、採決の結果、賛成7、反対4の賛成多数で可決された。反対意見としては、町民の声が届きにくくなること、若い人や女性などが議員になるハードルが高くなること、議論が十分でないこと――等々が挙げられた。議案審議(討論)の中でも、そうした意見が出たが、結果は前述の通り。  ある関係者は「反対する人もいましたが、人口減少、時代の流れなどからしても、(2減は)妥当だったのではないか」と話した。  一方、選挙に向けた動きについては、「削減によって枠が2つ減るわけだから、常に上位当選している人以外は、いろいろと気にしているようだ。ただ、いま(本誌取材時の1月中旬時点)は、それぞれが様子見という段階で、現職の誰が引退して、新人のこんな動きがある、といった具体的なことは見えてこない」(前出の関係者)という。 玉川村議会 玉川村役場  玉川村議会は、昨年10月から11月にかけて、議員定数に関する住民アンケートを実施した。対象は全1799世帯、回答数は1029件(回収率57・2%)だった。  もっとも多かった回答は現在の定数12から2減の「10人」で402(39・1%)。以下、現状維持の「12人」が382(37・1%)、「8人以下」が156(15・2%)と続く。この3つで全体の90%超を占める。2減の「10人」と、現状維持の「12人」が拮抗しているが、「8人以下」を含めた「削減」という点で見るならば、半数を超えている。  少数意見としては、「18人」が22、「16人」と「14人」がそれぞれ1あり、増員を求める回答もあった。逆に「0人」、「1人」、「2人」という回答がそれぞれ1ずつあった。  ちなみに、議会は「最低人数は何人」といった規定はないが、「議長を置いたうえで議論できる」ことが条件になる。つまり、議長1人と、議長を除いて議論するために最低2人が必要だから、議員の最小人数は3人という解釈になり、それ未満はあり得ない。一方、地方自治法(94条、95条)では、議会を置かず、それに代わって選挙権を有する住民による総会(町村総会)を設けることができる、と規定されている。60年以上前はその事例があったが、近年はない。 賛成、反対意見の中身  話を戻して、玉川村議会はアンケート結果を踏まえ、全員協議会で検討した。そのうえで、昨年12月議会で議員発議によって、議員定数を10にする条例改正案が提出された。採決の結果、賛成5、反対6の賛成少数で否決された。  以下、その際に行われた討論の概要を紹介する。  賛成討論  小林徳清議員▽少子高齢、人口減少にあえぐ市町村情勢は、議員定数削減の方向となっている。アンケートの結果からも民意は削減を求めており、現状維持は村民の理解が得られないばかりか、アンケートの意味をなさない民意無視となり、議会・議員に対して不信感を招き、保身と批判を受けることになる。議員として、多くの民意を反映させる職務と責務から、アンケートに基づく定数2削減に大いに賛成。  塩澤重男議員▽今回のアンケートでは様々な意見があった。その中でも、削減が過半数の58%を占めている。人口減少が加速する中、議員定数も減らすべきであり、村民の意見を真摯に受け止め、定数削減に賛成する。  大和田宏議員▽アンケート結果で、当然、少数派意見も尊重しなければならないが、やはり多数派意見に重点を置かなければならないので賛同する。削減した場合はメリット・デメリットが出るが、デメリットは今後協議しながらカバーしていけばいいと思う。それぞれの議員がすぐに活動できる環境を進めていき、デメリットを克服しながら十分対応できると考えるので賛成。  石井清勝議員▽近隣の市町村では10人で運営しているところも多くある。人口だけでなく、予算も考慮しながら、住民の代表として、村をいかに良くしていくか、活性化していくかを考えていく必要がある。議員自ら身を削ってやっていかないと村も活性化しないと思うので賛成する。  反対討論  佐久間安裕議員▽議員定数見直しに反対するものではなく、今回は十分に議論する時間がない中での削減のため反対する。アンケート結果でも50代以下は現状維持が多く、「現状維持」と「10人」も僅差だった。そういった若い世代の意見を切り捨ててもいいのか疑問を感じる。議会基本条例策定とともに議会改革を進め、内容を公開していくことが求められる中で、いまだ議論の準備段階であり、様々な観点から十分な議論を尽くしていくべき。アンケート結果の民意だから即削減すべきではなく、今回は拙速であるので反対する。  飯島三郎議員▽病人が多数出たりして欠席が多くなってしまうと議会が成り立たなくなる恐れがあるとの思いで、現状維持の判断をした。今回新たな特別委員会が設置され、業務が多くなり、議員1人当たりの業務負担が増加している中で、これ以上人数が少なくなると村内の隅々まで行き届かなくなり、本来の活動ができなくなることは間違いないので、削減に反対する。  三瓶力議員▽今回のアンケートをすべて確認し、皆様の思いや考えをいろいろな方面から検討した。アンケート結果を見ると、現状維持の12人の意見が多かったのは、20代から50代だった。回答数では60代以上からの回答が多く、偏っているのではと感じる。20代から50代の貴重な意見を尊重すべきであり反対する。 深刻ななり手不足  こうした意見があった中、前述したように、議員定数削減案は反対多数で否決された。  賛成した議員は「村民からは、だったらなぜアンケートを実施したのかと言われた」と、早速、批判があったことを明かした。  「住民の意見」がハッキリ出ている中で、「現状維持」の判断をしたのだから、そうした批判が出るのは当然か。  今回取材した近隣町村の関係者からも、「玉川村は住民アンケートまでやって、住民の多数派意見を洗い出したのに、『現状維持』にして批判は出ていないのか? 他村のことながら気になってしまう」との声が聞かれた。  改選後の議会は、そうした批判とも向き合っていかなければならないことを覚えておいた方がいい。  選挙に向けた情勢としては、4人の現職議員が引退する見込みという。昨年4月の村長選に議員を辞して立候補した須藤安昭氏、林芳子氏の2人が議員復帰を目指す可能性はありそうだが、現状はほかに立候補の可能性がありそうな人の動きは見えてこないようだ。  ある議員は、地元行政区で「自分は今期で引退して、誰かにバトンタッチしたい」旨を伝えたところ、自薦他薦ともに後継者になり得る人が出てこなかったという。かといって、「この地区から議員がいなくなるのは困る」との意見もあったことから、やむなく「自分がもう1期やるしかない」という結論に至った事例もあると聞く。それだけ、なり手がいないということだ。  そのため、村内では「『現状維持』にしておきながら、定数割れが起きるのではないか」と懸念する声もあり、もしそうなったら、より批判が大きくなるだろう。  定数割れにならないまでも、「タダでなれるなら」と、何の考え・信条もなく、立候補する人が出てくる可能性もあり、「そうなったら、議会の質の低下を招くのではないか」と憂える住民は少なくない。 平田村議会 平田村役場  平田村議会は、昨年9月に3回の全員協議会を開き、議員定数について検討した。  その中で出された意見は、「人口が減少していることや、住民の声などを踏まえると、削減すべき」というものと、「削減ありきではなく、総合的に考えるべき」というもの。そのほか、「20年以上の議員は引退して後継者に託すべき」、「若い人が立候補できるような条件整備が必要」、「仮に議員を2人削減しても、費用面での効果は予算総額の0・17%に過ぎない」といった意見もあった。当初は、条件付きでの「削減派」が8人、「現状維持派」が4人だったという。  その後、検討が進められる中で、定数を削減した場合、現状維持とした場合のメリット・デメリットが挙げられた。  削減のメリット▽経費削減、意見の集約が早い、議員のレベルアップにつながる、住民からの意見を反映した議員活動がしやすくなる、議員と村民の距離が縮まり議員活動がしやすい。  削減のデメリット▽議員のなり手を狭める、意見が偏る傾向がある、多くの意見が上がらない、委員会が少人数になる、住民の意見が反映されにくくなる、少数意見になり村民のニーズから遠くなる、執行者への監視が不十分になる、多様な意見や考えが反映されず結果十分な議論ができずに決定されてしまう、行政と住民の橋渡しが薄れる、現職議員が有利で若年層・女性の進出が困難になる。  現状維持のメリット▽村民の意見が届きやすい、議員のなり手の門扉を開く、委員会の構成人数が良い、多数精鋭を目指し広く村民の声を反映できる、多数の意見を集約できる、多様性が維持される、新たな立候補者が出やすくなる。  現状維持のデメリット▽議員の資質低下、意見の集約に時間がかかる。賛否拮抗で結論持ち越し  こうして、意見が出されていくうちに、「削減派」と「現状維持派」が拮抗していき、最終的には6対6になった。そのため、「今回は現状維持とし、これらの問題に対しては、住民からの意見等も聞きながら、次期議員で引き続き協議を進めるべきである」との結論に至った。  つまりは、結論を改選後の議会に持ち越したのである。  同村が古殿町、玉川村と少し違うのは、早い段階で新人2人が立候補の動きを見せているのだという。現職は引退する意向の人はおらず、ほかに元職1人が立候補するのではないかと言われている。現状、現職12人、元職1人、新人2人で、選挙戦になるのが濃厚だ。「それだけ、なり手がいるのはいいことだ」と見る向きもあれば、「現職議員は、厳しい選挙戦が予想されるから、減らしたくなかったのだろう」といった批判もあるようだ。  以上、古殿町、玉川村、平田村の議員選挙に向けた定数削減議論について見てきたが、3町村で完全に対応が分かれた格好。同じ石川郡で、同時日程で選挙が行われるだけに、当該町村の住民・関係者などからは「ウチはこうだったけど、向こうはどういう流れであの結論に至ったのか気になる」と、それぞれが気にしている様子。そんな中で、何が正解かと言ったら、「住民にとって有益な議会・議員であるかどうか」しかない。住民にとって有益な存在であれば、「定数を削減すべき」といった意見は出てこないだろうから。削減したところも、現状維持としたところも、一番に意識すべきはそこだ。

  • 廃校施設をどう使うか【平田村編】

     文部科学省の「廃校施設等活用状況実態調査」によると、2002年度から2020年度までに、県内では267の小・中学校、高校(いずれも公立に限る)が廃校になったという。少子化による児童・生徒数の減少に伴う学校の統廃合はやむを得ない流れだが、使われなくなった校舎の利活用が問題になっている。 永田小を役場庁舎に改築、2つの中学校跡は未使用 平田村役場  文部科学省の「廃校施設等活用状況実態調査」は3年に1回のスパンで実施され、直近では2021年5月1日時点での調査が行われた(結果の公表は2022年3月30日)。それによると、2002年から2020年までに全国で発生した廃校数は8580校(公立の小・中学校、高校、特別支援学校など)。このうち、建物(校舎)が現存するのが7398件で、すでに別の用途などで活用されているのは5481件(約74%、現存するものに対する割合)。  主な用途は、学校関係、社会体育施設、社会教育・文化施設、福祉・医療施設、企業等の施設、創業支援施設、庁舎等、体験交流施設、備蓄倉庫、住宅など。  用途が決まっていない施設の要因としては、「建物が老朽化している」が46・2%で最も多く、「地域からの要望がない」が41・6%、「立地条件が悪い」が18・7%、「財源が確保できない」が14・6%と続く(※複数回答のため、合計が100%を超える)。  なお、国では別表に示した補助メニューを設けている。文部科学省では「〜未来につなごう〜 『みんなの廃校』プロジェクト」として、活用用途を募集している全国の廃校施設情報を集約・発信する取り組みや、イベントの開催、廃校活用事例の紹介などを通じて、廃校施設の活用を推進している。その中で、省庁をまたいで、活用可能な補助メニューを紹介している。 空き校舎の活用に当たり利用可能な補助制度 対象となる施設所管省庁地域スポーツ施設スポーツ庁埋蔵文化財の公開及び整理・収蔵等を行うための設備整備事業文化庁児童福祉施設等(保育所を除く)こども家庭庁保育所等こども家庭庁小規模保育事業所等こども家庭庁放課後児童クラブこども家庭庁障害者施設等厚生労働省私立認定こども園文部科学省、こども家庭庁地域間交流・地域振興を図るための生産加工施設、農林漁業等体験施設、地域芸能・文化体験施設等(過疎市町村等が実施する過疎地域の廃校舎の遊休施設を改修する費用が対象)総務省農業者等を含む地域住民の就業の場の確保、農山漁村における所得の向上や雇用の増大に結びつける取り組みに必要な施設農林水産省交流施設等の公共施設林野庁立地適正化計画に位置付けられた誘導施設(医療施設、社会福祉施設、教育文化施設、子育て支援施設)等国土交通省まちづくりに必要な地域交流センターや観光交流センター等の施設国土交通省空家等対策計画に定められた地区において、居住環境の整備改善に必要となる宿泊施設、交流施設、体験学習施設、創作活動施設、文化施設等国土交通省「地方版創生総合戦略」に位置付けられ、地域再生法に基づく地域再生計画に認定された地方公共団体の自主的・主体的で、先導的な取り組み内閣府  福島県内では、2002年から2020年までに小学校211校、中学校44校、高校12校の計267校が廃校となった。この数字は北海道(858校)、東京都(322校)、岩手県(311校)、熊本県(304校)、新潟県(290校)、広島県(280校)、青森県(271校)に次いで8番目に多い。  廃校施設の利活用状況について、都道府県別の詳細は示されていない。なお、次回調査は2024年度に実施される予定で、今年度はその谷間になる。 アンケート調査を実施  本誌は10月上旬、県内市町村に対して、当該市町村立の小・中学校の空き校舎の有無と数、すでに再利用がなされている校舎の事例、再利用計画が進行中の事例、計画が策定され、これから改修などに入る事例の有無などについて、アンケート調査を行った。  「空き校舎がある」、「再利用の実例がある」と回答があった中から、今号以降、何回かに分けて、具体的な事例や課題などについて取り上げていきたい。  1回目となる今回は平田村。  同村は、県内で初めて空き校舎を役場庁舎にした。永田小学校が2013年3月に蓬田小学校と統合して閉校となり、空き校舎となった。一方で、役場庁舎は1960年に建てられたもので老朽化していたほか、東日本大震災で外壁に亀裂が入るなどの被害が出ていた。そのため、旧永田小校舎を改修して役場庁舎とし、2015年9月に開庁(移転)した。校庭だったところは、舗装され駐車場になっている。体育館は、館内にもう1つ「箱」が作られたような格好になっており、会議室として使われている。場所は、旧役場から直線距離で北東に600㍍ほどのところにある。 体育館を高所から。館内にもう1つ「箱」が設置され、会議室になっている。  財源は庁舎建設基金と一般財源でまかない、総事業費は約4億2000万円。  別表は、県内で同時期に建設された役場庁舎との比較をまとめたもの。ほかの3町と比べると、延べ床面積が半分ほどのため、純粋な比較は難しいが、少なくとも新築するより安上がりになったのは間違いない。  本誌は常々、立派な役場庁舎ができたところで、住民の日々の生活が豊かになるわけではないから、役場建設に多額の事業費を投じるのは適切ではないと指摘してきた。もちろん、災害時などに役場そのものが大きな被害を受け、災害対策に支障が出るようなことは避けなければならないが、そういった問題がなければ必要最低限でいい。少なくとも立派な庁舎は必要ない。役場に金をかけるくらいなら、何か別の地域振興策に使うべきだ。その点では、新築した他自治体と比べて、安上がりで済ませたのは評価されていい。  肝心の使い勝手だが、ある村民は「最初は、『学校』という感じで違和感がありましたが、慣れてみればこんなものかな、と思います」と話した。ある職員も「もう慣れたんで」と同様の感想を語った。  本誌も少し見て回ったが、「もともと学校だった」という潜在意識があるためか、多少の違和感はあったものの、少なくとも「不便」には感じなかった。音楽室や調理実習室などの特別教室は、うまく活用すれば職員の福利厚生などに使えそうだが、調理実習室は執務室になり、音楽室は議場になっているという。その辺はもう少し工夫があっても面白かったか。 議場  一方で、役場を小学校跡地に移転したとなると、今度は逆に、旧役場跡地の利活用の問題が出てくる。旧役場は解体され、跡地は幼保連携型認定こども園「村立ひらたこども園」として整備された。同園は2020年に開園した。 役場跡地はこども園に その他の空き校舎 蓬田中跡 小平中跡  役場庁舎の開庁時、澤村和明村長は「閉校した校舎の利活用のモデルケースになる」とあいさつしていたが、村内にはほかにも空き校舎がある。永田小学校と同時に閉校となった西山小学校については、今年7月の村長選で、澤村村長が5選を果たした際、「入浴施設として活用することを考えている」と明かしていた。  このほか、2016年に蓬田、小平両中学校が統合され、ひらた清風中学校が開校した。これに伴い、両中学校が空き校舎になっている。この2つに関しては、いまのところ何の案も出ていないという。  「建物は残っていますが、耐震の問題もありますし、一番は配管が使える状態なのか、ということもあります。やはり、使われていないと、そこ(配管)の劣化が出てきますからね」(村企画商工課)  校舎の利活用はなされていないが、グラウンドや体育館はスポーツ少年団などで活用しているという。付属施設が使われているだけに、校舎だけを別の用途に、というのは余計に難しいのかもしれない。  旧小平中学校の近隣住民はこう話す。  「当然、住民としては学校に対して思い入れがあります。この村は1955年に、いわゆる『昭和の大合併』で、小平村と蓬田村が合併して誕生しました。そうした中、片方の地区だけに投資をするのは憚られるといった空気があります。そうなると、小平中、蓬田中のどちらも、住民が納得するような形で、あまり時間を置かずに進めなければならない。そういった難しさもあると思います。仲間内で話している分には、『村はどう考えているんだ』という話になりますが、小さな村ですからなかなか面と向かって村(村長)に意見しにくい、という側面もあります。潤沢にお金が使えるということであれば話は別ですが、そういうわけにもいきませんから、学校の跡地利用は簡単ではないでしょうね」  一方で、別の住民はこう話した。  「学校がなくなる(統合される)ということは、地域から人がいなくなっているということです。この地域(小平地区)でも、高齢者の夫婦だけの世帯、あるいは1人暮らしが増えています。その人たちが亡くなったら、その家には誰も住まなくなります。中学校だけでなく、駐在所もなくなりましたし、郵便局やJAも業務範囲を縮小しています。小平小学校も、60年くらい前、われわれのころは全校生徒が約800人いましたが、われわれの子どもが通っていた30年くらい前は約300人、いまは約100人ですから、いずれは統合という話になっていくでしょう。そういう状況ですから、空き校舎を使って何か地域振興策を、とは思いますが、現実的には相当難しいと思います」 住民の思い入れが強い 平田村と同時期に役場庁舎を建設した町村の構造・事業費など 町村名竣工年構 造延べ床面積事業費平田村2015年鉄筋コンクリート2階建て2055平方㍍約4・2億円国見町2015年鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造地上3階、地下1階4833平方㍍約17億円川俣町2016年プレキャスト・プレストレストコンクリート造 地上3階建4324平方㍍約27億円南会津町2017年鉄骨造、地上4階、地下1階建て4763平方㍍約26億円  人が少なくなったから閉校になった→今後人口減少がさらに加速すると思われる→そういった地域にどんな投資をすればいいか、というのは確かに難しい問題だ。地方における最大の課題と言っていいだろう。  前述したように、さまざまな補助メニューは用意されているが、なかなか「コレ」といったものがないのが現状だ。  加えて、学校に対する地域住民の思い入れは強い。いまの少子化、児童・生徒数の減少に伴う学校の統廃合はやむを得ない流れだが、かつて自分たちが通った学校がどうなるかは、住民の関心が高い。  前段で文部科学省の調査結果を紹介したが、用途が決まっていない施設の要因として、「地域からの要望がない」が41・6%を占めていた。行政は「学校は地域住民の思い入れが強いから、住民がどうしたいかを大切にしたい」といった姿勢であることがうかがえる。裏を返すと、下手な案を提示しようものなら、住民の猛反発を受けかねない。一方、住民側は「そもそも、住民レベルではどんな可能性があるのかが分からない。だから、まずは行政が案を示してくれないことには、良いも悪いも判断しようがない」といった思いを抱いているように感じる。こうしたことも、利活用が進まない要因だろう。  最後に。今回の本誌のアンケートでは、市町村立の小・中学校の空き校舎の有無、利活用状況を聞いたものだが、同村には県立(県管理)の小野高校平田校があった。同校は2019年に閉校となった。  県教委によると、現在進めている県立高校改革では、廃校舎については、まず当該市町村に跡地利用を考えているか等の意見を聞き、市町村で利活用策がある場合は無償譲渡するという。市町村で利活用策を考えていない場合は、県のルールに基づき財産処分することになる。  小野高校平田校は事情が違い、同校がある土地は、もともと村の所有地で、現在解体工事を行っており、完了後に村に返却するという。つまり、村ではその土地をどうするかということも今後の課題になる。

  • 【平田村】澤村和明村長インタビュー

     1947年生まれ。小野高校、立正大経済学部卒。96年から平田村議3期。2007年7月、平田村長選で初当選。23年7月の村長選で5選を果たした。  ――7月の村長選で5度目の当選を果たしました。率直な感想を。  「相手候補は、政策論争ではなく『5期は長すぎる』という主張を柱としてきました。それに対し、私は4期16年間の実績についてどのように評価していただいたか、住民の皆さんの声に耳を傾け、今後4年間、どのような取り組みをしていきたいか、自分の考えを訴えました。今回の結果は『16年間の経験を、これからの対応に生かすことが大切だ』と受け取っていただいたのだと捉えています。村議12人中8人から支援をいただき、今後の事業進捗にも心強さを感じています」  ――公約に掲げた「高齢者がいきいきと暮らせる地域社会の実現」と「観光・交流事業の更なる強化」について。  「高齢化というと、少子化と並べられ『高齢者が増えることは問題』のように受け取られがちですが、大切なのは高齢者が『元気で毎日過ごせる』ことだと思います。そのために必要なことは、適切な運動や音楽などの趣味を楽しみ、健康でいることです。4月にオープンした複合施設『ハレスコ』では、まさに健康づくりのメニューを取りそろえており、趣味活動ができるスペースもあります。今後はもっと大勢の皆さんに参加していただけるように支援していきます。高齢者からの長年の要望だった入浴施設については、コロナ禍などで延びておりましたが、ようやく来年度に設計予算を組めるところまで目途が立ちました。若者も利用できるようサウナも併設したいと考えています。  観光については、ジュピアランドにイベント利用の促進のため、『野外ステージ』を設けます。また、あじさい園側に『天の川プロジェクト』として、2㌶規模のあじさいエリアづくりをスタートします。展望デッキや遊歩道の設置も検討しています」  ――その他、今年度の重点事業は。  「造成中のパークゴルフ場について、今夏の猛暑で芝生の生育に遅れが出ていましたが、手入れをし直し、秋には仮オープンにこぎつけたいと考えています」  ――5期目は集大成となるのでしょうか。今後の抱負を。  「集大成というと仕上げや終わりをイメージしますが、村長や役場の仕事は将来のために種をまく事業や取り組みが多く、終わりはありません。時限立法である『過疎指定』の恩恵をチャンスと捉え、積極的に『元気で長生きし、人生を楽しめる笑顔あふれる村づくり』に取り組みます。日進月歩のこの社会で『今やらなくてはいけないことをしっかり全力で尽くすだけ』と考えています」