国見町公文書訴訟和解で福島を去る愛知の行政マン

 国見町が下した公文書の不開示決定を巡り、町は開示請求者に取り消しを求めて訴えられていたが、和解で終結する見通しとなった。全面不開示を決定した引地真町長が昨年11月の町長選で落選後、不開示決定に疑問を呈していた新人の村上利通氏が町長となり、交渉の余地が生まれたからだ。

 おさらいすると、この訴訟は引地町長時代に企業からの寄付優遇制度を利用して進めた高規格救急車事業が発端。受注業者との契約過程で、禁じられている寄付企業への利益供与があり、制度を所管する内閣府は昨年11月に事業の基となった計画の認定を取り消した。

 課長級の男性職員は、事業に法令違反の疑念を抱き、2023年に内部情報を集めて監査委員事務局などに情報提供したところ、町は「情報管理規程に違反した」として昨年3月に減給10分の1(6カ月)の懲戒処分と降格処分を下した。男性職員は「公益通報者への不利益処分を禁じる公益通報者保護法に違反する」と主張し、処分の撤回を求めて公平委員会に不服を申し立てている。

 処分をニュースで知り不当と思ったのが、愛知県西尾市の危機管理局長簗瀬貴央氏(60)。簗瀬氏は処分根拠を確認しようと町に男性職員への懲戒処分に関する公文書を開示請求したが、町は全面不開示の上、簗瀬氏の審査請求(不服申し立て)も却下。条例には開示請求権者を「何人も」と定めているのに「簗瀬氏は町外在住者なので開示請求権者ではない」と矛盾した理由を付けて門前払いした。簗瀬氏は憤ると同時に町の対応のお粗末さに呆れ、「国見町には勝てる」と提訴した。

 審査請求却下の判断について、町担当課の澁谷康弘総務課長は「弁護士の教示を受けて進めた」と昨年9月定例会の一般質問で答弁した。町の顧問弁護士は渡辺健寿氏(元県弁護士会長)で、男性職員との係争や簗瀬氏との裁判でも町の訴訟代理人を務める。昨年11月の町定期監査によると、着手金はそれぞれ約54万円。成功報酬が別にある。

 公文書開示訴訟の争点は、町が全面不開示の誤りを認め、一部開示に応じるかどうかだった。簗瀬氏は「懲戒処分の日付や決裁権者の名前、根拠法令などは公開されるべき」と「落としどころ」を示した。一方の町は全面不開示に固執し、裁判所から「一部開示に応じられない理由は何か」と問われる始末だった。

 事態が急転したのは町長選後だった。12月6日に村上町長から簗瀬氏に「裁判所から和解を打診された。どこまで開示すれば和解に応じてくれるか」と申し出があったという。簗瀬氏は「妥当な一部開示」を条件に和解に応じる意向を示した。

 「町長から打診があったことは大きな進展です。勝てる裁判ですが、判決を待たずに納得のいく開示を受けられるなら訴えを取り下げることもやぶさかではない」(簗瀬氏)

 今後は、和解協議で簗瀬氏と町がどこまで開示できるかを詰める。

 裁判が終結すれば、簗瀬氏は福島から遠のいてしまう。感慨深げに次のように話す。

 「私は公益通報して処分を受けた職員と面識はありません。誰なのか詮索するつもりもない。私が町を訴えたのは、法令に則った公文書開示をさせるのが目的。そして、同じ行政マンとして職員にエールを送る意味合いもありました」

 簗瀬氏は3月で役職定年を迎え、西尾市を退庁後はライフワークの行政監視活動に専念するという。

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