しゅどう・ごうたろう 1965年2月生まれ。茨城大人文学部卒。民間企業を経て、1993年4月に町採用。地域づくり推進課長、総務課長などを歴任し、2023年4月から副町長を務めた。前町長逮捕・辞職を受けた今年6月の町長選で初当選。
――前町長の逮捕と辞職に伴う町長選で、初当選しました。
「4月に現職の町長が官製談合防止法違反容疑で逮捕され、私は副町長を辞して6月の町長選に立候補しました。前町長逮捕直後、職務代理者として町政執行を預かる中、町民の皆様から憤りと失望の声をいただきました。副町長の私にも疑いの目を向ける方もいました。『汚職を知らなかったとしても副町長が知らなかったでは済まされない』との声もあり、責任を感じています。
副町長だった私自身が汚職事件の原因の究明と再発防止に向けて町政を担うことが責任の取り方の一つではないかと思い、私の考えを皆様に説明し、選挙で町民の負託を受けることができれば、その時は町トップの責任を果たしたいと立候補しました。
公約は二つ掲げました。一つは町政の信頼回復。もう一つは、町民の皆様の自信と誇りの回復です。入札不正が事件の発端です。原因究明を図り再発防止に向けて取り組みを進めていくこと、行政情報を積極的に公開し、透明性を確保することを町民の皆様に約束しました。
町長が新しくなっただけで信頼が回復できるとは思っていません。町民の皆様が自信や誇りを取り戻すのもすぐには難しいと思います。十分に時間をかけながら丁寧に私自身が町民にお話しをさせていただく中で二つの公約を果たせればと考えています」
――町営認定こども園を整備しています。
「認定こども園の建築工事は、事件後、入札が一時停止しました。当初は12月開園予定でしたが、来年4月の開園に向けてハード面の整備が進んでいます。町内に2カ所ある保育所を新しい認定こども園に統合する形となります。保育と教育の機能を併せもった施設になるので、保育教諭を充実させきめ細やかな保育・幼児教育環境が提供できるようソフト面の準備も進めています」
――子ども子育て支援はいかがでしょうか。
「これまでも町は、さまざまな給付型補助金を給付してきました。今後も子育て世帯への経済支援を手厚くしていきます。
多くの可能性を秘める子どもたちにとって最も大切なことは、数多くの選択肢が周囲にある環境です。その環境を整えることが大人たちの責任と考えています。
少子化で、学校現場ではスポーツや文化活動に取り組む際に、グループやチームが組めなくなっています。人数がある程度必要なクラブ活動はできなくなってしまう。子どもたちにとって非常に不幸な状況を大人たちが少しでも解消しなければなりません。
一方で石川町では、保護者や指導者の皆様のおかげで、地域の子どもを集めてチームをつくり、活動している団体が多くあります。スポーツでは剣道・柔道、ソフトボール、ミニバスケットボール、ハンドボール、サッカーにスケート。文化活動ではジュニアオーケストラがあります。
全国でクラブ活動の地域移行が進められていますが、石川町にはその土壌が既にあります。町は子どもたちにスポーツや文化活動の機会を提供している各種団体を支援していかねばなりません。クラブ活動が活発になれば、石川町だけではなく、町外からも参加希望者が増え、広域的な盛り上がりにつながります。今後は各種団体の方と意見交換し、施策に反映させていきます」
――道の駅を整備しています。
「造成工事と建築工事の実施設計を行っており、最後の詰めの段階です。造成工事後、来年度には建築工事を始め、2025年4月オープンを目指しています。道の駅は物を売る場に留まらせず、四つの機能を持たせたいです。一つ目は、地元農家やサービス業、小売業などあらゆる産業振興につなげ、従事する方々の所得を増加させる機会に。二つ目は、町のゲートウェイ機能を持たせ町内観光に波及させたいです。三つ目は交流の場です。イベントなどを通して町内外の方々が触れ合う場にしたいです。四つ目は『情報発信基地』の機能です。観光情報だけでなく、町の子育て支援情報や民間からの情報も発信し、石川町の全ての情報を道の駅から発信できるようにして道の駅を拠点に位置づけたいです」
――その他の取り組みについて。
「選挙戦では、企業の振興と誘致を訴えてきました。今年4月から5年間に及ぶ第6次総合計画後期基本計画が始まりました。計画を作る際に町民に町への満足度を問うアンケートを行いました。一番満足度が低かったのが雇用の創出や企業誘致に関する項目です。町民が一番不満に感じている企業誘致に注力していきます。私自身、町職員時代に企業誘致を担当し、企業訪問を重ねた経験があります。町長を託された今、私自身が直接企業に訪問するトップセールスを進めていきます。
町民の皆様に自信と誇りを取り戻してもらうために、私は『町民第一主義』を掲げています。民間企業では、顧客のニーズや利益を最優先に行動する原理があります。同じように町政では、町民のニーズと利益を最優先に行動することが町の原理と捉え、何事にも取り組んでいきます」
――今後の抱負について。
「汚職事件で失墜した信頼の回復です。今年度内に再発防止策を打ち出し、二度とこんな事件が起きないように町民の皆様に覚悟を持って説明していきます。今年4月には一般社団法人『地域商社SAKURAIZE(サクライズ)』が発足しました。役場内にあった旧石川町観光物産協会をベースに、町が出資し、職員を派遣して一般社団法人としての活動をスタートしました。地域商社という方式が産業振興の鍵になります。
町内の事業者が作った商品やサービスを国内外に一挙に売り込むことができます。サクライズは『1円でも多く地元の事業者に還元していく』との考えを根底に持っています。売り込みを地域商社に任せることで、一元的に市場調査ができます。市場の動向を踏まえて地元の事業者と一緒になって、町外の顧客が求める商品・サービスを開発できます。
サクライズでは自然に優しい植物由来の成分を使用したボタニカルトレーのプロデュースに、町内に工場がある製造業の㈱カネバン(東京都青梅市)と共に携わりました。主にプラスチックの金型を製造している同社が、原料に米ぬかを使用し環境に配慮し焼却も可能なトレーを製造しました。技術がある地元ゆかりの製造業にサクライズが目をつけて商品開発し、まずはPR用に野木沢小学校の子どもたちにトレーを贈呈しました。今後はこのトレーを売り込んでいきます。地域商社の好事例です。町はサクライズと共に産業振興に努めていきます」