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猪苗代町

  • 地域おこしで移住した長友海夢氏【猪苗代町】【若手新人議員】

    地域おこしで移住した長友海夢氏【猪苗代町】【若手新人議員】

    地域おこしで移住した長友海夢氏  猪苗代町は、6月に町長選が行われ、そこに佐瀬誠氏、佐藤悦男氏の2人が議員を辞職して立候補したほか、二瓶隆雄氏が在職中の2021年4月に亡くなったことで欠員3となっていた。  そのため、町長選と同時日程(6月13日告示、18日投開票)で議員補欠選挙が行われた。町議補選には、長友海夢氏(27)、山内浩二氏(68)、松江克氏(68)の3人が立候補し、無投票での当選が決まった。ちなみに、町長選は前述の佐瀬氏、佐藤氏のほか、二瓶盛一氏、高橋翔氏の新人4人が立候補し、二瓶氏が当選を果たした。  議員任期は来年2月までで、今年6月の町議補選で当選しても、任期は約8カ月しかない。そんな事情もあり、町内では「この時期の補選では、なかなか立候補しようという人が出てこない」と言われていた。  実は、4年前の町長選の際も、現職町議が町長選に立候補したことと、現職議員の死去によって欠員2が生じ、町議補選が行われた。ただ、事前の立候補予定者説明会では出席者がゼロで、告示日当日になっても、「立候補者が出てこず、欠員のままになるのではないか」と囁かれていたほど。最終的には急遽2人が立候補し、無投票で当選が決まったが、なり手不足を嘆く町民は少なくなかった。  今回の町議補選前も、「時期(残任期が短い)的なこともあり、なかなかなり手がいない」と言われていたが、選挙戦にはならなかったものの、欠員3を埋めることができた。  その中で注目されるのが長友氏だ。選挙時は27歳で、県内最年少議員になる。  長友氏はどんな人物なのか。町内複数人に聞いてみたが、「分からない」という人がほとんど。知っている人でも「地域おこし協力隊でこっちに来た人のようだね」という程度で、「それ以上のことは分からない」とのこと。 経歴と移住の経緯 ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供  長友氏に話を聞いた。  1995年8月生まれ。現在28歳(選挙時は27歳)。栃木県出身だが、アルペンスキーをやっており、猪苗代町を練習拠点にしていた。小学5、6年生のときは同町内の小学校に通っていた。  その後、中学校は地元栃木県の学校に通い、高校は日大山形高校、大学は日大体育学科でスキーを続けた。競技者としては大学までで一区切りとし、卒業後は通信系の会社に就職した。  そこで3年ほど働いたが、ひたすら自社の利益だけを求められる環境だったようで、「収入(高収入を得ること)よりも、人や地域の役に立つ仕事がしたい」と思うようになったという。  そんな折、猪苗代町で地域おこし協力隊員を募集していることを知り、「思い入れのある猪苗代町で、地域のために仕事がしたい」と応募、2020年4月から3年間の任期で地域おこし協力隊員(※総務省HPに掲載されている地域おこし協力隊の概要を別掲)になり、移住した。 地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です。  具体的な活動内容や条件、待遇等は各自治体により様々ですが、総務省では、地域おこし協力隊員の活動に要する経費に対して隊員1人あたり480万円を上限として財政措置を行っています。また、任期中は、サポートデスクやOB・OGネットワーク等による日々の相談、隊員向けの各種研修等様々なサポートを受けることができます。任期終了後の起業・事業継承に向けた支援もあります。  令和4年度で6447名の隊員が全国で活動していますが、地方への新たな人の流れを創出するため、総務省ではこの隊員数を令和8年度までに1万人とする目標を掲げており、目標の達成に向けて地域おこし協力隊の取り組みを更に推進することとしています。  長友氏は、その任期中の昨年7月に㈱いなびしを設立した。  「猪苗代湖の水質環境保全事業を行っているのですが、毎年、夏になると大量の『ひし』(水草)が発生します。それを放っておくと腐敗してヘドロになるなど、水質汚濁の原因となってしまいます。そのため、ひしの駆除を行うのですが、それを有効活用する目的で設立したのが『いなびし』です」(長友氏) ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供  社名は、地名(猪苗代)とひしから取ったもの。ひしは湖にとって厄介者で、行政が船を出すなどして駆除し、それを運搬・処分していた。当然そのための費用がかかる。長友氏(いなびし)は、その厄介者を資源にできないかと考え、「猪苗代湖産ひし茶」として商品化した。本誌記者も取材中にいただいたが、味はそば茶と似ている。 猪苗代湖産ひし茶=長友氏提供  「現在は、道の駅猪苗代で販売しているほか、町内のカフェや旅館、アクティビティー施設などで使ってもらっています。クセがなく飲みやすいので、食事、特に和食に合うと思います。商品の売り上げの一部は水質環境保全事業に寄付しています」(同)  今後は海外への販売も視野に入れている。ひしの実は、乾燥するとかなりの硬度になり、古くは忍者が敵の足元に撒き、動きを鈍らせるための道具「マキビシ」の元になっていたとも言われているという。ひしを撒くから「マキビシ」というわけ。  「どの国に、どんな形で売り出すかはまだこれからですが、海外で忍者人気は高いですから、マキビシエピソードと絡めて『ニンジャティー』といった形で売り出せば、海外の人にも興味を持ってもらえるのではないかと考えています」(同)  このほか、郡山市の猪苗代湖畔に畑を借り、ひしの実を肥料化する取り組みも進めている。また、町内新町の空き店舗を借りて事務所兼店舗にしており、ひし茶の製造のほか、教育旅行・ツアー等の体験コンテンツ提供、そば店、そば打ち体験、夏季の日曜日限定のかき氷販売などを行っている。  これら事業は、新しいビジネスへの挑戦や、地域課題の解決に取り組むビジネスプランを表彰する「ふくしまベンチャーアワード2022」で優秀賞に輝いた。 議員になったきっかけ ひしの実  こうした事業を営むかたわら、議員に立候補しようと思ったきっかけは何だったのか。  「会社勤めをしていた時に、取引先企業の担当者が政財界とつながりがあり、私もそうした場に行くことがありました。その時は、議員になろうとかではなく、それまで縁遠かった議員について認識することができました。その後、会社を辞めて、地域おこし協力隊に応募した際、役場の課長さんの面接があったのですが、その時に『ここで、地域のためになる仕事がしたい』、『いずれは起業したいし、議員として地域のために働きたいと考えている』ということを伝えました。今年3月に地域おこし協力隊の任期が終わり、この機会だと思って立候補しました」  長友氏によると、県内他地域では地域おこし協力隊で移住し、後に起業するという事例が、もっと活発に行われているところもあるという。そのため、「議員として、地域おこし協力隊のさらなる活性化に加えて、自分が空き店舗を借りて事務所兼店舗にした経験から、空き家・空き店舗の有効活用、移住促進、統廃合によって空いた学校の有効活用などに取り組みたい」と意気込む。  9月は議員になって初めての定例会が行われる。そこで、一般質問デビューを果たすべく、いま(本誌取材時の8月下旬)は、数ある課題の中から何を取り上げるか、限られた時間で効率よく質問するためにはどうするか等々を思案中という。

  • 【猪苗代町】二瓶盛一町長インタビュー

    【猪苗代町】二瓶盛一町長インタビュー

     にへい・せいいち 1953年生まれ。中央大学経済学部卒。1977年に福島民報社入社。2008年に退社後、ラジオ福島専務取締役、民報印刷代表取締役、道の駅猪苗代駅長などを務める。  ――6月に行われた町長選で初当選を果たされました。選挙戦を振り返っての感想について。 「選挙に出るのは初めての経験で、3月下旬に出馬表明し、3カ月足らずの中で何もかも手探りの状態でのスタートでした。3月初めに前後公前町長が引退を表明され、紆余曲折の末、急遽私に白羽の矢が立ち、町民の方々からも今後の猪苗代町を憂える声をお寄せいただき、町の将来のためにも無投票という事態はあってはならないという思いから出馬を決意しました。 狭いコミュニィーの選挙では、地道に顔と名前を覚えてもらうことが先決なので、町内をくまなく歩いて様々な会合等に顔を出し、自己アピールすることに徹しました。3度目の出馬で知名度が高い候補者もいましたが、後援会の基盤を前後前町長から引き継ぐ形になったこともあり、役員の皆さまや支持者の方々からご指導・ご鞭撻を受けながら選挙戦に臨みました。そうしたこともあって、今回短期決戦で初当選という結果を得られたものと考えています」 ――新聞社やラジオ局勤務に加え、前職は道の駅猪苗代の駅長を務められましたが、これらの経験を行政運営にどのように反映させていく考えですか。 「新聞社とラジオ局での勤務は畑が違うので行政に反映するという点では回答が難しいところですが、新聞社勤務では記者だけでなく管理・営業職も経験し、多くの経験を積んできたと思います。道の駅の勤務においても、スピード感を意識して職務を全うできたと実感しています。ですから、町長として行政運営に携わる立場においても、スピード感と責任感を持って取り組むことを心掛けたいと思っています。緊急の案件に関しては、トップダウン型で即座に実行できるような場合も時には必要になってくると考えます。 JR猪苗代駅を起点として町内や裏磐梯方面を走る磐梯東都バスが9月末で町内から撤退することになり、10月以降の路線バスの運用について現在協議を進めているところで、空白を生まないためにもスピード感と責任感を持ったうえで判断し、利用者の方々にご不便をおかけしないよう対処していきたい」 移住・定住促進に努める ――選挙戦では人口減少対策と産業振興が争点となりました。 「かつては全国で年間100万人を越えていた出生率が現在は80万人にまで低下し、これによって地方都市の少子高齢化が進行しているのは全国どの自治体も直面している問題と言えます。とはいえ、いち町村規模の自治体で出生率の向上や子どもの人口を増加させることはかなりの困難を伴います。であれば、こうした人口減少の中で行政が取り組むべきことは、いまいる町内の子どもたちが元気で明るく過ごせる、そして高齢者の方々に『猪苗代に住んで良かった』と思っていただけるようなまちづくりを進めるべきだと考えています。 私が生まれた1950年代は町の人口が約2万6000人でしたが、現在はその半分まで減少し、当時は人口のおよそ37%が15歳未満の子どもだったのに対して現在は10%程度にまで下がっています。本町では令和3年より出産手当を支給しており、第1子が5万円、第4子までで最大20万円を支給していますし、保育所の無料化に加え来年度からは小中学校の給食費が無料となるなど、福祉の向上に努めています。少子化というとマイナスな印象は拭えませんが、見方を変えれば子育て家庭への支援をより拡充できるという利点があります。全国的にも物価高騰に加えて収入の向上も見込めない中、少しでも子育て世代の費用負担を軽減したいという狙いがあり、それによって町民の皆さまにより良い暮らしを送っていただきたいと思っています。 令和4年度の道の駅猪苗代の来場者数は107万人を越え、売り上げも10億円近くまで到達するなど、本町の基幹産業である観光業が持つポテンシャルは高いと思っています。道の駅の好調の要因は磐梯山と猪苗代湖というロケーションに加えて高速道路を下りてすぐという好立地だと思います。町内には野口英世記念館をはじめ、観光資源がたくさんありますし、『はじまりの美術館』のようにまだまだ知られていない観光資源のピックアップに加えて、観光客の方々が好むようなおしゃれなカフェなどが点在しているので支援していきたい。それがモデルケースとなって地元の商店によい刺激を与えられるような形になればいいと思っています」 ――選挙公約について。 「基幹産業である農業や観光業をはじめ、商業・工業をバランスよく発展させるため情報を収集・分析しつつ、町の豊かな自然・観光資源を生かす知恵を絞りだすほか、JR猪苗代駅周辺の整備、市街地の商店街再生についても地元の商工業者と協議して活路を見いだしていきます。 猪苗代町は『花のまち』『星のまち』『水のまち』『雪のまち』であることをアピールし、魅力を発信し続けることで、町民の方々にはいつまでも住み続けたいと思ってもらえるような、そして町外の方には住んでみたいと思ってもらえるようなまちづくりを進め、移住・定住促進に努めていきます。 また、前町長の任期中にこども園、小学校・中学校の建物・環境整備はほぼ完了しているので、ソフト面に注力し、教育や福祉を充実させていく考えです。特に町の未来を担う子どもたちへの支援や補助は一層重視し、健全な人材育成に取り組んでいく考えです。 少子高齢化が進む中で、子育て環境の整備はもちろん、高齢者の方々に生きがいを見いだしてもらえるような方策を打ち出していくことも不可欠です。今後も様々な社会的な負担の増加が見込まれる中においても、健全な財政を維持しつつ、町民の皆さまが安全・安心を肌で感じられるまちづくりを目指していきます」 ――今後の抱負。 「町内の路線バスの見通しの確保や、統合により廃校となる施設の再利用策など、取り組まなければいけない課題は山積しています。一つ一つ着実に解決し、選挙戦で選んでいただいた方々の期待に応えるためにも、町民の皆さまから信頼を寄せていただける行政運営に努めます。 また、磐梯山周辺の自治体間の連携や耶麻郡町村会、会津地域全域での広域連携も重要になってくるので、本町の強みをアピールするだけでなく、苦手な部分は他自治体と協力・連携していきたい。他自治体の先進的な取り組みを、本町でも積極的に取り入れていきたいと考えています」

  • 地域おこしで移住した長友海夢氏【猪苗代町】【若手新人議員】

    地域おこしで移住した長友海夢氏  猪苗代町は、6月に町長選が行われ、そこに佐瀬誠氏、佐藤悦男氏の2人が議員を辞職して立候補したほか、二瓶隆雄氏が在職中の2021年4月に亡くなったことで欠員3となっていた。  そのため、町長選と同時日程(6月13日告示、18日投開票)で議員補欠選挙が行われた。町議補選には、長友海夢氏(27)、山内浩二氏(68)、松江克氏(68)の3人が立候補し、無投票での当選が決まった。ちなみに、町長選は前述の佐瀬氏、佐藤氏のほか、二瓶盛一氏、高橋翔氏の新人4人が立候補し、二瓶氏が当選を果たした。  議員任期は来年2月までで、今年6月の町議補選で当選しても、任期は約8カ月しかない。そんな事情もあり、町内では「この時期の補選では、なかなか立候補しようという人が出てこない」と言われていた。  実は、4年前の町長選の際も、現職町議が町長選に立候補したことと、現職議員の死去によって欠員2が生じ、町議補選が行われた。ただ、事前の立候補予定者説明会では出席者がゼロで、告示日当日になっても、「立候補者が出てこず、欠員のままになるのではないか」と囁かれていたほど。最終的には急遽2人が立候補し、無投票で当選が決まったが、なり手不足を嘆く町民は少なくなかった。  今回の町議補選前も、「時期(残任期が短い)的なこともあり、なかなかなり手がいない」と言われていたが、選挙戦にはならなかったものの、欠員3を埋めることができた。  その中で注目されるのが長友氏だ。選挙時は27歳で、県内最年少議員になる。  長友氏はどんな人物なのか。町内複数人に聞いてみたが、「分からない」という人がほとんど。知っている人でも「地域おこし協力隊でこっちに来た人のようだね」という程度で、「それ以上のことは分からない」とのこと。 経歴と移住の経緯 ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供  長友氏に話を聞いた。  1995年8月生まれ。現在28歳(選挙時は27歳)。栃木県出身だが、アルペンスキーをやっており、猪苗代町を練習拠点にしていた。小学5、6年生のときは同町内の小学校に通っていた。  その後、中学校は地元栃木県の学校に通い、高校は日大山形高校、大学は日大体育学科でスキーを続けた。競技者としては大学までで一区切りとし、卒業後は通信系の会社に就職した。  そこで3年ほど働いたが、ひたすら自社の利益だけを求められる環境だったようで、「収入(高収入を得ること)よりも、人や地域の役に立つ仕事がしたい」と思うようになったという。  そんな折、猪苗代町で地域おこし協力隊員を募集していることを知り、「思い入れのある猪苗代町で、地域のために仕事がしたい」と応募、2020年4月から3年間の任期で地域おこし協力隊員(※総務省HPに掲載されている地域おこし協力隊の概要を別掲)になり、移住した。 地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です。  具体的な活動内容や条件、待遇等は各自治体により様々ですが、総務省では、地域おこし協力隊員の活動に要する経費に対して隊員1人あたり480万円を上限として財政措置を行っています。また、任期中は、サポートデスクやOB・OGネットワーク等による日々の相談、隊員向けの各種研修等様々なサポートを受けることができます。任期終了後の起業・事業継承に向けた支援もあります。  令和4年度で6447名の隊員が全国で活動していますが、地方への新たな人の流れを創出するため、総務省ではこの隊員数を令和8年度までに1万人とする目標を掲げており、目標の達成に向けて地域おこし協力隊の取り組みを更に推進することとしています。  長友氏は、その任期中の昨年7月に㈱いなびしを設立した。  「猪苗代湖の水質環境保全事業を行っているのですが、毎年、夏になると大量の『ひし』(水草)が発生します。それを放っておくと腐敗してヘドロになるなど、水質汚濁の原因となってしまいます。そのため、ひしの駆除を行うのですが、それを有効活用する目的で設立したのが『いなびし』です」(長友氏) ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供  社名は、地名(猪苗代)とひしから取ったもの。ひしは湖にとって厄介者で、行政が船を出すなどして駆除し、それを運搬・処分していた。当然そのための費用がかかる。長友氏(いなびし)は、その厄介者を資源にできないかと考え、「猪苗代湖産ひし茶」として商品化した。本誌記者も取材中にいただいたが、味はそば茶と似ている。 猪苗代湖産ひし茶=長友氏提供  「現在は、道の駅猪苗代で販売しているほか、町内のカフェや旅館、アクティビティー施設などで使ってもらっています。クセがなく飲みやすいので、食事、特に和食に合うと思います。商品の売り上げの一部は水質環境保全事業に寄付しています」(同)  今後は海外への販売も視野に入れている。ひしの実は、乾燥するとかなりの硬度になり、古くは忍者が敵の足元に撒き、動きを鈍らせるための道具「マキビシ」の元になっていたとも言われているという。ひしを撒くから「マキビシ」というわけ。  「どの国に、どんな形で売り出すかはまだこれからですが、海外で忍者人気は高いですから、マキビシエピソードと絡めて『ニンジャティー』といった形で売り出せば、海外の人にも興味を持ってもらえるのではないかと考えています」(同)  このほか、郡山市の猪苗代湖畔に畑を借り、ひしの実を肥料化する取り組みも進めている。また、町内新町の空き店舗を借りて事務所兼店舗にしており、ひし茶の製造のほか、教育旅行・ツアー等の体験コンテンツ提供、そば店、そば打ち体験、夏季の日曜日限定のかき氷販売などを行っている。  これら事業は、新しいビジネスへの挑戦や、地域課題の解決に取り組むビジネスプランを表彰する「ふくしまベンチャーアワード2022」で優秀賞に輝いた。 議員になったきっかけ ひしの実  こうした事業を営むかたわら、議員に立候補しようと思ったきっかけは何だったのか。  「会社勤めをしていた時に、取引先企業の担当者が政財界とつながりがあり、私もそうした場に行くことがありました。その時は、議員になろうとかではなく、それまで縁遠かった議員について認識することができました。その後、会社を辞めて、地域おこし協力隊に応募した際、役場の課長さんの面接があったのですが、その時に『ここで、地域のためになる仕事がしたい』、『いずれは起業したいし、議員として地域のために働きたいと考えている』ということを伝えました。今年3月に地域おこし協力隊の任期が終わり、この機会だと思って立候補しました」  長友氏によると、県内他地域では地域おこし協力隊で移住し、後に起業するという事例が、もっと活発に行われているところもあるという。そのため、「議員として、地域おこし協力隊のさらなる活性化に加えて、自分が空き店舗を借りて事務所兼店舗にした経験から、空き家・空き店舗の有効活用、移住促進、統廃合によって空いた学校の有効活用などに取り組みたい」と意気込む。  9月は議員になって初めての定例会が行われる。そこで、一般質問デビューを果たすべく、いま(本誌取材時の8月下旬)は、数ある課題の中から何を取り上げるか、限られた時間で効率よく質問するためにはどうするか等々を思案中という。

  • 【猪苗代町】二瓶盛一町長インタビュー

     にへい・せいいち 1953年生まれ。中央大学経済学部卒。1977年に福島民報社入社。2008年に退社後、ラジオ福島専務取締役、民報印刷代表取締役、道の駅猪苗代駅長などを務める。  ――6月に行われた町長選で初当選を果たされました。選挙戦を振り返っての感想について。 「選挙に出るのは初めての経験で、3月下旬に出馬表明し、3カ月足らずの中で何もかも手探りの状態でのスタートでした。3月初めに前後公前町長が引退を表明され、紆余曲折の末、急遽私に白羽の矢が立ち、町民の方々からも今後の猪苗代町を憂える声をお寄せいただき、町の将来のためにも無投票という事態はあってはならないという思いから出馬を決意しました。 狭いコミュニィーの選挙では、地道に顔と名前を覚えてもらうことが先決なので、町内をくまなく歩いて様々な会合等に顔を出し、自己アピールすることに徹しました。3度目の出馬で知名度が高い候補者もいましたが、後援会の基盤を前後前町長から引き継ぐ形になったこともあり、役員の皆さまや支持者の方々からご指導・ご鞭撻を受けながら選挙戦に臨みました。そうしたこともあって、今回短期決戦で初当選という結果を得られたものと考えています」 ――新聞社やラジオ局勤務に加え、前職は道の駅猪苗代の駅長を務められましたが、これらの経験を行政運営にどのように反映させていく考えですか。 「新聞社とラジオ局での勤務は畑が違うので行政に反映するという点では回答が難しいところですが、新聞社勤務では記者だけでなく管理・営業職も経験し、多くの経験を積んできたと思います。道の駅の勤務においても、スピード感を意識して職務を全うできたと実感しています。ですから、町長として行政運営に携わる立場においても、スピード感と責任感を持って取り組むことを心掛けたいと思っています。緊急の案件に関しては、トップダウン型で即座に実行できるような場合も時には必要になってくると考えます。 JR猪苗代駅を起点として町内や裏磐梯方面を走る磐梯東都バスが9月末で町内から撤退することになり、10月以降の路線バスの運用について現在協議を進めているところで、空白を生まないためにもスピード感と責任感を持ったうえで判断し、利用者の方々にご不便をおかけしないよう対処していきたい」 移住・定住促進に努める ――選挙戦では人口減少対策と産業振興が争点となりました。 「かつては全国で年間100万人を越えていた出生率が現在は80万人にまで低下し、これによって地方都市の少子高齢化が進行しているのは全国どの自治体も直面している問題と言えます。とはいえ、いち町村規模の自治体で出生率の向上や子どもの人口を増加させることはかなりの困難を伴います。であれば、こうした人口減少の中で行政が取り組むべきことは、いまいる町内の子どもたちが元気で明るく過ごせる、そして高齢者の方々に『猪苗代に住んで良かった』と思っていただけるようなまちづくりを進めるべきだと考えています。 私が生まれた1950年代は町の人口が約2万6000人でしたが、現在はその半分まで減少し、当時は人口のおよそ37%が15歳未満の子どもだったのに対して現在は10%程度にまで下がっています。本町では令和3年より出産手当を支給しており、第1子が5万円、第4子までで最大20万円を支給していますし、保育所の無料化に加え来年度からは小中学校の給食費が無料となるなど、福祉の向上に努めています。少子化というとマイナスな印象は拭えませんが、見方を変えれば子育て家庭への支援をより拡充できるという利点があります。全国的にも物価高騰に加えて収入の向上も見込めない中、少しでも子育て世代の費用負担を軽減したいという狙いがあり、それによって町民の皆さまにより良い暮らしを送っていただきたいと思っています。 令和4年度の道の駅猪苗代の来場者数は107万人を越え、売り上げも10億円近くまで到達するなど、本町の基幹産業である観光業が持つポテンシャルは高いと思っています。道の駅の好調の要因は磐梯山と猪苗代湖というロケーションに加えて高速道路を下りてすぐという好立地だと思います。町内には野口英世記念館をはじめ、観光資源がたくさんありますし、『はじまりの美術館』のようにまだまだ知られていない観光資源のピックアップに加えて、観光客の方々が好むようなおしゃれなカフェなどが点在しているので支援していきたい。それがモデルケースとなって地元の商店によい刺激を与えられるような形になればいいと思っています」 ――選挙公約について。 「基幹産業である農業や観光業をはじめ、商業・工業をバランスよく発展させるため情報を収集・分析しつつ、町の豊かな自然・観光資源を生かす知恵を絞りだすほか、JR猪苗代駅周辺の整備、市街地の商店街再生についても地元の商工業者と協議して活路を見いだしていきます。 猪苗代町は『花のまち』『星のまち』『水のまち』『雪のまち』であることをアピールし、魅力を発信し続けることで、町民の方々にはいつまでも住み続けたいと思ってもらえるような、そして町外の方には住んでみたいと思ってもらえるようなまちづくりを進め、移住・定住促進に努めていきます。 また、前町長の任期中にこども園、小学校・中学校の建物・環境整備はほぼ完了しているので、ソフト面に注力し、教育や福祉を充実させていく考えです。特に町の未来を担う子どもたちへの支援や補助は一層重視し、健全な人材育成に取り組んでいく考えです。 少子高齢化が進む中で、子育て環境の整備はもちろん、高齢者の方々に生きがいを見いだしてもらえるような方策を打ち出していくことも不可欠です。今後も様々な社会的な負担の増加が見込まれる中においても、健全な財政を維持しつつ、町民の皆さまが安全・安心を肌で感じられるまちづくりを目指していきます」 ――今後の抱負。 「町内の路線バスの見通しの確保や、統合により廃校となる施設の再利用策など、取り組まなければいけない課題は山積しています。一つ一つ着実に解決し、選挙戦で選んでいただいた方々の期待に応えるためにも、町民の皆さまから信頼を寄せていただける行政運営に努めます。 また、磐梯山周辺の自治体間の連携や耶麻郡町村会、会津地域全域での広域連携も重要になってくるので、本町の強みをアピールするだけでなく、苦手な部分は他自治体と協力・連携していきたい。他自治体の先進的な取り組みを、本町でも積極的に取り入れていきたいと考えています」