政経東北|多様化時代の福島を読み解く

【磐梯町】佐藤淳一町長インタビュー

【磐梯町】佐藤淳一町長インタビュー

さとう・じゅんいち 1961年9月、磐梯町生まれ。日大工学部卒。磐梯リゾート開発取締役総支配人を経て、2015年の磐梯町議選で初当選。19年磐梯町長選で無投票初当選。今年6月の同町長選で無投票再選を果たした。

 ――磐梯町長選挙では無投票で再選を果たされました。

 「無投票で再選できましたことにあらためて感謝いたします。2期目のテーマは、『内部の変革と体制づくり』が重要だと認識しています。1期目では、デジタル変革(DX)戦略室を設置し、各部署の横断的かつ柔軟な業務対応と効率化を図りましたが、DXはあくまで手段であり、行政サービスの出口戦略に至るのに、一番重要なのは役場内部の変革です。

 今や、行政は同じ仕事を日々こなしていくだけの時代はもう終わったといっても過言ではありません。職員一人ひとりが自ら考え、行動に移すことが求められています。一方、それらの定着化を図るうえで、まず職員を育てる必要がありますが、現在の役場の枠組みでは限界があります。2期目では、組織の変革による職員の意識改革と行政のスピードアップ化へ大きく舵を切る覚悟です。

 この間、職員間のチャットツールを導入し、情報共有の徹底化を図ってきました。これにより、担当の職員が仕事を抱え込むことはなくなり、チーム内はもちろんチーム外の職員からも知恵やアイデアが出されるなど着実に成果が上がっています。

 従前の行政の問題点の1つに、閉鎖的な職場環境による想像力の低下と視野狭窄が挙げられます。質の高い行政サービスを実現するためにも職員のスキルアップや能力開発が不可欠との観点から、民間企業をはじめ、外郭団体などで兼業してもらうことも検討しています。役場内の情報管理は全てクラウド化しているので業務に支障が出ることはない点を付言したいと思います。また、『攻守兼備の行政』の実現に向け、営業・マーケティング戦略と総務・管理、それぞれに特化した副町長二人制の導入を前向きに検討します」

 ――2期目の重点施策について。

 「再選を目指すにあたって以下の『5つの骨太方針』を示しました。今後は実現に向け粛々と取り組む所存です。

 1つは、人口減少対策の基本となる施策である子育て・教育の充実です。『子ども子育てワンストップ窓口』を設置し、子育て支援を展開していきます。教育は個々の性格、家庭環境で育まれたものをサポートして伸ばすことであり、それが学習における習熟度、成長率を左右すると考えます。子どもたち一人ひとりに合わせた『インクルーシブ教育』の徹底を目指して議論を重ね、教育施策の柱に据える考えです。加えて、町内の保育・教育施設を一体的に運営する学園構想を推進し、0歳から15歳までにどういう教育を進めていくか、根本的に見直します。先ずは幼稚園と保育園を再編して認定こども園を作る方針で、協議会を立ち上げて具体的に検討します。

 2つは、本町の基幹産業である農業振興です。農業振興公社を設立し、農業従事者の皆さまが継続して働ける仕組みを作ります。併せてマーケティングも行い、農産物の付加価値を向上させます。農業は魅力にあふれた事業だと思いますが、後継者不足が深刻です。十分な収入が得られ、休みもある仕事ならば就農希望者も増えると思いますが、現実はなかなか厳しいのが実態です。

 問題は流通過程の中で生産者と消費者との距離が離れてしまうことです。生産者と消費者が直接つながり、『良質な農産物を供給してくれる』という信頼関係ができていれば、多少価格が高くても買い求めるようになりますし、SNSや口コミを通じて評判も広まっていくと思います。その結果、生産者の収入が上がれば、新規就農者も増えていくものと考えます。農業振興公社を中心にさまざまな施策を打ち出し『儲かる農業』を実現できるよう注力します。

 3つは、観光振興と地域ブランド強化です。磐梯町がどこにあるのか分からない人も多いと思いますが、『会津磐梯山と名水のまち』と打ち出せば、イメージが掴みやすくなり、認知度が広まっていくと考えます。『磐梯町ブランド』が確立されれば、農産物の売り上げにもプラスになるはずです。認知度アップのために、民謡・会津磐梯山の磐梯町バージョンを作りイベント時には必ず流して、PRしていく考えです。

 観光はコロナ禍で厳しい状況が続いてきましたが、民間の力を生かすため連携しながら支援していくことが何より重要と考えています。そのため、ばんだい振興公社を立ち上げ、町内の観光スポットである『道の駅ばんだい』、『史跡慧日寺跡』を一体として運用していく体制を構築しました。年間約82万人が訪れる道の駅ばんだいを拠点に、史跡慧日寺跡などを回遊していただく『滞在型観光』を目指します。集客面ではインバウンドも鋭意強化していく考えです。スキー場を訪れるオーストラリア、台湾からの個人客に加え、雪のない東南アジアへの営業強化、民間施設への集客支援を実施していきます。

 4つは、移住定住の推進です。本町を知っていただいた方に、『住んでみたいまち』、『住みやすいまち』と思っていただけるようしっかり取り組みます。地方への移住定住は、まずそこで暮らしていくための環境を整備する必要があります。

 本町では町唯一の大型商業施設が閉店したのを受け、2021年に『公有民営方式』で民間スーパーを誘致しました。さらに、地域おこし協力隊や地域活性化起業人を採用して、さまざまな形で地域を活性化させ魅力を向上させてきました。町内には有力企業の工場が進出しており、働き口の確保もサポートしていきます。移住定住関連の各種補助金も見直し、空き家バンクに加え空き地バンクを追加します。各地区を調査し、空き地を有効活用していくとともに町営住宅整備も計画する考えです。民間活力の導入を図り、民間アパートや分譲地も増やしていきます。

 結びに、共創協働のまちづくりです。町民全員が幸せになるためには、行政の一方的な取り組みだけでは難しく、町民と共にまちづくりを進めていくことが重要です。町民と対話し、いろいろな課題を共有して、『まちをどうしていきたいか』という思いを一つにすることが大切であると認識しています。町民の思いを行政が支えていく形で、一緒に事業を進めていく所存です」

幸せに暮らせる環境を

 ――町民へのメッセージを。

 「人口減少社会は避けて通れない問題であるのは事実です。引き続き磐梯町の魅力をより大胆に発信しながら関係人口の創出、移住・定住の促進を図り、町内の活性化に注力するとともに、本町の日常生活に幸せを感じて暮らせるような仕組みづくりや環境づくりを鋭意進めていきます。併せて、町民の皆さまがオープンに議論できる機会を提供し、その内容を踏まえた新しい形での行政サービスを提供できるよう努めます」

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