福島市は昨年12月議会で「廃棄物の処理及び清掃に関する条例の一部改正」に関する議案を上程し可決された。改正内容は、ごみステーションに出されたごみについて、分別などのルールを守らないものについて、袋を開封して調査を行うことなどが盛り込まれた。
悪質排出者は「開封・特定・公表」
議会初日(昨年12月2日)の議案提案理由説明で、木幡浩市長は次のように述べた。
「これまで、適正なごみ排出を繰り返し呼びかけてきましたが、地域のごみ集積所へ事業系ごみが不法投棄され、カラスに荒らされる被害が後を絶たず、家庭系ごみにおいても資源物が分別されていないケース等が見受けられます。こうした状況の改善に向け、本定例会議に廃棄物処理条例改正の議案を提出しました。ごみの適正排出を市民の責務として明確化するとともに、悪質な違反ごみの開封調査を導入し、排出者に注意指導して是正を働きかけます。市民、事業者にごみ排出ルールの徹底を促し、ごみ減量化とリサイクル推進を図ります」
この問題の発端の1つはごみの減量化だ。国(環境省)が毎年実施している「一般廃棄物処理事業実態調査 2022年度調査結果」(昨年6月公表)によると、県民1人が1日に出すごみの量は1021㌘(「事業系ごみ」と「生活系ごみ」の合計)で、富山県と並び全国ワーストだった。最も少ない京都府は770㌘、全国平均は880㌘だから、京都府の3割以上、全国平均の2割近く多い。
ごみの排出量(事業系と生活系)
1位 | 日野市(東京都) | 601㌘ |
185位 | いわき市 | 971㌘ |
221位 | 福島市 | 1080㌘ |
223位 | 会津若松市 | 1098㌘ |
231位 | 郡山市 | 1165㌘ |
福島県平均 | ―― | 1029㌘ |
全国平均 | ―― | 880㌘ |
※環境省令和4年度一般廃棄物処理事業実態調査より。
その中でも、福島市は1080㌘で、人口10万人から50万人の自治体232中221位とだいぶ下位になっている。こうした理由から、ごみの減量化は以前から大きな課題となっていた。
不法投棄が多数
一方で、今回の条例改正にはもう1つ大きな要素がある。それが中心市街地の飲食店などを中心に、事業系ごみが排出されていること。これは不法投棄に該当する。しかも、生ごみを含んだごみが多く、カラスがつついて周辺に散乱する事態が頻発している。カラスは頭がいいため、この辺に行けば、エサになりそうなもの(ごみ)があることを学習してしまっている。カラスはごみを荒らすだけでなく、フンなどの問題も出ており、地元町内会などから「何とかしてほしい」と要望が上がっていたのだとか。
こうした事情から、今回の条例改正が行われ、悪質なごみ排出者の抑制、ごみ減量化につなげていきたい考え。
具体的な対策(条例に盛り込まれた内容)としては、悪質なケースではごみ袋を開封して違反者を特定する。特定できた場合は、その違反者に対して一度目は「注意」、二度目は「是正勧告」、三度目は「氏名公表」といった三段階の厳しい姿勢で対応する。
「これまでは市が掲げることについて、市民には努力義務があるといった条例の文言でしたが、今回からは市民の『責務』として明確化しました。実は、調べたところ中核市で『責務』として定めていなかったのは福島市だけだったのです。責務を定め、それに務めることで、環境保全や公衆衛生の改善など、市民にとってよりよい生活環境にすることが目的です」(市ごみ減量推進化)
こうして、ごみの適正な排出に対して、市民の「責務」が定められ、ルールを守らない悪質なケースは、厳しい姿勢で対応することが盛り込まれたのである。
これに対し、議会では、プライバシー侵害の懸念などから、ごみ袋の開封や氏名公表に反対する意見も一部議員から出たが、採決の結果、賛成多数で可決された。
この改正条例は3月に施行予定で、それに先立ち、市内19カ所(支所単位)で住民説明会を実施するという。そこで、前段で述べたような今回の条例改正に伴い、市民(ごみ排出者)にはどのような対応が求められるのか等々が詳しく説明されることになる。
それにしても、会津若松市では昨年5月に、「ごみ緊急事態宣言」を発令し、6月から11月までの半年間を「緊急減量期間」と位置付けてごみ減量に取り組んでいる(本誌昨年8月号参照)ほか、郡山市は来年度以降、一般廃棄物のクリーンセンターへの持ち込み料金引き上げを実施するといった動きが出ている。
前述したように、福島県はごみ排出量が全国一多く、中でも福島市、郡山市、会津若松市は県平均を上回っている(別表参考)。そうした中、各市でにわかにごみ減量化に向けた動きが加速しているが、そのためには住民一人ひとりの意識の変革が必要になる。「ごみ排出後進県」から脱却するには、まだまだ時間を要するだろう。