【田村市】白石高司市長インタビュー【2025.5】

【田村市】白石高司市長インタビュー【2025.5】

経歴

しらいし・たかし 1960年1月生まれ。田村市(旧船引町)出身、上武大商学部卒。同市議1期を経て2021年4月の同市長選で初当選。今年3月に再選。

 ――3月の市長選では無投票で再選されました。率直なご感想を聞かせてください。

 「4年前の初当選の時とは違い、今回は2期目ということで、その責任の重さを改めて強く感じています。今後4年間、田村市のために様々なことに取り組んでいく上で非常に身が引き締まる思いです」

 ――1期目を振り返って、特に印象に残っていることはありますか。

 「1期目は、新型コロナウイルス感染症が流行する中でスタートしました。私が最も大事にしていたのは、市民の皆様と直接対話をし、市民の皆様の声を聞きながら市政を進めていくことでした。それが最初の2年間は感染症対策のために制約を受けました。任期の後半になってようやく多くの市民の方々との懇談会などを開催することができ、市政への率直な評価をいただいております。

 おかげさまで、1期目に掲げた公約については、ほぼ全て着手することができました。ただ、コロナ禍の影響もあり、進捗状況については、まだ十分とは言えない部分もあります。これから本格的に事業を進めて、公約の実現に向けてさらに前進していきたいと考えています。そのため、2期目のテーマは『前進』とさせていただきました」

 ――1期目の公約の中で、特に実現して良かったと感じるものはありますか。

 「市民の皆様の声をお聞きするための体制づくりができたことは、大きな成果だったと感じています。具体的には、危機管理部門の設置や、市民の声をお聞きするための広報広聴係の設置、『市民の声ポスト』の設置などです。これにより、市民の皆様がいつでも市政に対して意見や要望を伝えることができるようになりました」

 ――2期目の公約についてお聞かせください。

 「2期目の公約で特に力を入れているのは、東日本大震災からの復興と、市民の皆様の安全・安心を守るための危機管理体制の強化です。 震災からの復興については、政府の復興に関するレビューなどを通して、震災の記憶を風化させてはならないという思いを強くしました。 2期目の公約の一丁目一番地に『東日本大震災、福島原子力災害からの復興』を掲げ、復興への強い決意を示しました。

 危機管理体制の強化については、田村市内には100の行政区がありますが、全ての行政区に自主防災組織を設置することを目指しています。自主防災組織ができた地区には、防災倉庫を設置し、地域の実情に合わせた防災用品を備蓄しています。今後は、自主防災組織による避難訓練などを実施し、市民全体の防災意識向上と、災害発生時の迅速な避難体制の構築を目指します 。

 その他には、全国的に凶悪犯罪が発生し県内の犯罪件数も増加していることから、地域全体の防犯体制を強化するため、市内に防犯カメラの設置を推進することも、公約に加えました。これは、長野駅前で発生した殺傷事件の犯人逮捕に、防犯カメラが大きく貢献したという事例を受けたものです。防犯カメラを面的に設置することで、地域の防犯性を高め、市民の皆様が安全に暮らせるまちづくりを進めます」

 ――たむら市民病院の建設も、田村市にとって重要なプロジェクトです。開院で何が変わりますか。

 「田村地方は高齢化が急速に進み医療需要が高まる中、医師の高齢化や医療スタッフの不足で診療所の廃止や入院病床の休床が進行しています。新病院開院で田村市民はもとより、周辺地域にお住まいの方に向けて医療サービスを安定的に提供できます。たむら市民病院は、市民の皆様に高度な医療を提供するとともに、地域医療の拠点として、田村市だけでなく周辺地域の皆様の健康を支える役割を担います。救急医療体制の充実や専門性の高い医療を提供することで、市民の皆様が安心して暮らせるまちづくりを進めます」

 ――田村市独自の取り組みとして、子どもの学力向上を図る『東大10人構想』も注目されています。構想の進捗状況はいかがでしょうか。

 「2022年度に構想実現に向けた施策を立ち上げ、教職員の指導力向上に向けた研修と児童生徒の意欲を育てる事業を独自に行ってきました。教職員への働きかけは、例えば先進自治体への教員研修、学校教育指導委員による授業研究会、田村市独自の小学5年生、中学2年生向けの『共通テスト』などがあります。教職員とPTA代表、市職員が共に学力向上について語り合うラウンドテーブルも重要です。

 児童生徒に向けては、一人ひとりの視野を広げ、よりレベルの高い学びに触れる機会の設定に重きを置いています。英会話力を高めるサマーイングリッシュキャンプや使える英語を学ぶフィリピン・セブ島での語学研修、東京大学の教授から直接講義を受けて研究の先端に触れてもらう『東大見学・体験学習』などがあります。

 『東大10人構想』は田村市の子どもたちの学力向上を図り、結果として進学校とされる高校への入学者を増やすことを目指す取り組みです。何が起こるか分からない未来を生きる子どもたちに学力をはじめとして難関にチャレンジする力を付けてもらい、子どもたちの選択肢を広げたいという思いがあります。上を見た時に東京大学をはじめとする難関大学への合格があり、『東大10人構想』と銘打っています。

 今年1月には、県立中学校の入学試験が行われ、9人が出願するなど難関にチャレンジしようとする意欲が高まってきており、構想の実現に向けて着実に歩みを進めています。今年度は新たに授業推進員(Class Co-Worker Teacher)を小中学校に配置し、学習内容の理解が早い児童生徒がより高度な問題に取り組み、難問にも意欲的にチャレンジしていこうとする機運を高めていきたいです」

 ――田村市は、健康長寿のまちづくりにも力を入れています。

 「田村市は『健康・美・長寿推進協議会』に加盟し、健康長寿のまちづくりを積極的に進めています。 日本は世界有数の長寿国であり、大阪・関西万博においても『健康』は重要なテーマの一つです。田村市はエゴマなどの健康食材を活用し、市民の皆様が健康で長生きできるまちづくりに取り組むとともに、万博を訪れる人々へのPRも行い、市内への誘客を目指します」

 ――最後に、今後の抱負をお聞かせください。

 「田村市の持つ魅力を最大限に生かし、市民の皆様が笑顔で暮らせる、持続可能なまちづくりを進めていきたいと考えています。福島の復興、そして地方創生のモデルとなるような、田村市独自の取り組みを全国に発信していくことが目標です」

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