ほし・めい 2003年生まれ、須賀川市出身の福島大学3年生。イラストをSNS上で発表している。Instagramアカウント「@Fukushima_su_pa_」
福島市にある福島大学は、市街地から郊外に統合移転して46年。一見不便だが、だからこそ学生たちは日々の暮らしの質を向上したい思いが強い。福島駅前のイトーヨーカドー閉店後に「買い物難民」になった同大行政政策学類(夜間主)3年生の星萌生さんが自活する学生の暮らしぶりを綴った。
県民注目!自活する現役生の悲哀と奮闘

福島大学(福大)に通う学生の多くは、卒業後に福島県内で就職することをイメージしにくい。親元を離れて一人暮らしをする福大生は、自動車を持っていない場合、「買い物難民」に陥ってしまう。学生時代に「一人暮らしに厳しい街」と印象を持ってしまうと、なかなか拭うことは難しい。それもあって、就職を機に福島市からより便利な都市部に出てしまう若者が多いのではないか。
福島県は18歳から24歳の若年人口が少ないが、同じ県内でも地域によって実情は異なる。国立の福島大学や県立福島医大などがある福島市に限って言えば、全国から来る若者の割合は比較的高い。私が通う福大の場合、県内出身ではない学生が3分の1から約半数在籍している。それにもかかわらず、県内の優良な就職先を知らず、結果的に東京や仙台などへ就職するケースも少なくない。流出の一因に買い物事情もあると考え、福大の学生寮で一人暮らしをし、「買い物難民」を経験した私のことを振り返る。
私の周囲を見渡すと、福大の学生の3人に1人は県外出身者だ。そうした「福島を知らない」福大生の多くは、生活費を節約するため、学生寮や手ごろな家賃の学生向けアパートが用意されている福大の最寄り駅、JR金谷川駅周辺に住む。同駅は東北本線福島駅から郡山方面へ2駅先の福島市郊外にある。大学に近いのはよいのだが、買い物ができる場所はコンビニや大学生協に限られる。サークルなどの課外活動に参加しない場合、学生同士の交流も生まれにくく、授業と下宿先の往復になり、物理的にも精神的にも孤立しがちだ。
2年生の一年間、私自身、学生寮に住んでいたが、夜に大学に通い、学費や生活費を工面するためアルバイトに追われ、地域の情報から孤立したような生活を送っていた。福島駅前のアルバイト先と大学を電車で往復する毎日だった。
福大には学食があり、「ミールプラン」という1年間朝昼晩の3食の提供を受けられるサービスがある。このサービスでは加入後、毎日決まった金額の弁当や惣菜が学食で交換できるが、私の周りでは一人暮らしをしているほとんどの学生はスーパーで買い物して自炊している。
自炊を選ぶ理由はいくつかある。このサービスは年度初めの限定販売で、一番安いプランでも10万円(2023年当時)と、自活している学生にとっては一時的な負担が大きい。また、学食の営業時間は朝7時から夜7時までで、夜間の講義を受講する学生や、福島駅前で夕方からアルバイトをしている学生にとっては利用しづらい。その結果、自炊や簡単な調理で済ませる学生が大多数で、学食以外で食品を購入できる場所が近くにほしい。
福大生がよく利用するスーパーとしては、福島駅西口前のイトーヨーカドー福島店(2024年5月に閉店)や、南福島駅近くのヨークベニマル南福島店が挙げられる。私がバイト帰りによく利用していたイトーヨーカドーは閉店してしまった。それでも、福島駅東口を少し歩けば、買い物先が点として存在する。AXC(アックス)ビル1階にある青果店「ししどやおや」では100円で普段使う野菜が購入できたり、文化通りの総菜店「高田食品店」では学食では味わえない家庭的な料理が並ぶ。


一方で、精肉や鮮魚はスーパーのほうが安価なため、スーパーでの買い物が主流となる。しかし、あえて商店街の個人店を利用することで、食生活のマンネリ化を防ぐ工夫をしている学生もいる。
体力と時間に余裕のある学生は、自転車に乗って坂を上り、蓬萊団地にある「いちい蓬萊店」(福大からの直線距離約2㌔)や、前出のヨークベニマル南福島店(同約5㌔)まで遠出することもある。さらに買い物を極めた学生は、安達駅周辺のベイシア安達店(同約8㌔)、金谷川駅や福島医大周辺の無人販売所、福島駅前で日曜日に開催されるマルシェを活用している。学生たちは徒歩や自転車、電車を利用して片道40分以上かけなければ満足に食材を購入できないのだ。


この問題は福大に限ったことではなく、郊外に立地する他の大学にも共通する。「在学生の生活の質を上げる」という部分においてはこの問題に取り組むことで、福島大学をモデルケースとして、全国の類似環境を改善することができるのではないだろうか。