元社員が明かす【山口倉庫】の「異様な職場」

元社員が明かす【山口倉庫】の「異様な職場」

 本誌5月号に「大量カメラで社員を〝監視〟 する山口倉庫 『気味が悪い』と退職者続出!?」という記事を掲載したところ、それを読んだ元社員から「今も勤務している社員のために、さらに詳報してほしい」との要望が寄せられた。

監視カメラ四十数台、独特な朝礼

監視カメラ四十数台、独特な朝礼【山口広志社長】
山口広志社長

 山口倉庫㈱は1967年設立。資本金1000万円。郡山市三穂田町の東北自動車道郡山南IC近くに建つ本社倉庫などで米や一般貨物の保管・管理を行っている。駐車場経営や不動産賃貸なども手がける。

 現社長の山口広志氏は2000年に就任した。祖父の松雄氏が創業者で、父の清一氏が2代目。3代目の広志氏は清一氏の二男に当たる。

 そんな山口倉庫について、5月号では▽社内に大量の監視カメラが設置されている、▽社員だけでなく訪問客の様子も監視している、▽山口社長は自宅から、監視カメラで撮った映像や音声をチェックしている模様、▽こうした職場環境に気味の悪さを感じた社員が次々と退職し、その人数はここ4、5年で十数人に上る――と報じ、このような行為がハラスメントや個人情報保護法違反に当たるかどうか検証した。

 詳細は同号に譲るが、結論を言うと、ハラスメントには当たらず、個人情報保護法にも違反しないが、監視カメラを大量に設置する目的、設置場所、映像と音声の利用範囲などを社員にきちんと説明しないと後々トラブルに発展する恐れがあると指摘した。

 「社内の人でなければ知り得ないことが書かれていたので、読んだ時は本当に驚きました。ああいう記事を出していただき感謝しています」

 こう話す元社員は数年前に山口倉庫を退職し、現在は「ほんの少しでも同社とは接点を持ちたくない」と別業種で働いている。

 「接点を持ちたくない」と言いながら、本誌の取材に応じた理由。それは、今も勤務している社員を思ってのことだった。

 「私は運良く転職できたが、社員の中には転職したくても、家族を養うため我慢して働き続けている人もいる。そういう社員のためにも、あの異様な職場環境は改められるべきと思ったのです」(同)

 元社員によると、新たに判明した山口倉庫の職場環境は次の通り。

 〇監視カメラは山口倉庫に四十数台、関連会社で不動産業の山口アセ
ットマネジメント㈱に2台設置されている。カメラは映像だけでなく、音声も拾うことが可能。山口倉庫の事務スペースには、複数の画面に分割された大きなモニターがあり、各カメラの映像を一斉に確認できる。

 〇社員は会社からスマホを貸与され、何かあると山口社長から直接連絡が入る。そのスマホでは、監視カメラの画像も確認できる。カメラで常に見られている社員は「余計な行動や発言をすれば、山口社長に見つかって〝直電〟が来る」と常にビクビクしている。

 〇監視カメラはトイレ、更衣室、休憩室には設置されていないが、男子更衣室と休憩室の一部は廊下に設置されたカメラで確認できる。そのため男性社員は、更衣室や休憩室を利用する場合はカメラの死角になっている個所に身を潜める。

 〇社員は昼休みになると、監視カメラから逃れるため駐車場に止めたマイカーの中で昼食を取ったり、休憩をしている。

 〇社員は、入社するまでは大量に監視カメラが設置されていることを知らない。そのため入社後に実態を知り、気味が悪いとわずか数日で辞める人も少なくない。

 〇来客者も敷地に入った瞬間から監視カメラで映され、車のナンバーも記録される。

 〇山口社長はほとんど出社せず、自宅から監視カメラの映像や音声で社内の様子や社員の働きぶりをチェックしている。

 山口社長がここまで監視カメラを張り巡らせる理由は何なのか。

 「大量設置の理由を説明されたことがないので分からないが、『自分が他人からどう思われているかを異常なまでに気にする人』なのかもしれません」(同)

 その象徴として元社員が挙げたのが、山口社長の教養に対するコンプレックスだ。元社員によると「山口社長は地元の高校を経て大学、大学院に進んだはず」と言うが、信用調査等でも学歴は判然としない。

 「とにかく『本を読め』と強要する。それだけならいいが、感想文を共有フォルダに記録させるのです。そしてたまに出社すると、社員に突然質問し、答えられないと『そんなことも分からないのか』とバカにしたような態度を取る。長期の休み明けには社員一人ひとりに抱負を発表させたりもします」(同)

使用者が配慮すべきこと

東北自動車道郡山南IC近くにある本社倉庫【使用者が配慮すべきこと】
東北自動車道郡山南IC近くにある本社倉庫

 社員に教養を身に付けさせようとする試みは否定しないが、独りよがりになってはありがた迷惑。その一例が、山口社長が最も力を入れているという毎日の朝礼だ。

 「一般社団法人倫理研究所発行の月刊誌『職場の教養』を題材に、1人が正論、1人が反論、1人が正論か反論を発表し、最後にその日の司会者役が意見をまとめるのです。これを毎日、社員が交代しながら行っています。山口社長はその場にいないが、一連の様子は監視カメラを通じて自宅から見ています」(同)

 社員の中には大量の監視カメラもさることながら、この朝礼が苦痛で辞める人もいるという。

 「発表する社員は朝30分早く出勤して『職場の教養』を読み込み、何を話すか考えます。社員が辞めて少なくなれば発表のローテーションも早まるので、残っている社員は相当苦痛だと思います」(同)

 ちなみに5月号が発売される前後から、郡山市南二丁目にある山口アセットマネジメントの事務所は常にブラインドがかかっており、社員が常駐している様子がなかった。そうした状況は7月21日現在も変わっていないが、

 「女性社員は(社長の妻と娘を除き)全員辞めたと聞いています。そのため山口アセットマネジメントに常駐する社員がいなくなり、急きょ山口倉庫から派遣していたが、倉庫自体も社員が減り、派遣する余裕がなくなった。だから、今は閉めざるを得ないようです」(同)

 女性社員たちは職場環境を改善できないか、労働基準監督署に相談することも考えたようだが、そこに労力と時間を割いた挙げ句、山口社長から目を付けられては余計に働きづらくなると思い、退職することを選んだようだ。

 社員が次々と辞めていく背景が見えてきたが、あらためて山口倉庫とはどんな会社なのか。

 本業の倉庫業では、倉庫証券発行許可倉庫、政府米寄託倉庫として官公庁許可を受け、米の保管・管理を行っているほか、日産自動車ユーザーの夏・冬タイヤを同ディーラーから一手に預かっている。倉庫は郡山市内に3カ所。このほか約20カ所の有料駐車場を経営し、ある筋によれば年間の売り上げは2億5000万円前後、利益は4000万円前後を上げているという。

 一方、山口アセットマネジメントは郡山市内に土地を所有する一方、飲食店や商業施設、マンションなどの賃貸・管理を行っている。

 社会常識から外れた職場環境について、5月号の取材時に見解を聞いた県北地方の弁護士に今回判明した事実をあらためて伝えると、次のように指摘した。

 「個人的には行き過ぎで、非常識な職場環境だと思います。ただ、経営者には従業員の働きぶりを監理する必要があり、通常は目視で行うところを監視カメラで行っているとすれば、それをもって違法とまでは言えない。もちろん、従業員にも職場環境の改善を求める権利はありますが、組合など相談先がある大企業と違い、個人で対応しなければならない中小零細企業では、ワンマンオーナー社長が聞き入れてくれるかどうかは不透明。そうなると、従業員には働く場所を選べる権利もあるので辞める流れになるが、問題はそれで困るのは会社だということです。周知の通り、今は人手不足が深刻ですからね。ただし、経営者が『それでも構わない。ウチは監視カメラに重きを置く』ということなら、それも一つの経営判断なので、外野がとやかく言う話ではない」

 そう話す一方で、弁護士が「労働者の権利を守る側からの法的意見」として紹介してくれたのが立教大学講師・砂押以久子氏の考えだ。砂押氏は『日本労働法学会誌105号』(2005年5月20日発行)に寄せた論文「情報化社会における労働者の個人情報とプライバシー」の中でこう指摘している。

 《企業には、企業秩序維持権限等に基づき使用者は労働者を管理監督する権限がある。しかし、他方で、前述のように労働者には職場にあっても一定程度の私的行為が存在する余地があり、労働者にもプライバシーを保護される法的利益があることも認識されなければならない。

 会社が監視権限を有するとしても、このことをもって労働者のプライバシーが一定程度制約されることはあっても否定されることにはならないのである。セキュリティーなどの観点から監視が肯定されるとしても、監視過程において、労働者のプライバシー侵害が最小限になるよう使用者は常に配慮しなければならないと考える。使用者が従業員の私的領域にまで立ち入ることができるのは、業務上重大な支障が生じ、緊急な対応が必要であるなどの事情が存在する場合に限られるべきである。

 モニタリングの実施にあたって、使用者の監視の必要性と労働者のプライバシー保護の均衡という視点からは、使用者に労働者に対する事前の情報提供義務を課することが不可欠といえる》

 この稿の冒頭にも書いているように、使用者は労働者に対し「監視カメラを大量に設置する目的、設置場所、映像と音声の利用範囲などをきちんと説明」する必要があるわけ。

居留守を使う!?山口氏

山口アセットマネジメントの事務所はずっと閉まったまま
山口アセットマネジメントの事務所はずっと閉まったまま

 「給料は他社より高いし、夏と冬のボーナスも支給されるので、お金の面で文句を言う社員はいない。ただ、それでも次々と辞めていく原因は職場環境の異様さに尽きます。昨今、人手不足が深刻な問題となっていますが、いくら給料が良くても社員を大切にしない会社は人が集まらないし、将来生き残っていけないと思います」(前出・元社員)

 裏を返せば、異様な職場環境を改めれば社員の定着率も上がり、人手不足に陥ることなく会社も生き残っていける、ということだろう。あとは山口社長が危機感を持ち、適切な改善策を講じることができるかどうかにかかっている。

 5月号の取材時は山口倉庫に質問書を直接届けたが、何の返答もなかった。元社員によると、山口社長はほとんど出勤しないというので、今回は郡山市内にある山口社長の自宅を訪問し接触を試みた。

 駐車場には元社員が教えてくれた山口社長の車が止まっていた。在宅しているのは間違いなさそう。ところが、いくらインターホンを鳴らしても反応はない。仕方なく、取材申し込みと記者の携帯電話番号を書いたメモを郵便受けに置いてきたが、5月号同様、返答はなかった。

 元社員によると「自宅にも監視カメラが設置されているので、記者さんの行動は家の中から丸見えだったと思います」とのこと。

 見られても困ることはしていないので構わないが、自分の分からない場所からじーっと監視されるのは、やはり気分が良いものではない。

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