住民訴訟経験者が問題点を指摘

住民訴訟経験者が問題点を指摘

 地方自治法で定められている「住民訴訟」制度。ただ、住民側の主張が認められたケースはそれほどない。実際に住民訴訟を行った関係者が、住民訴訟の問題点を指摘する。

直近3年間の勝訴事例は1%未満

 住民訴訟は地方自治法242条で規定されている。地方自治体(都道府県市区町村)が違法・不当な公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行などがあったときは、監査委員に対して監査を求めることができる、とされている。これを住民監査請求という。住民監査請求があったら、監査委員は60日以内に監査を行い、請求者に結果を通知しなければならない。言うなれば、住民が行政をチェックできる仕組みである。

 さらに、同法242条の2では、請求者は、住民監査請求の結果に不服がある場合、裁判所に訴えを請求することができる、とある。これを「住民監査請求前置主義」という。要するに、住民監査請求を行い、その結果に不服がある場合は、住民訴訟を起こすことができる、ということである。

 制度上はそう定められているわけだが、果たしてそれはきちんと機能しているのか。

 総務省が公表している「地方自治月報(60号)」によると、2018〜2020年度の3年間で、全国で住民監査請求が行われたのは、都道府県に対するものが350件、市区町村に対するものが2340件で計2690件。このうち、勧告が行われた事例はごくわずかで、それ以外は請求そのものが受理されない「却下」と、監査の結果、違法等が認められない「棄却」が大部分を占めており、一部「取り下げ」、「合議不調」などがあった。

 その結果を不服として、住民訴訟が起こされた件数は、都道府県が154件、市区町村が430件で計584件。住民訴訟の結果は、却下が63件(都道府県と市区町村の合計、以下同)、棄却が189件、原告(住民側)一部勝訴が30件、全部勝訴が2件だった。残りは係争中で、それを除いた住民側全部勝訴の割合は約0・7%、一部勝訴を入れても約11%となっている。

 県内では、県に対する住民監査請求が5件、市町村に対する住民監査請求が17件で、いずれも却下、棄却(一部却下、一部棄却の事例を含む)だった。県に対する5件では住民訴訟は起こされていない。市町村については17件のうち、3件で住民訴訟が起こされている。1つは田村市の違法な補助金交付に対する損害賠償請求・不当利得返還請求、2つは大熊町の海外視察費返還履行請求、3つは大熊町の不能欠損金公金損害賠償請求。地方自治月報(60号)公表時点で、大熊町の海外視察費返還履行請求は「却下」、それ以外は「係争中」となっている。

 こうして見ても、住民監査請求、住民訴訟で住民側の請求が認められるケースは稀であることが分かる。県や住んでいる市町村の公金支出、事業などについて、「おかしい」と思い是正を求めようとしても、手間がかかり、裁判になれば費用もかかるうえ、認められる事例は少ないとなれば、かなりハードルが高いと言わざるを得ない。

審理のあり方

判決後に会見を行う原告団。左から2人目が久住さん。
判決後に会見を行う原告団。左から2人目が久住さん。

 そんな中、実際に住民訴訟を起こした関係者が問題点を指摘する。その関係者とは、前段で触れた田村市の違法な補助金交付に対する損害賠償請求・不当利得返還請求の原告。地方自治月報(60号)公表時点では「係争中」だったが、すでに判決が確定している。

 この件については、本誌でも取り上げてきた経緯がある。田村市大越町に建設されたバイオマス発電所をめぐる問題だ。同発電所は、国内他所でバイオマス発電の実績がある「タケエイ」の子会社「田村バイオマスエナジー」が運営しており、市は同社に補助金を支出している。

 住民側は訴訟で「事業者はバグフィルターとHEPAフィルターの二重の安全対策を講じると説明しているが、安全確保の面でのHEPAフィルター設置には疑問がある。ゆえに、事業者が説明する『安全対策』には虚偽があり、虚偽の説明に基づく補助金支出は不当」として、市(訴訟提起時は本田仁一前市長、判決時は白石高司市長)に、補助金約17億円を返還するよう求めた。

 住民側の基本姿勢は「除染目的のバイオマス発電事業に反対」というもので、バイオマス発電のプラントは基本的には焼却炉と一緒のため、「除染されていない県内の森林から切り出した燃料を使えば放射能の拡散につながる」としている。そうした背景から、反対運動を展開し、住民訴訟を起こすに至ったのである。

 同訴訟は昨年1月の一審判決、今年2月の二審判決ともに住民側の請求が棄却され、判決が確定した。その際、住民側は「実地検証や本田仁一市長(当時)の証人喚問を求めたが、いずれも却下された。バグフィルターとHEPAフィルターに関する各種資料提出を求めたが、必要ないとされた。とても、適正な審理が行われたとは言い難い。にもかかわらず、判決では『安全対策は機能している』として請求が棄却された。納得できない」と話していた。

 同訴訟の原告(住民)代表の久住秀司さんはこう話す。

 「原告(住民)側と被告(行政)側の対応力や訴訟費用の負担力などの違いもあるが、実際はそれだけではないと思います。司法権の独立は絵空事に過ぎず、司法の行政に対する追従・忖度が多いことが、われわれだけでなく、全国各地の住民訴訟の結果に表れているのではないでしょうか。これでは行政に対する住民のチェック制度として認められている住民訴訟が、建前だけの空虚なものになってしまいます」

 そう問題点を指摘したうえで、久住さんはこう続けた。

 「そこで提言したいのが、住民訴訟において原告側・被告側のいずれからであっても、現場検証、証人尋問等の申請が出された際は、真実追求のために原則的に裁判所はそれを実施する義務があることを明文化すべき、ということです。裁判所はあくまでも真実追求の場であってほしいと願います」

 前述したように、ルール上は住民が行政をチェックできる仕組みがあるが、かなりハードルは高い。一方で、住民にはもう1つできることがある。それは、適正な行政執行をする首長、それを厳しくチェックする議会(議員)を選ぶこと。選挙でそれを見極める力が求められる。

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