ちぐはぐな伊達市こども園施策

 少子化にもかかわらず、昨年から今年にかけて3つの認定こども園が開園した伊達市。定員を大幅に下回る園児数にとどまり、その余波なのか、既存の認定こども園や保育所は定員を守るよう厳しく指導されている。関係者や保護者は翻弄され、5月には議会から異例の改善申し入れが行われた。施策のちぐはぐさが浮き彫りになっている。

議会が担当部局に 異例の改善申し入れ

伊達・ひかり認定こども園
伊達・ひかり認定こども園
保原認定こども園
保原認定こども園
福島文化高子こども園
福島文化高子こども園

 伊達市では、昨年4月に伊達・ひかり認定こども園(伊達市伏黒、定員126人)と保原認定こども園(伊達市保原町大泉、定員234人)、今年4月に福島文化高子こども園(伊達市保原町高子岡、定員126人)が開園した。いずれも市が市有地に誘致した。全国的に少子化が進む中で整備を進めた理由は、保原地区と伊達地区で、保育需要量に対して供給量が不足すると見込まれたためだ。

 保原地区では伊達市新工業団地の造成や商業施設の進出、阿武隈急行高子駅北側での全217区画住宅団地「Up DATE City (アップデートシティ)ふくしま」の分譲開始など、人口増加が期待できる要素がそろっていた。

 伊達地区では2026年下期にイオンモール伊達の開業が予定されており、JR伊達駅近くに74区画の分譲が進んでいた。こうした状況を踏まえ、市は数年前から認定こども園開園に向けた準備を進めていたのだ。

 しかし、実際にはアップデートシティの分譲は思ったように伸びず、0~5歳の人口は2019年2192人から2024年1706人と減少した状態で開園を迎えた。その結果、3園とも定数を大幅に下回っているようだ。

 各園に取材を申し込んだが、スケジュールが合わず、応じてもらえなかった。ただ、保育士に関しては1人が保育できる子どもの人数が決まっており、各園とも定数に近い入園を想定して保育士を採用しているだろうから、定数割れの状況は経営的にかなり厳しいと思われる。

 伊達・ひかり認定こども園は学校法人神愛学園(幼保連携認定こども園神愛幼稚園、神愛保育園の運営事業者)、保原認定こども園は社会福祉法人伊達福祉会(梁川保育園の運営事業者)、福島文化高子こども園は学校法人福島文化学園(福島市の福島文化幼稚園などの運営事業者)が運営している。県北地方の認定こども園関係者によると、「どの法人も運営を引き受けたがらず、3法人がやむなく引き受けた」という状況だったようで、同情する声も出ている。

 「市内の認定こども園も思わぬ形で影響を受けた」と説明するのは市内の事情通だ。

 ある認定こども園では「新しい認定こども園ができれば園児の取り合いになる」とみて、定員を減らす方針を決定。再編の過程で1年だけ定員の120%を超える見通しとなった。ただ、定員超過に関しては、国のルールで「連続5年を超えなければ減額調整の対象とならない」とされており、市の担当部署であるこども未来課の担当者も理解を示していたので、特に問題視していなかったという。

 ところが、昨年12月、市から「定員超過は認めない。定員100%を超える園に関しては他園に園児を割り振って調整する」との通知が、次年度の園児の内定一覧と一緒に送られてきた。すでに定員超の園児を受け入れる想定で準備を進めていたため、軌道修正を図るのは困難で、多額の損失を負ったという。

 その後、市こども未来課の担当者は「4月以降の途中入園で定員超過する分には問題ない」とその認定こども園に説明したが、今年2月には「やっぱり途中入園でも定員超過は不可」と再度方針を変更した。

 「待機児童問題が深刻なころは、認定こども園は定員超過でも頼まれて園児を受け入れてきたのに、少子化になると、一転して厳格化するのだから勝手なものです。せっかく慣らし保育で一足先に入所していた1歳児の子が転園を余儀なくされ、第4希望の園に移ることになり、保護者は対応に追われたようです」(市内の事情通)

 市のこども未来課の対応に関しては、複数の業界関係者からも疑問の声が聞こえてくる。

 「令和5年度の安全対策事業について、国から補助金が来ているという連絡があったが、補助申請を呼び掛けるメールが1月18日16時に来て、提出期限が翌日1月19日の正午だというのです。備品の種類や数、収支予算書などを半日で準備するのは不可能です。国がそんなタイトなスケジュールで送ってくるはずがないから、市の責任でしょう」

 「年1回の監査では県の担当者が1日かけてすべてのファイルを詳細に確認するが、窓口役となる市の担当者は同席しているだけで、質問をすることもなく帰っていきました。本当に現場を理解しているのか、疑問に思ってしまいます」

 今年5月には、市内在住の園児の保護者を名乗る人物から前述した定員問題などについて、取材を求める連絡が編集部に寄せられた。おそらくこれらの話を聞いて市の対応に疑問を抱き、情報を提供してきたものと思われる。

こども未来課の反応

伊達市役所
伊達市役所

 各園から市の対応について不満の声が噴出しているのを受けて、市議会の文教福祉常任委員会が、市内の私立幼稚園・認定こども園で組織される団体からヒアリングを実施。5月21日には、議会から伊達市教育委員会の渡部光毅教育長に対し、改善を求める申し入れが行われた。内容は以下の通り。

   ×  ×  ×  ×

 伊達市の幼児教育に係る申し入れ

 本市議会文教福祉常任委員会は、複数の市内幼児教育事業者から経営に係る事柄について、聞き取りと意見交換を実施、併せて、担当部署であるこども部からも、事業者から出された事柄について確認、意見交換を実施しました。

 子どもの数が減り続け、市内の幼・保園事業者が厳しい経営状況に置かれていることは、こども部も共通の認識ではあるが、今後、現状のままでは市内の幼・保園事業者及び子ども、保護者に影響を及ぼすことだと本市議会は判断し、以下の事柄について申し入れいたします。

 1、利用定員数を超過した際、事業者の経営を圧迫するようなことがないよう、市独自でも経過措置等を図ること。

 2、ならし保育で希望する園に馴染んだ子どもが、利用定員数を超過したからと、希望した園に入園できない事態を避けること。

 3、補助金や制度変更等の事業者への通達、照会等が遅れることで、補助金申請や対応ができない事態にならないよう、迅速に通達、照会等を行うこと。また、制度に熟知した職員になるように、職員に対する研修及び指導等を行い、スキルアップを図ること。

 4、利用定員数変更や保育士の雇用等、事業者の経営計画を阻害するようなことがないよう、市内事業者との協議や話し合いを綿密に行うこと。

 5、市と事業者との関係性が悪化することは、子ども、保護者にとって大きな不利益につながる。伊達市の幼児教育がそのようなことにならないよう、こども部だけではなく市当局全体で考え、改善に努めること。

   ×  ×  ×  ×

 議会から異例の申し入れが行われたことを市のこども未来課はどのように受け止めているのか。記者の質問に対し担当者がこう回答した。

 「利用定員を超過した際の対応については国の方針に基づき見直しました。これまでは柔軟に対応していましたが、国からの指導もあり、定員管理をより厳格にする必要が出てきました。利用定員は子どもを安全に見られる人数として各園で定めているものなので、その範囲内で運営していただくよう進めています」

 「これまであまり利用定員を超えるケースはなかったのですが、今回超過する事例が出てきたため、あらためて方針を示しました。国の方でも超過期間の見直しがあり、以前は5年だったものが2年に短縮されました。超過期間が長くなると補助金の減額などペナルティーが発生する可能性もあるため、各園の不利益にならないよう対応した次第です」

 超過期間の見直しも踏まえて、国の指導に基づき、定員超過についてより厳格に行うように見直した――との回答だが、超過期間が2年許されるのであれば、1年定員を超過するのは問題ないはず。なぜそこまで厳格に進める必要性があったのか。

 新たに開園した認定こども園が定員割れしているので、少しでも園児を増やそうと、定員超過しているところを厳しく管理しようとしたのが本音なのではないか。

 連絡が遅いことについては次のように回答した。

 「極力早い段階で連絡するようにしていますが、国からの要請に対して園側に確認が必要な場合もあります。また期間の長短によっても対応が変わってきます。確かにギリギリになってしまうケースもあったかもしれません。今年度からは議会でも指摘を受けており、できるだけ早く各園に伝えるよう努めています」

 「ギリギリになってしまうケースもあったかもしれません」というが、補助申請を呼び掛けるメールを締め切り前日の夕方に送信するのは限度を超えている。

どこか他人事な回答


 少子化の中でこども園を増やした理由についてあらためて尋ねたところ、次のように答えた。

 「待機児童を減らすという国の政策があり、専門家を交えた子ども・子育て会議での議論を経て、こども園を新設する形で対応してきました。特に保原や伊達などの人口が集中している地区では、申し込んでも入れない子どもが出てくる状況です。2歳未満の子どもを預けたいという需要も増えており、そういった方々のための枠の確保も必要です。昨年から今年にかけて開園した3園は計画的に子どもを増やしていく考えですが、予定より入園者が少ないケースもあるので、各園の意向を確認しながら、来年度の受け入れ枠などを調整しています」

 議会から〝ダメ出し〟を食らった格好だが、どこか他人事のような回答のこども未来課担当者。こども園とのコミュニケーションもうまく取れていなかったのではないか、と思わざるを得ない。

 もっとも、今年春にこども部部長、担当係長が新たに赴任し、現場の声に耳を傾ける姿勢が見られるため、業界関係者からはちぐはぐな施策の改善を期待する声も聞かれる。

 少子化が進む中での拙速な園新設と、その後の調整不足が招いた今回の騒動。市内の保育行政に関しては、園児数が少ない市立の月舘こども園などに多くの職員が配置され、非効率的であることなども指摘されている。市議会からの申し入れは、市が施策を再点検する必要性を突きつけた形だ。子育て世代に安心感を与える施策を打ち出せるか、市の対応が注目される。

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