【いわき市】内田広之市長インタビュー【2026年】

【いわき市】内田広之市長インタビュー【2026年】

経歴

うちだ・ひろゆき 1972年生まれ。東大大学院教育学研究科修了。文部科学省教育改革推進室長、福島大理事兼事務局長などを歴任し、2021年9月の市長選で初当選。25年の市長選で再選。

――昨年9月の市長選を制し、再選を果たされました。選挙戦を振り返っての感想をお聞かせください。

「1期目の4年間で何を成し遂げ、何が途上にあるかを整理するとともに、2期目の方向性を明確に示すことが大切だと考えていました。選挙戦における対話の中で市民の方々から実感として聞こえてきたのは、医療への厳しい声でした。医師を20人以上増やし、医療センターへドクターカーや『ダビンチ』をはじめとする最先端の医療機器を導入するなどの取り組みを実績として訴えてきましたが、現場の感覚としては『まだまだ』というのが正直なところです。中山間地域や高齢者が多い地域を回ると、医師の数だけでなく、体制そのものの充実を求める声が多く寄せられました。

また、選挙戦の直前に水道局の不祥事や市立学校でのいじめ問題が相次いで浮上し、争点にされる場面もありました。ただ、丁寧にまっすぐ正直に説明していくしかないと考え、取り組んできた結果、市民の皆さんの厚い信任を得て当選できたので、本当によかったと思っています」

――小名浜地区で計画されているサッカーJ2・いわきFCの新スタジアム整備について、市が立体駐車場や津波避難施設を設置する方針が打ち出されました。公共交通のアクセス課題についてはどのようにお考えですか。

「スタジアムまでの輸送体制はしっかり整えていかなければなりません。JR泉駅からの距離を考えると、複数の駐車場からのピストン輸送が不可欠です。福島臨海鉄道の旅客化についても、ハードルが高いのは承知していますが、最初からシャットアウトするのではなく、しっかり検討していきたい。スタジアム完成予定の2031年ごろには自動運転も進んでいると思うので、そうした選択肢も含めて幅広く議論しています。

大切なのは、スタジアムを単独で捉えないことです。小名浜地区では『道の駅いわき・ら・ら・ミュウ』がオープンしたほか、福島県初となる外航クルーズ船が寄港しています。スタジアムの使用は年間に20試合ほどなので、それ以外の活用をいかに充実させるかが重要です。医療や子育ての拠点とも組み合わせながら、小名浜地区一体のまちづくりとして、人流をどう呼び込むかを考えています。あのエリアを一体的に整備すれば、一日中遊べる魅力的な場所になると確信しています」

――1月から「公共事業推進監」が新設されました。設置の目的について、お聞かせください。

「福島県内の経済活動の生産量の約3分の1は、公共事業が支えています。建設業だけでなく、設計、測量、石油製品、運輸、塗装、機械など、ありとあらゆる産業に関連する公共事業を地域経済の柱として育てていきたいというのが根本にあります。2期目の公約として、公共事業費を前年度比51億円増の200億円超に引き上げたのもそのためです。

課題は入札制度でした。価格競争一辺倒では、地元企業が首都圏の業者に太刀打ちできず、地場産業が育ちません。災害時の初動対応を担う地元業者が育たなければ、いざという時に市民の命を守る体制も整いません。地元業者の関わりを促進する制度構築が必要でしたが、専門知識なしに現場の声を制度に落とし込むのは難しい実態がありました。そこで、土木・都市建設の行政経験を持つ市OBを専門委員として配置し、現場の声と制度をつなぐ役割を担わせることにしました。地元の企業が災害時に初動でしっかり対応できる体制をつくることが、最終的な目的です」

――いわき市は10月1日に市制施行60周年を迎えます。節目の年に合わせて「いわき31万人のまちづくりビジョン策定プロジェクト」が発足しました。どんな取り組みなのか、お聞かせください。

「60周年は1つの節目ですが、それで終わりではありません。60歳から100周年に向けた40年間をしっかり見通すことが大切だと考えています。このプロジェクトでは、若手の市内学生や起業家なども参画するチームが、いわきの向かうべき将来の姿を見据えた議論を重ねています。また、ビジョンの策定に合わせ、医療・教育・子育てなどさまざまな分野の具体的な施策の方向性などもお示ししていきたいと考えています。60年を振り返りながら、40年後のいわきへの夢をともに描いていきたいと思っています」

――政府が今年度中の創設を進めている防災庁について、誘致活動を進めています。活動に至った経緯とアピールポイント、実現した場合の展望についてお聞かせください。

「いわき市は、2019年や2023年の水害など、大震災以降も繰り返し災害を経験し、ノウハウを蓄積してきました。2023年の水害では、発災後3日目に被災証明の受け付け、ボランティアセンターの開設、災害廃棄物の受け付けを開始できました。こうした経験を国内の自治体からの支援への恩返しとして生かしたいというのが、誘致に手を挙げた背景にある思いです。

さらに、地域リーダーを育成する国連機関認定の『国連ユニタールCIFALジャパン国際研修センター』が市内に発足しました。原発事故の被災者でありながら、双葉郡からの避難者を受け入れ、当初2万人以上と共生してきた経験は世界に類例がありません。

国連事務次長補からも『いわきにしかない、世界に発信できるものがある』とお言葉をいただきました。こうした強みを最大限に生かしながら、防災と国際連携を掛け合わせた国際防災都市として、関係大臣へのPRを粘り強く続けていきます」

――今年度の重点事業についてお聞かせください。

「60周年の節目に合わせて、4月11日に『磐城平城しろあと公園』がオープンしました。江戸幕府の老中として日本全国を統治し、外国御用の担当としてロシアやイギリスとの外交交渉にあたった安藤信正など、いわき市には全国に誇れる歴史上の人物がいます。これを機にNHK大河ドラマの誘致活動も本格的に始めており、記念イベントにおいて、岐阜市長も参加してのパネルディスカッションを開催しました。

また、文化・芸術への注力も2期目の重点テーマです。漁業、炭鉱、農業という素晴らしい伝統に、アートや歴史を掛け合わせることで、いわきの魅力はさらに何十倍にも膨れ上がると確信しています。市役所の入り口に障がいがある方のアートを展示しています。こうした取り組みをまちづくりに組み込んでいくことで、いわきが持つ品格とポテンシャルを存分に引き出していきたいと思っています」


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