Category

星學

  • 【下郷町】星學町長インタビュー【2024.3】

    【下郷町】星學町長インタビュー【2024.3】

    経歴  ほし・まなぶ 1947年生まれ。日本大学東北工業高卒。下郷町建設課長、助役、副町長などを経て、2013年9月の町長選で初当選。2017年、2021年の町長選で再選を果たし、現在3期目。  ――昨年5月から新型コロナウイルスの感染法上の位置付けが「5類」になりました。  「町民の生活面については、新型コロナウイルスの感染拡大により、冠婚葬祭の規模縮小や近所間での往来を遠慮するなど、日常生活の変化がうかがえました。昨年5月から5類へ移行したことで、この間、変化した地域生活も回復してきたと感じています。感染症対策も緩和される中、これまで中止となっていた町内の各種行事や会議、県や国への要望活動など4年ぶりに再開されるものが多くあり、少しずつ以前の生活が戻ってきた感覚です。一方で、イベント等が開催される中でも、以前より規模を縮小しての開催だったり、久しぶりの開催により勝手が分からなくなるなど、従来通りにはいかない部分も少なからずあります。  観光面では、観光客の入り込みはほぼコロナ前に戻りつつあり、活気が戻っているのを実感しています。急激な観光客回復に合わせて、外国人観光客の増加も顕著で、昨年はピーク時の約1・5倍に当たるおよそ9万人の外国人が来訪され、過去最高の数字を記録しました。こうした現状もあって、インバウンド対策の重要性を痛感しているところです。  2024年度の事業については、これまで国の臨時交付金を活用していたものが、新年度以降は不透明であるため、観光振興策をはじめ多くの事業において勝負の一年になると考えています。  また、この4年間は商工業の後押しに注力してきましたし、物価高騰策による町民への支援やプレミアム商品券の発行などによって消費拡大に努めてきたので、今年も様々な取り組みを通して地域活性化につなげていきたいと考えています」 会津縦貫南道路に期待  ――第6次下郷町総合計画は4年が経過しました。  「今年は第6次総合計画の最終年度ですが、『豊かな心を育む』、『にぎわいと産業の創出』、『健やかな暮らし』、『住みよいまち』、『まちづくり人づくり』の基本目標を掲げ、多角的な事業を展開してきました。なかでも、『住みよいまち』の実現に向けた取り組みとして会津縦貫南道路の小沼崎バイパスの開通があり、事業の詳細は後述しますが、これにより交流人口の増加が期待でき、まちづくりの面でも大きく寄与するものと考えています。今後、会津縦貫南道路をはじめとした道路交通網が整備される中、町民の多様化するニーズに応えるべく、第6次総合計画の検証をしながら、第7次総合計画に盛り込んでいく考えです。また、町営住宅の改築事業も進めており、新規移住者の受け皿の確保に努めています。  『豊かな心を育む』取り組みとしては、子どもへの教育に注力しており、町の将来を担う人材の育成という意味でも大きな意義があります。教育の充実によって子育て世代の移住・定住を促進し、少子化対策の方策にもなると考えています。具体的には国の制度に上乗せした保育所の一部無償化や学校給食の無料化を実施しており、今後もより良い教育環境の整備に向けて取り組んでいきます。  『にぎわいと産業の創出』では、商工業の活性化や観光交流事業の推進という形で交流人口の拡大を目指しており、先述した小沼崎バイパスの開通というハード面だけでなく、ソフト面も併せることで相乗効果を狙っていく考えです」  ――先ほどお話のあった会津縦貫南道路の国道118号線小沼崎バイパスが3月3日に開通となります。  「主な効果としては、小沼崎バイパスを利用して鳳坂トンネルを通過することで、須賀川方面へ抜ける時間が以前より短縮できます。冬期間や大雨による通行止め等の心配もないので、通年で安心・安全に走行できる利点もありますし、医療機関への安全な搬送ルートの確保という点でも大きな効果が見込まれます。会津縦貫南道路では最初に開通する区間だけあって注目度も高く、地域住民の皆さまにとっても喜ばしいニュースではないかと見ています。利便性が向上することで観光誘客につながり、交流人口の増加はもちろん、雇用が生まれ、定住人口増加に結び付く可能性もあるので、私個人としても開通は非常に喜ばしい限りです。  会津縦貫南道路は、同じ地域高規格道路の会津縦貫北道路とともに、栃木西部・会津路を結ぶ交通の要です。この会津縦貫道路を縦軸とし、新潟県からいわき市へ延びる国道289号、また、先に開通した鳳坂トンネルを含む国道118号の整備が進めば、この2つの道路が横軸となり、本町は縦軸と横軸が交わる交通の要となり得るので、今後の本町にとって大きな可能性をもたらすという点でも、これを意識した施策が必要になると考えています。  現在は5工区となる下郷田島バイパスの整備に向けて準備しており、田島から栃木西部につながる道路として何らかの方向性を定めてほしいと県に要望しています。将来的に本町を含めた南会津管内に交流人口の増加や、救急医療体制においても大きな効果をもたらすと考えられるので、一日も早い開通を目指して取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「まずは第7次総合計画に向けて、第6次総合計画を具現化して進めることが何より重要であると考えています。先ほども述べた会津縦貫南道路が全線開通すると町内に3つのICが設置され、それに伴って観光地に入る道路、主に国道289号や町道・県道の整備も併せて実施する必要があり、バイパス整備だけでなく周辺道路を含めた道路網の整備は今後も注力していく考えです。  ほかにも、町営住宅の改修事業や教育振興など、町民の住みよさという点において様々な課題があるほか、本町の特色である観光業においても、観光資源の磨き上げが重要な課題であると考えています。それぞれが相互に作用し得るので、住環境整備と教育振興、観光振興を3つの柱に据えて取り組んでいく考えです。  また、町内男女ともに未婚の方の割合が増えており、婚活事業への取り組みが求められています。町内の人口減少にも大きく関わる問題であり対策は必須です。とはいえ、ただ婚活イベント等を実施するのではなく、まずは世話焼き人の方を通して町内の成婚率を上げていきたいと考えています。  今年3月で震災から丸13年を迎えますが、海外から見れば未だ福島県に対して原発事故のイメージが残っている一方で、風化してしまっている部分もあります。本町としてもインバウンド対策が必須になってきた中、あらためて風評被害払拭に向けた取り組みを推し進め、さらなるインバウンドの獲得につなげていきたいと考えています」  

  • 【下郷町】星學町長インタビュー

    【下郷町】星學町長インタビュー

     ほし・まなぶ 1947年1月生まれ。日本大学東北工業高卒。下郷町建設課長、助役、副町長などを経て、2013年9月の町長選で初当選。2017年9月の町長選で再選、2021年9月の町長選で3選を果たした。  ――新型コロナウイルスの町内への影響と対策について。  「当町は大内宿や湯野上温泉に代表されるように県内有数の観光地があり、新型コロナウイルス感染症の影響は他市町村と比較しても大きいものがあります。今年度に入り、観光客数は増加傾向にあったものの、第8波の到来により、観光客数が減少し、地域経済の停滞が懸念されます。一般家庭においても、原油・物価の高騰もあり、収入の減少やそれに伴う個人消費の落ち込みが予想され、経済面・生活面の両方での対応が不可欠と考えています。  そこで町では、昨年11月の第2回臨時議会において、消費の下支えを通じた生活者の支援や地域経済の活性化を図ることを目的に、全ての町民を対象とした町内店舗で利用できる商品券を一人当たり1万円発行する『電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金』の予算を計上しました。さらには、電力・ガス・食料品等の価格高騰対策として、非課税世帯等1世帯当たり5万円を給付する『電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金』の予算を計上し、経済面・生活面の両方から住民の皆さまを支援していく所存です。  また、昨年12月より『Welcome しもごう ご褒美 宿プラン』を実施しており、こちらは対象となる町内の民宿・旅館で宿泊料金税込み5500円以上の利用に対して45%の割引を付与するなど、観光振興にも注力しており、町内経済の活性化を図ってまいります。  町内のワクチン接種率については、昨年12月2日時点で60歳以上の方々の4回目接種率が88・9%、75歳以上の方々については91・8%となっており、県の平均よりも上回っていると見ています。5回目接種も始まっているので、より多くの方々が接種を受けられるよう円滑に進めていく考えです」  ――今年度は第6次下郷町総合計画の3年目となっています。  「新型コロナウイルス感染症の影響により、各種イベントや式典等が中止となっておりますが、新型コロナウイルス感染症が終息し、人の流れが戻ってきたタイミングに備えて、観光資源の磨き上げと新たな素材の創出に取り組んでいきます。全国でも珍しい茅葺の駅舎である湯野上温泉駅は、多くの観光客が訪れることもあり、現在駅前広場の整備を進めており、今後、住民と観光客の交流の場となる観光産業の拠点としての役割が期待されています。また、紅葉シーズンに多くの観光客が訪れる観音沼森林公園においては、屋外で楽しめるイベントの創出と観光客の長期滞在化を目的に、ライトアップ事業を実施し、新型コロナウイルスの感染拡大のさなかにあっても、歩みを止めない、さらに町を発展させていくための施策を講じてまいります。新型コロナウイルス感染症が終息したあかつきには、第6次下郷町総合計画において目標に掲げた、観光入込客数230万人を達成すべく取り組んでまいります」 人口減対策に注力  ――2025年度の開通に向けて整備が進められている国道121号湯野上バイパス事業について、開通効果と今後の展望をうかがいます。  「会津縦貫南道路の開通により、町の空洞化を懸念される方もいらっしゃるかと思いますが、湯野上バイパスの整備事業によって町が活性化するチャンスであると私は捉えています。将来的に会津縦貫南道路、その先の栃木西部・会津南道路が開通することで、関東方面へのアクセスが向上し、観光客の皆さまには下郷町をもっと身近に感じていただける絶好のチャンスになると考えていますし、下郷町を訪れる観光客の増加も期待しています。  また、大内宿はゴールデンウイークや紅葉シーズンになると、国道121号の渋滞が目立つことが長年の課題でしたが、会津縦貫南道路の開通によって生活車両と観光車両が分散し、渋滞緩和につながると見込まれるため、多くの観光客の方々が利用しやすく、今までよりも魅力的な観光地と感じていただけるのではないかと考えています。  今後もさらに既存の観光資源の磨き上げや新たな素材の創出、観光資源のルート化に努め、観光客の皆さまを飽きさせない、また来たいと思っていただけるようなまちづくりを進めていく所存です。  さらに、会津縦貫南道路の開通によるアクセス向上は観光面だけでなく産業面にも大きく寄与するところなので、今後は積極的な企業誘致や工場立地を推し進めるほか、定住人口の増加にも役立てていきたい所存です。いずれにせよ、会津縦貫南道路の開通は本町のみならず会津地域全体に経済効果をもたらすことが期待されるため、早期開通に向けてこれからも国・県と連携を図ってまいります」  ――移住・定住政策は全国どの自治体でも喫緊の課題です。 「本町の人口は1955(昭和30)年の1万4979人をピークに、昨年4月時点で5231人まで減少しており、移住・定住政策は本町におきましても喫緊の課題となっています。本町は少子高齢化が著しく、若い世代の方々の移住・定住を推し進めることがまず重要であり、そのためには安心して子育てできる環境づくりが不可欠であると考えています。その一環として、子育て世代の負担軽減を図るため、子宝祝金や給食費の無償化などに取り組んでいます。  今年度からは、新婚生活応援のために結婚者1組につき10万円の『しもごろー商品券』を給付する結婚祝金事業や、独身男女の婚姻促進のために結婚マッチングシステム会員登録補助事業も実施しており、結婚から子育てへと繋げ、人口増加を目指す施策の充実を図っているところであります。  また、空き家・空き地バンク事業も展開しており、実際に制度を利用して移住した方々も増えてきているので、町内の空き家・空き地を解消するとともに定住人口増加へと繋げていきたい所存です」  ――今後の抱負について。  「まず一番は第6次総合計画の進行が重要で、諸所の課題解決に向けて着実に取り組んでいかなければなりませんし、私のスローガンでもある〝よりそう行政 挑戦する下郷〟の実現を目指します。これまで高齢者を対象にタクシー料金の一部助成や一人暮らしの高齢者の方々の生活の安全確保のために除雪作業の援助を行っているほか、学校給食や保育所の無償化という形で子育て世代への支援も並行しており、多くの町民に寄り添いながら、会津縦貫南道路の早期開通など新規事業の整備によって町内に新たな風を呼び込み、町政発展に努めてまいります」 下郷町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年1月号】

  • 【下郷町】星學町長インタビュー【2024.3】

    経歴  ほし・まなぶ 1947年生まれ。日本大学東北工業高卒。下郷町建設課長、助役、副町長などを経て、2013年9月の町長選で初当選。2017年、2021年の町長選で再選を果たし、現在3期目。  ――昨年5月から新型コロナウイルスの感染法上の位置付けが「5類」になりました。  「町民の生活面については、新型コロナウイルスの感染拡大により、冠婚葬祭の規模縮小や近所間での往来を遠慮するなど、日常生活の変化がうかがえました。昨年5月から5類へ移行したことで、この間、変化した地域生活も回復してきたと感じています。感染症対策も緩和される中、これまで中止となっていた町内の各種行事や会議、県や国への要望活動など4年ぶりに再開されるものが多くあり、少しずつ以前の生活が戻ってきた感覚です。一方で、イベント等が開催される中でも、以前より規模を縮小しての開催だったり、久しぶりの開催により勝手が分からなくなるなど、従来通りにはいかない部分も少なからずあります。  観光面では、観光客の入り込みはほぼコロナ前に戻りつつあり、活気が戻っているのを実感しています。急激な観光客回復に合わせて、外国人観光客の増加も顕著で、昨年はピーク時の約1・5倍に当たるおよそ9万人の外国人が来訪され、過去最高の数字を記録しました。こうした現状もあって、インバウンド対策の重要性を痛感しているところです。  2024年度の事業については、これまで国の臨時交付金を活用していたものが、新年度以降は不透明であるため、観光振興策をはじめ多くの事業において勝負の一年になると考えています。  また、この4年間は商工業の後押しに注力してきましたし、物価高騰策による町民への支援やプレミアム商品券の発行などによって消費拡大に努めてきたので、今年も様々な取り組みを通して地域活性化につなげていきたいと考えています」 会津縦貫南道路に期待  ――第6次下郷町総合計画は4年が経過しました。  「今年は第6次総合計画の最終年度ですが、『豊かな心を育む』、『にぎわいと産業の創出』、『健やかな暮らし』、『住みよいまち』、『まちづくり人づくり』の基本目標を掲げ、多角的な事業を展開してきました。なかでも、『住みよいまち』の実現に向けた取り組みとして会津縦貫南道路の小沼崎バイパスの開通があり、事業の詳細は後述しますが、これにより交流人口の増加が期待でき、まちづくりの面でも大きく寄与するものと考えています。今後、会津縦貫南道路をはじめとした道路交通網が整備される中、町民の多様化するニーズに応えるべく、第6次総合計画の検証をしながら、第7次総合計画に盛り込んでいく考えです。また、町営住宅の改築事業も進めており、新規移住者の受け皿の確保に努めています。  『豊かな心を育む』取り組みとしては、子どもへの教育に注力しており、町の将来を担う人材の育成という意味でも大きな意義があります。教育の充実によって子育て世代の移住・定住を促進し、少子化対策の方策にもなると考えています。具体的には国の制度に上乗せした保育所の一部無償化や学校給食の無料化を実施しており、今後もより良い教育環境の整備に向けて取り組んでいきます。  『にぎわいと産業の創出』では、商工業の活性化や観光交流事業の推進という形で交流人口の拡大を目指しており、先述した小沼崎バイパスの開通というハード面だけでなく、ソフト面も併せることで相乗効果を狙っていく考えです」  ――先ほどお話のあった会津縦貫南道路の国道118号線小沼崎バイパスが3月3日に開通となります。  「主な効果としては、小沼崎バイパスを利用して鳳坂トンネルを通過することで、須賀川方面へ抜ける時間が以前より短縮できます。冬期間や大雨による通行止め等の心配もないので、通年で安心・安全に走行できる利点もありますし、医療機関への安全な搬送ルートの確保という点でも大きな効果が見込まれます。会津縦貫南道路では最初に開通する区間だけあって注目度も高く、地域住民の皆さまにとっても喜ばしいニュースではないかと見ています。利便性が向上することで観光誘客につながり、交流人口の増加はもちろん、雇用が生まれ、定住人口増加に結び付く可能性もあるので、私個人としても開通は非常に喜ばしい限りです。  会津縦貫南道路は、同じ地域高規格道路の会津縦貫北道路とともに、栃木西部・会津路を結ぶ交通の要です。この会津縦貫道路を縦軸とし、新潟県からいわき市へ延びる国道289号、また、先に開通した鳳坂トンネルを含む国道118号の整備が進めば、この2つの道路が横軸となり、本町は縦軸と横軸が交わる交通の要となり得るので、今後の本町にとって大きな可能性をもたらすという点でも、これを意識した施策が必要になると考えています。  現在は5工区となる下郷田島バイパスの整備に向けて準備しており、田島から栃木西部につながる道路として何らかの方向性を定めてほしいと県に要望しています。将来的に本町を含めた南会津管内に交流人口の増加や、救急医療体制においても大きな効果をもたらすと考えられるので、一日も早い開通を目指して取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「まずは第7次総合計画に向けて、第6次総合計画を具現化して進めることが何より重要であると考えています。先ほども述べた会津縦貫南道路が全線開通すると町内に3つのICが設置され、それに伴って観光地に入る道路、主に国道289号や町道・県道の整備も併せて実施する必要があり、バイパス整備だけでなく周辺道路を含めた道路網の整備は今後も注力していく考えです。  ほかにも、町営住宅の改修事業や教育振興など、町民の住みよさという点において様々な課題があるほか、本町の特色である観光業においても、観光資源の磨き上げが重要な課題であると考えています。それぞれが相互に作用し得るので、住環境整備と教育振興、観光振興を3つの柱に据えて取り組んでいく考えです。  また、町内男女ともに未婚の方の割合が増えており、婚活事業への取り組みが求められています。町内の人口減少にも大きく関わる問題であり対策は必須です。とはいえ、ただ婚活イベント等を実施するのではなく、まずは世話焼き人の方を通して町内の成婚率を上げていきたいと考えています。  今年3月で震災から丸13年を迎えますが、海外から見れば未だ福島県に対して原発事故のイメージが残っている一方で、風化してしまっている部分もあります。本町としてもインバウンド対策が必須になってきた中、あらためて風評被害払拭に向けた取り組みを推し進め、さらなるインバウンドの獲得につなげていきたいと考えています」  

  • 【下郷町】星學町長インタビュー

     ほし・まなぶ 1947年1月生まれ。日本大学東北工業高卒。下郷町建設課長、助役、副町長などを経て、2013年9月の町長選で初当選。2017年9月の町長選で再選、2021年9月の町長選で3選を果たした。  ――新型コロナウイルスの町内への影響と対策について。  「当町は大内宿や湯野上温泉に代表されるように県内有数の観光地があり、新型コロナウイルス感染症の影響は他市町村と比較しても大きいものがあります。今年度に入り、観光客数は増加傾向にあったものの、第8波の到来により、観光客数が減少し、地域経済の停滞が懸念されます。一般家庭においても、原油・物価の高騰もあり、収入の減少やそれに伴う個人消費の落ち込みが予想され、経済面・生活面の両方での対応が不可欠と考えています。  そこで町では、昨年11月の第2回臨時議会において、消費の下支えを通じた生活者の支援や地域経済の活性化を図ることを目的に、全ての町民を対象とした町内店舗で利用できる商品券を一人当たり1万円発行する『電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金』の予算を計上しました。さらには、電力・ガス・食料品等の価格高騰対策として、非課税世帯等1世帯当たり5万円を給付する『電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金』の予算を計上し、経済面・生活面の両方から住民の皆さまを支援していく所存です。  また、昨年12月より『Welcome しもごう ご褒美 宿プラン』を実施しており、こちらは対象となる町内の民宿・旅館で宿泊料金税込み5500円以上の利用に対して45%の割引を付与するなど、観光振興にも注力しており、町内経済の活性化を図ってまいります。  町内のワクチン接種率については、昨年12月2日時点で60歳以上の方々の4回目接種率が88・9%、75歳以上の方々については91・8%となっており、県の平均よりも上回っていると見ています。5回目接種も始まっているので、より多くの方々が接種を受けられるよう円滑に進めていく考えです」  ――今年度は第6次下郷町総合計画の3年目となっています。  「新型コロナウイルス感染症の影響により、各種イベントや式典等が中止となっておりますが、新型コロナウイルス感染症が終息し、人の流れが戻ってきたタイミングに備えて、観光資源の磨き上げと新たな素材の創出に取り組んでいきます。全国でも珍しい茅葺の駅舎である湯野上温泉駅は、多くの観光客が訪れることもあり、現在駅前広場の整備を進めており、今後、住民と観光客の交流の場となる観光産業の拠点としての役割が期待されています。また、紅葉シーズンに多くの観光客が訪れる観音沼森林公園においては、屋外で楽しめるイベントの創出と観光客の長期滞在化を目的に、ライトアップ事業を実施し、新型コロナウイルスの感染拡大のさなかにあっても、歩みを止めない、さらに町を発展させていくための施策を講じてまいります。新型コロナウイルス感染症が終息したあかつきには、第6次下郷町総合計画において目標に掲げた、観光入込客数230万人を達成すべく取り組んでまいります」 人口減対策に注力  ――2025年度の開通に向けて整備が進められている国道121号湯野上バイパス事業について、開通効果と今後の展望をうかがいます。  「会津縦貫南道路の開通により、町の空洞化を懸念される方もいらっしゃるかと思いますが、湯野上バイパスの整備事業によって町が活性化するチャンスであると私は捉えています。将来的に会津縦貫南道路、その先の栃木西部・会津南道路が開通することで、関東方面へのアクセスが向上し、観光客の皆さまには下郷町をもっと身近に感じていただける絶好のチャンスになると考えていますし、下郷町を訪れる観光客の増加も期待しています。  また、大内宿はゴールデンウイークや紅葉シーズンになると、国道121号の渋滞が目立つことが長年の課題でしたが、会津縦貫南道路の開通によって生活車両と観光車両が分散し、渋滞緩和につながると見込まれるため、多くの観光客の方々が利用しやすく、今までよりも魅力的な観光地と感じていただけるのではないかと考えています。  今後もさらに既存の観光資源の磨き上げや新たな素材の創出、観光資源のルート化に努め、観光客の皆さまを飽きさせない、また来たいと思っていただけるようなまちづくりを進めていく所存です。  さらに、会津縦貫南道路の開通によるアクセス向上は観光面だけでなく産業面にも大きく寄与するところなので、今後は積極的な企業誘致や工場立地を推し進めるほか、定住人口の増加にも役立てていきたい所存です。いずれにせよ、会津縦貫南道路の開通は本町のみならず会津地域全体に経済効果をもたらすことが期待されるため、早期開通に向けてこれからも国・県と連携を図ってまいります」  ――移住・定住政策は全国どの自治体でも喫緊の課題です。 「本町の人口は1955(昭和30)年の1万4979人をピークに、昨年4月時点で5231人まで減少しており、移住・定住政策は本町におきましても喫緊の課題となっています。本町は少子高齢化が著しく、若い世代の方々の移住・定住を推し進めることがまず重要であり、そのためには安心して子育てできる環境づくりが不可欠であると考えています。その一環として、子育て世代の負担軽減を図るため、子宝祝金や給食費の無償化などに取り組んでいます。  今年度からは、新婚生活応援のために結婚者1組につき10万円の『しもごろー商品券』を給付する結婚祝金事業や、独身男女の婚姻促進のために結婚マッチングシステム会員登録補助事業も実施しており、結婚から子育てへと繋げ、人口増加を目指す施策の充実を図っているところであります。  また、空き家・空き地バンク事業も展開しており、実際に制度を利用して移住した方々も増えてきているので、町内の空き家・空き地を解消するとともに定住人口増加へと繋げていきたい所存です」  ――今後の抱負について。  「まず一番は第6次総合計画の進行が重要で、諸所の課題解決に向けて着実に取り組んでいかなければなりませんし、私のスローガンでもある〝よりそう行政 挑戦する下郷〟の実現を目指します。これまで高齢者を対象にタクシー料金の一部助成や一人暮らしの高齢者の方々の生活の安全確保のために除雪作業の援助を行っているほか、学校給食や保育所の無償化という形で子育て世代への支援も並行しており、多くの町民に寄り添いながら、会津縦貫南道路の早期開通など新規事業の整備によって町内に新たな風を呼び込み、町政発展に努めてまいります」 下郷町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年1月号】