会津坂下町長選・争点を見誤った新人元県議

会津坂下町長選・争点を見誤った新人元県議

 任期満了に伴う会津坂下町長選は6月1日に投開票され、現職・古川庄平氏が元県議の新人・小林昭一氏を破り再選を果たした。

 当4390 古川庄平71 無現
  3158 小林昭一73 無新

 投票率は63・53%。選挙戦となった前々回(2017年)の69・29%を5・76㌽下回り過去最低だった。

 「どんな選挙も無投票はよくないと言うが、今回は『やる意義を見いだせない選挙』だった」

 と感想を述べるのは、町内の会社役員だ。

 町長選の最大の争点は「新庁舎建設問題」だった。老朽化した役場庁舎の建設場所をめぐっては、これまで本誌でも詳報してきた通り、現在地で建て替えるのか、旧坂下厚生総合病院跡地に新築移転するのかで町民の意見が割れた。町が地区ごとに開いた説明会では、古川町長が出席者から厳しく迫られる場面が度々あった。しかし、説明会を重ねるごとに町内には「建設場所は旧坂下厚生病院跡地が望ましい」という空気が醸成されていった。

 そして、今年3月6日に開かれた令和7年第1回定例会では建設場所を旧坂下厚生病院跡地とする方針などを盛り込んだ基本方針が可決。2018年に一度は現在地での建て替えが決まった新庁舎計画は、紆余曲折を経て同病院跡地への新築移転に変更されたのである。

 「内心『いい加減、もう進めようよ』と思っていたのは私だけではないはず。議会が基本方針を議決した時は『やっと決まったか』と安堵した」(前出・会社役員)

 ところが、その直後に小林氏が町長選への立候補を表明し、新庁舎建設問題を争点に掲げたから

 「あれだけ時間をかけて決めたのに『また蒸し返すつもり?』と小林氏の立候補を冷ややかに見る町民は少なくなかった」(同)

 小林氏は当初、町内に二つある小学校が少子化で将来的に統合されることを見越し、空き校舎を役場として活用する私案を持っていた。ところが、支持者の賛同を得られず「町の財政を踏まえ、町所有の土地建物を生かした新庁舎を建てるべき」と曖昧な言い回しにせざるを得なくなった経緯がある。

 小林氏と古川町長の関係性を知る人からは、こんな声も。

 「4年前の町長選は無投票だったが、小林氏は古川支持を鮮明にしていた。一方の古川氏も、2023年の県議選で4選を目指した小林氏を後押しした(結果は落選)。そんな関係性にもかかわらず、小林氏が古川氏の再選を阻もうとする動きを見せたから、町民の多くが『小林氏が町長選に挑む大義名分が見えない』と首を傾げた」(町内の選挙通)

 そもそも小林氏は県議選に落選したあと、「4年後の県議選に再チャレンジする」と挨拶回りしていた。家業のコンビニ経営に専念してはどうかと勧める人には「今さら戻る場所はないので、政治家を続けていきたい」と打ち明けていた。

 「再び県議選に挑むなら大義名分を見いだせたが、明確な公約もないまま新庁舎建設問題を蒸し返して町長選に挑んだ姿を見ると、4年待つ(浪人する)のは耐えられなかったんでしょうね。もちろん、現在地で建て替えたい人たちの口車に乗せられたんだとは思いますが」(同)

 仮に3月の定例会で基本方針が否決されていたら、古川町長は旧坂下厚生病院跡地への新築移転を公約に掲げ、小林氏は現在地への回帰という対立軸を掲げて現職に挑む構図になっていたに違いない。基本方針が可決された時点で、新庁舎建設問題は争点から除外されたことに小林氏が気付けていたら、立候補することもなかったのではないか。

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