現在、国見町貝田地区で国道4号の道路改良工事が行われている。このエリアは国道4号の郡山以北で、唯一4車線化がされていないところだが、その代替策のような形で下り車線に付加車線(登坂車線)を整備する工事だ。ただ、これについて、地元住民からは「どうせ改良工事を実施するなら、もっと意味のあるものにしてほしい」といった要望が出ている。
道路東側歩道と横断歩道の設置を要望

国土交通省福島河川国道事務所が進めてきた国道4号「伊達拡幅」という事業がある。国道4号の渋滞解消、交通安全、高速道路代替機能の確保を目的に、伊達市(事業着手時は伊達町)広前から国見町石母田まで9・1㌔の4車線化(片側2車線化)拡幅工事である。
事業がスタートしたのは、40年以上前の1981年度。最初に、旧伊達町の伊達交差点から北側、桑折町上郡までの3・6㌔区間の片側2車線拡幅事業に着手した。拡幅が完了した個所から順次供用開始となり、1995年10月に同区間は開通となった。
1995年度には、桑折町上郡から国見町石母田までの5・5㌔が事業に加えられ、全体延長が9・1㌔になった。桑折町上郡から同町北半田までの2・2㌔は2011年12月までに開通し、そこから国見町役場前までの1・7㌔は2020年3月に開通した。そして、今年3月、最後の区間である国見町藤田から同町石母田までの1・6㌔が完成した。実に、事業着手から40年以上を経て、事業完了に至ったのである。
これに伴い、県内の国道4号の郡山以北で、4車線化されていないのは、伊達拡幅区間の先、すなわち国見町石母田から県境までの3・5㌔ほどになった。
もっとも、下り車線(仙台方面)は「ゆずりあい路線(登坂車線)」として、約3㌔が片側2車線になっている。伊達拡幅事業が完了したことにより、拡幅されたところと、登坂車線のスタート地点の境目がなくなり、ずっと片側2車線が続くイメージ。ただ、県境までの最後の500㍍ほどは片側1車線になり、宮城県に入る。
この500㍍ほどの区間に当たる国見町貝田地区で現在、拡幅工事が行われている。これが完成すれば、下り車線は県境まで片側2車線となる。ただし、宮城県白石市に入ると、しばらく片側1車線になる。

一方、上り車線(郡山方面)は、県境から伊達拡幅が実施されたところまでの3・5㌔ほどが片側1車線になっている。
つまり、国見町貝田地区の拡幅工事が終わると、県境から3・5㌔ほどが上り1車線、下り2車線の3車線道路になるのだ。
そんな中、この工事について、地元住民で「どうせ整備するなら、もっとこうしてほしい」との声を上げた人物がいる。ちょうど、今回の工事区間に当たり、県境まで200㍍ほど、JR貝田駅の目の前の国道4号沿いで、ガソリンスタンドを経営するオカダ石油ガス社長の岡田盛雄さんだ。
要望の内容
岡田さんは今年9月、近隣住民との連名で、福島河川国道事務所に要望書を提出した。要望内容を抜粋する。
①東側への歩道設置
貝田駅周辺の国道4号沿いには、民家やガソリンスタンド・商店、歴史文化施設があり、歴史施設見学ルートや生活における重要なところです。国道4号の車通行において、県境の傾斜が長く続いていて見通しが悪く、今回の3車線化でますます交通事故等の危険が増すものと危惧しています。交通安全のための東側歩道整備を請願します。
②貝田駅から東側に国道4号を安全に渡れる横断歩道の設置
この区間の道路東側には、文化財(下紐の石・平安時代の重要地方文化財)史跡が存在し、多くの歴史愛好家や地元の人が訪れます。今回の道路拡幅に伴い、西側の歩道から人が横断することは、大変危険でもあり、東側にも歩道を整備して、史跡保護、観光による活性化につなげたいと、地域では考えています。そのため、今回の道路拡幅に伴う横断歩道の整備を請願します。
③道路排水の整備
貝田松村地区の国道4号沿い、宮城県側勾配と福島県側勾配の道路排水が近隣の水路に多量に流れ込み、道路下の民家、畑、敷地にこれまでの侵食等の被害が出ています。また、農業用水路へ流れ、農業に塩化カルシウム等の被害が出ることの防止、周辺地域への災害対応のためにも、今回の工事に付随して総合的排水整備を請願します。
以上のような内容だ。
まず、③だが、その周辺は県境まで上り勾配になっており、大雨が降ると、高いところから水が流れ込んでくるのだという。それを何とかしてほしい、という要望だ。
①と②は、奥州街道(国道4号)の福島県と宮城県の県境に下紐の関があり、それに関連して、国道4号を挟んで下紐の石や越河番所跡などの史跡がある。それらはJR貝田駅から3、400㍍ほどのところだが、周辺には信号機(歩行者信号)や歩道橋などがなく、道路を横断するのが困難。一番近い信号機までは数百㍍ある。史跡の口コミ評価を見ても「横断歩道などがなく反対側に渡れない」といった書き込みがあった。加えて、国道4号の東側には歩道がない。そのため、東側の歩道と横断歩道の設置を求めているのだ。
「いまは2車線(片側1車線)ですが、それでも大型車両を含めて交通量が多いので横断するのは難儀です。それが3車線(上り1車線、下り2車線)になったら、さらに数㍍道路の幅が広がるわけですから、より横断するのが難しくなります。ですから、貝田駅で降りて史跡に行く人や、近隣住民のためにも、今回の工事を機に、横断歩道や東側の歩道整備をお願いしたいと要望したのです」(岡田さん)
岡田さんは、拡幅工事自体は賛成しており、むしろ何十年も前から、道路拡幅とそれに付随して前述の3つを整備するようお願いしてきたのだという。今回の工事では、地権者に該当するため、関連用地を提供した(用地交換に応じた)。ところが、ずっと要望してきた横断歩道設置などが行われないことは納得できないという。
「最近、ちょっと病気をして、杖がないと歩けないんです。歩くスピードも遅くなり、交通量と私の歩行スピードを考えたら、なかなか横断できません。また、ウチのガソリンスタンドは飲料などを販売する商店も兼ねており、貝田駅で降りて史跡に行く人が飲み物などを買おうと、こちら側(東側)に渡ろうとしても、クルマが途切れない。特に、宮城県側から来ると、下り坂になっているため、スピードも出やすいし、危険です。近隣には子どもさんもいますから、そういった人たちの安全のためにも、東側歩道と横断歩道の設置は、是が非でもお願いしたいのですが」(同)
4車線化はいつになるか

本誌は、今回の工事を担当している福島河川国道事務所福島国道維持出張所に、①今回の工事の概要、②上り車線の拡幅計画の有無、③地元住民から要望があったと聞いたが、それに対する見解について問い合わせたが、担当者に出張の予定があり、あらためて対応させてほしいとのことだったため、すぐには回答を得られなかった。その点は次号以降でお伝えすることにする。
ただ、岡田さんによると、色良い返答はもらえなかったようだ。
「国道事務所は(岡田さんが求めた3つの要望について)『今回ではなく、4車線化の事業が出てきた時にでも……』というような話でした。それではいつになるのか分かりません」(同)
ちなみに、本誌昨年10月号で「県内『国道4号ぶっ通し走行』で見えた課題」という記事を掲載した。国道4号の県内の〝始点〟から〝終点〟までをぶっ通しで走行し、どこが〝難所〟かなどの課題を探ったもの。その際、伊達拡幅で4車線化された先から県境までの区間について、「4車線化の計画はあるか」と、福島河川国道事務所に問い合わせたところ「現時点では事業計画はない」とのことだった。
国道4号は、中通りを貫き、郡山市、福島市の主要都市を通る県内最大の幹線道路である。ただ、所々に〝難所〟があり、快適・安全とは思えないところが点在している。岡田さんが指摘したことのほかにも、全線片側2車線化、渋滞対策など、まだまだ改善すべきところは多いと言えよう。