少子化に伴い、県内では学校の統合が相次いでいる。それ自体はやむを得ないことだが、問題は統合によって空き校舎となったところをどうするか、である。ここでは、そんな数ある「空き校舎問題」の1つに迫る。
空き校舎になって20年超

11月9日付の福島民報に次のような記事が掲載された。
《相馬市の旧相馬女子高の校舎が解体され、跡地に屋外の多目的運動場が整備される。2026年2月の完成を目指す。政調会で示した。運動場は旧相馬女子高の校舎の敷地3万0916平方㍍に整備する。近隣の相馬高の生徒が使用できる。議会の承認を経て12月下旬に解体工事に着工する。費用は約10億円を見込んでいる》
この記事が出た前日の11月8日に、県議会12月定例会に向けた政調会が行われ、そこで旧相馬女子高の校舎を解体し、隣接する相馬高の屋外運動場(グラウンド)として使用することが示されたのである。
その少し前、地元関係者と、この件が話題になった。地元関係者の話はこうだ。
「旧相馬女子高は校舎が使われなくなって20年くらい経つ。東日本大震災のときは避難所として使われたが、その役目を終えてからは、ずっと空き校舎になっている。いまは向かいにある相馬高の管理下に置かれているが、同校はグラウンドが手狭なため、旧相馬女子高の校舎を解体・整地して、第二グラウンドのような形で使いたいと要望して認められた。それが10年くらい前のことだったと思う。ただ、その後は一向に動きがないのはどうしてなんだろうと不思議に思っている」
旧相馬女子高はその名が示す通り、女子校だったが、2003年に共学化され、「相馬東高」に名称変更された。共学化後、1年間はもとの校舎が使われていたが、2004年に新校舎が完成し移転した。新校舎はもとの校舎から直線距離で2㌔ほど離れたところで、それに伴い旧校舎は使われなくなった。2022年に相馬東高と新地高が統合し、相馬総合高になった。統合後は相馬東高の校舎が使われている。
つまり、2004年から空き校舎となっていたわけだが、前出・地元関係者の話を整理すると、①旧相馬女子高の校舎は空き校舎になって以降、隣接する相馬高の管理下になっている、②東日本大震災では避難所として使われたが、その役目を終えてからは未使用の状態、③相馬高ではグラウンドが手狭なため、旧相馬女子高の校舎を解体・整地して、第二グラウンドのような形で使いたいと要望して認められた、④それが10年くらい前の話だが、一向に進まない――ということになる。
原発事故後は保管庫に

確認したところ、①、②については間違いなかった。③も事実だが、どの時点で承諾を得られたのかは不明。少なくとも、予算が付いたのは2023年度で、関係者間(県と相馬高関係者)で了承に至った正確な時期までは特定できなかった。ちなみに、旧相馬女子高の校舎は相馬高の管理下になっているが、学校に解体・整地のための予算があるわけではないので、県教育委員会にお願いして実行してもらう立場になる。
「それ以前から要望はあったのでしょうが、最近では2020年に相馬高から要望があり、(県教委内の)施設整備等の優先順位を踏まえ、2022年度に次年度の予算要求をして、2023年度に予算が付き、今年度から実際の工事に入りたいという流れになります」(県教委施設財産室の担当者)
同担当者によると、旧相馬女子高の校舎は、東日本大震災が発生した際に避難所として使われた後、2012年から2016年までは、原発事故に伴い設定された警戒区域内にあった文化財などの保管庫として使われていたという。その後、警戒区域を抱える市町村で、避難指示解除が進んだことから、保管していた文化財を戻すなどして保管庫としての役割を終えた。2017年からは完全に未使用の状態になった。
一方で、相馬高の近くには、市の二の丸球場や長友グラウンドがあり、それが使えないわけではない。実際、野球部はこの間、何十年も二の丸球場で練習してきた。ただ、市の施設で専用グラウンド(球場)ではないため、当然使えない日も出てくる。さらには、県史跡に指定されている中村城跡内にあることから、いずれは中村城二の丸として復元される計画があり、そうなると練習場所を失ってしまう。
そんな事情から、以前から旧相馬女子高の校舎を解体・整地して、第二グラウンドのような形で使いたいと要望していたようだ。それが今回ようやく前進したのである。
現在、県教委は「県立高校改革」として、前期(2019〜2023年度)、後期(2024〜2028年度)に分け、県立高校の再編整備を進めている。2018年度に全日制88校、定時制7校、通信制1校だったのが、同計画完了後の2028年度には全日制70校、定時制6校、通信制1校になる。
当然、それに伴い、使われなくなる校舎が出てくる。今回の計画以前にも統合された高校があり、それを含めると空き校舎はほかにもある。旧相馬女子高は共学化に伴い、新校舎が建設されたので、少し事情が異なるが、空き校舎という意味ではその1つと言える。
いまの少子化を考えると、学校の再編(統廃合)はやむを得ないが、空き校舎利活用の点ではまだまだ課題も多い。県では地元市町村が利活用する場合に、さまざまな補助メニューを設けてはいるものの、地元市町村の負担が少なくないため、なかなか進んでいない。そもそも、市町村でも市町村立の小中学校の統廃合が進められており、その利活用問題を抱えているところも多い。
今回は隣接高校の第二グラウンドといった形で決着したが、東日本大震災・原発事故後に特殊な使われ方をした事情はあったにせよ、学校として使われなくなって20年以上が経っている。同様に空き校舎があちこちに点在する状況を危惧する。