『週刊現代』9月28日号に「隈研吾 『世界的建築家』の虚像」という記事が掲載された。
隈氏と言えば、新国立競技場などを手掛けたことで知られる世界的建築家だが、記事によると、隈氏が設計し、2000年にオープンした那珂川町馬頭広重美術館(栃木県那珂川町)の経年劣化が著しく、問題になっているという。
記事では「おそらくコストが高いので安い木材を並べたのだろう」、「木を表面に貼る『木のデコレーション』のような印象」など、専門家が実名で隈氏を厳しく批判する異例の内容となっている。
隈氏は同誌の取材に対し、「欧米においても、木材の利用でメンテナンスの費用はアップするが、木材にはそれ以上の環境的、経済的効果があるとして、さらに木材振興が進んでいます。20年経過した時点から、劣化にどう対応できるかを町と議論していましたが、取り換えの方針を確定するのに時間がかかり、木材の一部で劣化が進んでしまい、みなさんにご心配をかけてしまいました。地元の林業の振興という点を考えても杉材が最も適切だと考えました」と述べている。
同誌によると、隈氏が手掛けた建築物は国内だけでも200以上に上るが、その要因として、▽国産材料・地場産建材を積極使用する姿勢が国・自治体に受け入れられたこと、▽隈氏はどんな仕事も決して断らない姿勢であること、▽隈氏は東大の内田祥哉(よしちか)研究室出身でゼネコンとのコネや人脈があることなどが挙げられるという。
隈氏が県内で関わった建築物と言えば、9月28日、隈研吾建築都市設計事務所が設計に携わった複合型水辺施設「乙な駅たまかわ」が玉川村にグランドオープンしたばかり。同施設は半ば朽ちかけた状態で放置されていた建物を村が買収し、再生させたものだ。クラフトビール製造工場、カフェ、レストラン、観光案内所、サイクリスト・カヌー利用者向け休憩所で構成され、交流人口創出の一大拠点となることが期待されているだけに、隈氏批判記事の余波が懸念される。
隈氏は浪江町の駅周辺の再開発でも建物の設計などに携わっている。シンボルとなる大屋根「なみえルーフ」の柱をはじめ、建物の内外装に県産木材を使う予定で、JR浪江駅周辺グランドデザイン基本計画には「液体ガラスコーティングを施すことで水分の侵入を阻止します」、「木材を保護し、伸縮や反りを抑え、さらに難燃性、防腐・防蟻性能も向上します」と記されている。
隈氏のことをよく知る県内の建築関係者は「昔から木材を用いた建築物を設計していたが、若いころはヒノキなどの上質な木を使う予算が回ってこないので、比較的安価な木材を使っていた。その結果、いまになって経年劣化が目立っているので、気の毒な面がある」と擁護した。
ただ、こうした記事が掲載された以上、県内でも前述したトラブルが起きないように、隈氏設計の建物を所有する自治体・住民は注意していく必要があるだろう。