本誌に「鏡石町副町長のパワハラ疑惑」と題した投書が寄せられた。早速、副町長に事実関係を確認すると同時に役場内の状況を探った。
職員間の「妬み」の可能性も
投書の消印は郡山東郵便局、4月23日。差出人は「町民 鏡石町中央在住」とある。内容は、端的に言うと、「副町長は『俺が採用した職員だから』という理由で、令和5(2023)年度採用職員(新人職員)男3人、女3人の計6人を温泉に誘った。これはパワハラに当たるのではないか」というもの。
同町の小貫秀明副町長は1960年生まれ。白河高校卒。1979年に町職員になり、健康福祉課長、福祉こども課長、議会事務局長、総務課長などを歴任した。2022年5月の町長選で、木賊正男氏が無投票で初当選を飾り、同年6月24日の任期スタートから1カ月ほどが経った7月21日の臨時議会で小貫氏の副町長選任案が承認された。なお、木賊町長も元役場職員で、木賊町長からすると、小貫副町長は町職員時代の後輩に当たる。言わば、よく知る間柄で、その中で小貫氏を副町長に起用したのだ。
小貫副町長に投書が寄せられたことを伝え、コメントを求めた。
「まず、『俺が採用した職員だから』というようなことを言ったことはありません。採用試験の面接などには関わっていますが、言うまでもなく町の最高責任者は町長ですから。令和5年度採用職員は確かに男3人、女3人の計6人で、新卒であったり、一度ほかの職場を経験した人であったり、また大卒であったり、そうでなかったりと、年齢はそれぞれ違いますが、同期になったのだから、いろいろと相談し合えるような、いい関係を築いてほしいと思っており、同時に何かあったら私に気軽に……とはいかなくても、相談してもらえるような関係を築ければと思い、その同期の中でもリーダー格の職員に話をして、昨年の採用からこれまでに3回ほど酒席を設けました。それは主に週末の仕事終わりで、もちろん、業務外ですので強制参加ではありません」
小貫副町長はこうした背景を明かしたうえで、こう説明した。
「その席で、役場内に野球クラブとスキークラブがあり、コロナ禍以降はやってないけど、以前はスキークラブでそれぞれ積み立てをして年1回、1泊2日で蔵王温泉に行っていた話をしました。もちろん、そこではスキーを楽しむ人もいれば、仕事の悩みを相談したり、職員同士の親睦を深めたりとか、そんなことをしていたという話をしたら、『それ、いいですね』、『そう? だったら行くか』といった話になり、同期のリーダー格の職員に『参加したい人がいるなら段取りをしてよ』ということを言いました。もちろん、これも強制ではありませんし、予定はしていたものの、事情があって実現もしていません。繰り返しになりますが、それらは同期職員同士でいい関係を築いてほしいのと、何か悩みがあったら、私に相談してもらえるような環境をつくりたかったということに尽きます」
副町長は、懲罰委員会の委員長を兼務し、もしパワハラ・セクハラなどの相談・報告があったら、関係職員の聞き取りをしたり、処罰を決める立場。もちろん、そのことは自覚しており、実際にこの間、相談を受けることもあったという。
「ですから、自分を律してきたつもりです。何度も言いますが、いまの若い人は悩みがあっても自分で抱え込む傾向にあるので、同期職員同士で相談し合ったり、私に相談できるような環境をつくりたかった。それ(酒席や温泉に誘ったこと)がパワハラに当たると言われれば、受け止めるしかないというか、申し訳なかったとしか言いようがありませんが……」
この類の問題は、受け取る側の思い次第という側面が強い。加えて、もし不快に思っていたとしても、職場での自身の立場や、その後への影響などを考えるだろうから、外部から関係職員の本心を探るのは難しい。少なくとも、明確にパワハラに該当すると断ずることができるようなものは得られなかった。
小貫副町長の評判
ある議員はこう話す。
「小貫副町長は過去に議会事務局長を務めていたから分かるが、事務能力は高いと思う。人柄は、仕事に対しては厳しい面もあるだろうけど、普段は柔和な印象で、パワハラというのはイメージできない。部下からの信頼も厚いように思う。少なくとも、この間、そういった面で問題になったことはありません」
一方で、役場内部に詳しい人物によると、「小貫副町長はそれら職員に目を掛け過ぎではないか、と見る向きもある」という。つまりは、小貫副町長が特定職員(前述の若手職員6人)を贔屓している、と見ている人もいるというのだ。
この証言を聞き、あることを思い出した。本誌2020年9月号で報じた同町職員が役場内の人事異動を予想する賭博行為(未遂)を行った問題だ。経緯はこうだ。
同年4月1日付の「定期人事異動」を前に、副課長相当職の1人が課長職人事を予想する「人事ロト」と称する賭博を企画し、業務用のパソコンシステムを使って、参加を募る文面と投票用紙のデータを職員13人に送信した。これに9人の職員が応じた。投票用紙に現金(1口500円)を添えて記入して投票し、的中者に配当する仕組みだった。
その後、匿名の内部告発があり事件が発覚。人事異動発表前に事件が発覚したため、賭博行為は未遂に終わったが、町は関係職員の聞き取り調査を行い、関係職員に減給、戒告などの処分を科した。加えて、当時の遠藤栄作町長、小貫忠男副町長も、自らの減給(1カ月)を議会に提案し可決された。
こうした問題に対し、当時、町民からはこんな声が聞かれた。
「役場職員の気の緩み、質の低下はここまで来ているのかと正直ガッカリした」
「昨年(2019年)の台風被害や、いまの新型コロナウイルスの影響などで町民が苦しい状況にある中、役場職員は何をしているのか。こういうときこそ、役場職員は町民のために一生懸命働くべきではないのか」
「過去にも似たようなことをしていたのではないか」
「処分内容は妥当なのか。未遂とはいえ、『賭博行為』なんだから、民間だったらクビになる可能性だってある」
その一方で、役場内部に詳しい人物はこんな指摘をしていた。
「今回、賭博行為に関係していたのは、『どうせ自分たちは関係ない』と思っていたような人たち。要は(昇進の可能性がある職員への)妬みですよ」
同町職員の中には「妬み」からとんでもないことをしでかす人もいるということだ。そこから察するに、あるいは今回の投書も、「小貫副町長が特定職員(若手職員6人)を贔屓している」との妬みから発せられたものである可能性があることも付け加えておこう。