3自治体議員選に候補者擁立
福島市議選(定数35)は7月9日に投開票が行われ、現職29人、新人6人が当選した。46人(新人13人)が立候補したが、投票率は41・97%で過去2番目に低かった。
同市議選に合わせて、春ごろから市内でポスターやのぼりでの広報活動を強化していたのが参政党だ。
2020年設立。①子供の教育、②食と健康、環境保全、③国のまもり――の3つを重点政策に掲げる。ユーチューブ動画でファンを増やし、2022年の参院選比例代表で1議席を獲得。副代表兼事務局長の神谷宗幣氏(元吹田市議)が当選し、公職選挙法などで定められている政党要件を満たした。
コロナワクチンの効果に疑問を呈しているほか、「一部の勢力が世界を牛耳っている」とする陰謀論的な話もタブーにすることなく発信し、支持を集める。昨年の時点で党員・サポーターは10万人以上に達し、野党第一党の立憲民主党と肩を並べる。
福島市議選には元東邦銀行行員の渡辺学氏(49)を擁立し、7月1日には同市中心部のまちなか広場で街頭演説会を実施。神谷氏も駆けつけ、支持者など約120人が耳を傾けた。
3歳ぐらいの子どもを連れて会場に訪れた女性は「子どもに関する情報が欲しくて、教育や食の安全、健康などについて、ネットで調べていたところ、参政党の動画に行きついた。自分でもいろいろなことに疑問を持って調べるようになり、昨年の参院選前、党員になった」と話した。「友人から紹介され足を運んだ」という人もおり、口コミで支持者を増やしている様子もうかがえた。
本誌で連載中のジャーナリスト・畠山理仁さんはこう解説する。
「『入れたい政党がないから自分たちでつくる』というのが参政党の基本理念です。既存の政党には満足していなかった人、これまで政治との接点があまりなかった人からの支持を集めているのが特徴で、ボランティアの人たちが積極的に参加しています。街頭演説では候補者だけでなくボランティアの人たちもマイクを持って演説しています。かなり極端な主張も展開していますが、従来の政治が中心課題に据えてこなかった『食と健康』を柱にし、女性党員の比率が高いのも従来の政党とは一味違うところです。これまで社会において疎外感を覚えてきた人たち、居場所をなかなか見つけられなかった人たちが『参政党なら自由に言いたいことが言える』、『言いにくいことを言えるのは参政党だけ』と信じて集まってきているようです」
演説を終えた神谷氏に拡大戦略について尋ねたところ、「ネットでの支持者増加はひと段落し、いまは地域ごとに広まっている。予算的に多くの候補者を擁立できないので、都市部に候補者を固め比例区で当選を目指す戦略を取っている。その上で重要になるのが、全国の地方議員なんです」とあけっぴろげに語った。
福島市議選投開票の結果、渡辺氏の得票数は1548票で落選したが、最下位当選の三浦由美子氏の得票数は1617票だったので、わずか69票差だったことになる。
街頭演説途中、プラカードを掲げた男性が現れ、郡山市議選立候補予定者に対し、意見を述べるシーンがあったが、神谷氏はじめ、関係者が慌てる様子はなく、演説で「組織が拡大していく過程の中で文句を言われることも多い」と自らネタにした。ただ、今後深刻な問題に発展するケースも出てくるかもしれない。
参政党では7月30日投開票の西郷村議選、8月6日投開票の郡山市議選にも候補者を擁立。本稿を執筆している時点でこれら選挙の結果は分からないが、県内の選挙戦で姿を見る機会が増えそうだ。