浅川中学旧校舎解体工事で異例の再入札

浅川中学旧校舎解体工事で異例の再入札

 浅川町が発注した中学校旧校舎解体工事の入札に疑念の目が向けられた。落札業者が契約を辞退する前代未聞の事態が発生したが、再入札が行われるまでの1カ月半の間、「再入札の公平性を保つため」と町は議会への詳細な説明を避けたからだ。町は「対応は県の指針に則っている」と言うが、議会には「不都合なことを隠している」と受け取られ、談合まで疑う議員も出た。

松本建設工業(須賀川市)が落札後に辞退

解体工事の入札が行われた浅川中学校旧校舎

 浅川中学校の旧校舎解体工事の入札で、最低価格で落札した松本建設工業㈱(須賀川市)が落札からわずか4時間後に契約を辞退した件が疑念を招いた。浅川町は7月16日に県の評価でいわゆるAランクに分類される県内企業を参加要件とした条件付き一般競争入札を実施。(表)の業者が参加した。最低制限価格は設定されていない。


浅川中学校旧校舎解体工事の入札結果

【1回目=7月16日実施】 ※金額は税抜き

入札価格(予定価格)2億9098万7548円
松本建設工業㈱(須賀川市)1億0700万円落札し契約辞退
笠原工業㈱(須賀川市)1億1880万円
国分木材工業㈱(本宮市)2億3980万円
藤田建設工業㈱(棚倉町)2億4890万円
壁巣建設㈱(郡山市)辞退



【2回目=8月28日実施】

入札価格(予定価格)2億8990万円
笠原工業㈱1億1880万円落札
国分木材工業㈱2億2000万円
藤田建設工業㈱2億4250万円

 午前10時に開札され、予定価格(上限)の約40%に当たる1億0700万円(税抜き)で松本建設工業が落札した。ところが、仮契約を結ぶ段階に入った午後2時半に、同社は町に辞退を申し入れた。町はこれを了承した。

 浅川町は条例で、予定価格が5000万円以上になる工事請負契約は議会の議決が必要と定めている。町は契約が白紙になった経緯を7月25日の臨時議会で説明した。ただ、この時点では「再入札を控えているため、詳細を明かせば公平性が損なわれる」と業者名や落札価格などの重要事項は明かさなかった。町は議会に対し、「落札業者から『帰社後に積算金額を確認したところ間違いがあった。この金額では倒産する』と辞退の申し出があった」と明かした。

 事業者が落札後に契約を辞退するのは、浅川町では前代未聞だ。新たに積算し直して再入札を行うことになる。他の自治体に目を向けると、無効になった1回目の結果を間を置かずに明らかにするケースもあれば、再入札が終わるまでは明かさないケースもあるなど対応はまちまち。浅川町は「公表しない」。町の担当者は本誌に「県に確認すると、『契約に至らなかった入札は公表しなくてもよい』と言われた」と答えた。

 もっとも、落札結果を非公表にしたところで再入札の公平性担保には意味をなさない。どういうことか。 入札は、町役場で参加業者立ち合いの下で行われ、落札業者と落札価格が発表される。さらに、参加業者は県中・県南地域のAランク業者に自ずと限られ、1回目と2回目の参加業者の顔ぶれが変わらないことは容易に予想できた(実際同じ顔ぶれだった)。

 再入札が、1回目の結果を把握した同じメンツで行われる時点で、町が1回目の落札業者・落札価格を公表しようがしまいが再入札の結果には影響を与えない。むしろ、公表しない方が不公平を招く。再入札から初めて参加する業者がいた場合は、その業者だけ1回目の結果が分からないからだ。町が議会に対して「公平性」を理由に1回目の結果を明かさなかったのは理由になっていないばかりか、かえって不信を招いた。

 そんな町の説明不足に「議員の思い込み」も加わり、議員たちは「何か隠している」との印象を抱いた。議員からは「Aランクの企業が真剣勝負の入札で積算を間違うのは信じがたい。不正があるのではないか」との声が上がる。

 8月13日に議会全員協議会が開かれ再び町からの説明の場が設けられたが、議員の理解は得られなかった。町は同28日に行われる再入札を終えた後の9月定例会で全てを明らかにすると約束した。

 定例会初日の9月2日に町は旧校舎解体工事の契約の議決を求める追加議案を提出。そこで初めて一連の入札結果を明かした(表)。翌3日の一般質問では、岡部宗寿議員(3期)が次の3点を求めた。

 ①松本建設工業へのペナルティ

 ②「会社が潰れる」という辞退理由の検証

 ③落札後の契約辞退を制限するように例規集の見直し

 真田秀男教育長が答弁に立った。

 「①については一定期間、入札参加資格制限(指名停止)を科し、入札保証金を没収する。②については松本建設工業から『積算の基となる単価の設定を誤った』と説明を受けた。決算や経営状況には不審な点はない。③は既にある法令に基づき行っている」

 岡部議員の質問は続く。

 ①「町の指名停止だけでは効果は限定的。県から派遣されている加藤守副町長が県に働きかけてほしい」

 ②「『会社が潰れる』とは、『この仕事を受注したら(他社に)潰される』という意味ではないか。業者を呼んで調べてほしい」

 ③「入札を定めた町の規定に『契約辞退はいかなる理由をもってしてもできない』と盛り込めないか」

「500万円を没収」

 ①について、加藤副町長は「県には報告済みだ。過去の事例と照らし合わせて指名停止とするかどうかを判断するだろう」としたうえで次のように答えた。

 「規定に基づき町は辞退した業者から入札保証金を没収する。落札価格の5%、単純計算で約500万円になる。高いか安いかは一概には言えないが、仮に町が裁判で損害賠償を求めるとなると、賠償金を算定するのは困難。保証金没収で損害賠償は果たされたと考える」

 ②の質問は飛躍し過ぎの感はあるが、「談合の疑いが拭えないので辞退した業者に聞き取りをしてほしい」との趣旨。ただ、江田文男町長は「呼び出すつもりはない」と答えた。

 ③の契約辞退を認めないよう規定に盛り込むことについては、真田教育長が「契約の自由を侵す。逆に町が訴えられる」と否定した。

 最後に岡部議員は、工事の安全確保に釘を刺した。

 「予定価格の半額以下だからと喜んではいられない。旧校舎からアスベストなどの有害物質が出てくる懸念もある。安く発注したことでかえって高くつくことがないように、安全対策に力を入れてほしい」

 江田町長も呼応した。

 「全くその通り。子どもたちに迷惑を掛けないよう、安心・安全な工事を徹底していきたい」

 新たな契約は9月5日に全会一致で可決された。本誌は松本建設工業に1回目の入札で落札後に契約を辞退した理由を尋ねた。担当者は「取材には応じられない」と言う。

 大規模施設の解体工事は、予想もしなかった埋設物が出て、出費が増える可能性をはらむ。工事が終わるまでは町も受注者も安心できない。

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