【浪江町】国際研究教育機構への期待と不安

福島国際研究教育機構の予定地

 福島イノベーション・コースト構想の中核拠点となる福島国際研究教育機構が川添地区に整備される。どんな場所なのか、現地に足を運んだ。

利権絡みのトラブルを懸念する声

浪江町国際研究教育機構地図

 福島国際研究教育機構(略称F―REI=エフレイ)は▽福島・東北の復興の夢や希望となり、▽科学技術力・産業競争力の強化を牽引し、経済成長や国民生活の向上に貢献する――ことを目的とした研究教育機関。福島復興再生特別措置法に基づく特別法人として国が設置した。理事長は金沢大前学長の山崎光悦氏。

 ①ロボット、②農林水産業、③エネルギー、④放射線科学・創薬医療、⑤原子力災害に関するデータや知見の集積・発信――の5分野に関する研究開発を進める。産業化、人材育成、司令塔の機能を備え、国内外から数百人の研究者が参加する見通し。2024年度以降、約10㌶の敷地に国が順次必要な施設を整備し、復興庁が存続する2030年度までに開設していく。

 立地選定に関しては、原発被災地の9市町から15カ所の提案があった。交通アクセスや生活環境、福島イノベーション・コースト構想の推進状況など11項目の調査・評価により、浪江町の川添地区が選定された。県による選定を経て、国の復興推進会議で正式に決定した。

 復興庁の資料によると、予定地はJR浪江駅近くの農地。社会福祉協議会や交流センター、屋内遊び場などを備えた「ふれあいセンターなみえ」の南西に位置する。

 今年4月には仮事務所をふれあいセンターなみえの建物内に開設。施設基本計画を策定し、完成した施設から順次、運用をスタートする。

 2022年度の関連予算は38億円。23年度予算案では、産学官連携体制構築に向けて146億円が計上された。29年度までの事業規模は約1000億円となる見込み。

 県は国家プロジェクトを機に、数百人の研究者らの生活圏を広げるなどまちづくりに生かすことで、原発被災自治体の復興・居住人口回復を図りたい考えだ。

 地権者によると、昨年12月に説明会が行われたが、ホームページなどで公表されている事業概要の説明に終始し、具体的な話には至らなかったという。

 「予定地は農業振興地域で、震災・原発事故後は圃場整備が検討されたが、『農業を再開するつもりはない』という人が多くてまとまらなかった。そうした中で浮上したのがエフレイの立地計画です。農地の処分を考えていた地権者にとっては、渡りに船でした。国のプロジェクトなので、売却価格も期待できると思います」(ある地権者)

今回は期待に応えられるか

 そうした中で、「利権絡みの動きには注意しなければならない」と釘を差すのが町内の事情通だ。

 「『政経東北』で、同町末森・大堀地区で整備が計画されている競走馬施設計画地内の土地を、山本幸一郎浪江町副議長が事前に情報を得て取得していた疑惑が報じられていました(本誌昨年11月号参照=山本氏は「父親の主導で取得した土地が偶然計画地に入っていただけ」と主張)。山本氏に限らず、国家プロジェクトのエフレイ予定地で地元関係者のヘンな疑惑が浮上したら、復興ムードに水を差し、町が全国の笑いものになる。そのため、町関係者は警戒しているようです」

 同町には福島水素エネルギー研究フィールドや福島ロボットテストフィールドなどが立地しているほか、約125億円を投じて浪江駅周辺再開発を進める計画も進行中だ。国や県の狙い通り、国内外の研究者や関係者が集い、関連企業の進出や商業施設の充実が加速して「研究・産業都市」ができれば、居住人口の回復が見込めよう。

 もっとも、南相馬市の福島ロボットテストフィールドをはじめ、福島イノベーション・コースト構想の一環で整備された施設はいずれも中心部から外れた場所にあり、住民が目にする機会は少ない。

 地元企業参入や定住人口増加、にぎわい創出などの効果はある程度出ているのだろうが、期待された役割を十分果たしているようには感じられない。そのため「今回もコケるのではないか」と心配する声が各方面から聞こえてくる。

 そもそもそういう形で居住人口を増やすことが、住民が求める復興の在り方なのか、という問題もある。

 さまざまな意味で同町川添地区の今後に注目が集まる。


 

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