【福島国際研究教育機構】職員が2日で「出勤断念」【エフレイ】

【福島国際研究教育機構】職員が2日で「出勤断念」【エフレイ】

 4月1日、政府は特別法人「福島国際研究教育機構」(略称F―REI=エフレイ)を設立した。現地仮事務所開所の様子は大々的に報じられたが、その一方で早くも出勤していない職員がいるという。

霞が関官僚の〝高圧的態度〟に憤慨

霞が関官僚の〝高圧的態度〟に憤慨【エフレイの仮事務所が開設されたふれあいセンターなみえ】
エフレイの仮事務所が開設されたふれあいセンターなみえ

 エフレイでは①ロボット、②農林水産業、③エネルギー、④放射線科学・創薬医療と放射線の産業利用、⑤原子力災害に関するデータや知見の集積・発信――の5分野に関する研究開発を進める。7年間で26項目の研究開発を進める中期計画案を策定した。理事長は前金沢大学長の山崎光悦氏。

 今後50程度の研究グループがつくられる予定で、第1号となる研究グループ(放射性物質の環境胴体に関する研究を担当)が県立医大内に設けられた。

 産業化、人材育成、司令塔の機能を備え、国内外から数百人の研究者が参加する見通し。浪江町川添地区の用地14㌶を取得して整備する方針で、2024年度以降、国が順次必要な施設を整備、復興庁が存続する2030年度までに開設していく。予算は7年間で1000億円規模になる見通し。

 4月1日には町内のふれあいセンターなみえ内に仮事務所を開設し、新年度から常勤58人と、非常勤数人の職員が配置された。

 ところが、仮事務所が本格稼働してからわずか3日目にして出勤しなくなり、電話にも出なくなった職員がいるという。

 どういう理由で出勤しなくなったのか。当事者である中年男性に接触したところ、本誌取材に対し「特技の英語を活用して働く環境に憧れ、県内の職場を辞めて求人に申し込んだ。ただ、理想と現実のギャップに愕然として出勤する気が失せた。後は察してください」と述べた。

 一部始終を聞かされたという知人男性が、この男性に代わって詳細を教えてくれた。

 「職員の多くは中央省庁からの出向組で、事前に立ち上げられた準備チームからスライドしてきた。互いに気心が知れている分、新しいメンバーには冷たいのか、着任1日目の職員(当事者の中年男性)に敬語も使わず、いきなり『あんた』呼ばわりだったらしい。ろくに顔合わせもしないうちに弁当の集金、スケジュール管理などの業務を任せられ、同じく地元採用枠で入った女性職員について『あごで使っていいから』と指示を出された。とにかく、すべてが前時代の高圧的・パワハラ的対応。『この上司と信頼関係を築ける気がしない』と感じたそうです」

 「HTML(ウェブページを作るための言語)知ってる?」と質問されたが、職員採用の募集要項にHTMLの知識は明記されていなかったため、素直に「分かりません」と答えた。すると「しょうがねーなー」と返されたので唖然とした。

 別部署の女性職員は「外で〝第一村人〟にあいさつされちゃった」とはしゃいで笑っていた。「地域との連携をうたっているが、現場の人間は地域住民を馬鹿にするのか」と不信感が募り、実質的な〝試行期間〟のうちに就労を断念することにした――これがこの間の経緯のようだ。

「質問にお答えできない」

「質問にお答えできない」【エフレイの仮事務所に掲げられている看板】
エフレイの仮事務所に掲げられている看板

 エフレイに事実関係を確認したところ、金子忠義総務部長、堀内隆之人事課長が対応し、「情報公開の規定に基づき個人が特定される質問にはお答えできない」としたうえで、一般的な判断基準について次のように話した。

 「各種ハラスメントに関しては法令で定められているので、双方の話を聞き、それに当てはまるかどうか判断することになります。(HTMLの知識の有無を尋ねたことについては)職員採用の募集要項に明記されていない資格・能力を〝裏条件〟のように定めているということはありません。地域との連携はエフレイの重要な課題だと認識しています」

 “出勤断念”に至った背景には、語られていない事情もあると思われるが、いずれにしても働きたい環境とは思えない。

 4月8日付の福島民友で、山崎理事長は「世界トップレベルの研究を目指し、初期は外国人が主体になるが、ゆくゆくは研究者・研究支援者の何割かを地元出身者から受け入れたい」、「われわれも高等教育機関や高校、中学校などを訪ね、夢を持つことの大切さを伝えていく」と述べていた。だが、まずは職員による高圧的対応、地方に対する上から目線を改めていかなければ、そうした理想も実現が難しいのではないか。

エフレイのホームページ



関連記事

  1. 甲状腺がん検査を巡る見過ごせない指摘

    甲状腺がん検査を巡る見過ごせない指摘

  2. 【浪江町営】大平山霊園を地縁団体が改修!?

    【浪江町営】大平山霊園を地縁団体が改修!?

  3. 【例年とは違った原賠審視察】中間指針改定議論は佳境へ

    【例年とは違った原賠審視察】中間指針改定議論は佳境へ

  4. 浪江町が特定帰還居住区域の復興再生計画を策定

    浪江町が特定帰還居住区域の復興再生計画を策定

  5. 【汚染水海洋放出】地元議会の大半が反対・慎重【福島第一原発のタンク】

    【汚染水海洋放出】地元議会の大半が反対・慎重

  6. 【原発事故14年目の現実】大熊町行政委員の人選に疑問の声

    【原発事故14年目の現実】大熊町行政委員の人選に疑問の声

  7. 【原発事故】追加賠償で広がる不満

  8. 解散危機に揺れる【阿武隈川漁業協同組合】

人気記事

  1. 各地の選挙に出続ける髙橋翔氏の素顔
  2. 政治
  3. 本宮市「コストコ進出説」を追う 地図
  4. 事件屋に乗っ取られた「鹿島ガーデンヴィラ」
  5. 政経東北【2025年5月号】
  6. 郡山市フェスタ建て替えで膨らむシネコン待望論
  7. 東山・芦ノ牧温泉を悩ます廃墟ホテル【会津若松】
  8. 丸峰観光ホテル社長の呆れた経営感覚【会津若松市】
  9. 【和久田麻由子】NHK女子アナの結婚相手は会津出身・箱根ランナー【猪俣英希】

最近の記事

  1. 政経東北【2025年5月号】 政経東北【2025年5月号】
  2. 【ベスト学院】【県立安積中学校】中学受験に強さを発揮 【ベスト学院】【県立安積中学校】中学受験に強さを発揮
  3. 南相馬市立病院で重大医療事故 南相馬市立病院で重大医療事故
  4. 【福島市松川町】メガソーラーで泥沼の工事費未払い騒動
  5. 迷走が続く【会津坂下町】新庁舎の場所選定 迷走が続く【会津坂下町】新庁舎の場所選定
PAGE TOP