伊達市議会3月、6月の二度の定例会にわたり、島明美議員(1期)が随意契約の透明性と適正性、さらには「低線量地域詳細モニタリング事業」の是非について一般質問を行った。これは本誌4月号「電通が担った『原発事故後の印象操作』」という記事とも関連している。
島明美議員が3、6月議会で追及
最初に、本誌4月号記事は2月24日に三春町で「3・11後の福島で電通は何をしたのか」と題する講演会が開催され、それを取材し記事にしたもの。
「東京電力福島第一原発事故に関わる電通の世論操作を研究する会(電通研)」のメンバーらが開催したもので、東京電力福島第一原発事故後、電通による福島県内でのPR事業が世論操作につながっている問題について議論が交わされた。
講演を行ったのは、電通研メンバーで、国や県への情報公開請求を通じて調査を行っている野池元基氏で、14年間にわたる行政文書の分析結果を発表した。その中で、野池氏は伊達市の「心の除染」事業を例に挙げていた。
伊達市議会3月定例会、6月定例会で、島明美議員が行った一般質問はまさにこれに関するもの。島議員が指摘した問題点は多岐にわたるが、ここでは主に3点に絞って問題点を精査していく。なお、本誌は3月はライブ中継、6月は議場で傍聴した。

1つ目は、Cエリアのフォローアップ除染を行うはずが、なぜ「心の除染」事業に変わってしまったのか、という点。
同市では原発事故後の除染について、空間線量率に応じて市域をA、B、Cの3つのエリアに区分した。Aエリアは特定避難勧奨地点がある地区や、比較的線量の高い地区、Bエリアはその隣接地、Cエリアはそれ以外で、大部分がCエリアに分類される。
Cエリアの除染は、点在するホットスポットの把握と、その部分の除染が中心だった。そのため、もっときめ細かな除染をしてほしいという市民が多かった。そうした要望を受け、市はCエリアのフォローアップ除染を行う方針を示したが、実際に行われたのは「心の除染」という名のリスクコミュニケーション事業だった。
同事業は「Cエリアホットスポット除染後の低線量地域において市民への戸別訪問を実施し、線量測定を行いながら、市民が安心した生活が送れるよう、市民との対話による正しい放射能、放射線の知識を共有し、不安解消を図るもの」(議会での市当局の答弁)。
同事業を受託したのは電通で、事業期間は2014年6月から2015年3月まで。対象4866世帯に対して、訪問したり、電話をしたりした。もっとも、同議会のやり取りの中で、実際に訪問したのは1850件、約38%にとどまることが明らかになっている。
島議員はこう発言した。
「(同事業の)電話対応のマニュアルにどんなことが書いてあるか。Cエリアの除染は3マイクロシーベルト以上じゃないと対応しませんと電話で言うのです。(電話を受けた市民は)だったらいいですと断る。それで終わりです」
要するに、この事業はCエリアの住民にフォローアップ除染を諦めさせるためのものだったと指摘したのである。
これに対する市当局の答弁は「ちょっとそこまで把握していません」というものだった。
一方で、事業の効果を問う質問では、市当局は次のように答えた。
「事業実施前のアンケート結果を基に、放射線に対して不安を感じていた市民の不安解消を目的として実施したもので、市としては、放射線によって生じる直接的な健康不安以外にも、不安な気持ちを長期間抱えることによって生じる心への影響も懸念していた。事業の実施により、市民の不安解消を図る効果があったと認識している」
議会のやり取りでは、Cエリアのフォローアップ除染がなぜ「心の除染」事業に変わってしまったのか、という点が見えなかった。そのため、議会後に本誌が市に問い合わせたところ、担当者は「だいぶ前の事業ですので」としつつ、「協議した中で、そういった形になったものと認識しています」とのことだった。
随意契約の是非

2つ目は、随意契約は適切だったのかという点。同事業を受託したのが電通であることは前述したが、議会の議決を経ない随意契約で発注したのだ。しかも、金額は2億1168万円と決して小さな額ではない。
島議員は、随意契約の理由とその整合性について質問した。
市当局の答弁は次のようなもの。
「電通は、放射能の知識のみならず、環境省が設置している除染情報プラザの運営も行っているため、県内の除染の状況や国・県の動向などの情報を把握しており、除染を含めた放射能について実績を有している。その経験を基に本市の除染方針や放射線量の分布なども算出しており、積み上げてきた経験や知識を生かすことで住民とのきめ細かなコミュニケーションを図ることができると考えた。契約の性質、目的が競争入札に適さないため、随意契約とした」
これに対し、島議員は「専門性があると言いながら、3社にすぐ再委託している。この点は随意契約の理由との整合性は取れているのか」と質問した。
電通は事業を請け負った後、パソナ、アトックス、NPO法人・環境ワーキンググループ伊達の3社に再委託、いわゆる下請けに出しており、再委託先が戸別訪問・説明作業を担当した。
つまり、島議員は「知識や除染情報プラザ運営の実績がある」ことを理由に、入札などをせずに電通に任せたのに、下請けに出されたら意味がない、随意契約の整合性がとれないのではないかと尋ねたわけ。
これに対し、市当局は「随意契約後、事業を再委託することはある」と答弁した。
電通ありきの事業だったのではないかとの懸念は拭えず、島議員は他市の随意契約のガイドライン、随意契約後の再委託に関するガイドラインを紹介し、それらを定め公表することを求めた。
3つ目は市の監督責任について。
島議員は電通グループの子会社・電通北海道の事例を紹介した。2023年8月、北海道が新型コロナウイルス感染症対策として、同社に委託したコールセンター業務で、約1億5800万円の過大請求があったことが分かり、北海道は電通北海道に過大請求分の返還を求めた。
この過大請求には、主に2つの要因があり、1つは勤務実態等の改ざんによるもので、実際には欠員があったにもかかわらず、道から指示された席数を満たしていたとして請求していた。もう1つは各種単価の上乗せによるもので、オペレーター人件費、ブース使用料、受電システムライセンス料、管理費などの各種単価に上乗せを行っていた。
電通北海道は、自社のグループ会社である電通プロモーションエグゼにコールセンター業務を再委託しており、電通プロモーションエグゼが外部のコールセンター事業者から適正な実績報告を受けていたにもかかわらず、電通北海道からの発注額に合わせるために実績を改ざんしたり、単価を上乗せしたりしていたことが北海道の実態調査で判明した。
伊達市でも疑わしい行為が
島議員はこうした事例を紹介しつつ、伊達市の事業でも似たようなことがあったと指摘した。
電通は事業を請け負った後、下請け(再委託)に出したことを前述したが、そのうちの1社で一部業務を請け負ったNPO法人が受け取った報酬と、伊達市が電通に対して承認した再委託予定価格に差額があるというのだ。要するに、電通は伊達市に対して、例えば1000万円でNPO法人に下請けに出しますと言い、伊達市はそれを了承した。ところが、実際にNPO法人に支払われたのは700万円だった――ということ。島議員はNPO法人の活動報告書や総会資料などから、NPO法人が実際に受け取った報酬が、市が承認した金額よりも大幅に少なかったことを突き止めた。
さらに、NPO法人に再委託費を入金したのは、契約相手である電通ではなく、電通の子会社である電通テックだったことも判明した。これについて、島議員は「大きな契約違反」と指摘した。
島議員は、「公金を支出する地方自治体には、その使用が適正かつ効率的であることの管理監督責任が明確に定められている。契約内容に重大な虚偽記載や不適切な計上があった可能性を踏まえ、市として民法95条に基づく契約の取り消しや不当利得返還請求などの法的措置を検討すべき」と求めた。
これに対し、市当局は「契約内容に虚偽記載はなく、不当利得返還請求は発生しないと考えている。国の会計検査でも指摘事項がなかったため、事業の執行は適正であったと認識している」と答弁。
再度、同様の質問がされた際も、「本件は地方自治法施行令第167条の2第1項第2号に基づき適正に随意契約されたものであり、事業完了時の検査や国の会計検査でも適正に執行されているため、市民に不利益は生じていない。契約事務は適正に執行されており、引き続き公正性、公平性、競争性、透明性、品質確保に努めていく」との見解を示した。
本誌は確認や補足のために議会後に市に問い合わせたが、10年以上前の事業ということもあり、当時の詳細な状況が分からないこともあった。ただ、Cエリアのフォローアップ除染がなぜ「心の除染」事業に変わってしまったのか、ということは未だに疑問に思っている市民も少なからずいる。
加えて、本誌4月号記事で指摘したように、いかに電通に〝担がれてきたのか〟ということも考えさせられた。島議員は電通が請け負ったリスクコミュニケーション事業は、実際は市民に除染を諦めさせるための「説得事業」と評した。市は「市民の不安解消を図る効果があった」というものの、そこに2億円超を投じるなら、市民が最も望んでいた物理的な除染がどれだけできたか。電通を儲けさせただけのムダな事業と受け止められても仕方がない。
一方で、島議員はここで取り上げた3つの論点のほかにも、この問題について様々な点を指摘・質問していた。今後の定例会でもこの問題の追及は続くかもしれない。

























