【飯舘村】杉岡誠村長インタビュー【2024】

経歴

すぎおか・まこと 1976年生まれ。日大理工学部卒。東京工業大大学院理工学研究科博士前期課程修了。2001年に飯舘村役場に入庁。農政第一係長などを経て、20年10月の村長選で初当選。今年10月の村長選で再選。

 ――10月の村長選では新人の対立候補を抑えて再選を果たしました。まずは1期目を振り返って。

 「選挙戦を通して村民の皆さんとさまざまな話をすることで、4年間を総括でき、ご理解・ご協力いただきながら村政運営できたことを実感し、感謝の気持ちを抱きました。

 1期4年間のうち2年半はコロナ対策に追われ、村民の命と健康を守るという信念のもと、全力で対策を講じてきました。

 そうした中、地道に取り組んできた企業誘致・産業創生が目に見える形で成果として表れ始めています。

 今年9月に飯舘バイオパートナーズ㈱による木質バイオマス発電が本格始動し、来年には㈱ハシドラッグのドラッグストアが村内にオープンする予定です。長泥地区では、汚泥などをリサイクル化して肥料をつくるイイタテバイオテック㈱の進出が決まり、来春稼働に向けて準備が進められています。

 3月にはバドミントンのガットを製造しているCRSスポーツ工業㈱が旧草野小学校の一部と、飯樋町の空き工場を活用し、2工場を開設しました。現地採用社員の中には草野小学校の児童だった方もいます。現在整備中の産業団地が完成すればさらなる企業進出が期待できます。併せて高齢化を見据えた訪問販売、訪問医療などの施策も進めてきました」

 ――村長選ではどのような公約を掲げたのでしょうか。

 「立候補するに当たって『手と手を取り合ってさらにワクワクするふるさとへ』というスローガンを掲げました。村民と協力しながら1期目で取り組んできた事業をさらに発展させていきたいという思いを込めています。公約としては①『生きがいとなりわいの力強い再生と発展』をさらに深めます、②『健康で生き生きと楽しく暮らせる〝村〟』を具体化します、③『情報通信技術(ICT)による新たな〝村〟』を目指します、④『ふるさと資源のフル活用』をさらに推進します、⑤『生き生きとした学びの場を育む』施策をさらに深めます――の5つを打ち出しました」

 ――2期目では具体的にどのような事業に取り組んでいきたいと考えていますか。

 「まずは先程もお話しした産業団地の早期整備です。深谷・小宮両地区で計画しており、深谷地区では相馬農業高等学校飯舘校跡地の県有地を譲渡してもらえるよう、県と協議を進めています。農業の担い手を育てる場所から、新たな働き手を受け入れる場所として、再生していきたいと思います。帰還困難区域にも企業が進出したのを踏まえ、村全体の立地条件を周知し、企業誘致を推進していきたいと考えています。

 そのために必要となるのが道路整備です。国道399号の道路改良に加え、東北中央道霊山飯舘インターチェンジからのアクセス道路を整備してほしいと国などに要望しています。現行の道路では迂回しないと村に来れなくなっているからです。

 それと並行して、高齢化を見据えた対策を打ち出していきたいとも考えています。現在の村内居住者は約1500人で、うち6割が高齢者です。移動手段がない方も多いことを考慮し、移動訪問販売や訪問診療、かかりつけ医への相談体制構築などに積極的に取り組んできました。ただ、訪問介護の事業者が村にありません。高齢化率が高く訪問介護の需要は確実にあると思うので、村として誘致を進めていきます。

 あとは住環境の整備です。村内の既存の空き家の多くは解体されてさら地になっています。一方で独居高齢者世帯が相当数あり、新しく定住したいという方の賃貸住宅需要もあるので、それぞれ対策を講じなければなりません。1期目は働く環境を整備するところから動きましたが、2期目は福祉・定住・人材確保・子育てなどを一気に進めます。1つの事業で複数の効果が見込めるということを整理・発信したうえで着手していきたいと思います」

 ――村内の長泥地区は帰還困難区域に指定されていますが、今後の再生の見通しについて。

 「帰還困難区域に関しては、『村全体の再生と発展のために帰還困難区域の早期解消に取り組みます』と選挙戦で訴えさせていただきました。帰還困難区域の解消は一つの手段であり、その先の未来をきっちり作っていくことが大事です。いま地元の皆さんが避難先から通って草刈りなどを一生懸命やられているので、その意欲を大事にさせていただきながら、行政として一緒に再生・発展に取り組んでいきたいと考えています」

 ――9月に飯舘バイオパートナーズ㈱による木質バイオマス発電施設が稼働を開始しました。

 「村の公募により事業者が選定され、国との交渉を経て、環境省の仮設減容化施設の跡地を事業実施場所として活用することになりました。山が手入れされることで里山再生が図られ、二酸化炭素排出量削減につながるほか、村経済・広域経済の活性化、冬季間の熱供給を利用した未来志向型農業の振興などのメリットがあると考えています。

 本村では2022年3月14日、温室効果ガス排出量実質ゼロを目指して『ゼロカーボンビレッジいいたて』を宣言しました。同宣言では、住民福祉の向上に資する再生可能エネルギーを村が推進するという考えが示されています。今後も村・村民・村に関わる人にとって、メリットがある再生可能エネルギー事業を推進していきたいと考えています」

村民の幸せが村の使命

 ――2期目への抱負を。

 「コロナ禍の中で国や県、さまざまな市町村と連携・信頼関係を築くことができました。同じ相馬地方にある相馬市、南相馬市、新地町とはもともと結びつきが強いですし、国道399号が通る田村市、浪江町、川内村、葛尾村とは、同国道の愛称を冠した『あぶくまロマンチック街道沿線自治体連絡協議会』を組織して、文化交流を進めています。福島市を中心としたふくしま田園中枢都市圏にも入り連携しています。

 本村の村民の9割はこれら相双地域、中通りの自治体に住んでいます。村民といっても村内に居住している人ばかりではありません。1期目では村民を受け入れていただいている自治体と連携し、互いに高め合ってきたので、2期目ではその関係をさらに深めていきたいと思います。

 『村民が幸せになることが自治体としての使命』という基本に立ち戻りたいです。被災自治体なので、すぐに復興という言葉を使いがちですが、すべての施策・事業は村民の幸せのためになされるべきです。

 現在、第7次総合振興計画策定に着手したところですので、しっかり議論を進め、村民とともに未来に向けた村政運営に努めていきたいと思います」

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