福島市の放課後児童クラブ(学童保育)が資金不足のため、保護者に保育料まとめ払いへの協力を求めていたことが分かった。異例の対応を取った経緯とは。
指導員人件費〝膨張〟で資金不足に
保護者に対し、保育料のまとめ払いを求めていたのは福島市渡利地区の放課後児童クラブ「渡利学童保育きりん教室」。7月、保護者に対し、協力を求める文書を配布した。
同市の放課後児童クラブはすべて民設民営で、市が民間運営団体に「放課後児童健全育成事業」を委託する形となっている。
主な収入源は①保護者からの「保育料」(毎月支払い)、②福島市からの「委託金」(5月、9月、1月に分けて支払い)、③人件費にのみ支払われる「処遇改善事業等補助金」(8月末ごろ支払い予定)。
ところが、同クラブでは、②、③が入る前の時点で資金不足になることが確定的になった。そのため、文書で保護者に協力を求めたわけ。
市内の教育関係者によると、同クラブは「300万円不足しており、指導員の給料が払えない」、「夏休み中の昼食やおやつも提供が難しいという話になっている」状況のようで、「仮に8月末を乗り切っても、近いうちに資金不足に陥るのではないか」と囁かれているという。
同クラブには約90人の児童が在籍しており、父母会が運営している。なぜ資金不足に陥ったのか、7月中旬、同市渡利地区の渡利小学校校舎内にある同クラブを訪ねたところ、佐藤秀樹施設長が取材対応し、次のように説明した。
「うちの場合、処遇改善事業等補助金は1支援単位につき480万円、委託金は1回330万円入ってくる。利益は出していないが、毎月の保育料だけでは指導員の給料を賄えないので、時期によっては200~300万円ほど繰越金を貯めておく必要がある。ところが、昨年度はそれを使い切ってしまったのです」
佐藤施設長によると、主な要因は人件費増加だという。同クラブでは経験豊富なベテラン指導員2人を再雇用し、若手指導員への継承を進めている。現在の指導員数は2支援単位12人(正規職員、パート含む)。「来年度以降、再雇用の先生方が1人ずつ抜けていくので、適正な人数になっていくと思います」(同)というが、他クラブは指導員3、4人のところが多い中で、明らかに人員過剰の態勢となっている。
そのためボーナス減額などの人件費抑制策を取ってきたが、見通しが甘く、結局資金不足に陥ってしまった――これがこの間の経緯のようだ。
同クラブはもともと教育充実のため、指導員を手厚く配置していたこともあり、保護者の多くは理解を示し、まとめ払いに協力しているようだ。だが、同業者の反応は「保護者に協力を求めるなどもってのほか。経営手腕に問題がある」と一様に冷ややかだ。
一方で、教育関係者からは「民間企業なら銀行から金を借りて対応すれば済む話。運営主体や責任者が明確でなく、借り入れなどができないからこういう問題が起きる。そういった面も含め、福島市の子育て政策の改革を木幡浩市長に求めたい」といった声も聞かれた。
現在、燃料費高騰・物価高の影響なども各クラブの財政に打撃を与えているため、市子ども政策課が対策を検討中だという。各クラブの財政が立ち行かなくなれば、割を食うのは利用する子どもたちだ。そのことを市・各クラブが認識し、共に課題を改善していく必要がある。