手厚すぎる公務員「病気休暇制度」

手厚すぎる公務員「病気休暇制度」

 本誌1月号に「福島市職員が病休中にゴルフ大会出場 『高ストレス者多数』を裏付ける!?」という記事を掲載した。同記事では、2つの視点からこの問題を詳報したが、そのうちの1点について、別な角度から考えてみたい。

病休→職場復帰→短期間で再度病休も可能

病気休暇制度〝悪用〟があった福島市
病気休暇制度〝悪用〟があった福島市

 福島市は職員が病気休暇中にゴルフ大会に出場したとして、昨年11月28日付で20代女性職員を戒告の懲戒処分にした。市によると、ゴルフ大会の成績が新聞に掲載され、ほかの職員がそれを見つけたことがきっかけで発覚したという。

 同記事で本誌は2つの視点から問題を読み解いた。

 1つは、本誌昨年11月号「木幡・福島市長の暴君化を恐れる職員」という記事との関連性。同記事は、市職員から木幡市長の暴君ぶりを指摘する声が寄せられたことがきっかけだった。関連取材では暴言のようなパワハラの事実は掴めなかったが、市職員には高ストレス者の割合が高いことが分かった。今回のケースでは、病気休暇していた職員は、入院をしていたり、安静にしていなければならない病気ではなかったことになる。むしろ、体力が有り余っていたから、ゴルフ大会に出場したと考えることができる。そうなると、やはり精神的な部分が原因ということになり、そういった職員が少なくないことを思わされる――ということ。

 もう1つは、公務員の高待遇についてで、これがこの稿の本題につながる。

 国家公務員の病気休暇は「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」と「人事院規則」で定められ、最大90日間取得できる。その間の給料は全額支給される。

 多くの自治体はこれに倣っており、同様の制度を設けているが、条例により、それ以上の病気休暇を認めているところもある。

 例えば福島県は「職員の勤務時間、休暇等に関する条例」、同条例に基づく「職員の勤務時間、休暇等に関する規則」で、「結核性疾患、生活習慣病、精神科疾患及び特定疾患」は最大180日の病気休暇を取得できる、とされている。それ以外の疾病は90日間。当然、この間の給料は全額支給される。

 一方で、厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によると、病気休暇を導入している民間企業は21・9%にとどまっている。ただし、病気休暇制度がある企業でも、その間の給料が支給されるとは限らない。これは企業側の判断に委ねられる。その詳細は前述の厚労省調査では明らかにされていないが、別の調査によると、全額支給が受けられるのは半数以下。すなわち、公務員と同程度の病気休暇制度がある企業は21・9%の半数以下(10%弱?)ということになる。

 そもそも、病気休暇制度があったとしても、「会社や部署の仲間に申し訳ない」といった理由から、なかなかフル活用できないというケースも少なくないと思われる。そういった点からしても、公務員は民間企業と比べ、手厚い病気休暇制度になっているのだ。

 福島市のケースはそれを悪用した形になるわけだから批判は免れない。ちなみに、昨年12月の取材時、インターネット検索で「福島市職員」と入力すると、セカンドワードトップに「ゴルフ」と出てきた。いまも、トップではないが、上位に「ゴルフ」と出る。それだけ、この問題が世間の注目を集めたということ。

どこの自治体にもいる

 ここまでが1月号記事で指摘したことのおさらいに補足を加えたものだが、その後、本誌が知人の役場関係者や議員などに聞き込みをしたところ、「ウチの町(村)には、病気を理由に長期間休んでいる職員がいる」といった情報がすぐに集まった。ここでは特定自治体の事例にまでは踏み込まないが、どこの役所・役場にも1人くらいはそういう職員がいるようだ。

 そういった職員の扱いはどうなるのか。まず、病気休暇は1つの病気やケガにつき取得できる。つまり、とある病気を理由に病気休暇を取得し、その期間が明けて職場復帰しても、その後、別の病気でまだ病気休暇を取得する――ということが可能なのだ。当然、申請には診断書などが必要になるが、極端な話、病気休暇→職場復帰→1週間後に再度病気休暇ということも起こり得る。

 実際、「ウチの役場にはそれに近い職員がいた。病気休暇で休んで、復帰したと思ったら、1カ月とか半月とかで、また病気休暇に入るという具合に」(県内自治体の議員)との情報も得られた。

 一方で、病気休暇の期間を超えても職場復帰できないケースもある。その場合は休職して療養することになる。

 国家公務員は、国家公務員法や人事院規則の「職員の身分保障」で定められ、地方公務員もこれに準ずる形で定められている。病気による休職は最大3年間適用される。

 病気休職中は、1年間は給料の80%が支払われ、2年目以降は無給になるが、共済組合の傷病手当を活用でき、おおよそ給料の3分の2が支給される。つまり、休職制度の3年間を丸々活用しても、完全な無収入になることはない。

 整理すると、病気休暇とそこから継続して病気休職を取り、最大の3年間休んだ場合、最初の90日間は全額、その後の1年間は80%、残りの期間はおおよそ3分の2が支給されるのだ。

 こうした実態に、前出の議員は「役場職員は恵まれているよな」と揶揄したが、あらためて制度を見てみると、まさにその通り。

 もっとも、この議員は「ちょっとした内部事情があって、その職員(病気休暇を頻繁に取得する職員)には気の毒な面もある。だから、同情半分、税金から給料を得ている公僕としてしっかりその分は働いてくれ、という思いが半分」とも話した。

 一方で、別の県内自治体議員に、頻繁に病気休暇を取得する職員はどう見られているのかを聞くと、次のように話した。

 「まず本庁舎には置けない。本庁舎以外であまり支障がなさそうなところに配属しておくしかない。当然、役場内部や住民の間でも、またアイツは休んでいるのか、という話は出てくるが、診断書を添付して申請があったら、突っぱねることもできない。民間企業なら辞めてもらうということになりそうだが、公務員ではそうもいかない。だから、どうしようもない。おそらく、どこにでも1人くらいはそういう職員がいるんでしょうけど」

 本当にやむを得ないケース、福島市の事例のように悪用したケースなど、詳細を見ていけばさまざまあるのだろうが、少なくとも公務員の病気休暇制度が至れり尽くせりであることは伝わろう。

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