未成年の女性にわいせつな行為をしたとして不同意性交等の罪に問われた県立修明高(棚倉町)の元常勤講師の男の初公判が2月20日、地裁郡山支部(下山洋司判長)で開かれた。元常勤講師の男は白河市大信の金子智哉被告(28)。金子被告は起訴内容を一部否認し、弁護側は不同意わいせつか不同意性交の未遂に留まると主張した。
連絡拒否後の訪問と謝罪文に恐怖
警察官3人に身柄を拘束された金子被告は、眼鏡を掛け、紺色のジャージを着て出廷した。線が細く、成人男性の見た目を「いかつい」「はかなげ」に二分するとしたら、紛れもない後者だった。声は幼いが、話しぶりはしっかりしていた。
検察官が読み上げた起訴状によると、金子被告は2024年4月ごろ、郡山市の郡山庭球場北側駐車場に停めた自家用車の車内で、当時17歳の女性Aさんに手首を押さえつけるなどの暴行を加え、拒否が困難な状況で着衣の上から胸を触ったり、直接陰部を触るなどのわいせつな行為をした。さらにAさんの頭を押さえて自身の陰茎を口腔性交させたともした。
金子被告は起訴内容を一部認めつつも、直接陰部を触ったことや口腔性交については否認した。
「正確な日付は覚えていないが、4、5月の大型連休の前後に庭球場に停めた車内で一方的にキスをしようとしたり、服を脱がせようとしたりしたことはあった」と述べ、弁護人が不同意わいせつについては認められる可能性があると補足した。
ただし金子被告は、
「それ以前になるが、市内の他の駐車場に停めた車内でお互い同意のもとでキスをし、胸や陰部を触ったり口腔性交したりしたことはある」
とも述べ、別の機会では同意があったと主張した。
金子被告は大学卒業後に教員免許を取り、2021年に県内の公立高校に常勤講師として採用された。24年4月に修明高に異動が決まり、教え子だったAさんとLINEの連絡先を交換した。同月にAさんから相談があるとの連絡を受け、自分の車に乗せて犯行現場に向かった。
検察側の証拠によると、駐車場で金子被告は車内の後部座席にAさんを座らせ相談を聞きながら、自分も後部座席に座り、触るなどの行為を始めた。ところがAさんから「やめて」と言われたり、顔を背けられたり、手で押しのけられたりしても続け、冒頭のわいせつ行為に及んだという。
その後、Aさんは「怖いです」「関わらないでほしいです」などのLINEメッセージを送り、金子被告と連絡を絶った。金子被告は5月上旬にAさんのアルバイト先を訪れ、「LINEをブロックされ話せなかったので来た。ひどいことをしてしまった。謝りたい」などと書かれた手紙を渡してきた。
恐怖を感じたAさんはXのダイレクトメッセージで、「バイト先に来なくていいです」「怖くて関わりたくない」「ブロックしているので来ないでください」「怖い思いをしたことはどうやっても忘れられないので考えなくて大丈夫です」「私がやめてと言った時、やめなかったですよね」などと金子被告に伝えた。
昨年10月30日に高校で性被害に関するアンケート調査が始まると、Aさんは教員に相談し、金子被告の淫行が発覚。県教委が聞き取りをすると同時に県警が捜査を進め、金子被告は12月9日に不同意性交等の疑いで郡山署に逮捕された。同27日に不同意性交等罪で起訴され、今年2月17日には県教委から懲戒免職された。
検察側の証拠によると、昨年11月14日に行われた県教委の聞き取り調査で、金子被告は「Aから相談を受けた時に自分がパニック状態になり、キスをして胸を触り、自動車から降りようとするAの手を引っ張った」と説明していたという。
3月中には地裁郡山支部で被害女性の他、相談を受けた教員らへの証人尋問が行われる予定。逮捕時に金子被告が勤務していた修明高では、生徒同士のトラブルがいじめ重大事態に発展している(本誌1、2月号参照)。同校の同窓会に所属する男性によると、教員が元教え子への淫行で逮捕され、いじめ重大事態も起こったことで学校内のガバナンスと指導体制に不信の目が向けられているという。いじめについては、県教委が第三者委員会を設立し、調査が行われる見通しで、こちらも推移を見守るべき案件だ。