福島県会津若松市パチンコ店「狂言強盗事件」②

福島県会津若松市パチンコ店「狂言強盗事件」②

 8月にパチンコ店「ビックつばめ会津若松店」で従業員の男が実行犯と内通して、強盗被害を装い約2700万円の現金を盗んだ事件が福島地裁会津若松支部で審理中だ。本誌は内通者の真鍋一皐(23)=会津美里町文殊西甲=、送迎役の村山廉(22)=宮城県多賀城市=の公判を傍聴した。(敬称略・年齢は逮捕当時)

報酬山分けを考えた店員と指示役

 犯行はSNSを通じて集まる匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)によるものとみられ、11月21日時点で指示役、実行役、現金回収役、資金洗浄(マネーロンダリング)役、合わせて13人が逮捕された(相関図参照)。逮捕容疑は窃盗や建造物侵入、或いは組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)=マネーロンダリング。うち6人が起訴され、裁判が進行中か控えている。実行役である桑折町の専門学生の男A(19)は犯行当時20歳未満であったため、少年法に守られ、少年院送致の処分で済んだ。

 起訴状や検察側の証拠、裁判での尋問のやり取りによると、パチンコ店強盗を装った窃盗団は次のような構成だった。

 中心には指示役の佐々木綾哉(25)=東京都豊島区=がいる。佐々木はパチンコ店従業員の真鍋とは知り合いで、2人で今回の狂言強盗を考えた。佐々木はSNSや知人を介して実行役や現金回収役を募り、時には直接会いに行って自ら勧誘していた。犯行の指示は秘匿性の高いアプリ「Session(セッション)」を使っていた。佐々木の上にさらに首謀者がいたかどうかは現時点では不明。

 佐々木の表の顔は会社経営者だった。合同会社エーシー(東京都豊島区南大塚3丁目45番7号ラインビル301号室)の代表社員兼業務執行社員を務める。法人登記簿によると、同社は2023年に設立され、通信販売業、各種商品の輸出入、卸売り及び販売、コンサルティングを業務とする。

 佐々木は「りょうさん」と窃盗団内で呼ばれていた。メンバーの多くは佐々木の本名を逮捕後に知った。

 実行役Aの送迎役である村山廉の初公判(10月29日)では、寄せ集めの窃盗団が一枚岩ではなかったことが分かった。Aは村山が運転する車に乗り会津若松から東京に逃走する間に、盗んだ2668万4000円から287万円を佐々木に無断で持ち出し、村山と山分けしようとしていたのだ。

 盗んだ金の配分は、計画者である佐々木と真鍋が1200万円ずつ分けるとあらかじめ決めていた。2人が共通の知人の家に「泊めてほしい」と訪問した時に打ち明けた。知人は泊めるのを断っている(知人の供述調書より)。

 11月20日に開かれたパチンコ店元従業員、真鍋一皐の第2回公判では、現金回収役の鈴木大(39)、山口裕介(33)が証言台に立った。2人は実行役Aが東京・品川駅のトイレ内に隠した現金や犯行時の衣服を手分けして回収し、池袋にある佐々木の会社まで運ぶ役回りだった。佐々木や真鍋らと共謀したとして、窃盗罪と建造物侵入罪に問われ、現在身柄を拘束されている。

 2人は別々に警察官に付き添われて出廷した。鈴木は長身で細身。黒縁眼鏡を掛けており、応答する様子は腰が低かった。証人尋問を一部抜粋する。

 まず検察官が尋問した。

 ――報酬はいくらだったのか。

 「りょうさんからは5~10万円と聞いていた」

 次は真鍋の弁護人の尋問。

 ――指示役の佐々木と知り合うきっかけは。

 「数年前にSNSでポケモンカード購入のバイトを募っていた。報酬に引かれて応募して知り合った」

 ――事件後に東京・平和島の競艇場で佐々木と会った。他には誰がいたか。

 「現金回収役が何人かいた」

 ――今、被告人として法廷にいる真鍋はその場にいたか。

 「その時は顔を見ていないので真鍋がいたかは分からない」

東京・平和島競艇場に集合

 鈴木の退廷後、山口が警察官に拘束されて入ってきた。長身でいかり肩だった。検察官が尋問した。

 ――最初に佐々木から現金回収役を打診された時はどうしたのか。

 「『捕まるのは嫌だ』と断った」

 ――次に会った時はなぜ応じたのか。

 「パチンコ店内に仲間がおり、IQ150の人物と聞いた。監視カメラの位置を知っており、逃走ルートも万全なので捕まらないと説明を受けた。最初に勧誘した回収役が飛んだ(逃げた)ようで、代わりにやってくれないかということだった。りょうさんには金を借りていて命を救ってもらった恩もあったので応じた」

 ――分配率はどう決められていたのか。

 「りょうさんが1000万円、パチンコ店員が1000万円ずつと聞いていた」

 真鍋の弁護人からの尋問。

 ――佐々木とはどのようにして知り合ったのか。

 「5年ほど前にツイッター(現X)を通じて『副業関連』で知り合った」

 ――「パチンコ店員がIQ150もある」という佐々木の話を本当に信じていたのか。

 「店員は打ち子(店が雇う遊技者)と聞いていたのでそういうこともあると思った」

 ――事件後、東京・平和島の競艇場では佐々木以外に誰に会ったか。

 「サングラスの人物に会った。一緒に現金を回収した人がいたと思う。あとの2人は全く知らない人だった」

 ――今、あなたの隣にいる真鍋はいたか。

 「いなかった」

 今後は指示役の佐々木が証人として呼ばれ、自身が被告人となる公判も行われる。

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